岩殿山登山ガイド 大月駅から稚児落とし・岩殿城跡をめぐる周回コース
山梨県大月市の岩殿山(いわどのさん)は、標高634mの低山です。大月駅の北側にそびえ、「鏡岩」と呼ばれる大きな岩壁が目を引きます。秀麗富嶽十二景や山梨百名山に選ばれ、山頂一帯には戦国時代の山城・岩殿城の跡が残っています。
この記事では、JR中央本線・大月駅を起点に、稚児落とし・天神山・兜岩を経て岩殿山山頂に登り、畑倉登山口へ下って大月駅に戻る周回コースを紹介します。取材時の歩行記録と写真をもとに、コースの流れや岩場・鎖場の様子、現在の通行止め区間、アクセスなど、計画に必要な情報をまとめました。
目次
岩殿山の見どころ 鏡岩の岩壁と岩殿城跡、富士山の展望

岩殿山は、大月駅の周辺から見上げる鏡岩の岩壁が印象的な山です。山頂や鏡岩の上にある三ノ丸展望台からは、大月の市街地と周囲の山並み、空気が澄んだ日には富士山を望めます。

岩殿山は、断崖の地形を生かして築かれた岩殿城の跡でもあります。登山道沿いには、巨大な岩を利用した揚城戸跡(あげきどあと)や馬場跡などの遺構が点在し、展望とあわせて城跡の地形をたどれるのも岩殿山ならではの楽しみです。
紹介する周回コースでは、山頂の手前に「稚児落とし」と呼ばれる大岩壁の縁を通ります。岩壁の上から見下ろす景色と、鎖場・ロープ場を含む変化のある登山道も、このコースの大きな特徴です。
岩殿山登山の起点・大月駅へのアクセス

紹介するコースは、大月駅から歩き始めて大月駅に戻る周回コースです。大月駅にはJR中央本線と、富士山麓電気鉄道の富士急行線が乗り入れています。駅から登山口の「稚児落とし登り口」までは、市街地を抜けて徒歩約30分(取材時)です。
車の場合は、中央自動車道・大月ICから大月駅周辺へ向かい、駅周辺のコインパーキングなどを利用します。下山後に大月駅へ戻るコースのため、駅周辺に駐車すると帰りの移動がスムーズです。
大月駅から登山口付近へのバス
大月駅から富士急バスの西奥山行きに乗り、「浅利公民館前」で下車すると、稚児落とし登り口まで徒歩約5分(取材時)です。
下山口の畑倉登山口周辺にも、大月駅方面へ向かう富士急バスの路線が通っています。畑倉登山口から「岩殿上」バス停までは、取材時の目安で徒歩約10分です。
いずれの路線も運行日や便数が限られるため、利用する場合は事前に時刻表を確認しておきましょう。
岩殿山登山コース 大月駅から稚児落とし・兜岩を経て山頂へ

大月駅から市街地を抜けて稚児落とし登り口へ向かい、稚児落とし・天神山・兜岩を経て岩殿城跡の三ノ丸展望台、岩殿山山頂へ。下山は畑倉登山口へ下り、一般道を歩いて大月駅に戻る周回コースです。
前半は稚児落としの大岩壁の縁や尾根道、後半は兜岩付近の迂回路と鎖場・ロープ場、城跡の遺構が続きます。主要な分岐には道標がありますが、大月駅から登山口までの市街地には分かりにくい箇所があるため、地図で現在地を確かめながら歩きましょう。
コースデータ
・岩場・鎖場:稚児落とし周辺の岩場、兜岩付近のロープ場、兜岩の先の鎖場(林間の巻き道あり)
・歩行距離:8.5km
・最大高低差:274m
・取材時の行動時間:約6時間(休憩を含む)
・トイレ:大月駅
※最大高低差は、コース中の最高地点と最低地点の標高差で、登り下りの合計(累積標高差)とは異なります。
※山と高原地図のコースタイムは3時間50分です。ただし、これは畑倉登山口から山頂へ登り、稚児落としを経て下る、紹介コースとは逆回りの場合の時間です。
タイムスケジュール(取材時の実測)
※8月下旬・晴天時(最高気温30℃前後)の記録です。稚児落とし・兜岩・山頂での休憩は、区間の時間に含めていません。
通行止め区間と登山前の注意点
・兜岩を横切るトラバースルート(鎖場)は、足場の崩落により通行できません。林間の迂回路を利用し、通行禁止区間には入らないでください。迂回路は足場が狭い急斜面で、ロープを頼りに進む区間です。
・兜岩の先には「鎖場コース」と「林間コース」(林間の巻き道)の分岐があります。鎖場はほぼ垂直の岩場を鎖で下る区間のため、岩場に慣れていない人や、雨で岩が濡れているときは林間コースを選ぶのが無難です。
・稚児落としは切り立った岩場で、柵のない場所もあります。崖際には近づきすぎず、写真撮影の際も足元と周囲を十分に確認しましょう。
・強瀬側では、岩殿山ふれあいの館から稚児落とし方面への分岐までの旧道が、鏡岩からの落石のおそれがあるため通行禁止となっています。強瀬登山口と山頂側は、落石箇所を西側に迂回する新しい登山道で結ばれており、強瀬登山口から山頂へ登ることができます。
・大月市内の山ではクマの目撃情報があります。単独での登山を避け、鈴やラジオなどで音を出しながら行動するよう呼びかけられています。
・低山でも、雨天時や雨の後は岩場や小石の多い斜面が滑りやすくなります。冬は凍結や積雪で危険が増すことがあり、日没も早くなるため、時間に余裕を持った計画が必要です。
登山道の通行止めや迂回の状況は変わることがあります。出発前に大月市の登山情報で最新の情報を確認し、現地では案内表示・迂回路の指示に従いましょう。
大月駅から稚児落とし登り口へ 市街地を抜けて急坂を登る

