上高地ハイキング完全ガイド 初心者向けモデルコースと行き方・アクセス方法を解説

上高地でハイキングを楽しみたい初心者の方に向けて、モデルコースとアクセス方法を丁寧に解説します。標高1,500mの上高地は、清流・梓川と穂高連峰が織りなす絶景が魅力。

この記事では、大正池や田代池、河童橋、明神池、小梨平などの見どころをめぐるハイキングコースを紹介し、電車・バス・車を使った行き方もしっかりカバー。上高地ハイキングの計画に役立つ情報を、初心者にもわかりやすくまとめました。

2025年4月15日 更新

上高地ハイキングの魅力とは?誰でも楽しめる特別な山岳景勝地

 
大正池からの焼岳。力強いフォルムが勇ましい

上高地は、北アルプスの山々に囲まれた標高約1,500mの山岳景勝地。雄大な穂高連峰や清らかな梓川の流れ、美しい湿原や森林が広がり、四季折々の自然を身近に感じられる場所です。

ハイキングの難易度も低めで、整備された遊歩道を中心に歩くため、初心者や体力に自信がない方でも気軽にトレッキングを楽しむことができます。また、上高地エリアは「特別名勝」「特別天然記念物」の二重指定を受けており、その自然環境の価値は国内屈指。山岳信仰や文化も息づく、知的好奇心も満たされる特別なフィールドです。

この記事では、日帰りで無理なく満喫できるモデルコースを中心に、アクセス方法や見どころをわかりやすく解説。初めての上高地でも安心して計画できるよう、ポイントを押さえてご紹介していきます。

上高地へのアクセス 電車・バス・マイカーの行き方

 

上高地へは、マイカー・電車ともにアクセス可能ですが、自然保護の観点から上高地へ直接自家用車で乗り入れることはできません。最寄りのバスターミナルや駐車場でシャトルバス・タクシーに乗り換える必要があります。

アプローチは大きく2ルート

松本・沢渡(さわんど)ルート(長野県側)
電車の場合:JR松本駅から、アルピコ交通「上高地線」で終点・新島々駅まで約30分。そこからバスで沢渡駐車場や上高地へ。

車の場合:長野自動車道・松本ICから国道158号を経由し、市営第二・第三駐車場へ。沢渡ナショナルパークゲートから上高地行きバスまたはタクシーに乗車。

沢渡ナショナルパークゲートは観光案内機能も備えており、足湯やトイレも完備。上高地散策前の準備に最適です。

 br>上高地ハイキングの拠点、沢渡ナショナルパークゲート

高山・平湯ルート(岐阜県側)
電車の場合:JR高山駅から平湯温泉行きのバスに乗車。平湯温泉バスターミナルで上高地行きバスに乗り換え。

車の場合:中部縦貫自動車道・高山ICから国道158号経由で平湯温泉方面へ。途中の「あかんだな駐車場」で乗り換えが必要です。

平湯温泉にはリニューアルされた「中部山岳国立公園ビジターセンター」もあり、上高地の自然や文化に触れることができます。

 
中部山岳国立公園ビジターセンター

上高地ハイキングモデルコース 大正池から明神池まで、見どころをめぐる半日ハイキング

上高地の自然をたっぷりと味わうなら、約3時間〜4時間ほどで歩ける「大正池〜河童橋〜明神池〜小梨平」までのハイキングルートがおすすめです。平坦で歩きやすく、バリエーション豊かな景色とスポットが続き、初心者からファミリーまで無理なく楽しめます。

今回歩く上高地ハイキングコース

【スタート】大正池バス停 ⇒ 田代池 ⇒ 田代橋 ⇒ 河童橋 ⇒ 穂高神社奥宮 ⇒ 明神池 ⇒ 河童橋 ⇒ 小梨平 ⇒ 【ゴール】上高地バスターミナル

距離にして約10km、時間にして約3〜4時間ほどのハイキングコースです。

【スタート】大正池からスタート、焼岳と穂高連峰に感動

 
大正池バス停 

上高地行きのバスを「大正池」で降りると、目の前に広がるのは水面が静かに揺れる大正池。奥には噴煙を上げる焼岳の力強い姿がそびえ、池に映る穂高連峰の姿がまさに絶景。ここは写真スポットとしても人気の場所です。

 
大正池から穂高連峰を望む

静かな朝の時間帯なら、水面が鏡のように山々を映し出し、幻想的な風景が広がります。木々の合間に設置された展望デッキからは、焼岳・穂高連峰を一望でき、旅の始まりにふさわしいダイナミックなパノラマに出迎えられるでしょう。

 
焼岳を望む大正池

【大正池〜田代池】静かな林間を歩いて、癒しの清流へ


田代池は水深こそ浅いものの、森林との共演が美しい

大正池からは梓川左岸の遊歩道を進みます。広葉樹の森を抜け、ところどころに現れる清流や木道を渡りながら、自然との一体感を感じるトレイルが続きます。足元には苔むした岩、頭上にはそよ風に揺れるカラマツの葉。木漏れ日のなか、ゆったりとした時間が流れていきます。

