登山で初めてのテント泊 宿泊する際のルールとマナー

衣食住すべてを自分で背負って歩く「テント泊登山」は、自然との距離が最も近くなる登山スタイルのひとつです。

山の静けさ、星空、鳥の声、そんな原始的な時間を体感できる一方で、必要な装備や行動計画、ルールやマナーに対する理解も欠かせません。

この記事では、初めてテント泊をする登山者に向けて、基本的な装備の考え方からテント場のルール、当日の行動スケジュールまで、実用的な情報をまとめています。

2025年5月29日 更新

テント泊登山の魅力とは?自然を満喫できる贅沢な過ごし方

自然の中で、自分だけの時間を過ごす贅沢、それがテント泊登山の魅力です。山小屋泊では味わえない自由を求めて、近年注目を集めています。

テント泊登山とは?その魅力と醍醐味

テント泊登山とは、自分でテントや寝具、食料などを背負い、山中でテントを張って泊まるスタイルの登山。最大の魅力は、誰にも邪魔されない「自分だけの時間」です。

山小屋のように決まったスケジュールや共有スペースに縛られることもなく、自由な過ごし方ができます。気の合う仲間と焚き火を囲んだり、夜空を眺めて一人きりの時間に浸ったり――山とじっくり向き合う、贅沢なひとときがそこにはあります。

軽装では行けない、だからこその満足感

自由には、装備の重さという代償があります。テント、寝袋、マット、調理道具、水、食料……装備は山小屋泊よりも格段に多く、ザックは10〜15kgになることも。一方で、宿泊費を抑えられるメリットも。なにより、自分で用意した空間で眠るという体験には、達成感と安心感があります。

テント泊にもルールとマナーはある

テントは、指定された「テント場」にしか設営できません。環境保護や安全管理の観点から、自由な場所での設営は禁止されています。テント場の多くは山小屋が管理しており、利用には受付と料金支払いが必要です。近年は予約制を導入する場所も増えており、事前確認は欠かせません。

装備を背負って歩き、静寂の中で過ごす夜。テント泊登山は、自由と自然の豊かさを全身で味わえる登山スタイルです。最初は大変に感じるかもしれませんが、自分で用意した食事や空間に癒される夜の心地よさは、他には代えがたい体験です。

登山初心者におすすめのテント場と選び方のポイント

はじめてのテント泊では、以下の条件を満たす場所を選ぶことで、安心して経験を積むことができます。
•登山口から距離が近く、アプローチが容易

•水場やトイレなどの設備が整っている

•周囲に山小屋や管理者が常駐している

•標高や天候の変化が比較的穏やか

おすすめテント場例

雷鳥沢キャンプ場(立山・北アルプス)
温泉施設が徒歩圏内にあり、初めてでも安心。雄大な立山連峰を望む開放感も抜群です。

長衛小屋キャンプ場(南アルプス北沢峠)
バスでアクセスできる高地キャンプ地で、甲斐駒ヶ岳や仙丈ヶ岳へのベースに最適。整備状況も良く、登山初心者に人気です。

こうしたテント場では、重い荷物を一度テント場に置いてから、軽装で山頂を目指す「ベースキャンプ型登山」が定番です。無理なく標高差をこなせるので、体力面でも安全です。

テント泊登山で守るべきルールとマナーを徹底解説

自然環境と他の登山者に配慮した行動が、快適な山の時間を守るカギになります。以下のルールとマナーは必ず意識しましょう。

指定地以外の設営はNG

フリーサイトでは、自分で場所を選べますが、傾斜やくぼみを避け、雨水が流れ込まない場所を選ぶのが基本です。小石や枝はテントを傷つけたり、寝心地を悪くする原因になるので、除去してから設営を。

区画サイトでは割り当てられた場所での設営を厳守し、隣のサイトに物を広げないよう気をつけましょう。

夜は静かに過ごそう

テント場に明確な消灯時間はありませんが、20時以降は就寝する人が増えるため、静音行動が求められます。音楽の再生や通話は控えめに。ヘッドライトも、周囲の目を気にして使用する方向を考慮しましょう。

ゴミは残さずすべて持ち帰る

登山道やテント場は「来たときよりも美しく」を合言葉に。とくに自炊をすると包装材や燃料パック、残飯などのゴミが増えがちです。持ち帰り用の密閉袋(防臭袋など)を活用し、万が一テント内に野生動物が近づいても、匂いが出ないよう工夫しましょう。

初めてのテント泊登山で知っておきたい過ごし方の流れ

行動の流れをイメージしておくと、現地で慌てることなく快適に過ごせます。

15:00 到着

天候や交通状況によっては遅れがちになる時間帯。到着が遅いとテントを張る場所がなくなってしまうこともあるので要注意。

15:15 受付

受付所で名前と人数を伝え、利用料を支払います。受け取った受付済証(タグや札など)は、外から見えるようにテントへ取り付けましょう。

15:30 設営

地面の傾き・風向き・水はけを確認し、テントを張る位置を決定。ペグが効きにくい場所では、石を活用するなど柔軟に対応を。ガイロープの張り方やテンション調整も安全確保に直結します。

16:00 夕食作り

調理は明るいうちに。燃料や食材の残量に注意し、片付けまで見越して行動するのがポイント。周囲への匂い配慮も忘れずに。

20:00 就寝

シュラフやマットの調整をして、快適な睡眠環境を整えましょう。耳栓やアイマスクがあると、テント泊特有の音や光を軽減できます。

5:00 起床・朝食

出発が早い場合、周囲に配慮しつつ静かに準備を進めます。ヘッドライトは赤色モードにするなど、細やかな気遣いが求められます。

7:00 撤収

テント内に忘れ物がないか、ゴミが落ちていないかを丁寧に確認。地面をならしてから出発するのが、次の人への思いやりです。

はじめてのテント泊に不安がある方へ、登山の基本をやさしく学べる一冊

「テントはどこに張ればいい?」「どんな装備が必要?」「食事やトイレはどうするの?」──テント泊登山には、山小屋泊とは異なる準備やマナーが求められます。初めて挑戦する人にとっては、不安や疑問も多いものです。

そんなときに役立つのが、『山と高原地図ではじめる 山登り入門ガイド』。本書では、テント泊を含む登山スタイルの違いや装備の選び方をはじめ、歩き方の基本、天気への備え、地図の読み方まで、登山の基礎を写真や図解でやさしく解説しています。

「テント泊にも挑戦してみたい」「山の自然を自分のペースで楽しみたい」──そんな方にとって、心強い入門書となるはずです。

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テント泊登山は準備とマナーがカギ 次の山行で挑戦しよう

テント泊登山は、山の魅力をより深く味わえる経験です。必要な準備とマナーを守ることで、自然への負荷を最小限にしながら、安全かつ快適に楽しむことができます。

最初の一歩は、アクセスしやすく管理の行き届いたテント場から。経験を重ねれば、より高度な山域や長期縦走にも挑戦できるようになります。

心と体を自然に委ねるテント泊登山。あなたも、次の登山で一度体験してみませんか?

記事中イラスト:ホシノアンリ
【WEBサイト】https://starlit-design.com/
【Instagram】@anri_hoshino
【X】@starlit_design

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