猿投山登山ガイド 名古屋から日帰りで楽しむ自然と歴史の山

愛知県豊田市の「猿投山(さなげやま、標高629m)」は、古くから信仰を集めてきた里山で、四季折々の自然と歴史に触れられる人気の登山スポットです。

山頂からは御嶽山(おんたけさん、標高3,067m)や白山(はくさん、標高2,702m)を望む大パノラマが広がり、道中には猿投神社や東の宮、猿投七滝(さなげななたき)などの見どころも点在します。名古屋近郊からアクセスしやすいこともあり、猿投山登山は初心者や家族連れにもおすすめです。

2025年9月5日 更新

猿投山とは 尾張と三河を分ける信仰の山


名古屋から近く、多くの登山愛好家に親しまれる猿投山

猿投山は愛知県豊田市北西部に位置する標高629mの山で、尾張と三河を分ける境にそびえています。古くから信仰を集めてきた霊山であり、山頂からは晴天時に御嶽山や白山を望むことができます。


登山道に突如現れる、圧倒的な存在感の巨岩

標高自体はそれほど高くありませんが、登山道沿いには歴史ある社が点在し、静かな樹林帯が広がります。猿投山登山では、歩きながら文化と自然の両方に触れられるのが大きな魅力です。

猿投山アクセス 車でも電車でも便利な行き方


駐車場も充実しており、特に土日祝は登山客でにぎわう

猿投山の登山口は猿投神社の奥にあり、マイカーでも公共交通機関でも訪れることができます。車の場合、東海環状自動車道の「豊田藤岡IC」や猿投グリーンロードの「猿投東IC」から約5分で到着。無料駐車場も整備されており、休日には多くの登山客で賑わいます。


バスを降り立つと、目の前に猿投神社の荘厳な門が出迎える

公共交通を利用する場合は、名鉄豊田線「上豊田駅」から「とよたおいでんバス」に乗り、「猿投神社前」バス停で下車。そこから徒歩で猿投山登山口へアクセスできます。名古屋や豊田からのアクセスの良さも、猿投山登山が人気を集める理由のひとつです。

猿投山登山ルート 大岩展望台から山頂へ向かう表参道コース


猿投山有数のパノラマを誇る大岩展望台

猿投山には複数の登山道がありますが、特に人気なのが「猿投神社」から登る表参道コース(猿投山登山ルート)です。東海自然歩道を辿り、大岩展望台や東の宮を経て山頂に至ります。道は整備されており、初心者や家族連れでも歩きやすいコースです。

標準コースタイム
猿投山登山者用駐車場→(約20分)→御門杉(猿投山登り口)→(約40分)→大岩展望台→(約30分)→東の宮→(約20分)→猿投山山頂

猿投山登山口 名物トロミル水車と巨木・御門杉


良質な陶磁器の原料をつくる装置・トロミル水車

猿投神社近くの駐車場から歩き始めると、まずは舗装された林道を進みます。愛知の都会的なイメージとは異なり、沢を横目に緑に囲まれた静かな道が続き、心地よい自然の空気に包まれます。途中に現れる、窯業で知られるこの地域ならではの「トロミル水車」も、道中の見どころのひとつです。


陽光に照らされて神秘的な佇まいを見せる御門杉

林道を約1km歩くと、圧倒的な存在感を放つ「御門杉(みかどすぎ)」が姿を現します。鬱蒼とした森の中に光が差し込む瞬間は印象的で、巨木の迫力と周囲の緑が織りなす景色に目を奪われます。

猿投山の絶景スポット 一気に視界が開ける大岩展望台


大岩展望台の手前には、休憩にもってこいの東屋も現れる

序盤はなだらかな道が続き、静かな杉林の中を歩きながら澄んだ空気を感じられます。標高差も大きくないため、初心者でも呼吸を整えながら無理なく進めます。


見晴らし抜群、豊田市街が眼下に広がる絶景

やがて「大岩展望台」が姿を現します。その名の通り、大きな岩の上からの眺めは迫力があり、眼下には豊田市街地を一望できます。一気に視界が開けるため、多くの登山者が写真撮影や休憩に立ち寄るスポットです。季節によっても魅力が変わり、初夏は爽やかな風が吹き抜け、冬は澄んだ空気が広がります。