20分ほどでたどり着く田代池は、浅く透き通った水面に草原と木々が映る、穏やかな水辺。水底には水草が揺れ、小さな魚影がすばやく走る様子も見られます。季節や時間によって色合いが変わるため、何度訪れても違う表情が楽しめます。

【田代橋〜河童橋】清流沿いの道を歩いて上高地の中心へ

 
田代橋近くにある上高地温泉ホテル前。広々とした展望スポットが広がる。

田代池を後にすると、しばらくして田代橋に到着。ここで梓川の右岸へと渡ります。田代橋近くにある上高地温泉ホテル前からは、雪をかぶった奥穂高岳や六百山の迫力ある姿が視界いっぱいに広がり、再びシャッターを切りたくなる絶景ポイントです。

 
上高地をこよなく愛した英国人宣教師、ウォルター・ウェストン

橋を渡ってから上高地の中心地である河童橋までの約30分は、清流梓川に沿って整備された自然探勝路。季節の花が咲く湿原や、ウォルター・ウェストンを記念したレリーフ、苔むした岩とせせらぎの風景が続き、どこを切り取っても画になる道のりです。

【河童橋〜明神】人気の橋を越え、静寂の森へ

 
河童橋

河童橋に到着すると、まず目に飛び込んでくるのは、穂高連峰と梓川が織りなす絶景。澄んだ川面に山々が映り込み、多くの人が足を止めて写真を撮る人気のスポットです。橋の上には観光客が集まり、活気に満ちています。

 
河童橋からの眺め

にぎやかな河童橋を後にすると、道は次第に観光客の喧騒から離れ、落ち着いた自然の中へと入っていきます。ルートは梓川の右岸沿い。清流のせせらぎを聞きながら、しっとりとした森の中を進む時間は、まるで別世界へ誘われるような感覚です。

 
岳沢湿原とその向こうにそびえる六百山 

ほどなくして現れるのが、岳沢湿原。木道の上からは、青々とした湿原越しに六百山を望むことができ、開放感のある絶景スポットとして知られています。湿原を過ぎると、再び森の中へ。林床に苔が広がる静かな道が続き、ときおり木漏れ日が足元を照らします。

  

アップダウンもほとんどなく、道は穏やか。ゆるやかに右手の山側へカーブを描くように進んでいくと、前方に木造の鳥居が見えてきます。ここが、穂高神社奥宮の入口です。

 
河童橋から明神までの自然探勝路にはみずみずしい樹林が続く 

【明神池~河童橋】穂高神社奥宮と神秘の明神池、再び河童橋へ

 
趣のある穂高神社奥宮の鳥居

穂高神社奥宮の鳥居をくぐって境内に入ると、周囲の空気がぐっと引き締まるような神聖な雰囲気に包まれます。ここは、北アルプスを御神体とする穂高神社奥宮。登山の安全を祈願する人々に長く信仰されてきた由緒ある場所です。

 
鏡のように澄んだ明神池の一之池 

さらに奥へと進むと、静かに水をたたえる明神池が現れます。深い森の中にひっそりと佇むこの池は、まさに神が宿るような空間。


明神池越し明神岳がそびえる 

鏡のような水面に明神岳の山影が映り込むその光景は、時間が止まったような静けさと美しさに満ちています。

池の周囲をめぐる小道を歩きながら、その神秘的な風景をゆっくり堪能してみてください。ここまで歩いてきた疲れも、不思議と癒されていくような感覚に包まれるでしょう。

※明神池は​穂高神社奥宮の神域にあるため、拝観料(大人500円、小学生200円)が必要

澄み渡る水面に明神岳の岩稜が映える神聖な明神池を後にしたら、梓川左岸を通って河童橋方面へ戻ります。こちらは右岸よりも歩く人が少なく、静けさの中で自然を満喫できるコースです。途中、岳沢の水をたたえる湿原を眺めたり、木道を歩いたりと、変化に富んだ道のりが続きます。

【河童橋~小梨平】小梨平でのんびり過ごす

 
小梨平のテント場 

河童橋から上流へと少し進むと、開放感のある小梨平に到着します。ここはテント場やロッジ、食堂、温浴施設も備えた、上高地屈指の滞在スポット。


小梨平付近に広がるカラマツ林。秋は黄金色に染まって美しい 

カラマツやズミの木々に囲まれた空間は、紅葉の時期には黄金色に染まり、静かで美しい時間を味わえます。

 
バイカモが揺れる清水川 

川沿いを流れる清水川では、清らかな流れと水草・バイカモの可憐な姿が見どころ。すぐそばの上高地ビジターセンターでは、自然にまつわる展示や書籍が充実しており、散策の締めくくりにぴったりです。

