鋸山登山ガイド!初心者にもおすすめ!海と歴史の絶景ハイキング

千葉県の名峰「鋸山」は、石切場としての歴史や、日本一の大仏が鎮座する日本寺、東京湾を望む大パノラマなど、見どころ満載の登山スポットです。

アクセスも良好で、東京から電車で2時間。低山ながらも変化に富んだ登山ルートは、初心者にもおすすめ。今回は、房州石を運んだ歴史の道「車力道」をたどるモデルコースをご紹介します。

2025年3月26日 更新

今回歩く鋸山の登山コース

山と高原地図30 三浦・房総

今回歩くのは、浜金谷駅からスタートし、日本寺をめぐって保田駅へと抜ける縦走コースです。石切り場や展望台、海の絶景、そして日本一の大仏と見どころ満載!

コース概要(所要時間:約4〜5時間)
【スタート】浜金谷駅⇒観月台コース登山口⇒車力道⇒車力道分岐⇒展望台⇒鋸山⇒日本寺分岐⇒地獄のぞき⇒大仏⇒表参道入口⇒【ゴール】保田駅

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鋸山

浜金谷駅から車力道で山頂へ

JR浜金谷駅。ロープウェーやフェリーの乗り場も近く、鋸山登山の起点となる駅

東京湾フェリーの発着地としても知られるJR内房線・浜金谷駅。ここが今回の鋸山登山のスタート地点です。東京駅から電車で約2時間、乗り換えもスムーズで、駅から直接登山口を目指せるアクセスの良さが鋸山の人気の理由のひとつです。

また、フェリーで横須賀・久里浜港から渡ってくるルートもおすすめ。小旅行気分でクルージングを楽しみつつ、海の近くにそびえる低山ハイクに挑めば、非日常感たっぷりの一日になるでしょう。

アクセス方法も多彩で、鋸山ロープウェーを使えば手軽に山頂へアクセスできますし、車なら鋸山登山自動車道(有料)を使って山頂近くの駐車場まで行くことも可能。観光地としても人気の鋸山は、登山者以外の訪問者も多い山です。

 
車力道の分岐は左

さて、いよいよ登山開始。浜金谷駅を出発して、しばらく市街地を歩くと、約10分ほどで登山口に到着。さらに進むと道が分岐しますが、今回は歴史の道「車力道(しゃりきみち)」をたどるコース。地図アプリで現在地を確認しつつ、左の道へ進みましょう。

 
山と高原地図アプリで確認しながら進めば安心

「車力(しゃりき)」とは、かつて鋸山から切り出された房州石を運んでいた人々のこと。石を載せた“ねこ車”と呼ばれる荷車を押しながら、急な坂道を登り下りしていました。特に多くの女性たちがこの仕事に従事していたと伝えられており、その重労働ぶりは今も石畳に残る轍からもうかがえます。

石の重み、そして歴史の重みを感じながら、一歩一歩登っていきましょう。

 
車力道の石畳。轍の跡が残り、歴史の重みが感じられます 

石切り場跡で異世界気分を味わう

昭和60年まで採石が行われていた芳家石店の跡地。舞台のように平らな岩場が特徴的

車力道を登り切った先に現れるのが、鋸山の最大の見どころともいえる石切り場跡。自然の山肌が切り取られ、垂直の岩壁が立ち並ぶその光景は、まるでダンジョンのような異空間です。

切通しのような細い通路を縫うように歩くと、視界の奥に巨大な岩壁が広がり、突然開けた場所には岩舞台のような平らな空間が出現。ここは「芳家石店」が最後まで採石を行っていた場所で、今もその痕跡がくっきりと残されています。

 
入り組んだ切通しを進む感覚はまさにダンジョン探検。石の迷路 

東京からわずか2時間とは思えない非日常感に包まれ、まさにリアルな冒険を体験できる瞬間。鋸山登山のハイライトともいえるスポットです。

海の絶景を眺めて鋸山の山頂へ

山頂付近は狭い階段が続く。雨の日や濡れた岩は特に滑りやすいため要注意

石切り場の幻想的な雰囲気をたっぷり堪能したら、次はいよいよ今回の登山のハイライトのひとつ、海の絶景ポイントを目指します。

石切り場周辺は狭く急な階段が多いため、足元には十分注意しながら進みましょう。少しずつ高度を上げるにつれて、潮風が頬をかすめ、視界が一気に開けます。眼下には東京湾が広がり、行き交うタンカーやフェリーの向こうには三浦半島や伊豆大島を望むことができます。空気が澄んだ日には、富士山が海越しにくっきりと姿を現すことも。

