瑞牆山登山ガイド 奇岩群と絶景パノラマを堪能する瑞牆山荘コース

日本百名山に数えられる瑞牆山(みずがきやま、標高2,230m)は、奥秩父を代表する名峰です。

山肌を覆う大小さまざまな奇岩が織りなす景観は、まるで水墨画から抜け出したような風情を漂わせます。山頂に立てば、南アルプスや金峰山、八ヶ岳、さらに遠くに富士山まで望む壮大なパノラマが広がります。

今回は、瑞牆山登山の定番であり最短で山頂へアプローチできる瑞牆山荘ルートをご紹介します。

2025年8月21日 更新

瑞牆山登山の魅力 岩の殿堂と呼ばれる奇岩の絶景


奥秩父の山の中でも、特異な景観を有する瑞牆山

山梨県北杜市にそびえる瑞牆山(みずがきやま、標高2,230m)は、黒雲母花崗岩(くろうんもかこうがん)が生み出す個性的な岩峰群が目を引く日本百名山です。標高2,230mと奥秩父の高峰のひとつですが、登山道は比較的コンパクトで、人気の瑞牆山荘ルートを使えば往復約5〜6時間で登頂できます。


岩が山肌からせり上がり、独特の岩峰を形成している

日本百名山の選者である登山家・深田久弥(ふかたきゅうや)も「まるで針葉樹の大森林から、ニョキニョキと岩が生えているかのような」と絶賛した景観は、今なお多くの登山者から親しまれています。


国内屈指のロッククライミングスポットとしても知られる

瑞牆山荘からのルートは整備が行き届いており、岩場や鎖場はあるものの難易度は中程度。登山経験の浅い方でも時間に余裕を持てば安心して挑戦できます。

山頂からは八ヶ岳や南アルプスの大パノラマが広がり、春の新緑や秋の紅葉など四季折々の風景も堪能できます。さらに「大ヤスリ岩」「鋸岩(のこぎりいわ)」「桃太郎岩」などの奇岩が点在し、ロッククライミングスポットとしても有名です。

瑞牆山登山の起点 瑞牆山荘へのアクセスと駐車場情報


瑞牆山登山の拠点になっている瑞牆山荘

登山口は標高1,520mの瑞牆山荘にあり、駐車場(約100台)や登山道案内、トイレが整備されています。

車でアクセスする場合は、中央自動車道・須玉(すたま)ICから約40分。公共交通を利用する場合は、JR韮崎(にらさき)駅から山梨峡北交通バスで約1時間30分です。


もう一つの百名山・金峰山への登山拠点でもある富士見平

瑞牆山荘の周辺には自動販売機や公衆トイレもあり、登山前の準備や休憩に便利です。登山ルートは、瑞牆山荘から富士見平小屋を経由して山頂へと続きます。特に秋の紅葉シーズンは混雑が予想されるため、早朝の出発がおすすめです。

瑞牆山登山の定番ルート 瑞牆山荘から奇岩を巡るコース


道中に現れる、樹林帯から瑞牆山を見渡す絶景ポイント

瑞牆山の主な登山ルートは、瑞牆山荘から富士見平小屋を経て、桃太郎岩や大ヤスリ岩などの個性的な奇岩を巡りながら山頂へ至ります。この瑞牆山荘ルートは、岩場や鎖場が適度に配置され、まるでアスレチック感覚で登山を楽しめるのが魅力。道ははっきりしており、案内標識も整備されているため安心して歩けます。

コースタイム
瑞牆山荘→(約55分)→富士見平小屋→(約2時間)→瑞牆山山頂

静かな森を抜けて始まる瑞牆山登山


落ち葉を踏みしめて歩く趣のある樹林帯

登山のスタートは、緩やかな樹林の中を歩く静かな道から始まります。しっとりとした森の趣を感じながら、ゆっくりと進んでいきます。


瑞牆山を見渡すポイントには、休憩に最適なベンチも設置

歩き始めて約30分で、徐々に登りの傾斜が増してきます。途中、鳥居の脇を通り過ぎると、休憩にぴったりの小ピークに到着。ここは登山前半のハイライトとも言える絶景スポットです。


カラマツの紅葉と瑞牆山ならではの岩峰が織りなす景色

カラマツ林の向こうには、奇岩が林立する瑞牆山の山容が広がります。その姿はまるで中国の墨絵から飛び出してきたかのような迫力で、美しさと荒々しさを併せ持つ景観は、多くの登山愛好家を魅了してやみません。

