北横岳の雪山登山ガイド ロープウェイで行く初心者安心の樹氷と絶景の八ヶ岳冬ルート

八ヶ岳の一角にそびえる「北横岳(きたよこだけ、標高2,480m)」は、ロープウェイで標高2,200m付近まで一気に上がれるアクセスの良さから、雪山初心者にも人気の名峰です。
霧氷(むひょう)に彩られた坪庭や静かな樹林帯、山頂から望む大パノラマなど、冬ならではの絶景が手軽に楽しめます。必要な装備と準備を整えれば、安心して雪山の魅力を味わえる一日が待っています。
目次
北横岳が雪山初心者に人気の理由 樹氷と静けさに包まれる八ヶ岳の名峰

標高約2,230m付近まで運行している北八ヶ岳ロープウェイ
北八ヶ岳にそびえる「北横岳」は、雪山初心者にぴったりの山として多くの登山者に親しまれています。ふもとの北八ヶ岳ロープウェイを使えば、山頂まで片道約1時間10分の地点まで一気にアクセスできるのが魅力。歩行距離も短く、気軽に雪山の美しさと静けさを体験できる人気ルートです。

樹氷の木々が美しく幻想的な風景を見せてくれる
シラビソやコメツガの森に雪が降り積もり、木々は美しい樹氷(空気中の水分が過冷却で木々に付着する現象)に姿を変えます。その光景は、まるで別世界に迷い込んだかのよう。山頂付近では視界が開け、南アルプスや中央アルプス、そして八ヶ岳の山並みまで一望できます。澄みきった冬の空気が、その眺望をいっそう引き立ててくれます。
北横岳へのアクセス方法 ロープウェイで標高2,237mから始まる雪山登山

登山のハードルを下げてくれる通年運行のロープウェイ
登山前の玄関口となる北八ヶ岳ロープウェイは、長野県茅野(ちの)市の北山地区にある山麓駅(標高1,771m)から出発し、約7分で山頂駅(約2,237m)へ到着するアクセスの良さが魅力です。体力に自信のない方や雪山登山に慣れていない方でも、無理なくスタート地点に立てます。
山麓駅までのアクセス
公共交通機関:JR中央本線・茅野駅からアルピコ交通の路線バス「北八ヶ岳ロープウェイ行き」で約60分、終点下車。冬季は運行本数が少ないため、事前に時刻表を確認しておくと安心です。
車:中央自動車道・諏訪ICから国道152号経由で約50分。無料駐車場(約600台)があり、冬季は除雪されていますが、路面凍結に備えてスタッドレスタイヤやチェーンを用意しておくと安心です。

ロープウェイを降りたら、アイゼンを装着して出発
料金は往復で大人(中学生以上)2,600円、小学生約1,300円。装備チェックも含めて準備を整えてからロープウェイに乗るのがおすすめです。下車後すぐにアイゼンを装着し、すぐ雪道登山を開始できます。
北横岳の雪山ルート解説 短時間で絶景を満喫できる初心者向けコース

南アルプスと八ヶ岳主峰、坪庭を見渡す好展望
ロープウェイ山頂駅から始まる「北横岳」の雪山登山は、軽アイゼンとストックで安心して進めるコースです。標高差は約240m、往復の歩行距離はおよそ3.5kmとコンパクトで、雪道初心者にも適しています。
ルートは、坪庭の樹氷と溶岩台地の雪原を歩き、静かな樹林帯を抜けて北横岳ヒュッテへ。そこからは視界が開け、南アルプスや中央アルプス、八ヶ岳の峰々を望む山頂へと進みます。
澄みきった冬の空気が、山並みや雪景色の美しさをいっそう際立たせてくれます。ただし、冬季は日没が早く、15時前までの下山を目安に行動計画を立てましょう。
山頂駅→(約50分)→北横岳ヒュッテ→(約15分)→北横岳(南峰)→(約5分)→北横岳(北峰)→(約40分)→三ッ岳→(約40分)→雨池峠→(約30分)→縞枯山→(約40分)→茶臼山→(約1時間20分)→山頂駅
坪庭の雪化粧を歩く 樹氷と白銀の世界を満喫する遊歩道

木々と岩が織りなす独特の雰囲気の坪庭を進む
ロープウェイ山頂駅を降りてすぐに広がるのが、「坪庭」と呼ばれる溶岩台地です。雪に覆われた平原に一本の遊歩道が設けられ、樹氷の森を間近に感じながら歩ける幻想的な空間が広がります。周囲にはコメツガやシラビソの木々が立ち並び、厳冬期ならではの樹氷が織りなす別世界を楽しめます。

坪庭に積もった雄大な雪原を縫って歩く、圧巻のパノラマルート
登山者の姿も多く、道はしっかりと踏み固められていて迷うことはありません。目の前に広がる雄大な山々を仰ぎながら、雪を踏みしめて歩くひとときは格別。ふわふわとした雪の感触も、この季節ならではの魅力です。

風の通り道の坪庭には、雪をさらうように風が吹く
ときおり吹き抜ける冷たい風が、冬の八ヶ岳の厳しさを感じさせますが、防寒グローブを着け、フードをしっかり被れば快適に歩けます。ふと振り返ると、そこにはアルプスの整った稜線がくっきりと浮かび、冠雪したその姿に思わず足を止めて見入ってしまいます。
北横岳ヒュッテでひと休み 山頂目前の静かな雪山スポット

北横岳ヒュッテは、山頂まであと少しの合図
北横岳への登山道を進むと、標高約2,400m地点にある山小屋「北横岳ヒュッテ」にたどり着きます。北八ヶ岳ロープウェイの山頂駅からは、歩いて1時間ほど。ヒュッテの周りは開けた広場になっており、休憩ポイントとして立ち寄る登山者も多く見られます。