 
展望台から見える東京湾と房総の街並み。晴れた日には富士山まで見えることも 

海のパノラマを心ゆくまで楽しんだら、次は鋸山の山頂を目指しましょう。展望台から分岐点まで戻り、y山と高原地図アプリでルートを確認しながら東へ進路を取ります。

 
立ち止まって地図アプリで現在地をこまめに確認しよう 

山頂までは、岩場が続く一本道を約30分。標識と一等三角点が設置された山頂に到着すると、北側の展望が開け、君津の工業地帯や東京湾岸の街並みが一望できます。標高は329.4mと低山ながら、視界の広さと景色の変化に満足度は抜群です。

ラピュタの壁と日本一の大仏に出会う

垂直に削られた石壁と森の景観が重なり、“ラピュタの壁”と呼ばれる絶景に。ここは必ず立ち寄りたい場所

鋸山の山頂をあとにしたら、もと来た道を西へ戻ります。道中にも石切り場の痕跡が点在し、岩の表面に刻まれた歴史の深さを感じながら歩く時間もまた、この登山の醍醐味です。

やがて、映画『天空の城ラピュタ』のような景観が広がる絶景スポットに到着します。垂直に切り立った岩壁と緑のコントラストが印象的なその場所は、「ラピュタの壁」と呼ばれ、多くの登山者や観光客が足を止める人気スポット。映画の世界を思わせるその雰囲気に、誰もが魅了されることでしょう。

ここから先は、鋸山最大の見どころでもある「日本寺」の境内に入ります。今回は北口から拝観(拝観料:大人700円/小人400円)。拝観時間は9:00〜16:00(最終入場15:00)なので、時間に余裕をもって行動しましょう。

境内に入るとすぐに、高さ約30mの石彫「百尺観音」が目に飛び込んできます。戦没者・交通犠牲者の供養のため、かつての石切り場跡に6年の歳月をかけて彫られた観音像で、現在は交通安全のご本尊として信仰を集めています。

 
圧巻の存在感を放つ「百尺観音」。参拝せずにはいられない荘厳な雰囲気 

そして視界が一気に開けると、鋸山の象徴とも言える「地獄のぞき」が出現!切り立った崖から突き出した足場に立てば、真下を覗くそのスリルに背筋がゾクっとするはず。SNS映えも抜群なこの場所は、連休や観光シーズンになると記念撮影の行列ができることもあるので、早めの到着がおすすめです。

 
地獄のぞきに立てば、吸い込まれそうな絶景が広がる。絶好のフォトスポット 

地獄のぞきを過ぎて階段を下りていくと、静かな羅漢エリアを抜け、いよいよ大仏広場に到着します。

目の前に現れるのは、高さ31.05mを誇る日本一の摩崖仏。正式名称「薬師瑠璃光如来」といい、病を癒す力を持つとされる仏様です。その左手には薬壺を抱え、今も多くの参拝者の祈りを受け止めています。

 
日本最大の摩崖仏「薬師瑠璃光如来」。高さ31m超、圧倒的なスケールに感動! 

この大仏は、1783年に彫刻が始まり、完成まで3年を要したといわれています。現在の姿は1969年に再建されたもので、鋸山登山の締めくくりにふさわしい、壮大な光景です。

仁王門を抜けて保田駅へ下山

石段が続く静かな参道。下山時は足元に注意を

大仏広場でその荘厳な姿をしっかりと目に焼き付けたら、いよいよ下山ルートへ。日本寺の境内を南へと下りていきます。しばらくは、苔むした石段や杉木立に囲まれた、いかにも“山寺らしい”雰囲気の参道が続きます。ここまで歩き続けてきた足には、石段の下りがややこたえるかもしれませんが、どこか心静まる道でもあります。

仁王像が立つ門をくぐれば、日本寺の境内も終わり。ここからは、のどかな田園風景の中を南下していきます。

 
仁王門をくぐって日本寺の境内を後に。ここから町へ下りていきます 

街道沿いに古い家並みが残るエリアもあり、ゆったりと歩くのにぴったり。これまでの山旅を思い出しながら、旅の余韻を感じてみてください。道はゆるやかな下り坂で、保田の町を抜けていきます。やがて線路をくぐると、今回のゴールとなるJR内房線・保田駅に到着! お疲れさまでした。

 
ゴールの保田駅。こちらを登山口として利用する人も多くいます

今回歩いた鋸山の登山コース

山と高原地図30 三浦・房総

コース概要(所要時間:約4〜5時間)
【スタート】浜金谷駅⇒観月台コース登山口⇒車力道⇒車力道分岐⇒展望台⇒鋸山⇒日本寺分岐⇒地獄のぞき⇒大仏⇒表参道入口⇒【ゴール】保田駅

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鋸山

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