京都の名峰・愛宕山登山ガイド 月輪寺から表参道へ歩く周回ルート

京都市右京区にそびえる「愛宕山(あたごやま、標高924m)」は、火伏の神を祀る霊山として古くから信仰を集めてきました。愛宕山登山では、月輪寺からの静かなアプローチを楽しみ、山頂では愛宕神社に参拝しながら歴史に思いを馳せることができます。
下山は表参道をたどり、錦雲渓など周辺の景勝地に立ち寄れるのも魅力。信仰と自然が調和した山歩きを味わえるルートをご紹介します。
目次
信仰と自然が息づく京都の名峰・愛宕山

京都タワーから眺める名峰・愛宕山
愛宕山は京都市右京区に位置する標高924mの山で、古くから火伏の神を祀る「愛宕神社」の御神体山(ごしんたいさん)として知られています。比叡山(ひえいざん、標高848m)と並ぶ京都を代表する霊峰であり、信仰の対象として多くの参拝者が訪れる名峰です。

愛宕山の山頂に位置する総本社・愛宕神社
山頂一帯に広がる愛宕神社は、全国に約900社ある愛宕神社の総本社。特に火難除けの御利益で広く知られています。山域は豊かな自然に包まれ、京都市街から近いながらも本格的な登山を楽しめるのが魅力。京都の愛宕山登山は、信仰と自然の両面を感じられる人気の山旅として知られています。
愛宕山登山の拠点 清滝へのアクセス方法

清滝までのアクセスはバスが便利
愛宕山の代表的な登山口は「清滝バス停」です。京都駅からはJR嵯峨野線で嵯峨嵐山駅へ向かい、徒歩約6分の嵯峨小学校前バス停から京都バスに乗車すると、約15分で清滝に到着します。
清滝バス停は表参道や月輪寺(つきのわでら)コースの起点となっており、阪急嵐山駅や嵐電・嵐山駅からも直通バスでアクセス可能です。

車でのアクセスもOK!清滝周辺には駐車場もあり
登山口周辺には売店や自動販売機が少ないため、飲料や行動食はあらかじめ準備しておくのがおすすめ。車で訪れる場合も清滝周辺に駐車場があり安心です。京都市街からのアクセスが良好でありながら、自然豊かな山中の静けさを味わえるのは、愛宕山登山ならではの魅力です。
月輪寺から表参道へ歩く 愛宕山登山の周回ルート

登山道から見渡す、開放的な京都市街の風景
宕山の代表的なルートは、清滝を起点とする「表参道コース」と「月輪寺コース」です。今回紹介する周回ルートは、登りに月輪寺コースを選び、山頂の愛宕神社へ至り、下山は表参道コースを歩く行程となります。
所要時間は往復でおよそ5〜6時間。距離や標高差もあり、歩きごたえのあるコースなので、愛宕山登山の中でも健脚向けのルートといえるでしょう。

静寂に包まれた樹林帯を一歩一歩登っていく
月輪寺コースは、静かな樹林帯を抜けながら落ち着いた山歩きを楽しめるのが魅力です。山頂の愛宕神社に着けば、古来より信仰されてきた愛宕山の荘厳な雰囲気に包まれます。
下山は道標が整備された表参道をたどり、多くの登山者で賑わう雰囲気のなかを歩きます。信仰と自然を感じながら歩ける、充実した周回ルートです。
バス停・清滝→(10分)→愛宕神社参詣表登山道入口→(45分)→月輪寺コース登山口→(1時間20分)→月輪寺→(1時間25分)→愛宕神社/愛宕山山頂→(40分)→水尾分れ→(1時間5分)→愛宕神社参詣表登山道入口
登りの月輪寺コース 静かな樹林帯を抜け月輪寺へ

林道の傍らに現れる月輪寺コースの登山口
登りは月輪寺コースから始まります。清滝バス停を下りたら、まずは林道を歩いて登山口を目指しましょう。序盤は舗装路が続き、高雄方面や大杉谷道への分岐を過ぎて真っ直ぐ進むと、約40分で月輪寺コースの登山口に到着します。

杉並木の登山道は、京都の山らしい趣がある風景
表参道に比べると利用者は少ないため、手付かずの自然が残り、静けさの中で山歩きに集中できるのが魅力です。展望は限られますが、杉並木が続く道は京都の山ならではの趣があり、道もよく整備されているので歩きやすく快適に進めます。

空海の足跡を感じられる山腹の古刹・月輪寺
やがて山腹に佇む「月輪寺」に到着。真言宗の古刹であり、弘法大師・空海が開いたと伝わる由緒ある寺院です。境内からは京都市街を一望でき、休憩スポットとしても最適。愛宕山登山では、歴史と信仰に触れつつ静かな山歩きを楽しめるのも、このコースの大きな魅力です。
月輪寺からさらに登り、愛宕山山頂の愛宕神社へ

