尾瀬ヶ原ハイキング完全ガイド 秋の湿原と至仏山・燧ヶ岳を歩く絶景コース

四季折々の絶景を楽しめる日本屈指の湿原、尾瀬ヶ原。春のミズバショウや夏のニッコウキスゲが有名ですが、秋には草紅葉に包まれ、木々も色づく美しい風景が広がります。

標高1,400mの高原に広がる湿原を、至仏山と燧ヶ岳という2つの名峰に抱かれながら歩くハイキングは、初心者からベテランまで幅広い層に人気。木道が整備され、歩きやすいルートが多いため、登山デビューを終えた人にもぴったりのフィールドです。

この記事では、鳩待峠を起点に尾瀬ヶ原をぐるりとめぐる王道ルートを、紅葉シーズンの写真とともに詳しくガイド。アクセス方法や歩行距離、持ち物チェックリストまで、尾瀬ヶ原ハイキングを楽しむためのポイントをまとめました。

秋の尾瀬で、心に残る絶景ハイキングを満喫しましょう!

2025年4月28日 更新

尾瀬ヶ原ハイキングの魅力とアクセス方法

 

標高約1,400mに広がる尾瀬ヶ原は、本州最大級の高層湿原。東西約6km、南北約2.5kmにもおよぶ広大な湿原は、国立公園にも指定され、日本を代表する自然景勝地のひとつです。

特徴は、豊かな生態系と四季折々の美しい景観。特に秋は、湿原の草紅葉が黄金色に染まり、周囲の山々――の紅葉とともに、尾瀬ならではの絶景を楽しめます。

湿原の中には木道が整備され、標高差も少ないため、初心者でも安心してハイキングできるのが魅力。誰もが憧れる「はるかな尾瀬」の世界を、ゆったり歩きながら体感することができます。

尾瀬ヶ原へのアクセス方法アクセス方法

尾瀬ヶ原ハイキングの起点となるのが「鳩待峠」です。

公共交通機関を利用する場合

新宿駅・池袋駅などから「尾瀬戸倉行き高速バス」でアクセス可能。尾瀬戸倉からは、乗合バス(シャトルバス)に乗り換えて鳩待峠へ(所要時間:約25分)。

車を利用する場合

関越自動車道「沼田IC」から約1時間で尾瀬戸倉へ。尾瀬戸倉周辺の有料駐車場に車を停め、シャトルバスに乗り換えます(鳩待峠までバスで約25分)。

バス利用時のポイント
・尾瀬戸倉〜鳩待峠間はマイカー規制があるため、必ずシャトルバスを利用。
・鳩待峠発の最終バス時間を事前に確認して、下山計画を立てましょう!

尾瀬ヶ原ハイキングの魅力とアクセス方法

尾瀬ヶ原のハイキングは、標高1,591mの鳩待峠をスタートし、湿原の中心部をゆったり歩くコースです。木道が続く平坦な道が中心で、至仏山や燧ヶ岳を眺めながら自然の大パノラマを満喫できます。

歩行距離は約17km、所要時間は休憩込みで7〜8時間が目安。適度なアップダウンはありますが、しっかり準備すれば初心者でも楽しめるルートです。

今回歩く尾瀬ヶ原ハイキングコース

【スタート】鳩待峠 ⇒(1時間)⇒ 山ノ鼻 ⇒(30分)⇒ 逆さ燧池塘 ⇒(20分)⇒ 牛首分岐 ⇒(40分)⇒ 竜宮 ⇒(30分)⇒ ヨッピ吊橋 ⇒(50分)⇒ 牛首分岐 ⇒(30分)⇒ 逆さ燧池塘 ⇒(30分)⇒ 山ノ鼻 ⇒ (1時間20分)⇒【ゴール】鳩待峠
※休憩を含まない場合の参考タイムです

鳩待峠から山ノ鼻へ|紅葉に染まる森を歩く

  

ハイキングのスタート地点、鳩待峠(標高1,591m)は、すでに爽やかな高原の空気に包まれています。ここから尾瀬ヶ原の入口である「山ノ鼻」まで、標高差約190mをゆるやかに下っていくコースです。

道はよく整備されており、木道や石畳の登山道が続きます。所要時間はおよそ1時間。鳩待峠の登山口にはトイレや小さな売店もあるので、出発前にしっかり準備しておきましょう。

  

秋の尾瀬は、まさに錦秋の世界。ダケカンバ、カエデ、ミズナラ、ブナなどが色づき、森全体が赤や黄色に輝きます。

木立の間から差し込む柔らかな陽光が、黄金色に染まった葉を照らし、歩くたびに心が弾む景色が続きます。ところどころにベンチも設置されているので、立ち止まって紅葉をゆっくり楽しむのもおすすめ。

緩やかな下りとはいえ、帰りはこの道を上り返すことになるので、体力を考えながら無理のないペースで歩きましょう。足元はところどころ湿っている場所もあるため、滑らないように注意してください。

約1時間の森歩きを満喫すれば、視界が一気に開ける山ノ鼻エリアへ到着します。

山ノ鼻で休憩&ビジターセンター立ち寄り

 

