白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山の魅力を歩いて体感する縦走ルート徹底ガイド

日本の屋根と称される南アルプス。その中でも、北岳(3,193m)・間ノ岳(3,190m)・農鳥岳(3,026m)をつなぐ白峰三山(しらねさんざん)縦走は、アルプスらしいスケール感と静けさを併せ持つ登山ルートとして、多くの登山者を惹きつけてきました。
3,000m級の峰々が連なる稜線は、夏から秋の限られた時期だけ登山道が開かれ、好天に恵まれれば果てしない空と峰が続く絶景を堪能できます。白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山は、縦走の醍醐味と自然の厳しさ、そして静かな達成感を同時に味わえる貴重な山旅でもあります。
本記事では、実際にこの縦走ルートを歩いた経験をもとに、白峰三山登山の魅力や歩き方、ルートの特徴や注意点まで、初めての方にもわかりやすくご紹介します。
目次
南アルプス・白峰三山縦走が多くの人を惹きつける理由

日本で二番目の標高を誇る白峰三山のひとつ「北岳」
南アルプスの北部にそびえる「白峰三山」とは、北岳・間ノ岳・農鳥岳の三座を縦走する登山ルートを指します。日本で2番目の標高を誇る北岳を主峰とするこの稜線は、日本アルプスの中でも屈指の人気を誇り、多くの登山者が一度は歩いてみたいと憧れるコースです。白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山は、縦走ならではの充実感と、雄大な自然との一体感が魅力です。

雲海を背景に、仙丈ヶ岳や甲斐駒ヶ岳などの名峰を望む
この縦走路が多くの人を惹きつけてやまない理由は、標高3,000mを超える峰々が稜線でつながり、雲の上を歩くような非日常感と、360度の大パノラマを同時に味わえることにあります。北には八ヶ岳や中央アルプス、東には堂々たる富士山、西には南アルプスの名峰群。足元に一面の雲海が広がれば、まさに天空を歩いているかのような光景が広がります。

色とりどりの高山植物が咲き、花の名山としても名高い北岳
白峰三山登山が可能なのは、7月〜9月の限られた夏山シーズン。高山植物が咲き誇るこの時期、特に北岳ではキタダケソウなど希少な花々にも出会えます。春先や秋には稜線に残雪が見られることもあり、四季折々の表情を見せてくれるのも魅力です。
一方で、この縦走路はアップダウンが連続する本格的な山行でもあります。風やガスの影響を受けやすく、しっかりとした装備と計画が欠かせません。それでも、だからこそ踏破したときの達成感は格別。情報収集や準備期間も含めて、じっくり向き合いたい山です。
知っておきたい!白峰三山への行き方と登山口の基本情報

登山口は秘境と言える場所にあるが、アクセス手段は充実
白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山の主な玄関口は、山梨県早川町の奈良田温泉郷です。北岳・広河原方面への登山口があり、シーズン中はここから縦走に出発する登山者で賑わいます。アクセスはやや奥地にあるものの、公共交通機関・マイカーどちらにも対応しており、手段は整っています。
公共交通機関でアクセスする場合
新宿駅や甲府駅からは、南アルプス方面への直通バス(南アルプス登山バス)が運行されており、公共交通でも比較的スムーズにアクセスできます。甲府駅から奈良田まではバス1本で到着し、そこから登山者専用バスに乗り換えて広河原へ。
白峰三山登山の起点となる広河原まで、公共交通だけで行けるのも、このエリアの大きな魅力です。前泊で奈良田温泉に宿をとり、静かな山里で体を整えてから出発するのもおすすめです。
車でアクセスする場合
マイカー利用の場合は、奈良田温泉の無料駐車場を利用できます。ただし奈良田から先はマイカー規制があるため、車を置いて登山者専用バスで広河原へ向かいます。
夏山シーズンの早朝はバス乗り場が混雑することもあるため、早めの到着を心がけると安心です。白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山は早朝から長丁場になるケースが多いため、前夜のうちに現地入りしておくと、余裕を持って行動できます。
白峰三山登山のコース概要と縦走ルートの全体像

