八甲田山登山ガイド ロープウェーで楽しむ大岳の王道ルート

青森県を代表する名峰「八甲田山(はっこうださん)」は、豊かな自然と温泉地に恵まれた人気の山岳エリアです。最高峰の大岳(標高1,584m)を中心に赤倉岳や井戸岳などが連なり、湿原散策や稜線歩きなど多彩な景観を楽しめます。

春には可憐な高山植物が咲き、秋には山肌を彩る紅葉が広がります。アクセスの良さに加え、登山後に立ち寄れる観光スポットや温泉も豊富です。初心者からベテランまで幅広い登山者を惹きつける八甲田山。今回は、ロープウェーを利用して歩く大岳の王道コースをご紹介します。

2025年9月7日 更新

八甲田山とは?四季を通じて楽しめる自然と火山の名峰


新緑と残雪が織りなす八甲田山の初夏

八甲田山は青森市南部に広がる火山群で、大岳(標高1,584m)を最高峰に、赤倉岳(あかくらだけ、標高1,548m)、井戸岳(いどだけ、標高1,550m)、硫黄岳(標高1,360m)などから構成されています。火山活動によって生まれた地形は多様で、山頂付近には火口跡や湿原が点在し、登山ルートごとに異なる景観を味わえます。


秋に染まる高原の奥にそびえる八甲田山

特に「田茂萢(たもやち)湿原」は高山植物の宝庫として知られ、夏には可憐な花々を目当てに多くの登山者が訪れます。秋には山麓一帯のブナ林が色づき、山全体が鮮やかな紅葉に包まれます。


雪の芸術・樹氷が広がる冬の八甲田山

さらに冬には豪雪地帯ならではの白銀の世界が広がり、樹氷やスキー、スノーシューなど多彩な楽しみ方が可能です。四季折々に異なる姿を見せる八甲田山は、青森を代表する登山エリアであり、一年を通じて豊かな自然に触れられる山岳地帯です。

八甲田山登山口へのアクセスガイド バス・車で行く方法


名古屋や神戸、北海道からも直通の青森空港

青森市街から八甲田山の玄関口となる「八甲田ロープウェー」山麓駅までは、車で30分~1時間ほどです。新幹線を利用する場合は新青森駅からバスまたはレンタカーで約1時間、飛行機利用なら青森空港から車で約30分とアクセスは良好です。山麓駅には駐車場も整備されており、マイカー登山にも便利です。


八甲田の山麓を結ぶ八甲田十和田ゴールドライン

主要道路は「八甲田十和田ゴールドライン(国道103号線)」で、青森市から十和田湖へと続きます。沿線には酸ヶ湯(すかゆ)温泉や谷地(やち)温泉などの名湯があり、立ち寄りスポットとしても人気があります。


豪雪地帯ならではの雪の回廊も名物

冬期は酸ヶ湯温泉までしか通行できませんが、雪の回廊として知られ、四季を通じて景観を楽しめる道です。公共交通を利用する場合は、青森駅や新青森駅から「八甲田ロープウェー」行きのバスが運行しており、登山口までスムーズにアクセスできます。

八甲田山の大岳登山ルート ロープウェー利用で初心者も安心


登山のハードルを下げてくれる八甲田ロープウェー

八甲田山の玄関口となるのが「八甲田ロープウェー」です。標高を一気に上げて山上から歩き始められるため、体力的な負担を軽減できるのが大きな特徴です。ここから赤倉岳や井戸岳を経て、最高峰の大岳を目指すコースをご紹介します。往復はおよそ4~5時間の行程で、日本百名山・八甲田山を比較的気軽に楽しめるルートです。整備された登山道が中心で、初心者でも挑戦しやすい内容となっています。

標準コースタイム
八甲田ロープウェー・山頂公園駅 →(約10分)→ 田茂萢湿原 →(約1時間10分)→ 赤倉岳 →(約10分)→ 井戸岳 →(約20分)→ 大岳鞍部避難小屋 →(約30分)→ 大岳 →(約20分)→ 大岳鞍部避難小屋 →(約55分)→ 毛無岱 →(約1時間45分)→ 八甲田ロープウェー・山頂公園駅