大月駅を出たら、市街地を抜けて天神山方面へ向かい、稚児落とし登り口を目指します。住宅街の向こうには、これから歩く岩殿山や天神山の山並みが見えます。

しばらく進むと、道路の右側に下り坂があり、その先に浅利川にかかる小さな橋が見えてきます。この分岐は見落としやすいため、地図アプリや登山地図で現在地を確認しながら進みましょう。

橋を渡ったら正面の民家へ進み、脇の細い坂道を登ると登山口です。ここから稚児落としへ続く登山道が始まります。

坂道を登ると本格的な山道に入ります。夏場は草木が茂って足元が見えにくくなるため、トレッキングポールがあると歩きやすくなります。やがて岩殿山方面を示す標識と、右側に階段が見えてきます。取材時は手すりに老朽化の恐れがあったため、手をかける際は強度を確かめてからにしましょう。

階段を上がると、ロープと鎖が設置された急坂が続きます。グローブを着けて、鎖やロープを補助に使いながら登りましょう。段差の大きな岩や木の根、落ち葉で滑りやすい箇所も多い区間です。

途中には展望が開ける場所があり、ひと息つけます。取材日は真夏で気温が高く、水分と塩分をこまめに補給しながら進みました。さらに登ると、木々の間から遠くの山並みと稚児落としの岩壁が見えてきます。
稚児落としから天神山・兜岩へ 大岩壁の縁と尾根道を歩く

登り口からおよそ1時間で稚児落としに到着します。切れ落ちた大岩壁の上に立つと、目の前に周囲の山並みが広がり、足元をのぞくと高度感に背筋が伸びます。
稚児落としの名は、岩殿城の落城にまつわる悲しい伝承に由来すると伝えられています(諸説あり)。取材時は、ここで10分ほど休憩しました。

稚児落としの足元は大きな岩になっており、踏み外さないよう慎重に下ります。岩場を抜けた先の道標から、天神山方面へ進みます。

途中の開けた場所からは、通過してきた稚児落としを振り返ることができ、岩壁の高さを実感できます。

ここからは尾根歩きが続きます。左右が深い谷になっている箇所もあるため、足元に注意して歩きましょう。

稚児落としを出発しておよそ25分で天神山の山頂に到着します。木々に囲まれて展望はありませんが、呼吸を整えて次の兜岩を目指します。

兜岩へ向かう道には、急な傾斜にロープが張られた区間があります。夏場は木々に遮られて眺望は少ないものの、尾根道のアップダウンが続きます。

さらに進むと道標が現れ、兜岩を横切る「トラバースルート」と、左側の迂回路に分かれます。トラバースルートは足場の崩落により通行できないため、迂回路を進みます。

迂回路は足場が狭い急斜面で、倒木も多く歩きにくい区間です。ロープを頼りに一歩ずつ進み、兜岩へと近づいていきます。
兜岩から岩殿城跡へ 鎖場と城跡の遺構を抜けて

兜岩に到着すると、木々の間から大月の市街地や周囲の山々を間近に望めます。取材時は、兜岩横の小さなスペースで10分ほど休憩をとりました。

兜岩の先には「鎖場コース」と「林間コース」(林間の巻き道)の分岐があります。取材時は鎖場コースを進みました。分岐の直後からロープが設置されており、小石や砂で滑りやすいため、木の根も手がかりにしながら下ります。岩場に慣れていない人や、岩が濡れているときは、林間コースを選びましょう。

