霊峰・飯縄山へ 石仏の道と絶景を歩く初心者向け登山コースガイド

北信五岳の一つ、「飯縄山」は、長野市北部に位置する信州を代表する霊山。山岳信仰の歴史を今に伝える鳥居や十三体の石仏を巡りつつ、穏やかな南登山道を登るコースが人気です。

山頂からは戸隠山、黒姫山、妙高山、北アルプス、条件が整えば富士山まで望める360度の大展望が魅力。登山後には戸隠の神社巡りや鏡池、名物そばで自然と文化を満喫する旅が楽しめます。

2025年8月8日 更新

信仰と自然が息づく名峰「飯縄山」とは?


2,000m近い標高ながら、登山初心者にもおすすめの「飯縄山」

「飯縄山(いいづなやま、標高1,917m)」は、長野市、信濃町、飯綱町の三市町にまたがってそびえる名峰で、北信五岳のひとつにも数えられています。古くから修験の山として信仰を集めてきた霊峰であり、今もなおその神聖な空気をまとっています。

山の麓には、大座法師池(だいざほうしいけ)や戸隠高原(とがくしこうげん)といった自然豊かな観光地が広がり、登山とあわせて四季折々の風景が楽しめるのも魅力のひとつです。

飯縄山登山の拠点「一の鳥居苑地」のアクセス情報


台数も多く、混雑の心配もない登山者用の無料駐車場

飯縄山登山の拠点となるのは「一の鳥居苑地」で、ここには50台ほどが駐車できる登山者用の無料駐車場とトイレが整備されています。

長野市街地からは車で約40〜50分。公共交通機関を利用する場合は、長野駅から戸隠方面のバスに乗り、「一の鳥居」バス停で下車してすぐと、比較的アクセスしやすい立地です。

飯縄山の初心者向け登山コースで、信州の大パノラマを目指す


今回の山旅の目的地、飯縄山山頂

アクセスの良さでも人気の飯縄山は、登山初心者から親しまれているスポット。今回の、一ノ鳥居登山口から山頂を目指すコースは、往復で約4〜5時間です。

コースタイム:飯綱山登山口駐車場→(約15分)→一ノ鳥居登山口→(約2時間15分)→飯縄神社→(約10分)→飯縄山山頂

鳥居と石仏をめぐる南登山道を歩く


一礼をして入山。美しい樹林帯が続く南登山道へ

飯綱山の登山者用駐車場を出発し、しばらく舗装路を歩くと、石の狛犬と鳥居が現れます。ここが「一ノ鳥居登山口」の目印。鳥居の扁額には”飯縄大明神”と刻まれ、登山者は一礼して神域に足を踏み入れます。


十三体の石仏が、信仰の山ならではの趣を醸し出す

序盤は平坦で歩きやすい林道が続き、やがて不動明王から始まる十三体の石仏を祀る巡礼の道へ。静かな森の中、石仏に手を合わせながら進むこの区間は、歴史と信仰を感じさせる趣のある道のりです。


宝石のように輝く紅葉のトンネルを歩く道が続く

登山道はナラなどの落葉樹が茂る樹林帯を通り、静けさの中に包まれながら進みます。秋になると、鮮やかな紅葉のトンネルが訪れる人をお出迎え。やさしい木漏れ日も心地よく、思わず深呼吸したくなるような空間が続きます。


天狗の硯岩を越えると、圧巻のパノラマが待っている

登山開始から約1時間、七合目付近にあたる「天狗の硯岩」に到着。中央がくぼんだ大きな岩で、その形が硯に似ていることから名付けられました。ここを過ぎると視界が開け、戸隠連峰や妙高山など、迫力ある山並みが顔を覗かせます。

飯縄神社奥宮と南峰周辺の見どころ


山頂が近いことを知らせる南峰の石の祠と鳥居

標高1,850m付近の分岐を過ぎると、山中に静かに佇む石の祠と鳥居が現れます。ここは飯縄大権現を祀る南峰にあたり、飯縄神社の奥宮がひっそりと佇んでいます。古くから修験道の信仰を集めてきた山であり、神道と山岳修行の文化が息づく、神聖で厳かな空気が漂っています。


戸隠連峰の険しい山並みが目の前に迫る圧巻の風景

南峰周辺から植生が変化し、ブナやカラマツに加えて、クマザサが目立つようになります。春から夏にかけてはレンゲツツジやイワカガミが可憐な花を咲かせ、秋には色鮮やかな紅葉が山を彩る。飯縄山は、高山植物の宝庫でもあります。


天空へと続くような飯縄山までの最後の稜線歩き

このあたりから視界が開け、まるで水墨画を思わせる戸隠連峰の雄大な景観が広がります。緩やかな稜線を10~15分ほど歩けば、ついに飯縄山の山頂へと到達。信仰と自然、登山の魅力が交錯する、感動の瞬間が待っています。