雲上にそびえる富士山のシルエットが、視界に飛び込んでくる
白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山は、南アルプスの主稜線を縦走する代表的なルートです。広河原を起点に北岳を登り、間ノ岳、農鳥岳を経て大門沢から下山する行程で、全体を通して標高3,000m級の稜線歩きが続きます。
登山道には急登やアップダウンが多く、体力・装備ともにしっかりした準備が必要ですが、稜線からの展望や高山植物、山小屋泊の魅力など、南アルプスならではの景観と出会える充実した山行です。
白峰三山登山開始!しっかりと準備を

爽快な青空のもと、北岳に向けていざ出発
広河原は南アルプス北部登山の一大拠点であり、白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山の出発点として多くの登山者が訪れます。バス停のすぐそばには野呂川広河原インフォメーションセンターや広河原山荘(売店あり)があり、登山届の提出や最新のルート情報の確認も可能です。まずは体調と装備を整え、無理のない計画で歩き始めましょう。
登山口からはいきなり標高差約1,500mを登る急登が始まります。朝食はしっかりとり、十分な水分と行動食を準備しておくことが大切です。広河原には清潔なトイレも整備されているため、出発前に立ち寄っておくと安心です。
【白峰三山登山1日目】清流と高山植物を楽しむ(広河原〜北岳肩の小屋)

吊り橋が登山道へ入る合図。重い荷物を背負いながら一歩一歩進む
白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山のスタート地点である広河原から、いよいよ本格的な山旅が始まります。まずは吊り橋を渡り、清らかな沢沿いの緑豊かな山道へ。朝の樹林帯はひんやりと心地よく、川のせせらぎや野鳥のさえずりが静かに響く中、自然と呼吸が整っていくような感覚に包まれます。

樹林帯を抜けて、白根御池小屋で束の間の休息をとる
緩やかな登りを進むと、登山開始から1時間半ほどで白根御池小屋に到着。冷たく美味しい湧き水が自由に使えるのが嬉しく、軽食や飲み物の販売もあります。テント場も整備されているため、無理せず1泊して体を慣らすのもよい選択肢。特に夏場は午後に雷雨が発生しやすいため、白峰三山登山では早めの行動計画が安心につながります。

標高が上がるごとに、北岳を象徴する高山植物が景色を彩り始める
白根御池小屋から先は、つづら折りの急登へ。標高が上がるにつれて背後の眺望が開け、晴れていれば甲府盆地を見下ろしながらの登高が楽しめます。岩場ではイワギキョウやハクサンイチゲなど、さまざまな高山植物が登山道を彩り、疲れを和らげてくれるはずです。
やがて急坂を登りきると、北岳稜線へと飛び出します。広河原からここまでおおよそ4〜5時間。視界を遮るものがなくなり、振り返れば鳳凰三山や富士山が、雲海の上に浮かぶように現れることもあります。

標高3,000mを超える場所にある北岳肩の小屋とテント場
稜線上の鞍部には、宿泊地となる北岳肩の小屋とテント場があります。風が吹き抜ける場所なので、テントを張る際は風向きを意識してしっかりと固定を。小屋では食事提供や寝具のレンタルもあり、装備に応じて無理なく利用できる体制が整っています。

山の上で見る夕暮れも、まるで映画のワンシーンのよう
晴れた日には、オレンジ色に染まる夕暮れの稜線が、翌日の縦走への期待を高めてくれます。夜になると星空が空一面に広がり、静かで贅沢な時間が流れます。ただし、標高3,000m近い稜線では真夏でも冷え込むため、防寒着や0度近くまで対応できるシュラフは必須。快適な山の夜を過ごすための備えを忘れずに。
【白峰三山登山2日目前半】3,000m級の天空の稜線を満喫(北岳肩ノ小屋〜北岳〜間ノ岳)

