辛口ライターの山道具レビュー:フォックスファイヤーのレインウェア「アクアピークジャケット」の軽さと動きやすさを検証!
山と高原地図編集部が厳選した山道具を現場で使い、気になる点を交えながら際立つ特徴を伝える正直レポート。今回は、フォックスファイヤーの登山用レインウェアのフラッグシップモデルである「アクアピークジャケット」を試してみました。
レインウェアは野外において、雨風から体を守るいわば最終防御壁。防水透湿性と呼ばれる能力が欠かせませんが、技術が進歩した現在、登山用に作られているモデルであれば程度の差こそあれ、十分に実用に足るスペックを備えていると考えて問題ありません。
そこで今回は、あえて防水透湿性“以外”のポイントに注目。登山用のレインウェアだからこそ備わり、ユーザーにとって優れたメリットになり得る特徴を紹介します。
目次
登山用レインウェアは、防水透湿性さえあればいい?
「なにをいまさら」と思われるかもしれませんが、これは登山用のレインウェアを選ぶうえで念頭に置いておきたい、とても大切なポイントです。
登山用のレインウェアには、行動中に発生した汗で内側のウェアが濡れるのを防ぐために、防水透湿性が欠かせません。防水透湿性とは「水分は通さずに湿気だけを逃がす」という少々特殊な性能のこと。いまは安価なレインウェアにも備わっているのを見かけるようになったので、すでに知っている人は多いでしょう。
では、防水透湿性さえ備えていれば、どんなレインウェアでも登山用として十分機能するのでしょうか? 答えはイエスであり、ノーでもあります。
登山用のレインウェアにとって防水透湿性は必須条件であり、それさえ備わっていれば、使用上、問題は起こらないと考えられます。しかし、それだけで十分とは言い切れません。軽さや丈夫さ、そして動きやすさも大切なポイントで、複合的に登山に適した性能を備えている雨具が、登山用のレインウェアと言えるのです。
フォックスファイヤー「アクアピークジャケット」の軽さとしなやかさをレビュー

今回テストしたフォックスファイヤーの「アクアピークジャケット」は、同ブランドがラインナップするレインウェアのなかで、最も厳しい環境での使用を想定して開発されたフラッグシップモデルです。
アクアピークジャケット/基本スペック
| 項目 | 仕様 | 特徴 |
|---|---|---|
| 価格(税込) | ¥43,450 | – |
| 防水透湿素材 | ゴアテックス | – |
| 表地 | ナイロン100%(60デニール) | 十分な耐久性を確保 |
| 裏地 | ナイロン100%(C-KNITバッカーテクノロジー) | しなやかな着心地を提供 |
| 重量 | 約350g | – |
使われている素材は「ゴアテックス」。防水透湿性をもつ特殊なメンブレン(※1)に、60デニール(※2)のナイロンの表地とC-KNITバッカーテクノロジーを用いたトリコット(※3)の裏地を貼り合わせた3層構造で作られています。
※1:メンブレン 防水透湿性をもつ膜。フィルムのように極めて薄い
※2:デニール 生地に使われている糸の太さを表す単位。生地の厚みの目安になる
※3:トリコット 経編(たてあみ)で編まれた編み物の一種

商品の宣材写真や着用イメージを見る限り、張りがありそうな生地感や雪山で用いられるハードシェル(※4)のようなパリッとした佇まいから、軽そうな印象を一切受けませんでした。どちらかと言うと「強い」「重い」「丈夫」という堅牢性にまつわるワードが浮かんでくるビジュアルです。
しかし、実際に触れてみるまで製品の本質はわからないもの。手渡されたジャケットを掴んだ第一印象は「意外と軽い!」。もちろん、重量が200g前後しかない超軽量モデルと比べると重いという評価になりますが、ごく一般的な登山用のレインウェアの範疇で分類するなら平均的。もしくは、感覚だけで判断するなら軽量モデルと言っても差し支えないレベルです。
※4:ハードシェル 防水透湿性をもつ雪山登山用のアウター