続いて、大木に巻かれた鎖を使い、狭い岩の割れ目を下ります。ほぼ垂直の岩場には梯子もありますが、間隔が狭く足を置きにくいため、鎖をしっかり握り、岩のくぼみに足をかけながら慎重に通過しましょう。

鎖場を抜けると尾根伝いの道になり、再びロープ区間が現れます。傾斜は緩やかになりますが、小石や木の根で滑りやすい足元が続きます。

やがて「築坂(つきさか)」と書かれた看板が現れます。かつての岩殿城の入り口にあたる場所です。木の階段を登ると、右手が崖になった細い道に変わります。

分岐点に着いたら、正面の階段を登って山頂方面へ進みます。右手は強瀬登山口方面への旧道で、岩殿山ふれあいの館までの区間は落石のおそれがあるため通行禁止です。強瀬登山口へは、落石箇所を西側に迂回する新しい登山道が整備されています。周辺の道標や案内表示が取材時から変わっている場合があるため、現地の表示に従って進みましょう。

階段を進むと揚城戸跡に到着します。巨大な岩を利用して築かれた城門の跡で、岩の間の狭い通路が、守りを固めた山城の構えを今に伝えています。

さらに階段を進むと道標があり、左へ行くと西側に展望が開けるビュースポットがあります。ここから山頂への最後の登りに入ります。
三ノ丸展望台から岩殿山山頂へ 鏡岩の上と本丸跡からの展望

階段を登りきると、岩殿山三ノ丸展望台に到着します。鏡岩の岩壁の上にある展望地で、東屋とベンチがあり、崖側には柵が設置されています。休憩にもよい場所です。

眼下には桂川や中央自動車道、大月駅を中心とした市街地が広がり、その周りを山並みが囲みます。空気が澄んだ日には、正面に富士山を望めます。

展望台の周辺には石碑や馬場跡、倉屋敷跡、用水地跡などが残り、城が築かれていた頃の山上の様子を想像しながら歩けます。

展望台から10分ほどで、標高634mの岩殿山山頂に到着します。山頂は本丸跡にあたり、広々として視界が開けています。高川山と杓子山の間には富士山が見え、記念撮影にもよい場所です。

取材時は、山頂で行動食に大月名物の「厚焼木の実煎餅」を味わいました。山椒の効いた素朴な味わいで、地元の名物を行動食に取り入れるのも山歩きの楽しみのひとつです。
畑倉登山口へ下山し、大月駅へ戻る

山頂からは畑倉登山口へ下ります。山頂には道標があり、進む方向を確認できます。

曲がりくねった坂道や尾根道を下ります。見た目以上に滑りやすいため、焦らずゆっくり進みましょう。山頂から約15分で分岐に着きます。

分岐の正面の道は行き止まりで、岩殿山の伝承にまつわる「鬼の岩屋」へ続いています。取材時は片道3分ほどだったので、時間と体力に余裕があれば立ち寄ってみましょう。

分岐からさらに下ると、畑倉登山口に到着します。

登山口からは一般道を歩いて大月駅へ向かいます。取材時は約40分でした。途中で猿の群れに出会うこともあります。

大月駅に戻れば、周回コースは終了です。取材時は、休憩を含めて約6時間の行程でした。
岩殿山登山の服装と持ち物 岩場・鎖場に備える
岩殿山の周回コースには、稚児落とし周辺の岩場や、兜岩付近の迂回路、鎖場・ロープ場があります。低山の日帰り登山でも、手を使って歩く区間に備えた装備を整えておきましょう。
動きやすく、汗が乾きやすい服装を選ぶ

・ベースレイヤー(肌着)
・速乾性のあるシャツ
・登山用パンツ
・登山用靴下
・滑りにくい靴底の登山靴
鎖場や岩場では足を高く上げたり、手をついたりする場面があるため、動きやすい服装が基本です。夏は汗をかきやすいので乾きやすい素材を選び、春や秋、冬は気温の変化に合わせて脱ぎ着できるよう、重ね着で調節できる服装にしておきましょう。
岩殿山登山に持っていきたいもの

コース上には水場や売店がないため、飲み物や行動食は大月駅周辺で用意してから出発しましょう。
必ず持っていきたいもの
・飲み物(夏は多めに)
・行動食(夏は塩分を補給できるものも)
・登山用グローブ
・レインウェア
・帽子、タオル
・スマートフォン、モバイルバッテリー
・地図(紙地図、またはオフラインで確認できる地図アプリ)
・救急セット(絆創膏、常備薬など)
・ヘッドライト
あると便利なもの
・トレッキングポール
・クマ鈴、ホイッスル
・虫よけスプレー
・日焼け止め
・携帯トイレ、ゴミ袋
・エマージェンシーシート
岩殿山で特に役立つのが登山用グローブです。鎖やロープ、岩をつかむ場面が多く、手のひらに滑り止めが付いたタイプなら、握りを補助し、擦り傷も防ぎやすくなります。
岩殿山登山のよくある質問

