高尾山の人気登山コース徹底ガイド 都心から日帰りで楽しめる!

首都圏に住む登山好きにとって、おそらく最もメジャーな山は高尾山でしょう。2007年にはミシュラン三つ星、2020年には東京都で初となる日本遺産にも認定。年間の登山者数は300万人以上を誇り、まさに東京近郊の定番登山スポットです。
今回は、上りは緑と渓谷を抜けてゆく6号路、下りは最もメジャーな1号路という定番ルートをご紹介。初心者の高尾山登山にもおすすめで、自然をしっかり楽しめて、体力的にも負担の少ない安心な日帰りの行程です。
目次
高尾山へのアクセスと登山口までの行き方

2015(平成27)年にリニューアルした高尾山口駅
高尾山の魅力のひとつは、首都圏からのアクセスの良さです。新宿から電車で1時間かからず到着できるため、日帰り登山にもぴったり。公共交通機関の利用が便利でおすすめです。
■ 電車でのアクセス
・京王線利用:新宿駅から京王線「高尾山口行き」の特急または準特急で、乗り換えなし・最短約43分。初心者にもわかりやすく、最も利用されているアクセスルートです。
・JR利用:新宿駅からJR中央線で高尾駅まで約50分、京王線に乗り換えて2駅先の高尾山口駅へ。
■ 車でのアクセス
中央道・高尾山ICから約3分。駐車場もありますが、週末や紅葉シーズンは混雑しやすいため、公共交通機関の利用がおすすめです。
■ 登山口までの行き方
高尾山口駅を出て甲州街道(国道20号)を渡り、川沿いに歩いて約10分。ケーブルカー清滝駅前を左に進むと、6号路の登山道入口が見えてきます。
高尾山の自然を体感する6号路〜5号路~1号路登山ルートを歩こう

※国土地理院「地理院地図(電子国土Web)」を元に作成
今回ご紹介するのは、高尾山の人気ルート「6号路」と「5号路」から登り、「1号路」で下山する周回コースです。
登りは沢沿いの静かな自然道を歩き、山頂で富士山の眺望を楽しんだあとは、薬王院を経て舗装された1号路をのんびり下ります。登山初心者にも安心して歩ける行程でありながら、滝や沢、展望、信仰の歴史といった高尾山の魅力を凝縮したコース。
四季折々の自然を感じながら、首都圏とは思えない山の風景を満喫できます。
標高:599.15m
比高:約410m
歩行時間:上り/約1時間30分 下り/約1時間30分
コースタイム:京王高尾山口駅 ⇒(5分)⇒ 清滝駅⇒(25分)⇒琵琶滝⇒(1時間)⇒高尾山山頂⇒(15分)⇒薬王院⇒(40分)⇒かすみ台展望台⇒(30分)⇒清滝駅⇒(5分)⇒京王高尾山口駅
石像と緑に迎えられる 高尾山6号路の静かな登山口へ

ケーブルカー・清滝駅
京王高尾山口駅を降り、甲州街道(国道20号)を甲府方面に向かうと、すぐに「高尾山入口」の信号が見えてきます。右折して川を渡ると、飲食店や土産屋が並ぶ道へ。進んだ先にケーブルカーとリフトの駅があります。

登山道入口近くに並ぶ石像群。七福神もいれば地蔵もいて面白い
6号路へ向かうには、ケーブルカー駅前から左へ。賑やかな参道を離れると、木立に囲まれた静かな山道が現れ、空気もひんやりと感じられます。

登山道入口には「高尾琵琶滝水行道場」の石碑
少し歩くと、「高尾琵琶滝水行道場」の石碑が現れます。ここからは緑が生い茂る静かな登山道の始まりです。琵琶滝までは往復できますが、その先は山頂へ向かう一方通行。6号路を下山ルートとして使うことはできないため、事前にルートを確認しておくと安心です。
砂利と土の未舗装路ですが、しばらくは勾配もそれほどでもなく、道幅もしっかり。歩きやすく、頭上に緑と木漏れ日を感じながら心地よく足を進められます。

岩屋大師は登山道から沢を渡った対岸にある
登山口から15分ほど歩くと、岩盤に開いた洞窟があります。弘法大師が祀られた岩屋大師です。
滝行が今も行われる琵琶滝 高尾山の修行の場を訪ねて

