慣れた頃が要注意?登山時にひそむ危険とは 誰もが頷く!?登山あるある

登山は美しい自然を楽しめる反面、常にリスクと隣り合わせのアクティビティです。道迷い、転倒、滑落、落石、落雷、動物との遭遇など、「登山の危険」は低山・高山を問わず起こり得ます。さらに近年は、豪雨や増水といった異常気象によるリスクも増加しています。

この記事では、登山初心者が知っておくべき代表的な危険とその対策をわかりやすく解説します。危険を正しく理解し、備えることで、より安全に登山を楽しみましょう。

2025年5月12日 更新

今回の登山あるあるは?

 
 
 
 

 


キャラクター紹介:山都 ちず子(やまと ちずこ)
友達の誘いにのって登山を始めたものの、今ではその魅力にどっぷり。
日帰りから小屋泊、テント泊まで色々チャレンジしてみたい!
最近の悩みは、週末が近づくと山の天気が気になって仕事が手につかないこと

 

家では騒ぎ倒すほど虫が苦手なちず子ちゃん。一方で、山中のテント内に現れた虫には素手で対抗できるようです。

山中という極限状態だからこそなせる技なのか、それとも、登山をやる人にとっての「嫌な慣れ」ってやつなのでしょうか‥。

さて、上記の嫌な慣れは置いておくとして、人間誰しも慣れてきた頃が一番注意散漫になるもの。ここらで一度、登山時にひそむ危険を改めて確認してみましょう!

 

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登山時の危険1.道に迷う

 

もし道に迷ってしまったら、分かる場所まで引き返すのが鉄則です。登山道から外れて沢や谷に下るのは非常に危険で、滑落事故につながりかねません。

登山道中にも道標をはじめとして、手書き看板や岩へのマーキングによって正しい方向を案内しているものもあります。地図と併せて確認してみましょう。道迷いを防ぐにはこまめに地図をチェックするのが一番。要所で現在地を確認する癖をつけましょう。

また、大前提として余裕のある登山計画を立てることが大切です。時間に余裕があれば、多少のミスは取り返すことができます。焦りはトラブルを拡大させるだけです。

道迷いの対策

「迷った?」と思ったらすぐに引き返そう

 

山の中には、林業用の作業道や、動物の踏み跡など、登山道ではない道もたくさんあります。また、谷筋や尾根沿いなど、道がなくても間違って踏み入りやすい箇所も。道が不明瞭だったり荒れていたりして「何だかおかしいな?」と感じたときは、すぐに現在地が分かる場所まで引き返しましょう。

出発前に歩くコースをイメージしておこう

道迷いを防ぐために、地図を見ながら自分が歩くコースをイメージしておきましょう。たとえば「歩きはじめは樹林帯の斜面で、尾根に乗り上げてしばらくすると分岐が出てくる」など、あらかじめ把握しておくことで「あれ?尾根に乗ったのに分岐が出てこないぞ?」など、道に迷う前に、間違いに早めに気が付くことができます。

登山時の危険2.怪我や捻挫


画像:123RF

怪我や捻挫をしてしまった際、自力での下山が難しい場合は速やかに救助を呼びましょう。

一日の中でも午前中と昼頃、さらに詳しく見てみると山行計画の最終日、下山時での救助要請が多いとされています。疲労が蓄積している最終日、帰宅できるという安堵感も加わって、うっかり足を滑らせて怪我に至ってしまった‥そんなケースが怪我や捻挫を引き起こしてしまうのでしょう。

こうした事例は日本アルプスなどの高山エリアのみならず、低山エリアを含むすべての山域に言えることです。集中力の途切れやすい下山時も、最後まで気を引き締めて歩きましょう。疲れてきたなと思ったら、迷わず休憩をはさみましょうね。

怪我や捻挫の対策

無理のない計画を立てよう

 

転倒や滑落のリスクを増大させる原因は疲労です。肉体的な疲労だけではなく、精神的な疲労にも注意が必要です。歩行時間やコースの難易度など、体力や技術に見合った計画を立てましょう。

地形をよく観察して歩こう

 

岩場を通過するときは、足元ばかりを見てしまいがち。足元だけでなく、少し先までどんな地形なのか目を配って歩きましょう。さらに遠く、数メートル先の地形まで確認しておくと、道迷いの防止にもなります。

登山時の危険3.危険動物や虫

 

熊などをはじめとする危険動物に遭遇した際に、絶対にしてはいけないのは大声を出して相手を刺激すること。熊鈴などを付けて、先だって相手がこちらの存在に気が付くようにしておきましょう。

遭遇してしまった場合には、無関心なふりを装って静かにその場を離れるのが一番です。猿は目が合うと威嚇されたと勘違いして襲ってくる場合もあるので、遭遇しても目を合わせすぎないように。

加えて注意が必要なのは蛇やスズメバチ、アブ。これらは黒い服に寄ってくる習性があるため、そのような格好はなるべく避けたほうが無難です。

危険動物や虫の対策

サルと遭遇した場合

不用意に近づいたり、食べものを与えたりしないこと。目を合わせると飛びついて攻撃されることもあるので要注意。できるだけ距離を保ち、ゆっくりと通り過ぎましょう。相手にしないことがいちばん大事。