岩殿山の難易度や所要時間、短時間で山頂を目指す方法など、計画を立てるときに気になる点をまとめました。
Q. 岩殿山の登山難易度はどのくらいですか?
A. 標高は634mと低いものの、紹介した周回コースには、稚児落としの切り立った岩場、兜岩付近のロープを頼りに進む急斜面の迂回路、兜岩の先のほぼ垂直の鎖場など、手足を使って慎重に歩く区間があります。このうち兜岩の先の鎖場は、紹介コースの向きでは下りで通過する区間で、分岐で林間の巻き道を選ぶと避けられます。
Q. 登山経験が少なくても岩殿山に登れますか?
A. 周回コースは岩場・鎖場・ロープ場を含むため、登山経験が少ない場合は、天候が安定して岩や地面が乾いている日を選び、時間に余裕を持って計画しましょう。滑りにくい登山靴と登山用グローブを用意し、鎖場では林間の巻き道を選ぶなど、無理をしない歩き方が大切です。岩場の歩行に不安がある場合は、経験者と一緒に歩くか、畑倉登山口や強瀬登山口から山頂を往復する登り方も検討してください。
Q. 岩殿山の周回コースの所要時間はどのくらいですか?
A. 大月駅から稚児落とし・兜岩を経て山頂に登り、畑倉登山口から大月駅に戻る周回コースは、取材時に休憩を含めて約6時間かかりました。山と高原地図のコースタイムは、逆回り(畑倉登山口から登り、稚児落としを経て下る)で3時間50分です。写真撮影や休憩の時間、岩場で慎重に歩く時間を含め、余裕を持って計画しましょう。
Q. 短い時間で岩殿山の山頂だけを目指すことはできますか?
A. 稚児落としを経由しない登り方もあります。大月駅から徒歩約15分の強瀬登山口からは、丸山公園を経て、落石箇所を西側に迂回する新しい登山道で山頂へ向かえます。新しい登山道は日の出から日没までの利用が推奨されており、傾斜があり滑りやすい箇所もあります。また、紹介コースで下山に使った畑倉登山口から山頂を往復する方法もあり、登山口から山頂までは約40分が目安です。
Q. 岩殿山の登山に適した季節はいつですか?
A. 気温が穏やかな春や秋が歩きやすい時期です。夏は低山のため気温が高くなりやすく、取材時の8月下旬は最高気温が30℃前後でした。飲み物を多めに持ち、こまめに水分・塩分を補給しましょう。冬は凍結や積雪で岩場の危険が増すことがあり、日没も早いため、早めに歩き始める計画が必要です。
Q. 岩殿山で通行止めになっている登山道はありますか?
A. 強瀬側の登山道のうち、岩殿山ふれあいの館から稚児落とし方面への分岐までの旧道は、鏡岩からの落石のおそれがあるため通行禁止です。強瀬登山口からは、この区間を西側に迂回する新しい登山道で山頂へ登れます。また、兜岩を横切るトラバースルート(鎖場)は足場の崩落により通行できないため、林間の迂回路を利用します。状況は変わることがあるため、出発前に大月市の登山情報で最新の情報を確認し、現地の案内表示に従ってください。
岩殿山登山は規制情報と岩場への備えを確認して計画を

岩殿山の周回コースは、大月駅から歩いて登り始められ、稚児落としの大岩壁、兜岩付近の岩場、岩殿城跡と山頂からの富士山の展望を一日でたどれます。一方で、標高634mの低山でも、ロープを頼りに進む迂回路や鎖場があり、通行止めの区間もあります。
出発前には大月市の登山情報で通行止めの状況を確認し、登山用グローブや滑りにくい登山靴を準備しましょう。鎖場に不安がある場合は林間コースを選び、天候や日没の時刻にあわせて余裕のある計画を立てることが大切です。
市街地の分かりにくい分岐や、山中の分岐で現在地を確かめるには、登山地図アプリ「ヤマチズ」が役立ちます。計画したルートと現在地を地図上で確認しながら歩けるので、岩殿山の周回コースを歩く際にも活用してみてください。
【もしもの時のために・・・】紙地図も携行しよう
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専門家の現地調査による情報をわかりやすく表示
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