埼玉の避暑地・秩父エリアにある宝登山(ほどさん)は、首都圏からのアクセスも良く、初心者や子供連れでも快適に登れる、日帰り登山にはうってつけの山です。
本記事では、宝登山の魅力や、通称「長瀞アルプス」を歩く日帰り登山コースをご紹介。四季折々の美しい花々を見ながら山頂を目指しましょう。
宝登山について

春にはロウバイが美しい
埼玉県秩父郡長瀞町に位置する宝登山(ほどさん)は、標高497mと比較的低く、整備された登山道があることから、登山初心者や子供連れでも安心して歩ける人気の山です。最寄りの秩父鉄道・長瀞駅からアクセスしやすく、日帰りで自然を満喫したい方にはぴったりの立地です。
その美しさは古くから知られており、約1,900年前、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の帰りに山頂を目指したという言い伝えも残る歴史ある場所。山頂近くには宝登山神社の奥宮もあり、パワースポットとしても知られています。
春のロウバイや梅、夏の新緑、秋の紅葉と、四季を通して花や自然を楽しめるのも大きな魅力。登りきった先には、秩父連山や秩父盆地を一望できる開放的な展望が広がり、登山の達成感をしっかり味わえます。
宝登山へのアクセス

長瀞町役場駐車場 写真:古郡充彬
宝登山登山の出発地点となる「長瀞アルプス登山口」へは、車・電車どちらでもアクセスしやすく、日帰り登山の計画が立てやすいのが魅力です。
車でアクセスする場合
長瀞町役場駐車場から長瀞アルプス登山口まで徒歩10分
最寄りの駐車場は「長瀞町役場駐車場」。ここから登山口までは徒歩約10分と便利な立地です。関越自動車道・花園ICから国道140号線を経由し、車で約30分。利用の際は「駐車場利用協力金」として1台300円の支払いが必要です。
公共交通機関でアクセスする場合
秩父鉄道・野上駅から徒歩約10分で登山口にアクセス可能。東京方面からは池袋駅より西武鉄道・秩父線で寄居駅へ、そこから秩父鉄道に乗り換えるルートが一般的です。乗り換えの所要時間は含めて約2時間弱と、日帰り登山にも適した距離感です。
宝登山・長瀞アルプス登山コース 初心者向けの尾根歩きルート

※国土地理院「地理院地図(電子国土Web)」を元に作成
宝登山の「長瀞アルプスコース」は、雑木林や尾根道をたどりながら宝登山山頂を目指す、初心者にも歩きやすい登山ルートです。道中はアップダウンも緩やかで、道しるべも整っており安心。最後は木製階段を登って山頂へ。秩父の絶景と四季の自然を気軽に楽しめる日帰りコースです。
・上り/長瀞アルプス登山口~宝登山山頂、下り/宝登山山頂~長瀞駅
標高:467m
・比高:284.4m
・総歩行時間:上り/約2時間30分、下り/約1時間
・おすすめ時期:ロウバイが見ごろの1月中旬〜2月中旬、または紅葉の11月中旬頃
宝登山の登山コース「長瀞アルプス」情報
【START】長瀞アルプス登山口(萬福寺すぐ) ⇒(40分)⇒天狗山分岐⇒(40分)⇒氷池分岐⇒(20分)⇒野上峠⇒(10分)⇒小鳥峠⇒5>分⇒なら沢峠⇒45分⇒宝登山⇒(1時間15分)⇒【GOAL】長瀞駅
※時間はあくまで目安です
宝登山へ日帰り登山スタート

長瀞アルプス登山口から木立の中へ 写真:古郡充彬
長瀞町役場駐車場を出発し、静かな住宅街を10分ほど歩くと、「長瀞アルプス登山口」の標識が見えてきます。登山口はわかりやすい位置にあり、道を間違える心配もありません。道中には公衆トイレもあるので、登山前に立ち寄っておくと安心です。

最初はなだらかなトレッキングコース 写真:古郡充彬
登山口を入ると、やわらかな光が差し込む雑木林の小径が始まります。足元はふかふかとした土の道で、序盤は緩やかな登りが続きます。途中にはロープが設けられた短い斜面もありますが、ゆっくり進めば問題なく通過できます。
その先は、ところどころで視界の開ける尾根道へ。全体を通して急な上りは少なく、歩きやすいアップダウンが中心です。足を止めて深呼吸したり、水分をこまめに取りながら、自分のペースで進んでいきましょう。

登山道で見つけたタマゴタケ 写真:古郡充彬
秋の宝登山では、栗やキノコといった季節の恵みに出会えることも。写真は「タマゴタケ」という食用キノコで、森の中でひときわ目を引く存在です。ただし、見た目がよく似た猛毒のベニテングタケと間違えやすいため、絶対に触らないようにしましょう。もちろん、山のものは採らずに眺めて楽しむのが基本です。

