南木曽岳登山で出会う原生林と清流 日本三百名山の魅力を歩く

長野県南木曽町に位置する「南木曽岳(なぎそだけ、標高1,679m)」は、日本三百名山のひとつで、堂々とした存在感を放つ名峰です。急な尾根を縫うように整備された登山道は、ハシゴや木道が連続する変化に富んだルートで、日帰りでぐるりと一周できる周回コースが魅力。所要時間は約4〜5時間で、初心者から中級者まで多くの登山者に親しまれています。

山頂は樹林帯に覆われながらも、展望台からは南アルプスや中央アルプス、恵那山(えなさん、標高2,191m)、御嶽山(おんたけさん、標高3,067m)といった名峰を一望。初夏の花々や秋の紅葉など季節ごとの表情も見逃せません。

下山後は、風情あふれる妻籠宿(つまごじゅく)や馬籠宿(まごめじゅく)、清流の美しい阿寺渓谷(あでらけいこく)など、周辺の観光も楽しめます。

2025年8月11日 更新

南木曽岳登山の魅力とアクセス情報 木曽の名峰を歩く


笹原と原生林が織りなす山頂周辺の山肌

「南木曽岳」は、木曽谷の南端に位置する標高1,679mの山で、原生林に覆われた豊かな自然が広がっています。かつては修験道(しゅげんどう)の修行の場でもあり、深い森や岩場が織りなす厳かな雰囲気が漂います。


ハシゴや木道が続く冒険心をくすぐる登山道

登山ルートは全長約6km、所要時間は日帰りで約4〜5時間。累積標高差は約1,000mにおよぶ本格的な山行で、ハシゴや木道が続く区間も多く見られます。初心者の方は、足元に気を配りながら慎重に登るようにしましょう。

南木曽岳登山口へのアクセス方法と駐車場案内


蘭登山口駐車場から登山道へ、右手はトイレ

主な登山口は「蘭(あららぎ)登山口」で、駐車場やトイレ(※紙はないので注意)など基本的な設備が整っており、アクセスの拠点として便利です。

東京方面から

中央自動車道を利用し、岡谷JCTから中津川方面へ。
最寄りの中津川ICまたは園原ICからは車で約50分〜1時間で蘭登山口駐車場に到着します。
公共交通利用の場合は、JR中央本線・南木曽駅からタクシーで約20分。
駅前からレンタサイクルやレンタカーを利用する方法もありますが、登山口までの道は勾配があるため、マイカーまたはタクシー利用が便利です。

名古屋方面から

中央自動車道・中津川ICまたは園原(そのはら)ICを利用し、約50分〜1時間。
最後は一部未舗装の林道を経て蘭登山口駐車場(標高約960m)に到着します。

南木曽岳登山コース概要 ハシゴと木道を越える周回ルート


一方通行でぐるっと一周ルートが設定されている

登山道と下山道が一方通行に設定されており、途中の分岐で異なるルートに分かれています。まず蘭登山口から入山し、登り専用ルート(登山道)を経て山頂へ。下山道を使い、周回ルートとして歩くことができます。

所要時間は約4〜5時間、整備された木道やハシゴ、岩場の迂回道を楽しみながら歩けます。道は明瞭で、案内板がしっかり設置されているので安心です。

コースタイム
蘭登山口駐車場→(約15分)→南木曽岳登山道入口→(約20分)→下山道分岐→(約1時間40分)→南木曽岳山頂→(約15分)→見晴台→(約20分)→摩利支天→(約1時間15分)→下山道分岐→(約15分)→南木曽岳登山道入口→(約15分)→蘭登山口駐車場

南木曽岳登山のスタート 蘭登山口から森と清流の道へ


標識に従って歩けば、15分ほどで蘭登山口へ

南木曽岳の登山は、蘭登山口駐車場からスタートします。歩き始めて15分ほどで林道の終点付近に到着し、登山口が現れます。案内板を確認したら、いよいよ山道へ。序盤は丸太橋や岩の多い登山道が続き、清らかな渓流と深い緑に囲まれた、癒しの区間です。