左奥の木立の中に見えるのが琵琶滝
岩屋大師から木々の緑に包まれながら歩くこと約15分、琵琶滝にたどりつきました。ここまでで6号路の全行程の1/3ほどです。
訪れた時はちょうど、10人ほどの白装束の人々が滝の前に。高尾山は関東修験根本道場で、琵琶滝は水行道場として古くから修行の場となっています。現在も薬王院のもとで滝行が行われており、事前予約をすれば一般の参加も可能です(詳細は公式サイト参照)。

水行道場は神聖な空間
修行者の撮影は禁止されています。くれぐれも修行の妨げにならないよう配慮しましょう。お堂にお賽銭を納めたら、静かに山道へと戻ります。
琵琶滝から沢道へ 変化に富んだ岩場と足元に注意

左が山頂へ続く6号路
琵琶滝を過ぎてしばらく歩くと、登山道の右手に、沢へと降りていく小道が現れました。ここからは、沢沿いの変化に富んだ山道に入っていきます。

大山橋から道の左手に沢が流れるようになる
行程の2/3ほどの場所にあるのが「大山橋」。橋はこのあと3つあります。

小道を下るとゴロゴロ岩が転がる沢
登山道はしばらく沢沿いを進みます。ここまでのしっかりした地面とは打って変わって、岩がちで凹凸のある足元に。

登山道上にも水が流れる場所がある
場所によっては水が流れていて滑りやすいため、慎重に進みましょう。登山靴や滑りにくい靴を履いておくと安心です。

沢を直接渡るポイントも
道幅が狭くなる場所や、洗い越し、木の根が張り出した箇所などもあります。足元の変化に注意しながら、無理のないペースで進むことが大切です。

小さな支流が流れ込むポイントも
いくつかのちょっとした難所を抜けると、再び道はしっかりした地面に。さらに沢と何度か交差するのですが、その先には木橋がきちんと架けられていて、安心して歩ける道が続きます。

谷間を抜ける風も心地よい
大山橋を過ぎ、2つ目の橋を渡る頃には、登りの傾斜が徐々にきつくなってきます。

稲荷山コース(現在は通行止め)との分岐。6号路は右へ
大山橋から3つ目の橋に差しかかりますが、渡らずに沢の中の道を進みます。

水量が少ない時は沢の中を歩くことも可能
沢には飛び石がきちんとあるのでその上を伝って進みます。やがて6号路は沢から離れ、木立に囲まれたややなだらかな登りに。息を整えながら歩を進めると、その先にこのコース最大の難関が待ち受けています。
最後の難所・急階段を越えて 富士山望む高尾山山頂へ

木製の階段がしっかり整備されている
先ほどまでの緩やかな道から一転、ここからは急勾配の階段が続きます。足元は安定しているものの、終わりの見えない上り坂がしばらく続き、登山開始から1時間ほど経ったタイミングでは、体力的にもこたえる場面です。「まだ登るのか……」と思ってしまうかもしれませんが、気持ちを切り替えて一歩ずつ進んでいきましょう。

長い階段の先にある尾根
階段を登り切ると、視界が開けた尾根道に出ます。ベンチも設置されており、しっかりと休憩できるポイント。ここまで来れば山頂まではあともう一息。勾配も緩やかになり、気持ちにも余裕が生まれてきます。

山頂にもトイレがあるが、こちらのほうが広く混雑しにくい
ベンチから数分進むと、6号路は山頂周遊の5号路に合流。少し進むとトイレと水場のある建物「大見晴トイレ」が見えてきます。1号路方面からの登山道ともここで合流し、いよいよ山頂は目と鼻の先です。

山頂展望台より。右奥に富士山
そのまま進むと、標高599.15mの山頂に到着。広々とした平地で、ベンチや茶屋、ビジターセンターなどの施設も整っています。。少し腰を下ろしてひと息ついたり、茶屋で甘味や軽食を楽しんだり、思い思いに過ごせるのが魅力です。
展望もすばらしく、丹沢の山並みの向こうには、天気が良ければ富士山の姿もはっきり。カメラを構えたくなる絶景が広がります。
開山1200年の薬王院に参拝 1号路でのんびり下山

歩きやすい道が続く
6号路は一方通行となっているため、帰路は5号路を経て1号路で下山します1号路は高尾山のメインルートだけあって、道幅が広く舗装もしっかり。勾配も緩やかで、初心者でも安心して歩ける道が続きます。