クマ・イノシシと遭遇した場合

クマやイノシシに出会わないように、人の存在を彼らに知らせることが大事。おしゃべりをしたり、熊鈴を鳴らしたりして、「ここに人がいるよ」とアピールしましょう。

スズメバチと遭遇した場合

スズメバチを見つけたら、ゆっくりとその場を離れること。手ではらったり、走って逃げたりすると逆効果。また、黒いものを攻撃したり、強いにおいに引き寄せられる特性があるので覚えておきましょう。黒い髪の毛はねらわれやすいので、帽子をかぶっておくと安心。ハンドクリームや香水など、強いにおいは身につけないようにしましょう。万が一、刺されたときのために、ポイズンリムーバーを用意しておくと安心です。

その他

マムシやヤマカガシなどのヘビにかまれたときは、すみやかに病院へ行くこと。現場での処置は、傷口よりも心臓に近いところを軽くしばって、水があれば傷口から血を絞り出しながら洗い流します。ポイズンリムーバーで傷口を吸引してもいいでしょう。ヒルが皮膚についていたら、無理矢理はがさず、塩をかけたり火であぶったりして落とします。傷口は水で洗い、ガーゼなどで軽くおさえれば血は2時間くらいで止まります。マダニも無理に取ろうとすると、口だけ皮膚の中に残ることがあるので、病院で取ってもらったほうがベター。病気を媒介することもあるので、早めに病院へ行きましょう。

登山時の危険4.天気や自然災害

 

山の天気は崩れやすいもの。山地の影響を受け、強い上昇気流が生じやすい山の天気は、想像以上に厳しい状況を作り出します。

特に夏山で注意したいのが、積乱雲(入道雲)に伴う雨、風、そして雷です。最近は予報精度が上がり、また山小屋でも天気情報を得ることができるようになったため、行動指針の当てとしてとても役立ちます。しかし局地的な気象の変化にはその場で対応せざるを得ません。

真夏の3,000mの稜線では「10時過ぎたら雲が広がり、昼過ぎには雷雨」くらいに想定して、登山計画を慎重に立てるのがポイントです。

悪天候や自然災害への対策

豪雨・増水

 

近年は、予測できない雷雨や急な豪雨が増えてきています。雲がたくさん湧いてきた、風が冷たくなるなど、環境の変化を感じたら、計画を変更するなどして雨に備えましょう。麓や標高の低い場所が晴れていても、山頂付近では雨が降っていることも少なくありません。

また、渓流の近くを歩くときなどは、川の水の様子もよく見ておきましょう。にごっていたり、水量が多かったりすれば、急に増水する可能性もあるので要注意。膝より上まで水があるときは、水流に足を取られて前に進むのが難しくなります。腰まで水があると、水流を体幹で受けることになり、立っているだけで精一杯。増水した渓流を無理に渡渉するのはやめましょう。

落雷

 

標高の高い場所では、昼過ぎから雲が湧いて、雷雨になることも。雷に遭わないためには、早めの出発と早めの到着が不可欠です。外にいる時に雷が鳴り始めてしまったら、近くの樹林帯やくぼんでいるところに避難しましょう。その際、木の真下ではなく、枝からは3、4m以上離れたところで姿勢を低くすること。また岩場にある鉄製のハシゴや鎖、水たまりは雷の通り道です。絶対に避けましょう。

稜線に出ているのであれば少しでも下って標高を下げることも対策としてあげられます。特に山頂や突起部分に居た場合は、すぐにその場から離れましょう。

落石

慎重な足運びを心がける

 

岩場やガレ場などでは、落石を起こさないように慎重に歩きましょう。足を引きずったり、かかとから地面に着地することのないように、歩幅をせまくして足裏全体で地面をしっかりと踏みつけます。また、落石があったときに避けられるよう、岩場では前の人と距離を保って歩きましょう。

落石があったら周囲に知らせる

 

落石があったら、すぐに「らく!」と叫ぶこと。落石の方向に向かって大声を出します。また谷間の急な斜面などでは、まわりの状況を確認しながら歩くことが大事。自分が起こした落石でなくても、落石を見つけたらすぐに周囲に知らせましょう。

火山

日本には活火山が111もあります。活火山とは、過去1万年以内に噴火した火山および現在活発に活動する火山のこと。出発前には現在の火山活動状況を確認しておきましょう。気象庁や自治体のHPなどで、最新の情報が得られます。

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危険を避け安心安全な登山を楽しむために

今回紹介した登山時の危険は数あるうちの一部です。

ここで「ええ!この他にも危険なことが沢山あるの?」と思うか、「よし!ここに書いてある危険性は把握できたから、他のも調べて対応策を考えてみるぞ!」となるかはアナタ次第。

事前に登山時の危険性を知り、その対応策を練っておくことで有事の際でも冷静に対処する事が出来るはずです。

不安要素をひとつひとつ潰して、安心安全に登山を楽しんでくださいね。

 

記事中イラスト:ホシノアンリ
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マンガ作画担当:小島 えいゆ さん
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