八甲田登山の拠点「八甲田ロープウェー」


八甲田山が見せる壮大なスケールに息をのむ

「八甲田ロープウェー」を利用すると、山麓駅(標高約660m)から山頂公園駅(標高約1,320m)までを約10分で結ぶことができます。車窓からは津軽平野や陸奥湾、岩木山を望む大パノラマが広がり、四季ごとに異なる景色を楽しめます。


冬の八甲田山に並ぶ圧巻のスノーモンスター ※冬は雪山登山装備が必須

冬には一面に樹氷が立ち並び、世界的にも知られる「スノーモンスター」が姿を現します(冬季は雪山登山装備が必須)。山頂公園駅からは田茂萢湿原や赤倉岳方面へスムーズにアクセスでき、大岳を目指す登山ルートの起点としても広く利用されています。観光と登山の両方に対応できる拠点として整備されている点も特徴です。

八甲田ロープウェー
住所:青森県青森市荒川寒水沢1-12
営業時間:9:00~16:20(冬季15:40)
料金:大人片道1,400円、往復2,200円
公式HPはこちら
※最新の情報は公式サイトで事前に確認してください

田茂萢湿原を歩き赤倉岳へ 湿原と展望の景観を楽しむ


八甲田山の緑を映す神秘の田茂萢湿原

ロープウェー山頂公園駅を出発すると、最初に広がるのが田茂萢湿原です。木道が整備されており、池塘(ちとう)や湿原植物を眺めながら歩けます。初夏にはワタスゲやヒナザクラが咲き、秋には草紅葉が一面を染める景観が広がります。


風景が一変するダイナミックな稜線へ

湿原を抜けるとブナ林からハイマツ帯へと植生が移り変わり、赤倉岳へと続きます。登りはやや急ですが、振り返ると陸奥湾の展望が広がります。山頂に立てば、井戸岳や大岳へと連なる稜線が目前に迫り、この先のルートの魅力を実感できるでしょう。

井戸岳から大岳へ 八甲田縦走の展望ルート


井戸岳から広がる火山特有の雄大な地形

赤倉岳から井戸岳へと稜線を進む区間は、八甲田山ならではの景観を楽しめるエリアです。井戸岳からは火口跡がくっきりと残る荒々しい山容が広がり、火山地形の迫力を間近に見ることができます。稜線は風が強いことが多いため、天候状況を確認しながら慎重に進むことが大切です。


目の前に現れる最高峰の大岳、鞍部には避難小屋も

井戸岳を越えると視界が開け、正面に最高峰の大岳(標高1,584m)が姿を現します。鞍部には「大岳鞍部避難小屋」があり、トイレやベンチが整備されているため休憩地点として利用できます。悪天候時の避難場所としても重要で、大岳を目指す登山ルートの要所となっています。

大岳山頂で味わう八甲田山最高峰の絶景


雲上の世界に立つ感覚を味わう大岳山頂

大岳(標高1,584m)は八甲田山の最高峰です。避難小屋から火山礫の道を登り切ると、広々とした山頂に到着します。山頂からは360度の展望が広がり、北には陸奥湾や津軽半島、西には岩木山(標高1,625m)、南には十和田湖や八幡平(標高1,613m)まで望むことができます。


空気が澄んだ日には青森市や津軽海峡、北海道まで一望

晴れた日には青森市や津軽海峡、遠く北海道まで見渡せることもあります。春から夏は高山植物、秋は紅葉、冬は雪原と、季節ごとに異なる景色が広がります。達成感とともに眺める雄大なパノラマは、八甲田山登山の最大の見どころのひとつです。

大岳から毛無岱へ 湿原と紅葉を満喫する締めくくり


秋の八甲田を象徴する絶景スポット・毛無岱

下山は毛無岱(けなしたい)を経由するルートがおすすめです。大岳鞍部から南へ下ると、やがて広大な湿原が広がります。毛無岱は高層湿原と草原が入り混じる独特の景観で、特に秋の紅葉は見応えがあります。ナナカマドやダケカンバが赤や黄色に色づき、湿原の草紅葉と相まって鮮やかな景色が広がります。