羽団扇を手にした大天狗
15分ほど歩くと、開山から約1200年の歴史を持つ高尾山薬王院へ。本堂前には、大天狗と小天狗の2体の石像が出迎えてくれます。

カラスのような嘴の小天狗
修験道の霊場らしく、天狗伝説が色濃く残るこの寺は、高尾山信仰の中心的存在です。

天狗の腰掛杉。周囲には他にも杉の巨木が
薬王院から少し下った先には、「天狗の腰掛杉」も。樹齢700年の天然杉は、東京都の天然記念物にも指定されています。また、高尾山は暖温帯と冷温帯の植物が入り混じる特異な植生を持ち、1600種以上の植物が自生。季節ごとに異なる植物や風景に出会えるのも、高尾山ならではの楽しみです。
かすみ台展望台から関東平野を一望 帰路で出会う絶景スポット

かすみ台展望台からの眺望
薬王院から30分弱で、「かすみ台展望台」に到着します。山頂では山並みと富士山を望めましたが、こちらからは関東平野を一望。異なる方角の眺望が楽しめる、高尾山ならではのビュースポットです。

ケーブルカー高尾山駅への分岐。1号路はそのまま直進
さらに少し下れば、ケーブルカー高尾山駅とリフト山上駅に到着します。

ケーブルカー高尾山駅
疲れが気になる場合は、ここから乗り物での下山も可能です。力に余裕があれば、そのまま1号路を歩いて山麓まで。緑の中を30分ほど歩けば、ケーブルカー清滝駅に到着します。

リフト山上駅~山麓駅間の1号路
高尾山は一年を通じて登山者が多く、豊かな自然や信仰の文化も感じられる場所です。今回のルート以外にも複数の登山道が整備されており、2回目・3回目は異なるルートを歩いてみるのもおすすめです。

「京王高尾山温泉 極楽湯」の露天岩風呂
下山後は、京王高尾山温泉「極楽湯」へ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。高尾山口駅に隣接し、露天風呂や檜風呂など多彩な湯がそろっており、登山の疲れをゆったりと癒やせます。
高尾山の登山コースについて知ろう

4号路にある「みやま橋」
高尾山には全部で7つの登山ルートがあり、それぞれ道の雰囲気や所要時間、難易度が異なります。舗装路で歩きやすいコースから、沢沿いや吊り橋を通る自然豊かなコースまでバリエーションが豊富。自分の体力や気分に合わせて選べるのが、高尾山の魅力です。
1号路
表参道として整備されており、清滝駅前から薬王院を経て山頂を目指す全長約3.8kmのルートです。道の大半が舗装されているため、登山初心者や家族連れにぴったり。ゆるやかな坂道を進みながら、参道の雰囲気や茶屋めぐりも楽しめます。
距離:3.8km
所要時間:上り1時間45分、下り1時間30分
高低差:404m
2号路
わずか約0.9kmと短めながら、急登も含まれる周遊ルート。少しだけ山歩きの雰囲気を味わいたい方におすすめです。
距離:0.9km
所要時間:35分
高低差:100m
3号路
浄心門から分岐し、南斜面に広がる約2.4kmの自然道は、野草や樹木が豊富で、四季折々の植物観察が楽しめます。混雑を避けたいときにもぴったりのコースです。
距離:2.4km
所要時間:上り1時間5分、下り55分
高低差:114m
4号路
高尾山唯一の吊り橋「みやま橋」を渡るスリリングなルート。全長は約1.5kmと短めですが、橋を越えたあとの急坂が歩きごたえを感じさせてくれます。モミの木が生い茂る森の中を進む、変化に富んだ道です。
距離:1.5km
所要時間:上り55分、下り45分
高低差:114m
5号路
距離0.9km・高低差25mともっとも手軽なルート。山頂付近の景色や植物をゆったり楽しみたい人に向いています。
距離:0.9km
所要時間:30分
高低差:25m
6号路
自然をダイレクトに感じられる人気コース。清滝駅横から始まり、苔むす岩や琵琶滝といった見どころを経て、しっとりとした森のなかを山頂まで登ります。高低差はあるものの、しっかり整備されていて初心者でも挑戦しやすい道です。
距離:3.3km
所要時間:上り1時間30分、下り1時間20分
高低差:389m
稲荷山コース
高尾山の尾根を歩く全長3.2kmのルート。展望台もあり、開放的な眺望が魅力です。登り応えのある尾根道が続き、登山気分をしっかり味わいたい方におすすめです。
距離: 3.2km
所要時間:上り1時間40分、下り1時間20分
高低差:389m
高尾山でぜひ立ち寄りたい2つのスポット
自然豊かな高尾山では、登山そのものはもちろん、道中や下山後にも立ち寄って楽しめる魅力的なスポットが点在しています。
京王高尾山温泉 極楽湯|登山後のリフレッシュに最適な天然温泉