標高3,000mの世界で迎える、特別なご来光の瞬間
2日目はいよいよ白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山の核心部へ。標高3,000m級の稜線を歩く、まさに縦走のハイライトともいえる一日です。夜明け前に目を覚まし、テント場や肩ノ小屋の前から眺めるご来光は、夏の南アルプスならではの特別な体験。東の空がゆっくりとオレンジ色に染まり、雲海の彼方に富士山が浮かび上がる瞬間に、前日の疲れも吹き飛ぶようです。

天へと伸びていくかのような、北岳山頂の圧倒的なスケール
冷えた朝の空気のなかでテントを撤収し、装備を整えたら北岳山頂へ。肩ノ小屋から山頂までは約30分の登りです。ピークに立てば、南アルプス南部の甲斐駒ヶ岳や仙丈ヶ岳をはじめ、中央アルプス、八ヶ岳、そして富士山まで見渡すことができます。朝日を浴びながらの絶景は、この先の縦走に向けて気持ちを後押ししてくれるはずです。

天空の稜線とも謳われる白峰三山の縦走路の全貌
北岳を後にし、次のピークである間ノ岳を目指して稜線を進みます。白峰三山登山の醍醐味ともいえるこの区間は、標高3,000m前後の高所が続き、遮るもののない大パノラマが広がります。道幅は比較的広いものの、左右に切れ落ちた斜面も多く、風や天候の急変には十分な注意が必要です。足元に集中しつつも、視線を上げれば壮大な山岳風景が広がっています。

まだ子供の雷鳥が、食べ物を探して可愛らしく歩き回る
運が良ければ、稜線沿いに雷鳥の姿を見ることも。登山道にはチングルマやイワベンケイなど、高山植物の花々が足元を明るく彩ります。中白根山を越え、間ノ岳への最後の登りに差しかかる頃には、標高と疲労の両方が効いてくるタイミング。それでも振り返って見える歩いてきた稜線の長さと高度感が、もうひと踏ん張りを後押ししてくれます。

雲の流れが神秘的に感じられる間ノ岳山頂
間ノ岳の山頂に立つと、次なる目標・農鳥岳とその先の稜線がはっきりと見えてきます。白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山の達成感がこみ上げるとともに、まだ続く縦走への意欲がわいてくる場面。風が穏やかであれば、山頂で小休止をとりつつ行動食や水分を補給し、無理のないペースで次へと歩みを進めましょう。
【白峰三山登山2日目後半】体力勝負の終盤ルート(間ノ岳〜農鳥岳〜大門沢小屋)

1日中ずっと天気が保っているのは珍しい標高約3,000mの世界
間ノ岳の山頂で絶景と達成感を味わったら、いよいよ白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山も後半戦へ。ここから農鳥岳へ向かう稜線は、標高3,000m前後のアップダウンが続き、体力と集中力を切らさないことが求められます。
途中にある農鳥小屋は、縦走の要所として心強い存在。飲用可能な水場があり、悪天候時には避難もできる貴重な拠点です。天候や体調に余裕があれば、小休止をとって行動食を補給し、次の登りに備えておくと安心です。

西農鳥岳から農鳥岳にかけては、縦走の中でもとくに踏ん張りどころ
農鳥岳への最後の登りは、白峰三山縦走の中でもとくに踏ん張りどころ。疲労が蓄積するタイミングだけに、重いザックを背負っての一歩一歩が試されます。それでも登り切った先にある農鳥岳の山頂標識は、ここまでの歩みを実感させてくれる象徴的な場所。晴れていれば、北岳・間ノ岳とつないできた稜線を振り返ることができ、達成感もひとしおです。

脚を酷使する谷沿いのコースなので、無理をせずゆったり下ろう
農鳥岳を越えると、いよいよ本格的な下りが始まります。大門沢小屋までの道のりは、標高差1,300m以上を一気に下る長い区間。急坂が続き足元も滑りやすいため、登山用ストックを活用しながら膝への負担を和らげて進みましょう。とくに白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山は2日目の疲労がピークに達するため、無理のないペース配分が重要です。