飯縄山山頂からの360度パノラマと絶景ポイント


爽快な眺望が広がり、苦労が報われる瞬間を味わえる飯縄山山頂

飯縄山の山頂に立つと、まさに信州の大パノラマが広がります。

北側には、戸隠連峰の荒々しい岩峰群を筆頭に、妙高山(みょうこうさん、標高2,454m)や黒姫山(くろひめやま、標高2,053m)といった北信五岳の名峰が並びます。東側には、長野市街や善光寺平の広がりを一望でき、その奥には志賀高原や四阿山(あずまやさん、標高2,354m)の穏やかな稜線が続きます。天候に恵まれれば、はるか遠くに富士山(ふじさん、標高3,776m)の姿が浮かぶこともあります。

晴れた日には、遠く北アルプスの雄大な稜線を一望できる

西側に目をやれば、後立山連峰(うしろたてやまれんぽう)の壮大な山並みが広がり、鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ、標高2,889m)や五竜岳(ごりゅうだけ、標高2,814m)、唐松岳(からまつだけ、標高2,696m)などが端正な姿を見せてくれます。

山頂は風を防げる場所がないため、季節によっては肌寒さを感じることも。薄手の防寒着があると安心です。お弁当やおやつを楽しみながら、圧巻の眺望に包まれて過ごす時間は、まさに登山の醍醐味といえるでしょう。

飯縄山登山の後に立ち寄りたい、戸隠エリアのおすすめスポット


随神門(ずいしんもん)をくぐると、樹齢約400年の杉並木が続く

飯縄山登山を終えたあとは、戸隠エリアへ足を延ばして観光を楽しむのもおすすめです。中でも、戸隠神社・中社(ちゅうしゃ)は一度は参拝したいパワースポット。杉の木立が続く参道を進むと、落ち着いた雰囲気の境内にたどり着きます。

日本屈指のパワースポット「戸隠神社」へ


神話の世界へ思いを馳せる戸隠神社・中社

戸隠神社・中社の境内には歴史を感じさせる社殿が残り、資料館や授与所も併設されています。山歩きの帰りにふらりと立ち寄って、戸隠の信仰や神話の世界に少し触れてみるのも、心に残る旅の締めくくりになるでしょう。

時間に余裕があれば、奥社や九頭龍社(くずりゅうしゃ)などを巡る「戸隠五社巡り」もあわせて楽しめます。

戸隠神社・中社
住所:長野県長野市戸隠2110
営業時間:境内自由(授与所受付は9:00~17:00、冬期奥社は~16:00)

「鏡池」で味わう静寂とリフレクションの世界


雪化粧をまとった戸隠連峰を映す、静寂の鏡池

戸隠神社・中社から歩いて行ける「鏡池」は、戸隠連峰を映す絶景スポットとして写真愛好家に人気の池です。特に朝や夕方の静かな時間帯には、水面がまるで鏡のように山々を映し出し、幻想的な光景が広がります。周囲には木道や散策路が整備されており、紅葉の季節には一層の美しさに包まれます。

鏡池
住所:長野県長野市戸隠
※紅葉のシーズンは車で乗り入れができないので注意

飯縄山登山の締めは名物・戸隠そばで


日本三大そばの一つに数えられている「戸隠そば」

戸隠エリアは「そばの聖地」として知られ、登山の後にはご当地そばを味わうのが定番です。こだわりの手打ち十割そばは、香りとコシが特徴。戸隠神社の中社周辺には宿坊風の店や風情ある古民家店舗が並び、天ぷらや山菜と一緒に楽しめます。お店によってはそばソフトクリームなどのスイーツも味わえますよ。

自然・文化・味覚がそろう、飯縄山登山を楽しもう


修験の歴史を感じながら歩く、飯縄山の味わい深い登山道

飯縄山は、鳥居や石仏を巡りながら歩く南登山道が魅力の山で、古くからの信仰の面影を感じられる場所。なだらかな傾斜が続き、自然豊かな登山道は初心者にも歩きやすいルートです。山頂からは、戸隠連峰や北アルプスの大パノラマが広がり、空気が澄んでいれば富士山まで望めることも。

登山後は戸隠神社や鏡池を訪ね、名物の戸隠そばでひと息つくのもおすすめ。自然・文化・食が揃った、日帰りでも満足度の高い信州の山旅が楽しめます。

妙高・戸隠・雨飾 火打山・高妻山・信越トレイル 2025
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部を卒業後、商社やメーカーで営業職を経験。2019年より複業でトラベルライターとしての活動を始め、旅の魅力を伝える仕事がライフワークになる。2021年には本業も旅行業界へ本格転身し、国内OTAにて宿泊施設の集客支援に従事。現在は旅行系ベンチャー企業でメディアマネージャーを務める。これまでに執筆した記事は2,000本以上。地方の自然や暮らしをテーマにした発信を続けながら、「旅を通じて人生が豊かになるきっかけ」を届けたいと考えている。登山、自転車旅、温泉巡り、離島旅が趣味で、毎年の北海道旅行を家族の恒例行事にしている。 notehttps://note.com/yuhei_tonosho
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