燕岳登山の魅力を徹底解説 北アルプスを代表する合戦尾根ルートガイド

燕岳(つばくろだけ、標高2,763m)は、「アルプスの女王」と称される北アルプスの名峰。中房(なかぶさ)温泉から合戦尾根を登り、合戦小屋や燕山荘(えんざんそう)を経て山頂へ至るルートでは、槍ヶ岳(やりがたけ、標高3,190m)や後立山(うしろたてやま)連峰を見渡す大パノラマが広がります。

登山道はよく整備されており、登山初心者から経験者まで幅広く楽しめる北アルプス入門コースとして人気があります。本記事では、この燕岳登山ルートの魅力を徹底ガイドします。

2025年9月17日 更新

アルプスの女王・燕岳登山の魅力とは


花崗岩が特徴的な山容を作り上げている燕岳

燕岳は長野県安曇野市に位置する北アルプスの名峰で、日本二百名山のひとつに数えられます。花崗岩が風化して生まれた白い山肌と、優美な山容から「アルプスの女王」と呼ばれ、多くの登山者を魅了してきました。


槍ヶ岳を背景にたたずむ、名物のイルカ岩

山頂からは槍ヶ岳や後立山連峰を望む壮大なパノラマが広がり、北アルプスならではの景観を楽しめます。登山道や山小屋の整備が進んでいるため歩きやすく、多くの登山者が訪れることから、北アルプス登山の入門コースとして高い人気を誇ります。標準コースタイムは往復8〜9時間ほどで、夏の長い日であれば日帰りも十分可能です。

燕岳登山の拠点・中房温泉へのアクセス


名湯・中房温泉がたたずむ燕岳登山口

北アルプス・燕岳の登山口は中房温泉にあり、公共交通機関・車のどちらでもアクセスが可能です。ここではそれぞれの方法と駐車場情報をまとめます。

公共交通機関でのアクセス

JR大糸線「穂高駅」から中房温泉行きの路線バス(南安タクシー運行)や乗合バス(安曇観光タクシー)があり、所要時間はおよそ1時間です。バスは登山シーズンに多くの便が運行されるため、公共交通でも安心してアクセスできます。

車でのアクセス

自家用車の場合は、長野自動車道・安曇野ICから穂高方面へ進み、中房温泉の登山口へアクセスできます。駐車場は有明荘周辺や中房温泉入口に第一〜第三まで設けられていますが、シーズン中は大変混雑するため早朝の到着がおすすめです。特に第一駐車場は完全予約制の有料駐車場(40台限定・1日3,000円)となっているので、事前予約を忘れないようにしましょう。

合戦尾根から歩く燕岳登山ルート


合戦尾根の道中、鋭く尖った槍ヶ岳が堂々とそびえる

中房温泉を起点に燕岳を目指す代表的なルートが「合戦尾根(かっせんおね)コース」です。標高差はおよそ1,300m、往復で8〜9時間程度。序盤は樹林帯を抜け、やがて尾根道へと変化します。道中にはベンチや合戦小屋、燕山荘など休憩スポットが点在しており、無理のない行程で進めるのが魅力です。


燕岳周辺から望む北アルプスの雄大な稜線

合戦尾根は「北アルプス三大急登」のひとつに数えられますが、登山道はよく整備されています。体力に応じてこまめに休みを取りながら登れば安全に歩けるコースです。稜線に出ると景色が一変し、槍ヶ岳や後立山連峰の雄大な眺めを楽しみながら燕岳山頂を目指せます。

標準コースタイム(歩行時間:約5時間20分、往復で約8〜9時間)
燕岳登山口→(20分)→第1ベンチ→(50分)→第2ベンチ→(50分)→第3ベンチ→(50分)→富士見ベンチ→(50分)→合戦小屋→(20分)→合戦沢の頭→(50分)→燕山荘→(30分)→燕岳

中房温泉から始まる燕岳登山 合戦尾根の前半とベンチ区間


緑の樹林帯を抜け、合戦尾根の急な登り道を歩む

燕岳登山は中房温泉の登山口からスタートします。最初は緩やかな登りですが、やがて本格的な合戦尾根へと入っていきます。序盤は樹林帯が続き、木の根や岩を越えながら標高を稼ぐ区間です。夏場でも木陰が多いため直射日光を避けやすく、比較的歩きやすいのが特徴です。


ところどころ現れるベンチが休憩ポイントの目安

合戦尾根には「第一ベンチ」「第二ベンチ」「第三ベンチ」「富士見ベンチ」と名付けられた休憩ポイントがあり、それぞれおよそ50分間隔で設けられています。こまめに区切りをつけながら登れるため、ペース配分がしやすく安心して進めます。

序盤はまだ展望が限られますが、木々の間から差し込む光や雲の流れが垣間見え、日本アルプスを歩いている高揚感を味わえる区間です。

富士見ベンチから合戦小屋へ 燕岳登山の核心部を歩く


振り返れば、雄大な富士山の姿が望めることも

第三ベンチを越えると傾斜が一段と増し、合戦尾根らしい本格的な登りが始まります。急坂が続きますが、要所には木の階段などが整備されており、安全に登れるよう工夫されています。

富士見ベンチに近づく頃には展望が開けはじめ、天候が良ければその名の通り遠くに富士山(標高3,776m)を望むこともできます。これまで森に囲まれていた道から一転し、稜線へ向かう期待感が一気に高まります。