猿投山登山道に佇む神聖な東の宮


石造りの鳥居を抜けると、東の宮への参拝道が続く

大岩展望台を少し進み、舗装路に合流した後さらに登ると、猿投神社の奥宮である「東の宮」に到着します。古くから山岳信仰の対象とされ、静かな森の中に神聖な空気が漂います。石段を上った先に鎮座する社殿は、周囲の樹林に包まれ、落ち着いた雰囲気に満ちています。


森の静寂に包まれた、神秘的な東の宮

山頂へ向かう途中に位置しているため、多くの登山者がここで足を止め、安全を祈願します。周囲にはベンチも整備されており、休憩を兼ねて参拝できるのも嬉しいポイントです。道中で山の歴史に触れられるのも、表参道ルートならではの魅力といえるでしょう。

猿投山山頂 名古屋近郊で味わえる達成感


澄んだ空気の日は名峰・御嶽山や白山が姿を見せる

東の宮を過ぎると、ゆったりとした登り道が続きます。カエル石を過ぎて10分ほど歩くと、標高629mの猿投山山頂に到着。山頂には三角点と展望ポイントがあり、瀬戸方面の町並みや、晴れた日には遠く御嶽山や白山まで望むことができます。低山ながら広がる眺望は見応えがあり、登ってきた達成感をしっかりと味わえます。


山頂にはベンチや広場が整い、ひと休みにぴったり

山頂周辺にはベンチや広場が整備されており、昼食やおやつを楽しみながら休憩する登山者も多く見られます。春にはツツジ、秋には紅葉と、四季折々の自然も魅力です。名古屋近郊でこれほどの展望を楽しめる山は貴重で、人気の理由もうなずけます。

猿投山雲興寺ルート 縦走気分が味わえる健脚向けコース


瀬戸市側の猿投山登山口に佇む古刹・雲興寺

少し物足りなさを感じる方には、瀬戸市側の雲興寺(うんこうじ)から登るルートがおすすめです。往復約7.5kmとやや長めで、アップダウンも多いため、猿投神社から登る表参道ルートに比べると登り応えがあります。


新緑に染まる山肌が広がる爽快な風景

前半は雲興寺の対岸から渓流沿いに進み、標高400mほどの小さな山頂を越えていきます。緑が美しく、変化に富んだ景色を楽しめる区間です。その山頂を越え、トイレのある三叉広場に到着したら、標識に従って未舗装林道を約15分歩きます。


木立のトンネルを抜ける登りは程よい負荷

後半は急な登りと緩やかな尾根道が交互に続き、ペース配分が大切です。途中には休憩所もあり、適宜利用しながら進むことができます。


登る途中、ふと視界に広がる名古屋市街の景色

展望はあまり開けませんが、木々の隙間から瀬戸・名古屋方面を望むことができます。ツバキやツツジなどの野花が見られ、運が良ければニホンカモシカに出会えることもあります。独立峰でありながら縦走登山の雰囲気を味わえるのも、このルートの特徴です。

標準コースタイム
猿投山登山口(雲興寺)→(約45分)→標高400m地点→(約25分)→三叉広場→(約50分)→猿投山山頂

猿投山下山後に楽しめる観光と温泉スポット

猿投山の魅力は登山だけにとどまりません。下山後には、信仰の歴史を感じられる神社や、滝や温泉といった癒しのスポットが点在しており、登山と合わせて訪れることで一層充実した一日を過ごせます。

猿投山登山口に佇む「猿投神社」で安全祈願


猿投山の山岳信仰を物語る猿投神社

猿投山の麓には、古くから山の守り神として信仰を集める「猿投神社(さなげじんじゃ)」があります。静かな森に包まれた参道を進むと、歴史を感じさせる社殿が現れ、落ち着いた雰囲気に包まれます。


