三ツ瀬明神山登山ガイド 乳岩峡コースで楽しむ奥三河の岩場と絶景

愛知県新城市・奥三河にそびえる「三ツ瀬明神山(みつせみょうじんやま、標高1,016m)」。愛知県内では数少ない、本格登山を味わえる貴重な山です。
登山口に広がる乳岩峡(ちいわきょう)は苔むす森とエメラルドグリーンの清流、変化に富んだ渓谷美が魅力。その先には奇岩群や急登「胸突八丁(むなつきはっちょう)」など多彩な登山道が続きます。岩稜を越えてたどり着く山頂展望台からは鳳来湖や南アルプスの絶景が広がり、挑戦の先にふさわしい達成感を味わえる一座です。
目次
奥三河を代表する三ツ瀬明神山 登山スポットの魅力と特徴

奥三河の山の中でもひときわ存在感を放つ「三ツ瀬明神山」
「三ツ瀬明神山」は、愛知県新城市の南部に位置する標高1,016mの山で、奥三河エリアを代表する名峰です。愛知県内は猿投山(さなげやま、標高629m)や寧比曽岳(ねびそだけ、標高1,121m)などハイキング色の強い山が多い中、本格登山の雰囲気を味わえる貴重なスポットとして人気があります。

巨岩に開いた穴が印象的、乳岩の手前に佇む通天門
山麓には乳岩峡や鳳来湖(ほうらいこ)といった豊かな自然景観が広がり、峡谷や岩稜、急登といった変化に富む登山道は、初級から中級へステップアップを目指す登山者に親しまれています。また、山頂には展望台が整備されており、奥三河の山並みや南アルプスを一望できる大パノラマも魅力です。
三ツ瀬明神山登山口へのアクセス 乳岩峡と三ツ瀬からの行き方

渓流に沿って道が始まる乳岩峡登山口
乳岩峡登山口はかつて車で入れましたが、現在は道路閉鎖により徒歩または自転車でしか行けません。マイカー利用の場合は湯谷(ゆや)温泉駐車場に停め、JR飯田線を利用して湯谷温泉駅から三河川合駅へ。駅から登山口までは徒歩約30分で、比較的歩きやすい道が続きます。

車でアクセスする場合に便利な明神山登山口
もう一方の入口である明神山登山口は、東栄インターチェンジから国道151号線を経由し、車でおよそ15分の場所にあります。山頂へ最短で登れる「三ツ瀬登山コース」として、多くの登山者に利用されています。
今回は、奥三河の自然と変化に富んだ道のりを味わえる乳岩峡コースをご紹介します。
乳岩峡コースで歩く三ツ瀬明神山登山ルート

猫が座っているように見える乳岩の絶景
乳岩峡から三ツ瀬明神山へ向かう乳岩峡コースは、奥三河随一の変化に富むルートです。前半は渓谷沿いを進むハイキング調の道で、苔むす森や透明度の高い清流が続き、秘境感のある雰囲気を味わえます。

山頂へ向けてクライマックスの岩稜地帯を進む
鬼岩を過ぎて尾根に取り付くと、岩稜や鎖場、急登「胸突八丁(むなつきはっちょう)」など本格登山の要素が現れます。体力を試される区間ですが、登るほどに景色が開け、8合目周辺では鳳来湖や奥三河の山並みを見渡せます。

条件が良ければ南アルプスの峰々まで見渡せる
終盤は岩尾根を越えて山頂展望台へ。そこからは南アルプスや、天候次第で遠く富士山まで望める壮大な眺望が広がります。愛知県内でも数少ない本格的な登山ルートとして、乳岩峡コースは三ツ瀬明神山の魅力を存分に体験できる道のりです。
乳岩峡登山口→(約40分)→乳岩→(約1時間25分)→鬼岩→(約10分)→鬼岩乗越→(約50分)→6合目→(約45分)→三ツ瀬明神山
苔と清流の渓谷歩き 奇岩「乳岩」で秘境感を楽しむ

エメラルドグリーンの淵に癒されるスタート
JR三河川合駅から徒歩約30分の場所にある乳岩峡登山口。登山開始直後は乳岩峡の渓谷沿いを歩く整備された遊歩道が続き、安心して進めます。
まず現れるのは大きなエメラルドグリーンの淵。川の流れがつくった天然のテラス状の岩盤で、渓谷入口のシンボル的存在です。水面に光が差し込むと、幻想的な景観が広がります。

苔むす森が広がる原生的な雰囲気
さらに進むと峡谷を覆うように苔むす森が広がり、湿潤な空気が漂います。悠久の自然を感じさせる原生的な雰囲気は、乳岩峡ならではの魅力です。

猫のシルエットのように見える自然の窓
景勝地「乳岩」へ行くには、登山道から少し外れる必要がありますが、ぜひ立ち寄りたいスポット。内部に入ると岩窟の奥に自然の窓が開き、振り返った際に猫のシルエットのように見える光景が人気です。
乳岩は、凝灰岩が長い年月をかけて浸食されてできた奇岩で、洞窟には多くの観音様が祀られています。かつて信仰の対象であったことを今に伝えています。
乳岩を越えて鬼岩・ハイカラ岩へ 巨岩が連なる本格登山の始まり