森を抜けて山ノ鼻に到着すると、まず目に飛び込んでくるのが「尾瀬山ノ鼻ビジターセンター」。ここは尾瀬ヶ原の玄関口ともいえる場所で、ハイキング前に立ち寄りたいスポットです。

 

館内には、尾瀬の自然や歴史に関する展示、季節の見どころ情報、動植物に関する解説パネルが豊富に揃っています。紅葉の進み具合や木道の状況など、最新情報を確認できるので、散策前にぜひチェックしておきましょう。

さらに、尾瀬に生息する熊に関する注意喚起や、保護活動の取り組みについても紹介されています。マナーを守り、自然に優しいハイキングを心がけたいですね。

山ノ鼻エリアには、トイレや休憩ベンチ、テント場などの施設も整っています。特にここから尾瀬ヶ原へ進むと、竜宮小屋までトイレがないため、必ずここで済ませておきましょう(チップ制:100円程度)。

また、テント場脇にある水場では、尾瀬の天然水を補給することも可能です。水分は十分に携帯し、こまめに水分補給しながらハイキングを楽しみましょう!

もし時間に余裕があれば、山ノ鼻の山小屋でランチ休憩もおすすめです。季節の山菜料理や、地元食材を使ったメニューで、尾瀬ならではの味覚を堪能できますよ。

錦秋の尾瀬ヶ原ハイキング|至仏山と燧ヶ岳を仰ぎながら

 
至仏山 

山ノ鼻から尾瀬ヶ原に一歩踏み出すと、そこには日本を代表する名峰、西に至仏山(しぶつさん)、東に燧ヶ岳(ひうちがたけ)という2つの巨峰に抱かれた、特別な景観が広がります。

 
燧ヶ岳 

広大な湿原を縫うように延びる木道を歩きながら、まず目指したいのが「逆さ燧(さかさひうち)」と呼ばれる絶景スポット。

池塘(ちとう/湿原に自然にできた池)の水面に、雄大な燧ヶ岳が映り込む光景は、まるで鏡の世界に迷い込んだかのよう。特に風のない朝には、水面がまったく乱れることなく、逆さに浮かぶ山容をはっきりと映し出します。

 
逆さ燧

秋には湿原一帯が黄金色に染まり、空の青、山の緑、池塘の鏡面が織りなす、三重奏のような美しさに心を奪われます。ここではぜひ足を止めて、五感で尾瀬ヶ原の秋を味わってみてください。

さらに木道を歩き進めると、尾瀬ヶ原の中心地「牛首(うしくび)分岐」へ。左右に枝分かれする木道が広がるこの場所は、ハイキングルートのちょうど中間地点。山ノ鼻からはおよそ1時間、緩やかなアップダウンはあるものの、ほぼフラットな道のりが続き、初心者でも安心して歩くことができます。

道中では、赤く色づいたヤマドリゼンマイや、黄金色に輝くミズナラの木々が目を楽しませ、秋ならではの美しい尾瀬ヶ原を満喫できます。牛首分岐にはベンチも設置されているので、ここで一息つき、今後のルートについて相談するのも良いでしょう。

日帰りの場合は、牛首分岐で折り返して鳩待峠まで戻ると、全長約11㎞の道のりとなります。体力に不安がある方は、このあたりで引き返すのがおすすめです。

 
下ノ大堀川のビュースポット

また、牛首分岐からさらに1㎞ほど足を延ばすと、尾瀬で最も有名な景勝地のひとつである下ノ大堀川のビュースポットがあります。ご自身の体力とよく相談して、先に進むかどうかを決めてみてください。

竜宮十字路からヨッピ吊橋へ|秋色の木道を堪能


龍宮小屋

牛首分岐からさらに木道を進み、40分ほど歩くと「竜宮(りゅうぐう)十字路」に到着します。ここは尾瀬ヶ原を東西南北に交差する木道の中心地点。小さな山小屋「龍宮小屋」があり、休憩やトイレ利用も可能です。

 竜宮現象

このエリアの名前の由来にもなっているのが「竜宮現象」。湿原の地下を水が流れ、地表の一部から湧き出している独特な現象で、湿原を流れる川が地面に消えたり、また別の場所で湧き出したりしている様子は、まさに神秘的。自然の不思議な営みを肌で感じることができます。


白虹

竜宮十字路では、湿度が高くよく晴れた早朝に、珍しい白色の虹を見られることがあります。これは霧の粒子が細かいため、七色ではなく白色に見える現象。「龍宮小屋」に宿泊すれば、「白虹」を撮影できるチャンスも。

 
10月頭のヤマドリゼンマイの紅葉

竜宮十字路からヨッピ吊橋方面へ足を進めると、尾瀬ヶ原のさらに奥深い自然が広がります。秋には周囲一面にヤマドリゼンマイが群生し、あたりは燃えるような赤色に染まり、まるで美しい絵画の中を歩いているかのような気分に包まれます。