静寂に包まれて境内へ、下山後にお参り

境内の石段や手水舎も趣があり、登山前の安全祈願や下山後の参拝に訪れる人も多く見られます。自然と歴史に触れながら一息つける場所として、猿投山登山とあわせて立ち寄りたいスポットです。

猿投神社
住所:愛知県豊田市猿投町大城5
料金:参拝無料
公式HPはこちら

遊歩道を歩きながら楽しむ「猿投七滝」


登山後にひんやりクールダウンができる猿投七滝

猿投山の麓には「猿投七滝(さなげななたき)」と呼ばれる、大小7つの滝が連なる景勝地があります。水が岩を伝って落ちる音が響き、歩きながら自然の静けさを感じられます。周辺には遊歩道が整備されており、滝を眺めながら散策を楽しめます。


柔らかな木漏れ日と清らかな渓流に心和むひととき

夏は涼を求める登山者や家族連れでにぎわい、水しぶきが暑さを和らげてくれます。秋は紅葉と滝の白い流れが対比をなして美しく、写真を撮る人の姿も見られます。登山の帰りに立ち寄れば、心地よいクールダウンの時間となるでしょう。

猿投七滝
住所:愛知県豊田市猿投町(猿投山内)
料金:散策無料
公式HPはこちら

希少な天然ラドン泉と名物そばを楽しむ


名古屋の奥座敷と呼ばれる猿投温泉

下山後に立ち寄りたいのが「猿投温泉(さなげおんせん)」です。国内でも珍しい天然ラドン泉が湧き、広々とした湯船で登山の疲れを癒せます。ラドンの成分は肌や呼吸から取り込まれることで体調を整える効果があるとされ、日帰り入浴でも利用できます。


温泉水で作られた名物・猿投十割そばは絶品

併設のレストランでは、「猿投十割そば」など温泉水を使った料理が提供されています。打つ・茹でる・締める工程すべてに温泉水を用いるのが特徴で、登山後に温泉と食事を合わせて楽しめるのが魅力です。

猿投温泉 金泉の湯
住所:愛知県豊田市加納町馬道通21
営業時間:月~金曜/9:30~23:00(22:30最終受付)、土・日曜・祝日/8:00~23:00(22:30最終受付)、お食事処は月~金曜 昼の部11:00~15:00(LO14:00)、夜の部17:00~22:00(LO21:00)、土・日曜・祝日/11:00~22:00(LO21:00)
料金:平日1,580円、土・日曜・祝日1,680円 ※貸タオル、貸バスタオル、貸浴衣付き
公式HPはこちら

登山初心者から楽しめる猿投山の魅力


ヤマザクラがパッチワークのように広がる春

猿投山は、名古屋近郊から気軽にアクセスできる低山ながら、歴史や自然、展望、温泉まで楽しめる多彩な魅力を持つ山です。整備された登山道は初心者や家族連れでも安心して歩け、山頂からのパノラマや東の宮、周辺の猿投七滝や猿投温泉なども合わせて訪れることができます。


樹林帯を染め上げる夕暮れのひととき

週末のリフレッシュや手軽な山旅に適しており、季節ごとに変わる表情も大きな魅力です。初心者やファミリーにも歩きやすく、安心してハイキングを楽しめる山といえるでしょう。

登山の計画やルート確認には「山と高原地図ホーダイ」アプリが役立ちます。詳細な地図や最新の通行情報を確認できるので、猿投山をより安全に歩くための強い味方です。次の山歩きの際には、ぜひ利用してみてください。

1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部を卒業後、商社やメーカーで営業職を経験。2019年より複業でトラベルライターとしての活動を始め、旅の魅力を伝える仕事がライフワークになる。2021年には本業も旅行業界へ本格転身し、国内OTAにて宿泊施設の集客支援に従事。現在は旅行系ベンチャー企業でメディアマネージャーを務める。これまでに執筆した記事は2,000本以上。地方の自然や暮らしをテーマにした発信を続けながら、「旅を通じて人生が豊かになるきっかけ」を届けたいと考えている。登山、自転車旅、温泉巡り、離島旅が趣味で、毎年の北海道旅行を家族の恒例行事にしている。 notehttps://note.com/yuhei_tonosho
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