登山の行動食とは?エネルギー切れ=シャリバテを防ぐ補給術

登山の準備といえば、まずは服装や靴に目が向きがちですが、実は「食べ物の準備」もとても大切です。特に、山を歩いている最中に食べる「行動食」は、体力を保ち、安全に歩き続けるための必須アイテムです。
山では普段よりもたくさんのエネルギーを消費するため、食事とは別に、こまめな栄養補給が必要になります。もしエネルギーが不足したまま歩き続けてしまうと、「シャリバテ」と呼ばれる状態になり、疲れやすくなったり、集中力が落ちたりすることも。
この記事では、登山初心者の方にもわかりやすく、「行動食とは何か」「なぜ必要なのか」、そして「シャリバテを防ぐためのコツ」についてご紹介します。しっかり準備して、安心して登山を楽しみましょう。
空腹のままで歩き続けるのは危険

登山は、長時間にわたって体を動かし続ける有酸素運動です。普段の生活よりも遥かに多くのカロリーを消費するため、こまめな栄養補給=行動食が欠かせません。
おにぎりやパン、チョコレートなど、すぐにエネルギーに変わる食べ物を適宜摂ることで、疲労の蓄積や集中力の低下を防ぐことができます。逆に空腹のまま歩き続けていると、血糖値が下がり、体が思うように動かなくなったり、注意力が散漫になって道迷いや転倒といったリスクが高まります。
行動食は、軽量で高カロリー、かつ短い休憩で手軽に食べられるものが理想です。体が疲れて食欲がわかない時には、ゼリー飲料などの飲みやすい食品を活用するのも効果的です。
シャリバテって何?登山者が気をつけたいエネルギー切れ

「シャリバテ」は登山用語で、「糖質不足によるエネルギー切れ」を意味する言葉です。「シャリ」はご飯(炭水化物)、「バテ」は疲労の意。つまり、糖質補給が不十分な状態を指し、以下のような症状を引き起こします。
シャリバテのリスク
筋肉のエネルギー不足で思うように体が動かない
→転倒・つまずきの原因になりやすい。
ミネラル不足で足がつる、貧血気味になる
→特に水分補給が不十分なときに起こりがち。
ビタミン不足で回復が遅れ、疲れやすくなる
→後半の行動や下山に支障をきたすおそれも。
こうした状態を防ぐには、空腹になる前に定期的に行動食を摂ることが重要です。
登山中に必要な3つの栄養素とは?

登山の行動食では、効率よくエネルギーを摂取できる栄養素を意識することが大切です。特に以下の3つは基本といえる栄養素です。
1. 糖質(即効性の高いエネルギー源)
含まれる食品:おにぎり、パン、チョコレート、果物、ようかん、ドライフルーツなど
特徴:すばやく吸収され、すぐにエネルギーに変わる。最も基本となる行動食。
2. タンパク質(筋肉維持・糖質の代謝サポート)
含まれる食品:チーズ、ゆで卵、プロテインバー、大豆製品など
特徴:糖質のエネルギー変換を助ける。筋肉の疲労を防ぐ役割も。
3. 脂質(高カロリーで持続力がある)
含まれる食品:ナッツ類(クルミ・アーモンドなど)、チーズ、バタークッキー
特徴:糖質よりもカロリーが高く、長時間の行動に有効。軽量なのも魅力。
どれくらい必要?行動食のエネルギー量の目安
登山中のエネルギー消費は以下の式で概算できます。
5 ×(体重kg × 行動時間h)= エネルギー消費量(kcal)
例)体重50kgの人が6時間登山する場合:5 ×(50×6)=1500kcal
このうち、昼食で500kcal程度を摂るとして、残り1000kcalの8割=約800kcalは行動食で補うことを目安にしましょう。
約800kcal分の行動食例

おにぎり1個 180kcal
プロセスチーズ2個 120kcal
バナナ1本 100kcal
シリアルバー1本 188kcal
カロリーメイト1本 100kcal
ゼリー飲料1本 100kcal
合計 788kcal
※行動時間や体調によって、必要な量は増減します。自分の体力や登山計画に合わせて調整しましょう。
行動食とは別に持っておきたい非常食・サプリ
長時間の登山や、天候によるトラブルを想定すると、予備のエネルギー補給手段も必要です。
非常食におすすめのもの
保存用バランス栄養食
開けるだけで食べられる長期保存可能な食品(例:登山専用のバータイプ栄養食)

ドライフルーツ
レーズンやマンゴー、パインなど。コンパクトでビタミンも摂れる。

アミノ酸ゼリーやサプリメント
疲労回復を助ける。飲みやすさも魅力。

非常食は基本的に使わない想定のものですが、安心感を高める備えとして持参しておくのがおすすめです。
登山の行動食とシャリバテに関するFAQ
Q. 行動食はどのタイミングで食べればいいですか?
A. 目安としては「1時間ごとに少量ずつ」が理想です。空腹を感じてからでは遅いため、登山開始からこまめに摂るようにしましょう。登りの負荷が強い時間帯は糖質中心、休憩時には脂質やタンパク質も取り入れると効率的です。
Q. 行動食と昼食の違いはなんですか?
A. 行動食は「歩きながら、または短い休憩中に食べる軽食」で、すぐにエネルギーに変換されやすいものが基本です。一方、昼食はしっかり座って休憩を取り、エネルギーを蓄えるためのまとまった食事です。役割が異なるため、両方を準備するのが理想です。
Q. 行動食は甘いものだけで大丈夫?
A. 糖質中心であることは重要ですが、タンパク質や脂質もバランス良く含めることで、疲労の蓄積を防ぎ、持久力の維持に役立ちます。甘いものに偏らず、チーズやナッツ、プロテインバーなども取り入れましょう。
Q. シャリバテになったときの対処法はありますか?
A. まずはすぐに糖質を補給することが最優先です。チョコレートやゼリー飲料、スポーツドリンクなど、吸収の早いものを口にしましょう。その後は少し長めの休憩を取り、無理のない行動計画に切り替えることが大切です。無理に歩き続けると危険です。
Q. 行動食の保存や持ち運びで気をつけることは?
A. 暑い季節は傷みやすい食品を避ける、寒い季節は凍結に注意することがポイントです。ジップ付き袋や個包装タイプを活用し、すぐ取り出せる位置(サイドポケットやヒップベルト)に入れておくとスムーズです。
登山初心者の「食の不安」に応える一冊
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これから登山を始めたい方、行動食についてもっと知りたい方にとって、心強い味方になってくれる一冊です。
行動食でシャリバテを防ぎ、安全な登山を

登山では、行動食による定期的なエネルギー補給が、体力維持と安全登山のカギになります。糖質・タンパク質・脂質をバランスよく摂取し、「シャリバテ」による集中力低下や体調不良を未然に防ぎましょう。
自分の体力や登山の難易度に合わせて、必要なカロリー量を見積もることが大切です。行動食に加えて、非常食やサプリも適宜準備して、安心・快適な山歩きを楽しんでください。
記事中イラスト:ホシノアンリ
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