ここで登り専用ルートと下り専用ルートに分岐

しばらく登ると、「左:南木曽岳に至る/右:頂上からの下山道」と書かれた案内板が現れます。ここでは左の登り専用ルート(登山道)を選びましょう。


南木曽岳の修験道の信仰を物語る「金時ノ洞窟」

木曽五木のコウヤマキが生い茂る森を進むと、金時ノ洞窟など、巨岩が並ぶエリアへ入ります。岩場直登は禁止されており、迂回路の木道で安全に上ります。

つづら折りと展望の連続!南木曽岳の上り道


変化に富んだ登山道は、南木曽岳登山の醍醐味と言える区間

登り専用のルート(登山道)は、つづら折れの急坂に加えて、木道やハシゴ、階段が次々と現れる変化に富んだルートです。岩場には安全対策として木道が整備されており、足元に注意しながら慎重に進む必要があります。全体的に勾配がきつく、気を抜けない区間が続きます。


木々の合間からたおやかな山容の恵那山を望む

道中、木々の合間からは恵那山や中央・南アルプスの雄大な姿を望むことができ、眺望も魅力のひとつ。特に、大岩の上に設けられた展望スポットからの眺めは圧巻で、まるで空中散歩をしているような高度感が味わえます。


透き通った花弁が美しいサンカヨウ

初夏にはサンカヨウなどの可憐な花々が登山道を彩り、原生林の木陰は真夏でも涼しく快適です。


樹林帯の山頂標識を過ぎると、景色の開けた見晴台へ

山頂が近づくと道は次第に緩やかになり、開けた尾根へ。やがて見晴台が見えてくると、登頂の達成感とともに南木曽岳登山のクライマックスを迎えます。

見晴台から中央アルプスの大パノラマを望む南木曽岳山頂


圧倒的スケールで佇む中央アルプスを望む

南木曽岳の山頂は樹林に囲まれており、視界は限られていますが、少し進んだ先にある見晴台からは壮大な景色が広がります。ここからは御嶽山、乗鞍岳(のりくらだけ、標高3,026m)、恵那山をはじめ、南アルプス・中央アルプスの稜線を一望でき、天気が良ければ360度のパノラマが楽しめる絶景ポイントです。秋には紅葉が山肌を染め、冬には雪化粧をまとった山々が姿を現すなど、季節ごとの美しさも魅力です。


景色の良い見晴台は絶好の休憩スポット

山頂自体はそれほど広くはありませんが、ベンチや岩場など腰を下ろせる場所があり、休憩や軽食を取るには十分。風が吹くと標高の高さを実感するひんやりとした空気が感じられるため、薄手の防寒着があると安心です。

尾根道の先にそびえる岩峰・摩利支天からの絶景


山頂周辺の目印となっている「南木曽岳避難小屋」

山頂から少し下った場所には、小さな避難小屋が設置されており、突然の天候悪化時の緊急避難や休憩に利用できます。内部は簡素な造りで長時間の滞在には不向きですが、万が一の際には心強い存在です。


摩利支天からは息をのむパノラマが広がる

避難小屋を過ぎると、摩利支天(まりしてん、標高1,675m)方面へと続く尾根道に入ります。この区間は岩場や木道が点在し、変化に富んだ稜線歩きが楽しめる魅力的なルートです。摩利支天は展望の良さで知られる岩峰で、山頂の見晴台とはまた異なる角度から南木曽岳周辺の景色を望むことができます。春は新緑がまぶしく、秋には稜線が鮮やかな紅葉に包まれ、訪れる季節によって異なる表情を見せます。

冒険気分で歩く南木曽岳の下山道 慎重さも忘れずに


下り専用の道で下山へ。最後まで急勾配の道が続く

下山は、登りとは異なる下山道が整備されており、一方通行のため、すれ違いによる混雑がなく快適です。ルートは谷筋に沿っており、急な斜面が続くスリリングな道のりとなっています。


落差のある階段の区間は十分に注意して下ろう

木道や階段などの整備はされていますが、滑りやすい箇所や足元の悪い場所もあるため、気を抜かず慎重に歩くことが大切です。とはいえ、自然の中を縫うように進む道は変化に富み、下山でも冒険心をかき立てられます。