ひときわ存在感を放つ浅間山(あさまやま、標高2,568m)の山容を遠望
ただし、「北横岳ヒュッテ」は予約がない日は休館となるため、訪れる際は事前確認を。昼食や喫茶のサービスは行っていないので、食べ物や飲み物はロープウェイ乗車前に必ず準備しておくと安心です。晴れた日には、広場から浅間山(標高2,568m)や周囲の山並みを望むことができます。
北横岳山頂から望む雪山絶景 南峰・北峰の360度大パノラマ展望

やわらかな稜線が美しい北横岳の南峰
北横岳の山頂は南峰と北峰の2つに分かれており、まずは南峰に立ち、その後短い稜線をたどって北峰へ向かいます。どちらも視界が開け、蓼科山(諏訪富士)や北アルプス、八ヶ岳、さらに遠くには中央アルプスまで望める360度の大パノラマが広がります。

白銀の信州の山並みを一望する山頂の絶景パノラマ
雪をまとった稜線と透き通るような青空のコントラストは、冬ならではの美しさ。登頂の喜びを一層強く感じられる瞬間です。風が強く気温も低いため、防寒対策は万全に。山頂周辺の木々に付着する樹氷が、自然のつくり出す繊細な造形美を見せてくれます。
ここから先に紹介する縞枯山や三ッ岳への縦走は、起伏や岩場が多く、より雪山歩きに慣れた方向けのコースになります。時間と体力にゆとりがあり、アイゼンやストックの使用に慣れている場合に楽しめる行程です。
冬の北八ヶ岳をゆったり味わいたい方や、雪山が初めての方は、北横岳山頂で折り返すルートも十分に魅力があります。
北横岳から三ッ岳への雪山縦走 岩峰と白銀の展望が広がる変化に富んだ道

立ち枯れの森が広がる独特な景観の縞枯山
北横岳山頂から縞枯山(しまがれやま)方面へと続く縦走路は、立ち枯れの森や岩場、雪原など変化に富んだ景色が楽しめるコースです。
一方で、起伏があり距離もやや長くなるため、雪山歩きに慣れている方や時間・体力にゆとりのある方向け。10本爪以上のアイゼンや防寒装備を整え、景色を味わいながらゆっくりと進みましょう。

迫力ある佇まいを見せる岩峰「三ッ岳(みつだけ、標高2,360m)」
山腹の分岐から「三ッ岳」方面へ進むルートでは、北横岳とはまた違った景観や雪質を楽しめます。中でも三つの峰をたどる三ッ岳は、まるで自然のアスレチックを歩いているような感覚。稜線上は風が強く、吹きだまりや硬い雪が出てくることもあるので、足元には十分注意しましょう。

点在する巨岩が、どこか幻想的な風景を作り上げる
足元には木道や凍結した岩が現れることもありますが、天候や地形に応じた慎重な歩き方が求められます。途中では雨池や岩稜帯越しに望む白銀の山並みが美しく、森林限界を抜けた先では展望が一気に広がり、達成感も格別です。
縞枯山への雪山縦走 立ち枯れの森と幻想的な樹林帯から八ヶ岳の展望へ

静けさに包まれた樹林帯の道を一歩一歩上がっていく
雨池山(あまいけやま、標高2,325m)からさらに縦走を進めると、雨池峠を経て縞枯山(しまがれやま、標高2,403m)へと道が続きます。この区間でも雪山ならではの趣ある登山が楽しめます。緩やかな傾斜が続き、縞枯現象によって立ち枯れた木々が並ぶ樹林帯を歩くのが特徴です。

あらゆるところに、雪山ならではの芸術作品が
特に降雪直後は、白く染まった木々が並ぶ光景がまるで芸術作品のようで、森全体が幻想的な雰囲気に包まれます。踏み跡が薄い箇所もあるため、ルート判断や安全確認は慎重に行いましょう。歩行距離も延びるため、休憩やエネルギー補給のタイミングを意識して進むことが大切です。

縞枯山山頂から望む、雄大な赤岳(標高2,899m)と阿弥陀岳(あみだだけ、標高2,805m)の稜線
縞枯山山頂からの展望も素晴らしく、晴天時には赤岳(標高2,899m)や阿弥陀岳(標高2,805m)をはじめとした八ヶ岳の峰々が広がります。さらに余力があれば、縞枯山から30〜40分の茶臼山まで足を延ばすのもおすすめです。縞枯山に比べて訪れる登山者が少ないため、静かな雪山時間を過ごしたい方にもおすすめです。
雪山初心者におすすめ 北横岳で樹氷と大パノラマを満喫する八ヶ岳登山

初めての雪山登山なら北横岳がイチオシ
北横岳の雪山登山は、ロープウェイで標高を一気に稼げるアクセスの良さと、歩行距離の短さが魅力です。雪山が初めての方でも安心して挑戦できるルートで、坪庭に広がる白銀の風景や、樹氷に包まれた森、そして山頂からの大展望と、雪山の魅力がぎゅっと詰まっています。

茶臼山の山頂から眺める雄大な北アルプスや美ヶ原
さらに縞枯山方面へ足を延ばせば、縞枯現象が織りなす独特の景観や、変化に富んだ稜線歩きも楽しめ、より深い雪山体験が待っています。冬の自然をじっくり味わいながら、雪山の基本を学ぶにはぴったりの初級ルート。装備を整え、天候に十分注意して、安全に冬の八ヶ岳の美しさを満喫してください。

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