八ヶ岳登山の魅力と歩き方 初心者から上級者まで楽しめるコース紹介

「八ヶ岳(やつがたけ、八ヶ岳連峰)」は、長野県と山梨県にまたがる火山群で、豊かな自然環境とバリエーションに富んだ登山ルートが大きな魅力です。北八ヶ岳には苔むす原生林や静かな高層湿原が広がり、南八ヶ岳では切り立った岩稜やダイナミックな縦走コースが待ち受けます。

都心からのアクセスも良好で、初心者のハイキングから上級者の本格登山まで、四季折々の絶景とともに幅広く楽しめる山域です。今回は、そんな八ヶ岳の魅力とおすすめの山々・登山コースをご紹介します。

2025年8月12日 更新

八ヶ岳登山の魅力と特徴 北八ヶ岳と南八ヶ岳の違いと見どころ


主峰が連なる八ヶ岳、壮大な稜線が眼前に広がる

八ヶ岳は、長野県と山梨県にまたがる南北約30kmの火山群で、豊かな自然と多彩な登山ルートに恵まれた人気の山域です。

エリアは大きく北八ヶ岳と南八ヶ岳に分かれ、北八ヶ岳では苔むす原生林や神秘的な白駒池、冬季の北横岳に広がる樹氷など、静寂で幻想的な景色が楽しめます。一方、南八ヶ岳には赤岳(あかだけ、標高2,899m)・横岳(よこだけ、標高2,830m)・硫黄岳(いおうだけ、標高2,760m)といった険しい岩稜が連なり、迫力ある山岳景観と縦走の醍醐味が味わえます。

八ヶ岳登山は、初心者向けの気軽なハイキングコースから、上級者向けの本格縦走や冬季登山まで幅広く対応できるのも大きな魅力です。さらに、山麓には温泉地や山小屋、湖沼、渓谷などが点在し、登山とあわせて観光や温泉めぐりも楽しめる旅行先として高い人気を誇ります。

八ヶ岳へのアクセス方法 東京・名古屋からの行き方


紅葉のカーペットに彩られるような秋の八ヶ岳

八ヶ岳は首都圏・中京圏の両方からアクセスしやすい山域です。車なら中央自動車道を利用するルートが一般的で、登山口まではおおむね3時間前後。公共交通機関を利用する場合も、JR中央本線と路線バスを組み合わせれば主要登山口へ到着できます。

ここでは東京方面・名古屋方面それぞれの行き方を紹介します。

東京方面からのアクセス

【車】
中央自動車道を利用し、諏訪南ICまたは小淵沢ICまで約2時間30分(首都高・高井戸IC起点、普通車ETC料金:約4,800円)。各ICから登山口までは30〜60分程度。

【電車+バス】
JR中央本線「あずさ」号で新宿駅から茅野駅まで約2時間10分(運賃・指定席特急料金:約6,500円)。茅野駅から美濃戸口や蓼科方面行きの路線バスで約40〜60分。

名古屋方面からのアクセス

【車】
中央自動車道を利用し、中津川ICまたは伊那ICまで約2時間20分(名古屋IC起点、普通車ETC料金:約3,900円)。ICから登山口までは30〜70分程度。

【電車+バス】
JR中央本線「しなの」号で名古屋駅から塩尻駅まで約1時間50分(運賃・指定席特急料金:約5,400円)。塩尻駅で「あずさ」号または普通列車に乗り換え、茅野駅まで約25分。その後、路線バスで登山口へ(約40〜60分)。

歩きやすさ重視ならここ!北八ヶ岳の登山・ハイキングルート


苔と樹林が織りなす、神秘的な情緒が魅力の「北八ヶ岳」

北八ヶ岳エリアには、初心者や家族連れでも安心して楽しめるハイキングスポットが豊富です。整備された遊歩道が多く、体力や技術に自信のない方にもおすすめ。緩やかな森の中や湖畔を歩くルートが中心で、八ヶ岳ならではの自然の魅力を気軽に満喫できます。

ここでは、苔むす森と湖畔の景色が楽しめる白駒池周辺、標高2,500m超の蓼科山、冬の雪景色が美しい北横岳の3つのルートをご紹介します。

苔むす森と神秘の湖を歩く 八ヶ岳・白駒池ハイキング


白駒池周辺は八ヶ岳有数の癒しに満ちたハイキングコース

「白駒池(しらこまいけ)」は、標高約2,115mに位置する八ヶ岳最大の高層湖で、苔むした原生林に囲まれた静寂の湖です。周囲にはスニーカーでも快適に歩ける遊歩道が整備され、初夏には新緑と高山植物、秋には鮮やかな紅葉が湖面を彩ります。季節ごとの表情を楽しめるのも魅力です。


独特の存在感を放つ、隠れた名峰「ニュウ」

白駒池から約1時間で登れる「ニュウ(標高2,352m)」の山頂からは、360度の大パノラマが広がります。天狗岳(標高2,646m)、硫黄岳、さらには遠く富士山(標高3,776m)まで望むことができ、晴天時は特に感動的です。高見石展望台や中山展望台へと足を延ばすルートも人気で、登山初心者でも自然と達成感を味わえる日帰りコースとしておすすめです。