あまりの疲れで、夕方にはテントの中で熟睡
やがて大門沢沿いの清流の音が聞こえ始めると、心も少しずつほぐれてきます。水音に耳を傾けながら、焦らず自分のペースで下りましょう。大門沢小屋に無事到着すれば、長い2日目の行程は終了。小屋泊またはテント泊で温かい食事と休息を取り、翌日の下山に備えて早めの就寝を心がけたいところです。
【白峰三山登山3日目】清流と森を楽しむ下山ルート(大門沢小屋〜奈良田下山)

2日間の感動を振り返って、気持ちの良いラスト区間を歩く
白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山の最終日は、大門沢小屋(標高約1,700m)から奈良田温泉へと下る静かな山旅の締めくくり。まるでウイニングランのように、心地よい渓流沿いの下山ルートが待っています。朝の澄んだ空気の中で小屋を発てば、陽射しが本格化する前に行動できて快適。標高3,000m級の稜線で出会った絶景や達成感を思い返しながら、沢音に包まれた森の中をゆっくりと進みましょう。

原生林の生命力。太陽に照らされる緑が眩しい
大門沢沿いの道は、清らかな流れを眺めつつ、ふと立ち止まりたくなる癒しの光景が続きます。アップダウンは穏やかですが、岩場や木の根が張り出している箇所も多く、意外と足元に気を使うルート。登山用ストック(トレッキングポール)を使うと膝への負担も減り、安全に下れます。
やがて森の風景は原生林から明るい里山の雰囲気へと変化し、鳥のさえずりや木漏れ日が心をほっとさせてくれます。長かった白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)縦走が終わりに近づいていることを、しみじみと感じられる穏やかな時間です。

ゴールのバス停に到着し、2泊3日の縦走が無事に終了
林道に出て県道37号線(南アルプス街道)を少し歩けば、ゴールとなる「第一発電所」バス停に到着です。奈良田温泉行きの路線バスは本数が限られるため、出発前に時刻表を確認しておくのがおすすめ。およそ20分のバス移動で、登山の起点だった奈良田へと戻ります。

湯船に身を沈めた瞬間、3日分の疲れが溶けていく
締めくくりには、ぜひ奈良田温泉の「女帝の湯」で、白峰三山の長旅をねぎらいましょう。南アルプスの恵みを含んだやわらかなお湯が、3日分の疲れを芯から癒してくれます。湯あがりには、古民家カフェ「鍵屋」へ立ち寄って、地元の味覚や甘味とともに、白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山の余韻にゆったりと浸ってみてはいかがでしょうか。
白峰三山登山で天空縦走に挑戦を楽しもう

白峰三山でしか味わえない、特別な冒険と感動が待っている
白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山は、南アルプスの名峰を結ぶ縦走ルートであり、夏の限られた期間にだけ体験できる“天空のトレイル”です。稜線を吹き抜ける風の心地よさ、高山植物が彩る足元の景色、眼下に広がる雄大な雲海。ここには、山を歩く喜びのすべてが詰まっています。
標高3,000m級の山々を連続して越えていく行程には、相応の体力と装備、そして天候への柔軟な対応力が求められます。それでもなお、すべてを乗り越えてたどり着いた瞬間に得られる達成感は、きっと一生の記憶に残るはず。白峰三山(北岳・間ノ岳・農鳥岳)登山は、ただのピークハントではなく、「歩く旅」としての深い魅力に満ちた山行です。

万全の準備とリスク対策を整えて、とっておきの冒険にのぞみたい
混雑を避けたい方は、平日の入山や早朝の行動開始を心がけましょう。また、テント場や山小屋の予約状況、バスの運行情報を事前にチェックすることも忘れずに。今回のモデルルートを参考に、自分の体力や経験に合わせた無理のない計画を立て、思い出深い夏山縦走を存分に楽しんでください。
南アルプスの大自然に身を委ね、自分の殻を破る挑戦へ出てみませんか?

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