レインウェアは必須装備ですが、多くはバックパックの中にしまわれている時間が長いため、軽ければ軽いほど体への負担が減り、コンパクトに丸められるほどバックパックの中でかさ張りません。
さらに、生地がかなりしなやかで、まったく硬くない点も好印象。これは、ゴアテックスメンブレンの厚みが従来から薄くなったことと、裏地にC-KNITバッカーテクノロジーを用いたトリコットを採用したことに起因しています。

C-KNITバッカーテクノロジーとは、より細い糸を使い特殊な編み方で裏地を作る技術のこと。目を凝らすとアクアピークジャケットの裏地にその編み目模様を確認できる
とはいえ、一般的な登山用レインウェアの表地には20デニール前後の素材が使われるものが多いなか、アクアピークジャケットの表地は60デニールの厚みがあるので、生地がしなやかでも強度に不足はありません。
この生地感を身近なものでたとえるなら、“辞書に使われている紙”に近いかもしれません。表面はツルツルしていて、質感はしなやかな、そして薄さのなかに丈夫さもある。実際の生地はもう少し厚みがありますが、ニュアンスとしては概ね的を射ているのではないでしょうか。
釣り由来の技術を投入!フォックスファイヤーのレインウェアが誇る抜群の動きやすさ
真っ先に重量と生地感に目が行きましたが、注目すべき特徴はほかにもあります。なかでも特に印象的だったのが、肩回りの動かしやすさと、首元に配置されているトリコットのパネルです。
フォックスファイヤーは、1982年に4型のフライフィッシングベストから始まった国内ブランド。元々フィッシングに造詣が深く、現在はそのノウハウを生かした質の高い登山用ウェアを数多く展開しています。
釣り由来の技術はアクアピークジャケットにも投入されており、肩回りの動かしやすさはその筆頭。竿を振ってルアーやフライなどを水面に投げ込む「キャスティング」の動きを妨げない独自のパターンを用いることで、岩場で大きく腕を上げるような動作もストレスフリーで行える動きやすさを実現しています。

登山中、ルートによっては腕を伸ばして段差を乗り越えたり、険しい岩場を登ったりする場面があります。そのときにウェアの生地が突っ張るようだと、行動が妨げられてストレスに感じるもの。微々たるストレスも積み重なると疲労の原因になるので、ウェアはなるべく動きやすいものを選ぶことをおすすめします。
こだわりのパターンは外観からもはっきりと確認でき、肩甲骨から脇下を通って袖口に向かう曲線的な縫い目がそれにあたります。
縫製作業や縫い目に止水テープ(※5)を貼り合わせる作業の効率を考えると、生地のパターンはなるべく直線的に設計したほうが好ましいといえます。しかし、ウェアを立体的なボディラインに追従させるために、アクアピークジャケットには、あえて大胆にカーブする特殊な形が採用されているのです。
※5:止水テープ 生地に貼り合わせて縫い目からの水の浸入を防ぐテープ

縫製には複雑なパターンを組み合せる高い技術が用いられている
その工夫による動きやすさは、実際に腕を動かしてみると一目瞭然。とにかく肩回りの生地が突っ張りません。その着心地は、登攀(とうはん)向けに開発されたハードシェルなどに匹敵すると言っても過言ではないでしょう。
それとは別に、首元に配置されているトリコットのパネルも興味深い作りでした。これはなにかというと、皮脂汚れを防ぐ「防汚パネル」です。

