登山の歩き方を基本からやさしく解説!初心者が安全に歩くためのコツとは?

いま人気の登山を始めようと思っているけど、「装備を揃えるのが難しそう…」とか「体力がないから無理かも…」なんて思っていませんか?でも大丈夫。登山は想像しているよりもずっと気軽に楽しめるものなんです。

とはいっても、初心者にとっては不安がいっぱいなのも当然のこと。そこで、そんなあなたの「?」をスッキリ解消するため、「登山初心者のソボクな疑問」に答えるQ&Aをお届けします。

今回は「登山の歩き方の基本」がテーマです。この記事を読んで、安心して登山の第一歩を踏み出してください。

2025年6月29日 更新

Q1.登山の歩き方は普段とどう違う?街中との違いと基本のコツ


登りは靴の裏でしっかり踏みしめる

登山道と日常の道では、歩き方に大きな違いがあります。街中は舗装された平坦な道が多く、歩きやすく整備されていますが、登山では話が別。岩がゴツゴツしていたり、ぬかるんでいたり、急な坂や段差も珍しくありません。そうした環境に合わせて、足の運び方にも工夫が必要です。

登り坂では「靴の裏全体で着地する」ことが基本。かかとからではなく、足裏全体でしっかり地面をとらえることで、バランスが取りやすく安定感も増します。逆に下りでは「つま先から着地」し、足裏全体を地面につけるように意識すると、滑りにくくなります。

また、登山道は幅の狭い場所や斜面のすぐ脇を歩くような場面もあります。そんなときは、焦らずペースを落として歩くのがポイント。必要があれば、近くの木やロープに手を添えてバランスを保ちましょう。足元をよく確認し、一歩ずつ確実に進むことが、安全な登山につながります。

Q2.下りでの登山の歩き方は?膝への負担を減らすコツと注意点


急な傾斜ではカニ歩きのほうがバランスを崩しにくい

「登りは頑張ったから、下りは楽に帰れるはず」——そんな気持ちで歩き始めたら、膝がガクガクして止まらなくなった……という経験がある方も多いのではないでしょうか。実は、登山では下りこそ慎重に歩くべき場面です。

下りは重力に逆らわずに進む分、脚への負担が増えやすく、特に膝には強い衝撃が加わります。「膝が笑う」と表現されるあの状態は、疲労だけでなく、足に伝わる一歩ごとの衝撃が原因です。疲れがたまっている下山時こそ、体をしっかり支えながら歩く意識が大切です。

また、下り道は登り以上に滑りやすく、転倒や滑落のリスクも高まります。急な傾斜では、足を斜めに置いて「カニ歩き」のように横向きに下ると、バランスがとりやすく安全です。歩幅を大きくせず、スピードも抑えてゆっくりと下りましょう。

疲れた足で無理をするとケガにもつながりかねません。特に初めての登山や久しぶりの山歩きでは、下りのほうがきつく感じることもあります。だからこそ、最後まで気を抜かず、安全に下山することを心がけましょう。

Q3.登山道が濡れているときの注意点は?滑りやすい箇所と安全な歩き方


足の裏全体でしっかりと踏みしめて歩く

濡れた道は、街中の舗装路でも滑りやすいものですが、自然の地面で構成された登山道では、より一層の注意が必要です。特に粘土質の登山道は、雨水を含むと粘り気が増し、スリップしやすくなります。さらに、落ち葉や苔、露出した木の根といった滑りやすい要素がそこかしこに存在します。

こうした道を歩くときは、まず「歩幅を小さく保つ」ことが大切です。大股で歩くと体の重心がぶれやすく、バランスを崩す原因に。歩を進めるごとに足の裏全体で着地し、グリップ感を確かめながら進みましょう。

登りでも滑りやすさはありますが、特に注意したいのは下りです。足元が見えづらい傾斜では、一瞬の油断が転倒につながります。足裏全体で地面をしっかりとらえるよう意識し、必要であれば斜めにカニ歩きするのも効果的です。

もし転倒してしまうと、腰や手を強く打つおそれがあり、怪我につながることもあります。とくに雨上がりの登山では、「いつもより慎重に歩く」ことが安全確保の第一歩です。見た目は乾いていそうでも、湿った地面には十分な注意を払いながら進みましょう。

Q4.疲れにくい登山の歩き方とは?バテないための基本を押さえよう


疲れないためには「歩幅は狭めに」を意識する

アップダウンのある山道では、どうしても体に負担がかかりますが、ちょっとしたコツを意識するだけで、疲労を軽減しながら快適に歩くことができます。体力に自信がない人や、登山に慣れていない人ほど、意識したいポイントです。