 ヨッピ吊橋

30分ほど歩くと、大きな吊り橋「ヨッピ吊橋」が見えてきます。この吊橋は、猫又川と川上川という2つの川の合流地点に架かっており、ヨッピ吊橋を渡りそのまま歩くと東電小屋へたどり着きます。

池塘に映る逆さ燧とニッコウキスゲ群生地

 
7月くらいの時期で早朝に行くと逆さダイヤモンド燧ヶ岳の景色も楽しめ

今回は吊り橋を渡らず左側へ曲がり、牛首分岐方面へ折り返します。この途中にある小さな池塘(ちとう)からも、タイミングが合えば「逆さ燧」を見ることができます。

風のない朝に水面が鏡のように静まり返ると、燧ヶ岳(ひうちがたけ)がくっきりと水面に映り込む美しい光景が現れます。

さらに10分ほど歩くと、鹿の食害から植物を守るために設けられた「植生保護柵」が現れます。この柵の中では、尾瀬ヶ原の自然を取り戻す取り組みが進められており、季節によって様々な草花の群生を観察できます。

 
ニッコウキスゲの黄色い絨毯

特に夏の見どころは、ニッコウキスゲの群生。7月上旬頃には、黄色い花が湿原いっぱいに咲き誇り、かつての尾瀬の美しい姿が蘇ったかのような景色が広がります。

秋の紅葉シーズンには草紅葉や枯れた花々が湿原に静かな彩りを添え、また違った趣を感じさせてくれます。生き物たちの営みと、自然再生の息吹をそっと感じながら、歩みを進めましょう。

牛首分岐から山ノ鼻・鳩待峠へ|紅葉の森を戻る

 

牛首分岐まで戻ってきたら、ここからは往路と同じルートで鳩待峠へと戻ります。名残惜しいですが、振り返ればまだまだ尾瀬ヶ原の絶景が広がっています。

湿原越しに望む至仏山や燧ヶ岳の雄姿を目に焼き付けながら、ゆっくり歩きましょう。風に揺れる草紅葉や、色づき始めたダケカンバの葉が、秋ならではの風情を演出してくれます。

木道の上を歩くときは、浮かれて転ばないよう注意を。特に朝露や前日の雨で濡れていると滑りやすくなっています。時々立ち止まって、秋色に染まる湿原の空気を胸いっぱいに吸い込んでください。

山ノ鼻に到着したら、トイレ休憩や水分補給を済ませて、最後の登りに備えましょう。鳩待峠までは約1時間、標高差約190mを一気に登り返す行程が待っています。

登りはじんわりと体に堪えるため、最初からペースを落として、無理せずこまめに息を整えながら進むのがコツ。木漏れ日が差す森の中、秋の澄んだ空気を感じながら、ひと歩きごとにゴールが近づいてきます。

そして、鳩待峠の建物やバス乗り場が見えてきたらフィニッシュです。お疲れ様でした!

ゴール後は、バスの時間に余裕を持って移動できるよう、事前に確認しておくと安心です。バス最終便に間に合わないときは、タクシーを呼ぶ必要があるので注意しましょう。

尾瀬ヶ原ハイキングの服装・持ち物チェックリスト

 

秋の尾瀬ヶ原は天候が変わりやすく、朝晩は冷え込みます。しっかりと装備を整えて、安全・快適なハイキングを楽しみましょう!

服装

・歩きやすい登山靴(防水性があるとベター)
・動きやすい服装(速乾性シャツ+長ズボン)
・フリースや薄手のダウン(休憩時の冷え対策)
・レインウェア上下(急な雨や防寒に)
・帽子(紫外線・雨対策)
・手袋(朝晩冷える日用)

持ち物

・小型リュック(20〜30L目安)
・飲料水(1〜2リットル推奨)
・行動食(おにぎり、エネルギーバーなど)
・携帯トイレ(緊急時用)
・地図(アプリ or 紙)
・日焼け止め
・虫よけスプレー

尾瀬ヶ原ハイキングで四季折々の絶景を楽しもう

 

秋の尾瀬ヶ原は、黄金色に染まる湿原と至仏山・燧ヶ岳の絶景が広がる特別なシーズン。木道が整備され、初心者でも安心して歩けるハイキングコースが揃っています。

今回ご紹介した鳩待峠発着の周回コースは、約17kmとやや長めですが、紅葉や池塘の景色を堪能しながら無理なく楽しめます。

服装や持ち物をしっかり準備して、計画的に歩き、秋の尾瀬ヶ原を思いきり満喫しましょう!

今回歩いた尾瀬ヶ原ハイキングコース

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【スタート】鳩待峠 ⇒(1時間)⇒ 山ノ鼻 ⇒(30分)⇒ 逆さ燧池塘 ⇒(20分)⇒ 牛首分岐 ⇒(40分)⇒ 竜宮 ⇒(30分)⇒ ヨッピ吊橋 ⇒(50分)⇒ 牛首分岐 ⇒(30分)⇒ 逆さ燧池塘 ⇒(30分)⇒ 山ノ鼻 ⇒ (1時間20分)⇒【ゴール】鳩待峠
※休憩を含まない場合の参考タイムです

 
執筆・写真:山と高原地図14尾瀬 坂上修司

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