平坦基調になったら、月輪寺コースから表参道へ合流
月輪寺でひと息ついたら、さらに標高を上げて山頂の愛宕神社を目指します。途中には巨岩が点在する急坂もありますが、それを越えると歩きやすい道に変わり、ほどなく表参道との合流点に到着。山頂の愛宕神社はもうすぐです。

杉の巨木に囲まれ、荘厳な面持ちの愛宕神社
愛宕神社は、火伏の神として全国的に信仰を集める神社。趣ある参道を進むと広々とした境内が迎えてくれます。眺望は限られるものの、杉の巨木に囲まれた社殿は荘厳な雰囲気に包まれています。

薪ストーブのぬくもりに包まれる、冬の憩いの空間
社務所では登山安全の御守を授与しており、無事の下山や今年一年の安全を祈願するのもおすすめ。神社併設の休憩所では、冬に薪ストーブが焚かれ、訪れる参拝者に安らぎの時間を与えてくれます。

歴史に想いを馳せて登山を楽しめるのも魅力
また、愛宕神社は本能寺の変を起こす前に明智光秀が参拝したとも伝わる歴史ある神社。愛宕山登山の道中で、杉林に包まれた静かな境内に立つと、遠い時代に思いを馳せることができます。
下山の表参道コース 黒門と水尾分れを経て歩く道

表参道を行き交う登山者でにぎわう水尾分れ
山頂で参拝と登頂を終えたら、下山は表参道コースを進みます。最初の目印となるのが「水尾分れ」。ここは清滝方面と水尾集落方面の分岐点で、古くから登山者の休憩スポットとして親しまれています。

信仰の山らしい趣を醸し出す黒門
途中に現れる「黒門(くろもん)」は、江戸時代まで白雲寺(はくうんじ)として存在した愛宕神社の遺構。杉並木に溶け込み、信仰の山らしい厳かな雰囲気を漂わせています。

山の向こうには亀岡の町並みを望む
表参道は道標が整備されており迷う心配は少なく、登山初心者でも歩きやすいコースです。分岐点には東屋もあり、小休止を取りながら残りの下山路に備えるのも良いでしょう。また、亀岡方面を望む展望ポイントもあり、景色を楽しみながら清滝へ下っていけます。愛宕山登山の下山路として、この表参道コースは歴史と自然を味わえる魅力に満ちています。
表参道コースを下って清滝へ 参拝者で賑わう道のり

歴史の名残を感じながら歩く、表参道の登山道
水尾分れからは清滝へ向けて表参道コースを下ります。表参道は愛宕山登山で最も多くの登山者が利用するルートで、石段や杉林の中を整然と進む道が特徴です。茶屋跡も点在し、かつて多くの参拝者が行き交った往時の面影を感じられます。

鳥居を越えると、清滝バス停まではあとわずか
傾斜は比較的一定で歩きやすく、下りでも足への負担が少ないのが特徴です。やがて清滝の集落が見えてくると、登山の終わりが近づいてきます。鳥居を越えて清滝バス停に到着すれば、月輪寺コースと表参道コースを組み合わせた周回ルートが完結します。
愛宕山登山とあわせて訪れたい錦雲渓の紅葉散策

紅葉シーズンの錦雲渓ハイキングは特に素晴らしい
愛宕山の麓、清滝から高雄にかけて広がる渓谷が「錦雲渓(きんうんけい)」です。その名の通り、秋には山全体が錦絵のように色づき、京都屈指の紅葉スポットとして知られています。

面に映る紅葉がひときわ鮮やかに輝く
清滝川の清流と紅葉の鮮やかなコントラストは格別で、愛宕山登山とあわせて訪れる人も多くいます。特に見頃は11月中旬から下旬で、渓谷沿いの遊歩道を歩けば、ゆったりと紅葉狩りを楽しめます。

錦秋に包まれる神護寺の景観
清滝からのアクセスも良く、登山の前後に立ち寄れば山歩きに彩りを添えられるでしょう。また、高雄の高山寺や神護寺と組み合わせて巡るのもおすすめです。愛宕山の厳かな雰囲気に対して、錦雲渓は華やかで親しみやすい京都の自然美を味わえるスポットとなっています。
信仰と自然を満喫する京都・愛宕山登山

京都ならではの登山を満喫できる名峰・愛宕山
愛宕山は京都市街からのアクセスが良好でありながら、霊峰としての信仰と本格的な登山の魅力を兼ね備えた山です。
登りは月輪寺コースで静かな樹林歩きを楽しみ、山頂の愛宕神社で参拝と神聖な雰囲気に触れ、下山は歴史ある表参道をたどる周回ルートへ。京都愛宕山登山では、一度で多彩な魅力を体験できる充実した行程となります。
あわせて錦雲渓など周辺の景勝地にも立ち寄れば、自然と歴史が織りなす京都ならではの山旅を心ゆくまで楽しめるでしょう。
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