白駒池ハイキングで苔むす森へ 雨の日に訪れたい幻想のトレイル

長野県・白駒池周辺は、苔に包まれた原生林が広がる人気のハイキングエリア。雨の日はコケが潤いを増し、まるで“もののけの森”のような神秘的な風景に出会えます。

初心者でも歩きやすいコースや見どころ、アクセス情報を詳しく紹介します。

2025年4月8日 更新

白駒池ハイキングの出発点は「麦草峠」から|アクセスとコース概要をチェック

 
麦草峠から入山し、いざ苔の森ハイキングへ! 

白駒池ハイキングの起点となるのが、標高2,127mに位置する「麦草峠(むぎくさとうげ)」。日本の国道の中でも2番目に高い場所を通る峠道で、北八ヶ岳と南八ヶ岳の境界に位置しています。「メルヘン街道」の愛称でも知られ、ドライブや登山の名所としても親しまれています。

アクセス情報
東京から:中央自動車道で約3時間。諏訪南ICを降りて国道299号線へ。
大阪から:約6時間。

麦草峠周辺には駐車場が整備されており、5月〜11月の登山シーズンには多くのハイカーが訪れます。初心者向けのルートも豊富で、季節や体力に合わせて気軽にコースを選べるのが魅力です。

 
八ヶ岳のトレードマークの一つ。霧漂う幻想的な「白駒池 」 

麦草峠周辺には駐車場が整備されており、5月〜11月の登山シーズンには多くのハイカーが訪れます。初心者向けのルートも豊富で、季節や体力に合わせて気軽にコースを選べるのが魅力です。

中でも人気なのが、白駒池を中心とした周回ハイキングコース。幻想的な苔の森、開けた展望地、静かな湖畔など、多彩な風景が楽しめます。所要時間は約4〜5時間と半日あれば十分楽しめる行程で、日帰りハイキングにもぴったりです。

今回は麦草峠を起点に、ぐるりと反時計回りに一周するコースを紹介していきます。

コース概要
【スタート】麦草峠駐車場 ⇒(5分)⇒ 麦草ヒュッテ ⇒(30分)⇒ 丸山の森 ⇒(15分)⇒ 丸山 ⇒(30分)⇒ 高見石小屋 ⇒(5分)⇒ 高見石 ⇒(5分)⇒ 高見石小屋 ⇒(20分)⇒ 高見の森 ⇒(10分)⇒ 白駒池 ⇒(10分)⇒ もののけの森 ⇒(5分)⇒ 青苔荘 ⇒(10分)⇒ 白駒の奥庭 ⇒(5分)⇒ 黒曜の森 ⇒(10分)⇒ 麦草ヒュッテ ⇒(5分)⇒ 【ゴール】麦草峠駐車場

白駒池ハイキングの前にチェックしておきたいポイント

・登山届:登山口にポストがありますので、事前に記入したものを提出しましょう。

・トイレ:駐車場および山小屋に設置されています(※山小屋は有料)。

・服装・装備:防水性のあるレインウェアや滑りにくい靴で臨みましょう。

・食料・水分:途中購入できる場所は限られています。あらかじめ準備を忘れずに。

登山者が少ない「丸山の森」でコケの森を独占体験

 
苔に覆われた林床を眺めながら、静かな丸山の森を歩く

麦草峠からハイキングをスタートして最初に目指すのは、「丸山の森」。登山道は緩やかな勾配で、足慣らしにもちょうどよく、初心者でも安心して歩き始められます。途中にある「麦草ヒュッテ」を通過し、5分も歩けば分岐が現れるので、標識に従って丸山方面へ進みましょう。

分岐から5分も歩くと、針葉樹林が生い茂る原生林に入っていきます。足元を見れば、びっしりとコケが広がる幻想的な風景が。コメツガやシラビソなどの樹々の下、雨や霧で潤ったコケたちは深く鮮やかな緑をまとい、森の静けさに包まれながらのんびりとした時間が流れます。

スタートから35分ほどで第一ポイントの「丸山の森」へ到着です。

 
原始の風景が残る「丸山の森」。静寂とコケが支配する癒しの空間

丸山の森を含むこの八ヶ岳山麓は、日本に生えるコケの4分の1以上が生息していることで知られています。その種類は実に485種類!2008年には「日本の貴重なコケの森」としても選定され、学術的にも非常に価値の高い場所です。

晴れの日はもちろん、特におすすめなのが雨や霧が立ち込めるしっとりとした天候。コケが水を含んで輝きを増し、幻想的な美しさが際立ちます。

 
コケと倒木が織りなす神秘の風景。息を呑む静けさが広がる

丸山の森はコースの外れに位置しており、ほかのスポットに比べてハイカーも少なめ。誰にも邪魔されることなく、しっとりと潤った苔のじゅうたんや、倒木の上に広がるコケの世界を独り占めできます。まるでジブリの世界に入り込んだような、不思議な感覚を味わえるはず。

森を抜けると、すぐに「丸山」の山頂に到着。ここは展望はないため、軽く足を止めたら次の目的地「高見石」へと進みましょう。

岩峰・高見石の山頂を経て、霧雨で輝く「高見の森」へ

 
登山道の中継地点・高見石小屋に到着。ひと休みにも最適なスポット

丸山からなだらかな下りと登りを繰り返しながら約30分。やがて赤い屋根が目印の「高見石小屋」に到着します。ここは白駒池周辺ハイキングの中間地点にあたる人気の山小屋で、休憩や宿泊にも対応。体力や天候に応じて無理のない行動計画を立てることができます。

高見石小屋から5分ほど登ると、名前の由来にもなっている「高見石」の岩場に到着。道中はゴツゴツとした岩が続き、特に雨の日は滑りやすくなるため、足元には十分注意が必要です。レインウェアの裾が引っかからないように調整しながら進みましょう。