 
小梨平の入口に建つ上高地ビジターセンター 

【上高地バスターミナルへ】自然の余韻を胸に、帰路へ


ゴールは上高地バスターミナル

小梨平からは、なだらかな道を10分ほど歩いて、上高地バスターミナルへ。

たっぷり自然を感じ、穂高の絶景に心癒された一日。アクセスしやすく、誰もが楽しめる上高地は、また訪れたくなる山の楽園です。

今回のルートは、距離にして約10km、時間にして約3〜4時間ほどのハイキング。高低差が少なく、舗装や木道も整っているため、初心者にも安心して楽しめます。風景の移り変わりが豊かで、どの季節に訪れても新しい発見と感動があるのが、上高地の最大の魅力です。

季節・天候に合わせた楽しみ方

上高地の魅力は、訪れる時期や天候によって表情が大きく変わることにあります。どんなタイミングで訪れても、それぞれの美しさがあります。

晴れの日:くっきりとした絶景を堪能

 
梓川に架かる上高地のシンボルの吊り橋

快晴の日は、澄んだ空気に包まれ、穂高連峰の岩肌や森の緑がくっきりと浮かび上がります。特に10月中旬の紅葉シーズンは、カラマツやナナカマドが山肌を黄金色や赤に染め上げ、まさに絶景。大正池に映り込む穂高連峰や、梓川越しの明神岳など、シャッターチャンスにあふれた1日となるでしょう。

雨の日:しっとりとした静けさを楽しむ

 
雨の上高地は静かで、しっとりとしている 

上高地は雨の日こそ、違った魅力を見せてくれます。濡れた木々や岩肌が色濃く艶やかに輝き、森にはしっとりとした静けさが広がります。夏や秋の雨上がりは、苔や湿地がより鮮やかになり、霧がかかれば幻想的な風景に包まれます。人が少ない分、落ち着いて自然と向き合える贅沢な時間です。

上高地ハイキングの注意点&持ち物

 

安全で快適に上高地ハイキングを楽しむためには、事前の準備が大切です。

マイカー規制と時間帯に注意

上高地は年間を通してマイカーの乗り入れができません。沢渡(さわんど)または平湯の駐車場に車を停め、そこからバスやタクシーでアクセスする必要があります。特に朝の時間帯は混み合うため、余裕を持った行動がおすすめです。

足元は滑りにくい靴で

木道やぬかるんだ道を歩くこともあるため、スニーカーよりもトレッキングシューズがベター。靴底にグリップの効いたものを選びましょう。雨の日は防水性も重要です。

トイレ・補給ポイントは計画的に

上高地内にはいくつかトイレがありますが、距離があるため「事前に済ませておく」意識が大切です。補給ポイントとしては、河童橋周辺に売店やカフェがあり、小梨平キャンプ場には食堂も。最低限の飲み物や軽食は携帯しておきましょう。

防寒・雨具も忘れずに

標高1,500mの上高地は夏でも肌寒い日があります。脱ぎ着しやすい防寒着を持参しましょう。急な雨にも対応できるよう、コンパクトなレインウエアも必携です。

上高地ハイキングは初心者にもおすすめ!


大正池からの風景 

上高地の魅力は、特別な登山経験がなくても、美しい自然の絶景に出会えること。清らかな梓川の流れ、そびえ立つ穂高連峰、静かな森や池……一歩一歩、五感で味わう贅沢な時間が待っています。

今回ご紹介したモデルコースは、歩行時間も長すぎず、道標も整備されているため、ハイキング初心者にもぴったり。加えて、アクセスや服装・持ち物のアドバイスも押さえておけば、より安心して楽しむことができます。

次の休日は、日常を離れて、自然と深く向き合える“上高地ハイキング”へ。ぜひ、あなたもその第一歩を踏み出してみてください。

執筆・写真(一部写真のぞく):山と高原地図「槍ヶ岳・穂高岳」著者 三宅 岳

今回歩いた上高地ハイキングコース

【スタート】大正池バス停 ⇒ 田代池 ⇒ 田代橋 ⇒ 河童橋 ⇒ 穂高神社奥宮 ⇒ 明神池 ⇒ 河童橋 ⇒ 小梨平 ⇒ 【ゴール】上高地バスターミナル

距離にして約10km、時間にして約3〜4時間ほどのハイキングコースです。

【もしもの時のために・・・】紙地図も携行しよう

槍ヶ岳・穂高岳 上高地 2025
登山地図ナビアプリ
山と高原地図ホーダイ
山と高原地図ホーダイ
登山のための専用地図
60年以上の実績を誇る「山と高原地図」がスマホで使える!各山の専門家の現地調査に基づいた信頼できる登山情報アプリ。
登山道、コースタイム情報、コースの見どころ、山小屋や水場など登山者に必須の情報がすべて掲載!