黒く見える生地が防汚パネル。幅の広さにもこだわりが伺える
レインウェアは汚れを放置すると、メンブレンの劣化や生地の剥離などが発生し、防水性が低下することがあります。その弱点を補うために考えられたのがこの防汚パネルで、特に肌と直接触れやすい首元に配置して汚れが付着するのを防止。結果として、レインウェア全体の寿命を延ばす効果があります。
この防汚パネルはすべてのレインウェアに備わっているわけではなく、軽量化やコストを抑える目的で省かれているウェアも少なくありません。だからこそ、この首元を見たときに「細部まで実用性を考えて作られているんだな」という好印象を抱きました。クオリティの高さを裏付ける玄人好みのディテールといえるでしょう。
ダブルジッパーや防汚パネルなど、登山を快適にする「アクアピークジャケット」の機能をチェック
アクアピークジャケットはほかにも、「使い勝手がいい」と思わせる機能を複数備えています。
アクアピークジャケット/機能
| 名称 | 詳細 | メリット |
|---|---|---|
| 3点アジャストフード | 首元と後頭部の3ヶ所でフードのフィット感を調整 | フードが頭の動きに追従するので、視界が妨げられにくい |
| マチ付きの大型ハンドポケット | 左右2ヶ所。縦方向のファスナーで大きく開く。底に水抜き穴が付いている | マチが付いているので、グローブやネックゲーターなど、かさ張るアイテムを収納しやすい |
| フロントダブルファスナー | 上下からファスナーを開けることができる | 下から開けるとウェア内の空気の循環を促せる |
| 袖のベルクロテープ | ベルクロテープで袖をまとめられる | 袖からの雨風の吹き込みを軽減できる |
| 裾のドローコード | 裾をすぼめて体との隙間を減らすことができる | 裾からの雨風の吹き込みを軽減できる |
まずフードは、後頭部と首元の3点でフィット感を調整可能。しっかりアジャストさせるとフードが顔の動きに追従するので、横を向いたときに視界が遮られることがありません。さらに、ヘルメットの上からも被ることができる深さがあるので、岩場や岩稜帯を含むルートにも対応します。

ドローコードを引っ張るとフードが頭にフィットする
次に、腹部にはマチが付いている大型のハンドポケットを装備。紙の地図が余裕で入る大きさがあり、かさ張るグローブやネックゲーターなども効率よく整理できます。また、底部に排水用のドレインホールが設けられているので、ポケットの中に雨水が溜まる心配がありません。

もちろん「山と高原地図」も問題なく収納できる
最後に、フロントファスナーにはダブルジッパーを採用。下側からフロントファスナーの開けることで、ウェア内の換気を促すことができます。
じつは、アクアピークジャケットには唯一の懸念点として、ベンチレーション(※6)が備わっていないことが挙げられます。脇下に専用のファスナーがなく、ハンドポケットの内側もメッシュ仕様になっていないので、ウェア内の湿気を逃がすには、このダブルファスナーを開いて空気の循環を促すしか方法がありません。この作りを「問題ない」と捉えるか、「物足りない」と捉えるかは、ユーザーによって意見が分かれるところでしょう。
※6:ベンチレーション 換気口。ウェアでは内側の湿気や体熱を逃がす役割がある

フロントファスナーを下から開けると涼しい空気を取り込める
今回のテストでは、長時間着たまま行動するチャンスがなかったので、実際の蒸れ感までは検証できませんでした。しかし、そこは評価の高いゴアテックスが使われているので、心配ないといえるでしょう。
それ以上に着目すべきは、「本体の軽さ」と「生地のしなやかさ」、そして「肩回りの動きやすさ」だと思います。
超軽量ではなく、かといって重くもなく、山岳環境に対応する耐久性を備えながら、十分軽い。そのうえで、こだわりの立体裁断によって腕を上げやすいため、登攀的な動きを求められる場面でもストレスを感じにくい。この「軽さと強さの高バランス」、そして「対応するフィールドやシーンの幅広さ」が、アクアピークジャケットの本質であり、最大の強みといえるのではないでしょうか。

防水性と撥水性は心配なし。雨でも安心して行動できる
「百聞は一見に如かず」という言葉のとおり、製品の本質は実際に触れるまでわかりません。この記事を読んで興味をもった方は、ぜひ店頭で着心地を試してみることをおすすめします。
Amazonでフォックスファイヤーの
アクアピークジャケットを探す