沢を渡る場所は小休止にぴったり
乳岩を過ぎると道は次第に傾斜を増し、本格的な登山道らしい雰囲気に変わっていきます。峡谷を離れて杉林の中を進むと、静寂に包まれた空間で森林浴を楽しみながら歩くことができます。
やがて視界が開け、沢沿いの平坦地に到着。小休止に適したポイントで、登山道で唯一の渡渉地点を越えて進みます。水量が多い時期は足元に注意が必要です。

迫力ある岩壁がそびえる鬼岩
この先で現れるのが、フリークライマーにも知られる「鬼岩」。切り立った大岩壁が目の前に立ちはだかり、その迫力に思わず足を止めてしまうほどです。

登山道脇に立つ巨岩「ハイカラ岩」
さらに進むと、圧倒的な存在感を放つ巨岩「ハイカラ岩」の横を通過します。登山道の脇に突如現れるその姿は、自然が造り出した造形美として目を奪われることでしょう。
特に鬼岩は切り立った大岩壁が迫り、そのスケール感に圧倒されるでしょう。
急登「胸突八丁」を越えて 6合目へ進む三ツ瀬明神山登山の核心部

季季節によっては色とりどりの花々も咲く
鬼岩乗越(おにいわのっこし)を通過すると尾根道に出ます。道幅はやや狭く、軽い岩場も点在するため注意が必要ですが、冒険心をくすぐる区間です。春から初夏にはツツジやシャクナゲが咲き誇り、花を楽しみながら歩けます。

山頂までの正念場「胸突八丁」が始まる
6合目手前で待ち構えるのが「胸突八丁(むなつきはっちょう)」と呼ばれる急登。長い坂道が続き、息が上がるような厳しさが特徴です。ただ、登り切れば傾斜は落ち着き、以後は大きな難所は少なくなります。

木々の間から山頂が顔を覗かせる
樹林帯の道は木陰が心地よく、時折木々の隙間から三ツ瀬明神山の山頂部を望むことができます。6合目に差しかかる頃には、これまでの達成感とともに山頂を目指す気持ちが一層高まるでしょう。
岩場と鎖場を越えて山頂展望台へ 三ツ瀬明神山登山のクライマックス

6合目以降は、天然のアスレチックのような岩場も現れる
6合目から先は尾根をたどり、岩場や鎖場が現れる変化に富んだ区間へ。木々に囲まれた道が基本ですが、8合目付近の鎖場を越えると景色が一変します。狭い岩尾根からは眼下に鳳来湖、周囲には奥三河の山並みが広がり、迫力ある展望を楽しめます。

馬ノ背から望む鳳来湖と奥三河の山並み
春は桜、夏は新緑、秋は紅葉と、四季折々の彩りも魅力です。岩尾根を過ぎれば最後の急斜面。足元に注意しながら登り切ると、山頂に設けられた展望台が姿を現します。

澄んだ日には南アルプスや富士山まで一望できる
標高は1,016mと高くはありませんが、周囲に同等の高さの山が少ないため眺望は格別。条件が良ければ南アルプスや富士山(標高3,776m)まで見渡せます。片道約4時間の行程を歩き切った達成感とともに、雄大な絶景が待っています。
最短ルート 三ツ瀬登山コースからの登山プラン

はしごや鎖場を越えて進む変化に富んだルート
乳岩峡からの道が王道ですが、より短時間で山頂を目指したい場合は「明神山登山口」からの三ツ瀬登山コースもおすすめです。登山口は新城市三ツ瀬集落の奥にあり、標高差が少なく片道約2時間半で登頂可能。駐車スペースも整備されており、車でのアクセスにも便利です。

無理のない行程で楽しめる定番ルート
行程は短めながら、道中には岩場や鎖場があり、乳岩峡コースに匹敵する変化に富んだ登山を体験できます。比較的短時間で挑戦したい登山者や、ワイルドな尾根歩きを楽しみたい人に向いています。
明神山登山口→(約1時間45分)→6合目→(約45分)→三ツ瀬明神山
乳岩峡コースで楽しむ三ツ瀬明神山登山の魅力

渓谷美と岩場歩き、変化に富んだ道のり
三ツ瀬明神山は、愛知県内で本格的な登山を体験できる貴重な山です。乳岩峡コースでは、渓谷美・奇岩・急登・岩稜といった多彩な要素が凝縮され、片道約4時間の道のりを歩く中で変化に富んだ魅力を味わえます。6合目を越えた先には、奥三河の雄大な自然と南アルプスの大展望が待っています。

11月上旬には山頂周辺の紅葉も見頃に
体力的に挑戦しがいがありながら、初心者から中級者へのステップアップにも適したルートです。最短の三ツ瀬登山コースも含め、目的に合わせて選べるのも魅力。自然豊かな奥三河の旅とあわせて登れば、忘れられない山歩きになるでしょう。
登山計画を立てる際は、最新のアクセス情報や天候を確認し、安全第一で楽しんでください。

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