荒島岳登山ガイド 勝原コースと紅葉絶景、越前大野観光も楽しむ

福井県大野市にそびえる荒島岳(あらしまだけ、標高1,523m)は日本百名山のひとつで、その美しい山容から「大野富士」とも呼ばれます。山全体を覆うブナの原生林は四季折々に彩りを変え、特に秋の紅葉シーズンには山肌が色鮮やかに染まり、訪れる登山者を魅了します。
アクセスしやすい勝原(かどはら)コースは、初心者から健脚者まで幅広く楽しめる人気ルートです。この記事では、その魅力と登山の見どころをご紹介します。
目次
荒島岳登山の魅力 独立峰に広がるブナ林と信仰の歴史

九頭竜川沿いから眺める荒島岳の山並み
荒島岳は福井県のほぼ中央、大野盆地の南東に位置する独立峰で、日本百名山のひとつに数えられています。山麓から山頂まで広がるブナの原生林は、初夏には新緑、秋には鮮やかな紅葉と、登山者を四季折々の彩りで迎えてくれます。

道中では美しい紅葉の山肌と越前大野・勝山エリアを一望
古くから信仰の山としても知られており、山頂部の手前では急坂や稜線歩きを楽しめるため、荒島岳登山ならではの醍醐味を味わえるのも魅力です。
積雪期は豪雪地帯らしい厳しさを見せる一方、無雪期は花や樹木が豊かで、特に秋は登山道から見下ろす紅葉が絶景。北陸を代表する名山として、初心者からベテランまで幅広い登山者に親しまれています。
荒島岳登山のアクセス 車と公共交通での行き方

大野盆地の南東にそびえる荒島岳
荒島岳は北陸の百名山の中でも比較的アクセスしやすい山のひとつです。首都圏・名古屋・関西からそれぞれ車や公共交通を利用して訪れることができ、登山口までは鉄道駅からも近いため、計画を立てやすいのが特徴です。ここでは地域別にアクセス方法をご紹介します。
首都圏からのアクセス
車の場合
中央自動車道から長野道に入り松本ICまで約2時間半。国道158号を経由して高山方面へ向かい、東海北陸自動車道を経由して大野ICまで走ります。インターから勝原登山口までは国道158号を利用して約20分。全行程で5時間半〜6時間程度を見込むと安心です。
公共交通の場合
新宿から特急あずさで松本駅へ(約2時間40分)。松本駅から特急しなのに乗り換えて名古屋へ(約2時間)、さらに特急しらさぎで福井駅へ(約1時間半)。福井駅からJR越美北線で勝原駅へ(約1時間半)。駅から登山口までは徒歩10分ほどでアクセス可能です。
名古屋・関西方面からのアクセス
車の場合
名古屋からは名神高速〜東海北陸自動車道を利用し、大野IC経由で登山口へ。所要時間は約3時間。関西方面からは名神高速〜北陸自動車道を経由し、福井ICまたは大野ICからアクセスするのが一般的で、3時間半〜4時間程度です。
公共交通の場合
名古屋駅から特急しらさぎで福井駅へ(約2時間)。福井駅からJR越美北線に乗り換え、勝原駅まで約1時間半。駅から登山口までは徒歩圏内です。関西からは新大阪・京都から特急サンダーバードで金沢駅へ、さらに特急しらさぎで福井駅へ(約2時間)。その後は越美北線で勝原駅へ向かいます。
荒島岳登山の王道ルート 勝原コースの魅力とコースタイム

多くの登山者が勝原コースを利用して山頂を目指す
荒島岳の登山ルートには、勝原コース、中出(なかんで)コース、佐開(さびらき)コース、新しもやまコースの4つがあります。
この中で最も多くの登山者に利用されているのが「勝原コース」。登山口は、かつてのスキー場跡地を整備したもので、駐車場やトイレも完備されています。JR越美北線・勝原駅から徒歩圏内とアクセスの良さも人気の理由の一つです。
電車と徒歩で訪れる場合は、登りを勝原コース、下りを中出コースとするなど、往復で異なる道を組み合わせる楽しみ方も可能です。
勝原登山口→(約2時間40分)→シャクナゲ平→(約45分)→前荒島岳→(約5分)→中荒島岳→(約20分)→荒島岳山頂
勝原登山口からシャクナゲ平へ ゲレンデ跡とブナ林の登り

まずはゲレンデ跡らしい急勾配の坂道を上がる
勝原登山口から歩き始めると、まず待ち受けるのは旧勝原スキー場のゲレンデ跡。いきなりの急登が続き、足慣らしを兼ねたウォーミングアップの区間です。この斜面を登り切ると、景色は一変し、やわらかな光が差し込むブナの原生林が登山者を迎えてくれます。

一面を鮮やかなオレンジに染める、紅葉のブナ林
静寂に包まれた森の中を歩く時間は心地よく、荒島岳登山ならではの趣を感じさせます。特に紅葉の時期には、ブナ林全体が一斉に色づき、オレンジ色のトンネルを歩いているかのような光景が広がります。

シャクナゲ平からは日本三霊山の一つ白山も望める
坂道が続くため、ペースを上げすぎず息を整えながら進みましょう。標高1,200m付近まで登ると視界が開け、シャクナゲ平に到着。中間地点の休憩スポットとして、多くの登山者が腰を下ろして後半戦に備えます。
シャクナゲ平から前荒島岳へ もちが壁を越える登り

急勾配が続く、荒島岳の名物区間「もちが壁」
シャクナゲ平を過ぎると稜線歩きが始まります。両脇にはブナやミズナラの木々が連なり、季節ごとに高山植物や紅葉が彩りを添えます。途中にはやや急な登りや小さな岩場もありますが、心地よい風が吹く尾根道は快適で、荒島岳登山ならではの魅力を感じられる区間です。