道中の道しるべを確認しながら先へ進もう 写真:古郡充彬
「長瀞アルプス登山口」から1時間ほど歩いたところに分岐の看板が出てきます。「宝登山」方面へ向かって歩きましょう。途中で私有地を通りますので募金を忘れずに。募金箱は道中に設置されています。やがて、野上峠に差し掛かります。
宝登山名物!200段の木製階段に挑戦
しばらく歩いて小鳥峠をすぎると、ふいにアスファルトの道へ。舗装路を500mほど進んだ先に「宝登山登山口」の標識が現れたら、いよいよ最後の山場に差し掛かります。ここから山頂までは、約200段の木製階段が続くラストスパートです。

頂上前の最後の山場の急階段 写真:古郡充彬
段差のひとつひとつは決して大きくありませんが、疲れがたまった体にはなかなか手ごわい登り。とはいえ、階段の途中にも木立があり、木漏れ日のなかで一息つきながら、焦らず登れば自然と景色は開けてきます。

両神山や奥秩父の絶景が広がる 写真:古郡充彬
そしてついに階段をのぼりきると、視界いっぱいに広がるのは、秩父連山と秩父盆地を見渡す絶景。天気がよければ、遠く奥秩父の両神山(りょうかみさん)までくっきりと望めます。疲れが吹き飛ぶ絶景ポイントです。広場には丸太のベンチが点在し、春にはロウバイの花が彩りを添えます。心地よい風に吹かれながら、達成感を噛みしめつつ休憩をとるのにぴったりの場所です。季節によっては、空の青さと山の緑が鮮やかに映え、写真に残したくなるような風景が広がります。
宝登山からの下山はロープウェイでも!ご褒美観光で締めくくろう

下山途中に現れる道しるべ 写真:古郡充彬
山頂での景色を堪能したあとは、長瀞駅方面へと下山します。歩きやすい道が続くので、体力に余裕があればそのまま徒歩で下るのがおすすめ。道沿いには道しるべが設置されており、迷う心配はほとんどありません。
一方で、登りの疲れが残っている場合は、ロープウェイでの下山という選択肢もあります。山頂から「宝登山頂駅」までは徒歩約5分。そこから麓の「宝登山麓駅」までは、わずか5分の空中散歩です。料金は片道630円(大人)で、時間も節約できます。

宝登山頂駅から宝登山麓駅までは5分程度、片道630円 写真:古郡充彬
徒歩での下山ルートを選んだ場合、宝登山麓駅まではゆっくり歩いて約50分。足元に注意しつつ、自然の静けさを味わいながら進みましょう。

寳登山神社下社
ロープウェイの宝登山麓駅の近くには金運のご利益があると名高い寳登山神社(ほどさんじんじゃ)があります。絢爛豪華な拝殿が立ち、美しい彫刻なども見られる神社です。時間があれば、ぜひ境内をゆっくり歩いてみましょう。

阿左美冷蔵のかき氷
駅までの道中も立ち寄りたいスポットがたくさん。かき氷の名店・阿左美冷蔵で疲れた体を癒すも良し、温冷浴ができる新木鉱泉(あらきこうせん)でクールダウンするも良し、はたまた洋食の名店「駅馬車」で舌鼓を打つのも良し。朝早く出発して登山を満喫したあとは、ぜひ長瀞観光も楽しんでみてください。

タイミングが良ければ見られる長瀞駅発着のSL列車 写真:古郡充彬
長瀞駅では、タイミングが合えばSL列車の発着シーンに出会えることも。蒸気をあげてゆっくりとホームに入る姿には、どこか懐かしさと旅情が漂います。登山の余韻に浸りながら、最後にもうひとつ思い出を重ねられるかもしれません。
長瀞駅からは、秩父鉄道で1駅戻って「野上駅」へ向かえば、スタート地点にある長瀞町役場駐車場まで歩いて10分ほどで到着します。時間にゆとりがあれば、駅から町なかを散策しつつ、徒歩で戻るのもおすすめ。長瀞駅から駐車場までは、のんびり歩いて約30分の道のりです。
登って、眺めて、味わって。自然と町の魅力がほどよく交わる宝登山は、登山初心者にもやさしい、満足度の高い日帰り登山スポットです。
四季の自然と展望を楽しむ 宝登山の日帰り登山

紅葉の宝登山
秩父・長瀞エリアにある宝登山は、登山道の整備状況やアクセスの良さ、そして山頂からの見晴らしの良さが魅力の、気軽に楽しめる日帰り登山スポットです。
コースは、やさしい尾根道や木立に囲まれた林間歩きが続き、200段の階段を登りきれば秩父連山や両神山を望む大パノラマが広がります。春のロウバイや秋の紅葉など、季節ごとに変わる風景も宝登山の大きな魅力のひとつです。
帰路はロープウェイや徒歩を選べる柔軟さもあり、寶登山神社や長瀞の立ち寄りスポットまであわせて楽しめば、充実した登山と観光の一日になります。自然とふれあい、心身をリフレッシュする登山旅に、宝登山を選んでみてはいかがでしょうか。
TEXT:古郡充彬

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