下り終えると、渓流のせせらぎに癒される

終盤には、しっとりとした広葉樹の森を抜ける静かなひとときが待っています。特に秋は黄金色に染まった木々と落ち葉の絨毯が広がり、足を進めるごとに季節の移ろいを感じられます。やがて林道と合流し、心地よい疲労感とともに登山口の駐車場へ。最後まで自然を堪能できる、余韻ある下山ルートです。

南木曽岳登山後に立ち寄りたい観光スポット

南木曽岳は下山後の観光スポットも充実しています。歴史情緒あふれる宿場町や清流の美しい渓谷など、登山の余韻をそのままに旅を続けられるのが魅力です。ここからは、登山とあわせて訪れたい周辺のおすすめスポットをご紹介します。

妻籠宿・馬籠宿 南木曽岳の山旅を彩る歴史のまち歩き


ノスタルジックな石畳の道が続く馬籠宿

南木曽岳登山の後には、中山道の宿場町・妻籠宿と馬籠宿の散策が人気です。江戸時代の面影を色濃く残し、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。脇本陣奥谷(わきほんじんおくや)・本陣・歴史資料館などの歴史施設や伝統工芸体験、五平餅やそばといった地元グルメも魅力です。


峠を挟んで山間集落の趣が残る妻籠宿

妻籠宿から馬籠宿までは、旧中山道をたどる約7kmのハイキングコースが整備されており、宿場の風情と峠越えの自然を同時に楽しめます。この道は「サムライ・トレイル」とも呼ばれ、歴史情緒あふれるルートとして外国人旅行者にも人気です。

阿寺渓谷 阿寺ブルーに癒される清流と緑の絶景スポット


「阿寺ブルー」と呼ばれる神秘の清流が待つ

南木曽町にある「阿寺渓谷」は、木曽川の支流・阿寺川がつくり出す美しい渓谷。透明度の高いエメラルドグリーンの水面は“阿寺ブルー”と呼ばれ、訪れる人を魅了します。新緑がまぶしい春〜夏、そして紅葉が彩る秋と、四季折々の景色が楽しめ、自然の中を気持ちよく歩ける癒しのスポットです。


「牛ヶ淵」で渓谷美と清流の美しさに感動!

遊歩道も整備されており、牛ヶ淵(うしがふち)や恋路の吊橋など見どころが多数。初心者でも安心して歩けるルートがあり、写真や休憩に絶好のスポットです。温泉宿や飲食店も近くにあり、登山と組み合わせて日帰り温泉や観光を満喫するモデルコースにも最適です。

阿寺渓谷
住所:長野県木曽郡大桑村野尻
TEL:0264-55-4566
公式HPはこちら

南木曽岳登山の魅力 絶景と歴史を味わう信州の山旅


思わず足を止める、中央アルプスの壮麗な稜線美

南木曽岳は、豊かな原生林と変化に富んだ登山道が魅力の山。ハシゴや岩場、木道を越えながら進むルートは、登山の醍醐味を存分に味わえる本格派のコースです。山頂直下の展望台からは、御嶽山をはじめ、南アルプス・中央アルプスまで見渡せる絶景が広がります。

下山後は、歴史情緒あふれる妻籠宿や馬籠宿を巡ったり、阿寺渓谷の澄んだ流れに癒されたりと、自然と文化の両方を楽しめる充実した旅を楽しめますよ。

1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部を卒業後、商社やメーカーで営業職を経験。2019年より複業でトラベルライターとしての活動を始め、旅の魅力を伝える仕事がライフワークになる。2021年には本業も旅行業界へ本格転身し、国内OTAにて宿泊施設の集客支援に従事。現在は旅行系ベンチャー企業でメディアマネージャーを務める。これまでに執筆した記事は2,000本以上。地方の自然や暮らしをテーマにした発信を続けながら、「旅を通じて人生が豊かになるきっかけ」を届けたいと考えている。登山、自転車旅、温泉巡り、離島旅が趣味で、毎年の北海道旅行を家族の恒例行事にしている。 notehttps://note.com/yuhei_tonosho
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