八甲田ならではの湿原と山岳の景観美

木道が整備されているため歩きやすく、登山の疲れを和らげながら進めます。散策を終えたあとは少し戻って田茂萢湿原を経由し、八甲田ロープウェー山頂公園駅へ下山できます。公共交通を利用する場合は、そのまま酸ヶ湯温泉方面へ下ることも可能です。毛無岱を経由するルートは、八甲田山登山を締めくくる代表的なコースとして多くの登山者に利用されています。

登山後も楽しめる八甲田山周辺 温泉・渓流・グルメガイド


刺激的な酸泉が楽しめる名湯・酸ヶ湯温泉

八甲田山の登山を終えたあとは、山麓や周辺の観光も楽しめます。まず代表的なのが「酸ヶ湯温泉」。千人風呂として知られる総ヒバ造りの大浴場は圧巻で、登山後の疲れを癒すのに最適です。強酸性の硫黄泉は肌を引き締め、古くから湯治場として親しまれてきました。

酸ヶ湯温泉
住所:青森県青森市荒川南荒川山国有林酸湯沢50
営業時間:ヒバ千人風呂(混浴)7:00~18:00(最終入場:17:30、8:00~9:00は女性専用)、玉の湯(男女別)9:00~17:00(最終入場:16:30)
料金:大人1000円(貸しタオル付のみ)
公式HPはこちら

一度は訪れたい東北屈指の景勝地・奥入瀬渓流

続いて立ち寄りたいのが「奥入瀬渓流」。十和田湖から流れ出す約14kmの清流で、滝や岩が連なる景観は四季折々の魅力があります。遊歩道が整備されているため散策も快適で、新緑や紅葉の季節には特に人気です。

奥入瀬渓流
住所:青森県十和田市奥瀬
公式HPはこちら

実は日本有数のラーメン王国・青森

そして青森の食文化も見逃せません。「味噌カレー牛乳ラーメン」や「煮干しラーメン」などご当地ラーメンは、登山後の体に染みわたる一杯。自然・温泉・グルメを組み合わせれば、八甲田山登山はさらに充実した山旅となります。

初心者からベテランまで魅了する名峰・八甲田山登山


迫力ある景色を、無理なく楽しめる登山コースが魅力

八甲田山は日本百名山のひとつで、湿原散策や稜線歩き、山頂からの大展望など、多彩な魅力を備えた名山です。ロープウェーを利用すれば気軽に登山を楽しめる一方で、本格的な縦走ルートもあり、初心者から健脚の登山者まで幅広く歩くことができます。


山麓の観光まで含めて最高の山旅へ出かけよう

周辺には酸ヶ湯温泉や奥入瀬渓流といった観光スポットや名湯も揃い、登山と旅を組み合わせて満喫することが可能です。四季折々に変化する自然の姿は何度訪れても新鮮で、特に紅葉や樹氷の季節は格別の美しさ。

青森の大自然に触れながら、心も体もリフレッシュできる贅沢な八甲田山登山を、ぜひ体験してみてください。登山の計画やルート確認には、詳細な地図と最新情報をチェックできる「山と高原地図ホーダイ」アプリの活用がおすすめです。電波が届きにくい山中でもオフラインで利用でき、道迷いや通行止めの確認にも役立つので、安全で安心な八甲田山登山のために、「山と高原地図ホーダイ」をぜひ活用してみてください。

【もしもの時のために・・・】紙地図も携行しよう

 

 

八甲田・岩木山 恐山・白神岳・田代岳・十和田湖 2025
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部を卒業後、商社やメーカーで営業職を経験。2019年より複業でトラベルライターとしての活動を始め、旅の魅力を伝える仕事がライフワークになる。2021年には本業も旅行業界へ本格転身し、国内OTAにて宿泊施設の集客支援に従事。現在は旅行系ベンチャー企業でメディアマネージャーを務める。これまでに執筆した記事は2,000本以上。地方の自然や暮らしをテーマにした発信を続けながら、「旅を通じて人生が豊かになるきっかけ」を届けたいと考えている。登山、自転車旅、温泉巡り、離島旅が趣味で、毎年の北海道旅行を家族の恒例行事にしている。 notehttps://note.com/yuhei_tonosho
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