 
白駒池が霧の中に浮かぶ幻想的な風景。高見石山頂からの眺め

高見石の山頂に立てば、眼下には白駒池、遠くには北八ヶ岳の稜線やアルプスの山々が広がります。天候が良ければ絶景が楽しめますが、霧や小雨に包まれた日もまた趣があります。幻想的に浮かび上がる白駒池は、晴天では味わえない美しさを見せてくれるでしょう。

そのまま白駒池方面へと下っていくと、「高見の森」と呼ばれる絶景エリアに入ります。

 
しっとりと潤った森に包まれる「高見の森」。深い癒しを感じるひととき

「高見の森」は、針葉樹の林床を苔が美しく覆い尽くす、まさに“緑の回廊”。雨や霧の直後は特に鮮やかさが際立ち、目に映るすべてが濡れた緑に輝きます。登山道はゆるやかで歩きやすく、自然の美しさをじっくりと味わうのに最適なエリアです。

倒木や岩を覆う苔の模様、木漏れ日が揺れるコケの絨毯――どこを切り取っても絵になる風景が続きます。足を止めて、静寂の中で深呼吸すれば、森のエネルギーがすっと体にしみわたるような感覚に。

この静けさと美しさが、「白駒池ハイキング」が多くの人を惹きつけてやまない理由の一つです。

白駒池の畔を歩き、八ヶ岳が誇る「もののけの森」に出会う

 
標高2,000m超に広がる神秘の湖・白駒池

高見の森を抜けて10分ほど歩くと、神秘的な湖「白駒池」の湖畔にたどり着きます。背後の白駒峰の噴火によって誕生した堰止湖で、標高2,000m以上にある池としては日本最大規模を誇ります。

湖畔の遊歩道から見渡す景色は、対岸の原生林が水面に映り込む幻想的な光景。季節や天候によってさまざまな表情を見せ、訪れるたびに新たな発見があります。

 
ジブリの世界を思わせる「もののけの森」へ

白駒池の北東部、池畔の道から森の奥へと分け入ると、「もののけの森」と呼ばれる特別なエリアへと入っていきます。ここは白駒池周辺でも特に人気の高いスポットで、苔がびっしりと広がる原生林に足を踏み入れれば、まるで映画『もののけ姫』の世界に迷い込んだかのよう。

雨や霧が加わることで、苔の緑はより濃く、深く、しっとりとした空気に包まれます。倒木や岩の表面、木の根元にびっしりと生える苔たちが、太古の自然の力強さを感じさせてくれます。

 
登山者の憩いの場「青苔荘」で一息

もののけの森を抜けた先に現れるのが、白駒池を代表する山小屋のひとつ「青苔荘(せいたいそう)」。長年にわたり多くのハイカーに愛されてきたこの山荘では、飲み物やお菓子を購入できるほか、名物のカレーなど温かい食事も楽しめます。

山荘の中にはハイカーたちの写真がずらりと飾られ、登山文化が根づいた場所であることが伝わってきます。歩き疲れた足を休めつつ、静かな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

白駒の森でコケの回廊の情緒を味わい、奥庭・黒曜の森へ

 
神秘的な雰囲気漂う「白駒の森」。整備された木道をゆったりと進む

青苔荘でひと息ついたあとは、白駒池の森を象徴する「白駒の森」へ。ここは人通りも多く、よく整備された木道が続くため、初心者や家族連れでも安心して歩くことができます。

しかしその歩きやすさとは裏腹に、森の美しさは圧巻。巨木の根元まで広がるコケの絨毯や、まっすぐ空へと伸びる原生林が、まるで神殿のような空間をつくり出しています。雨上がりには苔の一つひとつが潤い、鮮やかな緑が辺りを包み込みます。

 
森の中で突如開ける「白駒の奥庭」。八ヶ岳の静かな絶景が広がる

木道を進んでいくと、森の雰囲気がふっと変わる場所に出ます。ここが「白駒の奥庭」。まるで森林限界のように木々が低くなり、シャクナゲやハイマツが群生する開けたエリアです。

視界がぱっと広がるこの場所では、苔と原生林だけでなく、空や遠景の山々とのコントラストも楽しめます。まるで隠された庭園のような雰囲気は、まさに“奥庭”という名にふさわしいスポットです。

 
古代の道具にも使われた黒曜石が転がる「黒曜の森」

奥庭を過ぎたら、コースは最後の「黒曜の森」へと入っていきます。この一帯は、雨上がりに地面をよく見ると黒曜石が見つかることでも知られるエリア。黒曜石は光沢のある黒色の火山岩で、かつて石器の素材として使われていた歴史ある天然石です。

コケに覆われた森に、時折顔をのぞかせる黒曜石の輝き。まるで古代の記憶が眠っているかのような、不思議な魅力に満ちています。

雨の日こそ訪れたい、白駒池ハイキングの魅力

 
雨粒に濡れたコケが輝きを増す。白駒池ならではの静謐なひととき

一般的にハイキングは晴れた日に楽しむものと思われがちですが、白駒池周辺では“雨こそがベストコンディション”とも言える魅力があります。

特にコケが主役のこの森では、雨に濡れたことで苔がいっそう鮮やかに色づき、林床は潤いに満ちた幻想的な雰囲気に包まれます。しとしとと降る雨音や霧がかった樹林が、まるで物語の中に迷い込んだような気分にさせてくれます。

高見石からはアルプスや八ヶ岳の山並みを望むこともできますが、たとえ展望がなくてもがっかりすることはありません。コケや原生林にフォーカスして、しっとりとした森の表情を楽しむのも、この場所ならではの過ごし方です。

取材・文・写真:土庄雄平

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