高尾山でたっぷり汗をかいた後は、「京王高尾山温泉 / 極楽湯」でのんびり癒やしのひとときを。高尾山口駅に直結するこの温浴施設は、駅構内から専用通路でアクセスでき、登山や観光の締めくくりに立ち寄りやすいロケーションが魅力です。
「自然のなかで心と体を整える」をコンセプトに、露天岩風呂、檜風呂、炭酸風呂、サウナなど多彩な浴槽が揃い、男女ともにゆったりと湯浴みが楽しめます。特に檜の香りが漂う露天風呂は、自然に囲まれた高尾山ならではの開放感があり、登山後の疲れた体をじんわりと癒してくれます。
湯上りには館内の食事処で地元食材を使った料理や、季節限定の甘味を楽しむことも可能。また、マッサージや休憩スペースも完備されており、帰宅前のリフレッシュにぴったりです。
料金:大人1,100円(平日)、1,300円(土・日曜、祝日・繁忙期)
営業時間:8:00~22:30(最終受付21:45)
休業日:無休
アクセス:京王線高尾山口駅となり
髙尾山薬王院|山岳信仰の歴史が息づく祈りの聖地

高尾山の中腹、標高約500メートルの位置にあるのが「髙尾山薬王院」。真言宗智山派に属する祈祷寺で、奈良時代の天平16年(744年)、僧・行基が聖武天皇の勅命により薬師如来を祀ったのが起源と伝えられています。
薬王院は古来より修験道の霊場として多くの修行者が訪れ、今もなお全国から参拝者が絶えません。特に1月の初詣、2月の節分、3月の火渡り祭などには大勢の人が訪れ、境内には神秘的な祈りの空気が満ちています。
境内には本堂のほか、天狗像、願掛けの輪くぐり、金運・縁結びなどご利益スポットも点在しています。
営業時間:8:30~16:00
休業日:無休
高尾山登山高Q&A 楽しむためのアドバイス

濡れた石の上は水部りやすいので注意が必要
Q. どんな靴・服装で行けばいい?
→ 1号路を歩くならスニーカーでも問題ありませんが、6号路や稲荷山コースは岩場や濡れた地面もあるため、登山靴や滑りにくい靴が安心です。服装は動きやすく、汗をかいても乾きやすい素材のものを選びましょう。
Q. 持ち物は何が必要?
→ 飲み物(1L以上)は必須。軽食としておにぎりやパン、チョコレートなどを持っておくと安心です。ほかにも、帽子、タオル、レインウェアは忘れずに。茶屋もありますが、混雑や営業時間に左右されるため、事前の準備をおすすめします。
Q. トイレはある?
→ 1号路沿いには複数の公衆トイレがあります。6号路の場合は、山頂手前の「大見晴トイレ」までトイレがないため、出発前に駅や清滝駅付近で済ませておくのが安心です。
Q. 子ども連れでも登れる?
→ 1号路は舗装された道が続き、ベビーカーの利用も可能。小さなお子さんでも歩きやすいコースです。6号路はぬかるみや岩場などもあるため、小学生以上向けのコースと考えておくと安心です。
高尾山で気軽に日帰り登山を楽しもう

都心から1時間弱でアクセスでき、自然や信仰、展望の魅力が凝縮された高尾山。6号路から登って1号路で下る定番ルートは、登山初心者でも安心して歩けて、見どころも多く満足度の高いコースです。
出発前にはルートをしっかり確認し、安全で快適な登山を心がけましょう。詳細なルート確認には、GPS対応の「山と高原地図ホーダイ」アプリの活用もおすすめです。
ぜひ週末のリフレッシュに、高尾山での登山を楽しんでみてください。
関連する記事

登山の専門家が調査した正確なルートやコースタイム、見どころ情報までを一つにまとめました。
紙地図「山と高原地図」として60年以上の信頼を重ねてきた情報が、アプリ「山と高原地図ホーダイ」で。
今すぐダウンロードして安全登山を楽しみましょう。