コースタイム
白駒池入口→(約15分)→白駒池→(約1時間15分)→ニュウ

諏訪富士と呼ばれる名峰 八ヶ岳・蓼科山登山


諏訪富士と呼ばれる美しい山容を呈する「蓼科山」

「蓼科山(たてしなやま、標高2,531m)」は、北八ヶ岳の最北端にそびえる独立峰で、その整った円錐形の姿から「諏訪富士」とも呼ばれています。7合目登山口からであれば山頂までおよそ2時間弱と比較的短時間で登れ、登山経験の浅い方でも日帰りで挑戦しやすいルートです。


岩場の山頂からは、雄大な北アルプスの山並みも一望

山頂は岩場になっており、八ヶ岳連峰はもちろん、北アルプスや南アルプス、さらに富士山まで見渡せる360度の絶景が広がります。夏は高山植物、秋は紅葉が美しく、多くの登山者を魅了します。登山道には森林帯や稜線、岩場といった多彩な景観があり、変化に富んだ山歩きを楽しめます。

コースタイム
蓼科山七合目登山口→(約1時間25分)→蓼科山荘→(約30分)→蓼科山蓼科山

樹氷と雪原を歩く 八ヶ岳・北横岳の雪山登山入門


蓼科山と北アルプスを眺める「北横岳」山頂

北八ヶ岳連峰に位置する「北横岳(きたよこだけ、標高2,480m)」は、北八ヶ岳ロープウェイを利用して気軽にアクセスでき、年間を通じて多くの登山者が訪れる人気の山です。特に冬は、初心者でも挑戦しやすい雪山登山の入門コースとして知られています。


「北横岳」は雪山入門のコースとして人気が高い

ロープウェイ山頂駅を降りると、まず現れるのが「坪庭」と呼ばれる溶岩台地。整備された遊歩道が続き、軽アイゼンでも安心して歩けます。道中では樹氷に囲まれた幻想的な森を抜け、北横岳ヒュッテを経て山頂へ。冬は白銀の世界が広がり、蓼科山や北アルプスを望む大パノラマが登山者を迎えます。

コースタイム
山頂駅→(約50分)→北横岳ヒュッテ→(約15分)→北横岳(南峰)→(約5分)→北横岳(北峰)

岩稜と稜線歩きが魅力 南八ヶ岳の登山ルート


高山の醍醐味と言える岩場の稜線が連なる「南八ヶ岳」

南八ヶ岳には、稜線歩きや岩稜帯を含む本格的な登山ルートが多く、中・上級者の登山者を惹きつけます。

なかでも、比較的歩きやすく稜線の魅力を味わえる硫黄岳は人気が高く、さらに横岳・赤岳へと続く縦走ルートは、体力と登山技術が求められる分、歩ききったときの達成感と絶景が格別です。

ここでは、日帰りで楽しめる硫黄岳コース、迫力満点の硫黄岳〜赤岳縦走コース、そして冬の白銀稜線を歩く天狗岳ルートの3つをご紹介します。

稜線の絶景を歩く 八ヶ岳・硫黄岳登山


南八ヶ岳の人気ピークといえば、やはり「硫黄岳」

南八ヶ岳の最北端に位置する硫黄岳(いおうだけ、標高2,760m)は、比較的歩きやすいコースが整備されており、稜線歩きを体験したい登山初心者の方にもおすすめの名山です。人気の桜平ルートは、樹林帯から広く開けた尾根道へと続き、徐々に高度感が増していく気持ちの良い道のり。


山頂周辺では、独特の地形美と圧巻のパノラマが待つ

夏には高山植物の女王・コマクサが斜面を彩り、稜線上では風にそよぐハイマツ帯を抜ける爽快なトレイルが続きます。山頂はひらけた台地状で、南アルプスや北アルプス、南八ヶ岳の峰々まで一望でき、天候が良ければ富士山も望めます。

コースタイム
桜平駐車場(上)→(約45分)→桜平登山口→(約1時間5分)→オーレン小屋→(約25分)→夏沢峠→(約1時間)→硫黄岳山頂

鎖場と絶景を楽しむ 硫黄岳〜赤岳を縦走する南八ヶ岳の王道コース


冒険心をくすぐられる硫黄岳〜赤岳までの稜線歩き

南八ヶ岳の主稜線を縦走する人気ルートは、硫黄岳から横岳(よこだけ、2,830m)を経て、八ヶ岳最高峰の赤岳(あかだけ、2,899m)へと続く、中〜上級者向けの本格登山コースです。縦走の起点となる硫黄岳は山頂が台地状に広がり、登頂後には壮大な山岳パノラマが一気に広がります。


緊張感が走る核心部は、鎖を持って確実に進もう

そこから続く横岳では、スリリングな岩稜帯や鎖場を通過するため、確実な足場の確保と集中力が必要です。アップダウンが続く稜線ですが、花崗岩の岩肌と高山植物が織りなす景観が美しく、歩くほどに心が惹きつけられます。