まずは【歩幅】。平地と同じ感覚で大股になると、脚の筋肉に負担がかかりやすくなります。登山では「いつもより少し狭めの歩幅」で進むのが基本。地面をしっかり踏みしめることで、安定感も増し、転倒のリスクも下げられます。

次に大切なのが【姿勢】です。平坦な道では背筋をまっすぐに伸ばして歩くのが基本ですが、急な登りでは「やや前かがみ」になることで重心が安定し、足が前に出やすくなります。ザックが重く感じるときも、体を少し前傾させると歩きやすくなります。

また、登山当日に疲れないためには、事前の【体調管理】も欠かせません。睡眠不足や栄養不足は疲労の原因に直結します。前日はしっかりと休養を取り、朝食も抜かずに出発しましょう。体力に不安がある場合は、普段から軽い運動を取り入れて、少しずつ体を慣らしておくこともおすすめです。

何度か登るうちに、自分にとって疲れにくい歩幅やペース、姿勢の感覚がつかめてきます。無理のない範囲でいろいろ試しながら、自分に合ったスタイルを見つけていきましょう。

Q5.狭い登山道ですれ違うとき、どちらが道を譲るのがマナー?

登山道で前から人が来たとき、「どっちが道を譲るべき?」と迷った経験はありませんか?基本的なマナーとしては、登りの人が優先とされています。これは車と同じで、登りは体力的な負荷が大きく、ペースを崩しにくいためです。

ただし、これはあくまで「原則」であって「絶対」ではありません。現場では道幅や地形、周囲の安全状況を見て、臨機応変に判断することが大切です。たとえば、登りの人が避けやすい広い場所にいるなら、自分から譲るのも一つの選択。無理に原則にこだわるよりも、スムーズにすれ違うことを優先しましょう。

また、すれ違い時にはひと声のあいさつを忘れずに。「こんにちは」「ありがとうございます」といった一言があるだけで、山の空気も和やかになります。知らない人同士でも気持ちよくすれ違えるのが、登山の魅力のひとつです。

登山では「譲り合い」と「思いやり」が基本。自然の中でのマナーを意識しながら、安全で心地よい山歩きを楽しみましょう。

Q6.階段道での登山の歩き方は?疲れにくく歩くためのコツ


階段状の坂を歩くときは左右のバランスを意識する

登山道の中には、丸太や石を組んで階段のように整備された区間があります。見た目には整っていて歩きやすそうに見えますが、実は意外と体に負担がかかりやすい場所でもあります。

その理由は、段差の【高さや幅が不規則】なこと。街中の階段と違って、一定のリズムで歩くことができないため、無意識のうちに歩幅を乱され、ペースが崩れて疲れやすくなるのです。とくに足の筋肉に余計な力が入りやすく、体力を消耗しやすくなります。

そんなとき意識したいのが、左右のバランスを意識した歩き方です。不規則な階段を登っていると、つい片足ばかりを軸足にしてしまいがち。それが続くと、片側の脚だけに負荷が集中し、疲れの原因になります。できるだけ左右の足を交互に使い、歩幅をこまめに調整しながら進むようにしましょう。

また、段差が大きい場所では、無理に一歩で上がらず、手を使ってバランスを取ったり、ストックを活用するのもおすすめです。焦らず、自分のペースで登ることが、結果的に疲れにくく安全な登山につながります。

Q7.登山のペース配分、どう考えればいい?地図のコースタイムと歩き方の目安


山と高原地図ガイド 山と高原地図ではじめる山登り入門ガイド

登山では「どのくらいのペースで歩けばいいのか」が気になるポイントです。とはいえ、ペース配分は人それぞれの体力や経験によって異なるため、まずは無理のない計画を立てることが大切です。

登山が初めて、あるいはまだ数回しか経験がないという人は、標高の高い山よりも、まずは低山(日帰りで登れる山)から始めるのがおすすめ。いくつかの山を歩くうちに、自分の歩くペースや体力の限界が見えてきます。

登山用の地図には、おすすめのルートと「コースタイム」が掲載されています。これは休憩を含まない純粋な歩行時間で、体力や経験を持つ中級登山者を基準に設定されています。そのため、登山初心者の場合は、コースタイムの1.2〜1.5倍を目安に、休憩時間も含めた余裕のあるスケジュールを組むようにしましょう。

たとえば、コースタイムが「登り2時間・下り1時間30分」と書かれていた場合、初心者であれば「登り2時間30分〜3時間」「下り2時間弱」程度を想定しておくと安心です。

計画段階で余裕を持っておけば、当日焦らずに行動でき、景色を楽しんだり、こまめに水分補給をしたりと、心にも身体にもやさしい登山が実現できます。まずは経験を重ねながら、自分に合ったペース感覚をつかんでいきましょう。

『山と高原地図』シリーズは、1965年より毎年発行、登山を楽しむ方に長く親しまれ続けているロングセラー登山地図。 深田久弥による「日本百名山」をすべて収録し、主要な山岳エリアを網羅しています。 山と高原地図Webでは、登山、トレッキング、ハイキングに関する情報や、おすすめの登山ギアについて紹介していきます!