紅葉の山肌から越前大野・勝山市街を一望
標高を上げると、振り返れば日本海や大野平野の大パノラマが広がります。やがて荒島岳登山の名物「もちが壁」に差し掛かります。ここは急勾配の斜面に鎖やハシゴ、ロープが設置された区間で、この山の最大の難所として知られています。急坂を乗り越える達成感は格別で、多くの登山者の記憶に残るスポットです。登り切れば前荒島岳(まえあらしまだけ、標高1,415m)に到着します。

白山まで一望できる天空の稜線歩きが始まる
もちが壁を越えると穏やかな稜線歩きが続き、森林限界を越えると視界が一気に開けます。笹原の向こうには日本三霊山の一つ白山(はくさん、標高2,702m)が堂々とそびえ、その存在感に圧倒される光景が広がります。
前荒島岳から中荒島岳を経て荒島岳へ 開放感あるラストスパート

前荒島岳、中荒島岳をつないで、3つ目のピーク・荒島岳山頂へ
前荒島岳(まえあらしまだけ、標高1,415m)から中荒島岳(なかあらしまだけ、標高1,420m)までは歩いてすぐ。ここからはいよいよ荒島岳(あらしまだけ、標高1,523m)山頂への最後の登りが待ち受けています。傾斜は比較的緩やかですが、笹原を進む道は日差しを受けやすく、体力を奪われがちです。こまめに給水を心がけながら進みましょう。

360度の展望に恵まれた、北陸の名峰が誇る絶景パノラマ
左右に広がる展望を楽しみながら進むと、やがて山頂標識が視界に入ります。山頂からは360度の大パノラマが広がり、これまで歩いてきた道を振り返れば、大野盆地を一望できる雄大な景色を望めます。

錦秋に染まった紅葉の山並みがひときわ美しい
力強い稜線と紅葉のコントラストが美しい両白山地の峰々も見渡せ、山頂にふさわしい雄大な眺望を味わえます。こうした展望を楽しむ時間は、荒島岳登山の大きな魅力のひとつです。
荒島岳登山の下山路 小荒島岳でひと息

下山前に立ち寄りたい小荒島岳
下山の際には、シャクナゲ平から少し外れた場所にある小荒島岳(こあらしまだけ、標高1,184m)に立ち寄るのもおすすめです。訪れる人が少なく、静かな時間を楽しめる小ピークです。

大迫力の荒島岳を一望できる絶好の展望地
ここから眺める荒島岳(あらしまだけ、標高1,523m)は、正面からその堂々とした山容を望むことができます。特に紅葉の時期には、山肌が赤や黄色に染まり、自然が織りなすパッチワークのような光景が広がります。さらに、ブナ林越しに広がる大野盆地の景色も美しく、季節ごとに異なる表情を見せてくれます。

下山途中も淡く色づくブナ林に癒される
その後は再びシャクナゲ平を経由し、勝原コースを下山します。同じ道でも登りとは違った角度から景色を楽しめるため、下山中も飽きることなく自然の美しさを満喫できます。標高差1,000m以上を下り切った後の達成感は格別で、荒島岳登山の締めくくりにふさわしい時間となるでしょう。
荒島岳登山とあわせて楽しむ越前大野観光 名水と城下町の魅力

400年以上も続く越前大野の名物「七間(しちけん)朝市」
荒島岳登山を楽しんだ後は、麓に広がる越前大野市で観光を組み合わせるのもおすすめです。「北陸の小京都」と称される城下町には、越前大野城を中心に石畳の古い町並みが残り、落ち着いた雰囲気のなかで歴史散策を楽しめます。

越前大野のシンボル的存在、大野城
特に早朝には、雲海に浮かぶ幻想的な「天空の城 越前大野城」を望めることもあり、写真愛好家や絶景を求める登山者に人気です。

口に含むと感動する、澄み切った御清水
市内には名水百選に選ばれた湧水スポットが点在しており、「御清水(おしょうず)」や「本願清水(ほんがんしみず)」では清らかで冷たい水をそのまま味わえます。

大野食堂でいただける九頭龍舞茸おろしそば
こうした名水が育んだ越前大野の名物が「越前おろしそば」。大根おろしのさっぱりした風味が特徴で、醤油カツ丼とのセットを提供する店も多く、地元グルメとして人気です。

湧水が豊富な越前大野には、湧き水を沸かす銭湯が点在
観光の合間には、湧水を沸かしたお湯を使うレトロな銭湯で疲れを癒すのも一興です。肌触りのやわらかなお湯に浸かり、地元の人々と触れ合う時間は旅情をさらに深めてくれます。

越前の小京都と呼ばれる越前大野の町並み
荒島岳登山と越前大野観光を組み合わせることで、自然と歴史、文化、食のすべてを味わえる充実した山旅を楽しめるでしょう。
荒島岳登山と越前大野観光で楽しむ充実の山旅

ブナ林から白山と別山が見える
荒島岳(あらしまだけ、標高1,523m)は、ブナ林の美しい登山道や名物の「もちが壁」、そして山頂からの大パノラマが魅力の北陸を代表する百名山です。王道の勝原コースは初心者から健脚者まで幅広く楽しめ、下山後には越前大野の城下町や名水、郷土グルメを味わうことで山旅をさらに充実させられます。
登山ルートや分岐点、コースタイムをしっかり確認して安全に登るためには、地図の準備が欠かせません。山と高原地図ホーダイなら、荒島岳の登山道や周辺情報をスマートフォンで確認でき、紙地図とあわせて使えばより安心です。
自然の魅力と歴史文化を一度に楽しめる荒島岳登山。次の山旅の計画に、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
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