標高3,000mに迫る、八ヶ岳の最高峰「赤岳」

八ヶ岳最高峰の赤岳に到達すると、南北の八ヶ岳連峰をはじめ、奥秩父、南アルプス、さらには富士山まで一望できる壮大な展望が広がります。その達成感と眺望の美しさは、縦走の疲れを忘れさせるほど。行程を考慮すると、日帰りよりも山小屋泊で1泊2日かけて歩くのが一般的です。

コースタイム
桜平駐車場(上)→(約45分)→桜平登山口→(約1時間5分)→オーレン小屋→(約25分)→夏沢峠→(約1時間)→硫黄岳→(約20分)→硫黄岳山荘→(約50分)→横岳(奥ノ院)→(約1時間)→地蔵ノ頭→(約40分)→赤岳(八ヶ岳)
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北八ヶ岳の白銀世界を行く 天狗岳・冬の稜線歩き


本格雪山登山の名コースとして知られる「天狗岳」

北八ヶ岳の中央にそびえる「天狗岳(でんぐだけ、標高2,646m)」は、東天狗岳と西天狗岳の双耳峰(そうじほう)からなる山で、通年を通して登山者に親しまれています。麓の唐沢鉱泉(からさわこうせん)からのルートは、往復約6時間。稜線に出ると風が強くなるため装備には注意が必要ですが、東西の峰を結ぶ稜線からのパノラマは、思わず足を止めたくなるほどの絶景です。


天狗岳と東天狗の鞍部から望む、雪化粧した八ヶ岳の稜線美

天狗岳は、本格的な雪山登山へのステップアップとしても人気が高く、北横岳に続いて多くの冬山登山者が足を運ぶ山です。雪に覆われた硫黄岳から赤岳にかけて連なる白銀の稜線の眺めは、思わず息をのむほどの美しさ。アイゼンやピッケル、防寒装備といった雪山用の装備が必須ですが、それに見合うだけの絶景と達成感が得られる、中級者向けのコースです。

コースタイム
天狗岳登山口駐車場→(約1時間45分)→第1展望台→(約25分)→第二展望台→(約35分)→天狗岳(西天狗岳)→(約20分)→東天狗岳

八ヶ岳登山後も満喫!山麓の絶景スポットと観光地

登山の余韻を楽しみながら立ち寄れる、八ヶ岳山麓の絶景スポットや観光地も見逃せません。ここでは、その中から四季折々の美しさが堪能できる「御射鹿池」と「横谷渓谷」の2カ所をご紹介します。

御射鹿池 鏡の水面に映る四季の彩り


カラマツの紅葉が水面へ幻想的に映り込む「御射鹿池」

標高約1,500mに位置し、鏡のような水面に周囲の木々が映り込む姿は、日本画『緑響く』を思わせる美しさ。静かな朝や逆光時には幻想的な光景が広がり、季節や光の加減によってさまざまな表情を見せます。

御射鹿池(みしゃかいけ)
住所:長野県茅野市豊平奥蓼科
公式HPはこちら

横谷渓谷 紅葉と滝が織りなす渓谷美


秋には紅葉と滝の共演を楽しめる「横谷渓谷」

御射鹿池から車でほど近い横谷渓谷では、滝や清らかな流れと自然が織りなす見事な景観に出会えます。なかでも渓谷の中心部にある高さ30mの2段滝「王滝」は必見。10月中旬〜下旬には紅葉が鮮やかに彩りを添え、まるで一枚の絵のような光景が広がります。

横谷渓谷(よこやけいこく)
住所:長野県茅野市北山
公式HPはこちら

北から南まで、多彩な魅力が詰まった八ヶ岳登山のすすめ


雲が湧き立つ、大スケールの景色が待つ「赤岳」山頂

八ヶ岳は、初心者から上級者まで楽しめる懐の深い山域です。北八ヶ岳の白駒池・蓼科山・北横岳などは入門者にも優しく、自然の静けさや幻想的な風景を味わえます。一方、南八ヶ岳の硫黄岳〜横岳〜赤岳や、冬の天狗岳では、本格的な登山体験と圧倒的な展望が待っています。

さらに、山麓には御射鹿池や横谷渓谷など、登山とあわせて訪れたい絶景スポットも点在。四季折々の表情を見せる八ヶ岳を、ぜひ心ゆくまで満喫してください。

1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部を卒業後、商社やメーカーで営業職を経験。2019年より複業でトラベルライターとしての活動を始め、旅の魅力を伝える仕事がライフワークになる。2021年には本業も旅行業界へ本格転身し、国内OTAにて宿泊施設の集客支援に従事。現在は旅行系ベンチャー企業でメディアマネージャーを務める。これまでに執筆した記事は2,000本以上。地方の自然や暮らしをテーマにした発信を続けながら、「旅を通じて人生が豊かになるきっかけ」を届けたいと考えている。登山、自転車旅、温泉巡り、離島旅が趣味で、毎年の北海道旅行を家族の恒例行事にしている。 notehttps://note.com/yuhei_tonosho
八ヶ岳 蓼科・美ヶ原・霧ヶ峰 2025
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