水分と糖分を一気に補給!スイカとコーラ

登りを続けると、登山者の憩いの場「合戦小屋」に到着します。夏の名物・冷えたスイカや飲み物が人気で、多くの登山者が腰を下ろして休憩を取る賑やかなスポットです。

さらに進むと森林限界が近づき、視界が徐々に広がっていきます。やがて稜線上に位置する合戦沢の頭(かっせんさわのかしら、標高2,488m)に到着。ここからは燕岳や燕山荘を見渡せるようになり、山頂への期待が一段と高まります。

稜線歩きで燕山荘へ 北アルプスの絶景を満喫


合戦沢の頭から先は、いよいよ清々しい稜線歩きへ

合戦沢の頭を越えると森林限界に入り、視界が一気に広がります。登山道の両脇にはハイマツ帯や高山植物が広がり、まさに北アルプスらしい稜線歩きを楽しめる区間です。緩やかな尾根道をたどると、やがて赤い屋根が印象的な燕山荘が姿を現します。


ハイマツ帯の稜線の先には、燕山荘がたたずむ

燕山荘は稜線上に建つ人気の山小屋で、槍ヶ岳や後立山連峰をはじめとする北アルプスの大パノラマを望む絶好のロケーションです。テラスでは多くの登山者が腰を下ろし、雄大な景色を眺めながらひと息ついています。ここまで来れば燕岳山頂は目前。山小屋泊やテント泊の拠点としても利用される、欠かせないスポットです。

白い稜線と奇岩をたどり燕岳山頂へ


燕山荘から燕岳山頂まではすぐそこ

燕山荘で休憩を終えたら、いよいよ燕岳山頂を目指して歩みを進めます。登山道は花崗岩が白く輝く稜線で、奇岩が点在する独特の景観が広がります。なかでも有名なのが「イルカ岩」。まるでイルカが跳ねる姿を思わせる形で、フォトスポットとして人気があります。


後立山連峰から燕岳(上)、槍ヶ岳から後立山連峰(下)

この区間は高山植物も豊富で、夏には可憐なコマクサが群生し、足元を彩ります。道は比較的なだらかで歩きやすく、左右には槍ヶ岳や立山連峰の大パノラマが広がり、進むほどに感動が高まります。


北アルプスを象徴する槍ヶ岳の鋭い山容が圧巻

やがて標高2,763mの山頂に立つと、360度の大展望が待っています。とりわけ南側にそびえる槍ヶ岳の鋭い穂先は圧倒的な存在感。燕岳は、その優美な山容と豊かな自然、そして圧巻の眺望によって、北アルプス入門の名峰として多くの登山者を魅了し続けています。

燕岳登山をもっと楽しむ 山小屋泊という選択肢


山の上で過ごす夜は非日常な時間

燕岳登山は日帰りでも十分楽しめますが、余裕があれば稜線上の山小屋・燕山荘に泊まることで、さらに特別な体験ができます。赤い屋根が目印の燕山荘は、売店や食堂も整っており、山の上とは思えないほど快適に過ごせる人気の山小屋です。


朝日や夕日の時間は感動のひととき

テラスからは槍ヶ岳や後立山連峰の大パノラマを望むことができ、夕暮れには山々が赤く染まる絶景が広がります。さらに、夕食後にはオーナーによる山の話やホルンの演奏があり、山小屋ならではのひとときを味わえます。

日帰りでの登山に加え、山小屋泊を組み合わせれば、燕岳の魅力をより深く体験できるでしょう。

■燕山荘
HPはこちら

北アルプス入門に最適な燕岳登山


北アルプス定番の絶景を満喫できるおすすめルート

燕岳は「アルプスの女王」と呼ばれるにふさわしい、美しさと歩きごたえを兼ね備えた名山です。中房温泉から合戦尾根を登り、合戦小屋や燕山荘を経て山頂へと至るルートは、展望にも恵まれた北アルプス定番の登山コースとして多くの登山者に親しまれています。


コマクサが咲き誇る7月下旬の燕岳

道中には花崗岩の奇岩や季節ごとに咲く高山植物が彩りを添え、稜線に出れば槍ヶ岳をはじめとする壮大な景色が広がります。日帰りで歩いても十分に満足できる山ですが、山小屋泊を組み合わせたり、下山後に温泉で疲れを癒やしたりすれば、山旅の楽しみはさらに深まります。

初心者からベテランまで、それぞれのスタイルで満喫できる北アルプスの名峰だからこそ、最新のルート情報を確認できる「山と高原地図ホーダイ」を活用して、安全で充実した燕岳登山を楽しみましょう。

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槍ヶ岳・穂高岳 上高地 2025
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部を卒業後、商社やメーカーで営業職を経験。2019年より複業でトラベルライターとしての活動を始め、旅の魅力を伝える仕事がライフワークになる。2021年には本業も旅行業界へ本格転身し、国内OTAにて宿泊施設の集客支援に従事。現在は旅行系ベンチャー企業でメディアマネージャーを務める。これまでに執筆した記事は2,000本以上。地方の自然や暮らしをテーマにした発信を続けながら、「旅を通じて人生が豊かになるきっかけ」を届けたいと考えている。登山、自転車旅、温泉巡り、離島旅が趣味で、毎年の北海道旅行を家族の恒例行事にしている。 notehttps://note.com/yuhei_tonosho
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