Q8.登山中の休憩タイミングは?体力を保つための目安と工夫


50分歩いたら10分休憩する

登山では「50分歩いて10分休憩」が一般的な目安とされていますが、実際には自分の体力やその日のコンディションに合わせて柔軟に判断することが大切です。

たとえば、なだらかな道が続くルートでは休憩の間隔を広くしても問題ないことが多いですが、急登が続くような場面では、こまめに息を整えることが重要になります。「少し疲れてきたかな」と感じたら、早めに立ち止まって短い休憩を取るのが、バテずに歩き続けるコツです。

ただし、注意したいのが休憩時間の長さです。長く休みすぎると、かえって筋肉が冷えて動きにくくなり、再スタート時にだるさを感じやすくなります。目安としては、1回の休憩を10分以内におさめるのがおすすめです。

また、休憩中はバックパックを下ろして体をゆるめることも忘れずに。肩まわりや腰のベルトで圧迫されていた血流を促し、リラックスする時間を作りましょう。軽くストレッチをするだけでも、足の疲労感が和らぎ、次の一歩が軽くなります。

登山では、ペースだけでなく休憩のとり方も体調管理の一部。無理をせず、自分のリズムで心地よい山歩きを楽しみましょう。

Q9.登山でストックを使う人がいるけど、何が便利なの?


ストックは疲労軽減やバランス維持にとても役立つ

登山道でストック(トレッキングポール)を使っている人を見かけることがありますが、「本当に必要?」と感じている方もいるかもしれません。実はこのアイテム、疲労軽減やバランス維持にとても役立つ登山道具のひとつです。

ストックには、1本で使うステッキタイプと、左右1本ずつ持つダブルストックタイプがあります。とくにダブルストックは、両手で体を支えながら歩けるため、体の左右のブレを抑えて、歩行が安定します。これによって脚への負担が分散され、膝や腰の疲れを軽減する効果が期待できます。

特に、下り坂で膝に不安を感じる方や、登山後半で足がガクガクしてくるタイプの方には、ストックの使用がおすすめです。地面に突いて体を支えることで、下半身だけにかかる負荷をやわらげてくれます。

また、ストックは登山だけでなく、普段のウォーキングやハイキングでも活用できるのが魅力です。慣れてくると自然とリズムよく歩けるようになり、より快適な登山につながります。

登山の疲労を少しでも減らしたい方や、膝への不安がある方は、ぜひ一度取り入れてみてはいかがでしょうか。

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安全で快適に歩くために、登山の歩き方の基本を押さえておこう

登山では、舗装された道とは違って、段差のある不規則な山道を長時間歩くことになります。歩幅は小さめに、足裏全体で着地するのが、安全かつ疲れにくい歩き方の基本。とくに下り坂では膝への負担が大きくなるため、スピードを抑えたり、横向きで下るなどの工夫も必要です。

また、登山では周囲への配慮やマナーも重要なポイントです。すれ違い時の譲り合いや、あいさつといった小さな心がけが、山での時間をより心地よいものにしてくれます

さらに、ペース配分や休憩のタイミング、階段や濡れた道での歩き方など、ちょっとしたコツを知っておくだけで、登山の安心感はぐっと高まります。まずは低山から無理のない計画を立て、自分のペースで自然を楽しむことが、登山を続ける第一歩です。

安全に、そして楽しく登るために、登山の基本を身につけて、心に残る山歩きを楽しんでみましょう。

監修/打越俊浩
登山・キャンプなどアウトドア分野を専門とするフリーライター。アウトドア総合メディア『SotoLover』などで登山初心者向けの解説記事を多数執筆。豊富な実体験をもとに、初めての山歩きでも安心して楽しめるノウハウをわかりやすく発信している。

 

TEXT:吉田正之

『山と高原地図』シリーズは、1965年より毎年発行、登山を楽しむ方に長く親しまれ続けているロングセラー登山地図。 深田久弥による「日本百名山」をすべて収録し、主要な山岳エリアを網羅しています。 山と高原地図Webでは、登山、トレッキング、ハイキングに関する情報や、おすすめの登山ギアについて紹介していきます!
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