岩場や鎖場は続きますが、道は整備されており慎重に進めば経験の浅い登山者でも通過可能です。

富士見平小屋でひと休み 湧水を味わう休憩ポイント


富士見平小屋で一息、心地よい登山のひとときを楽しむ

再び緩やかなハイキング気分の道に戻り、心地よい樹林の山歩きを楽しみます。10分ほど進むと、これから目指す瑞牆山と、隣にそびえる百名山・金峰山の登山拠点となる「富士見平小屋」に到着です。


美味しい湧水を給水できるのも嬉しい

ここには美味しい湧水があり、喉を潤しながら、これからの本格的な登山に向けてエネルギーを補給するのにぴったり。小屋周辺にはテント場もあり、宿泊や休憩の拠点として利用されることも多い場所です。

天鳥川を渡り 初心者も挑める岩場と鎖場の登り


中盤に差し掛かると、一度だけ現れる渡渉区間

富士見平小屋を過ぎると、登山道は緩やかに下り、谷筋を流れる天鳥川(あまとりがわ)まで標高を下げていきます。川は水量こそ少なめですが、足を滑らせないよう岩を慎重に伝って渡りましょう。


自然が作り上げたアスレチックのような道を進む

ここまで落ち着いていたコースも、やがてゴロゴロとした岩場が現れ、はしごやロープが続く変化に富んだ登山道へと変わります。傾斜も急になり、正念場に差し掛かります。途中には桃太郎岩や小さな滝など、見どころもあります。


天を突くように佇む、圧倒的迫力の大ヤスリ岩

沢を渡ってから約1時間で、大ヤスリ岩をはじめとする山頂周辺の巨大奇岩に近づきます。目の前にそびえる岩峰の迫力には思わず息をのむほど。巨岩を仰ぎ見ながら、高度感あふれる登りに挑みましょう。


ここを登るとは信じられない。山頂から見下ろす大ヤスリ岩

よく見ると、岩峰によじ登るクライマーの姿も。瑞牆山はアルパインクライミングの人気スポットで、日本全国から挑戦者が訪れますが、今回のルートは一般登山者向けなので安心です。南アルプスを望む展望ポイントを通り過ぎれば、山頂はもうすぐです。

岩場や鎖場は続きますが、道は整備されており慎重に進めば経験の浅い登山者でも通過可能です。

瑞牆山の山頂へ 奇岩と大パノラマが広がる絶景


岩峰の先に360度の絶景パノラマが広がる瑞牆山山頂

最後の岩場を登りきると、視界が一気に開け、岩稜上の広い山頂に到達します。標高2,230mの山頂は大小の岩が折り重なり、展望は抜群です。山頂は手すりなどがなく、崖沿いはかなりの高度感があるため、恐怖心のある方はなるべく内側に陣取りましょう。


岩峰の周囲には、雄大な奥秩父エリアの山並みが広がる

山頂直下には高さ約30mの岩峰・大ヤスリ岩がそびえ、その下には奥秩父の雄大な山麓が広がります。奇岩の先へ吸い込まれそうな緊張感とともに広がるパノラマは、まさに瑞牆山の醍醐味です。


雲と雲の間から、南アルプスの標高3,000m峰を望む

10月中旬から下旬にかけては、紅葉が錦絵のように広がり、山頂からの景色に華を添えます。瑞牆山は富士山や南アルプス、八ヶ岳といった日本屈指の山々を望むことができ、晴天時のくっきりした山容はもちろん、雲が多い日には一期一会の風景も楽しめます。


雲が湧き立つ。笠雲をかぶる秀峰・富士山

秋でもすでに冠雪した南アルプスや、笠雲をかぶる富士山など、多彩な表情を見せてくれるのも魅力です。山頂の景色を存分に堪能したら下山へ。行きに歩いてきた通り、ルートは気の抜けない道が続くため、最後まで足元に注意して下りましょう。

山頂は岩が多く、腰を下ろせるスペースが点在します。混雑時は譲り合って休憩しましょう。

瑞牆山登山後に立ち寄りたい みずがき山自然公園と紅葉の景観


みずがき山自然公園の入り口から眺める瑞牆山

下山後は、登山口にほど近い「みずがき山自然公園」で、登山の余韻に浸りながらゆったりと過ごすのがおすすめです。公園内には広場や遊歩道が整備され、瑞牆山の巨岩群を間近に感じながら散策できます。


紅葉と瑞牆山の共演に見入る。秋のみずがき山自然公園

秋には紅葉した樹木と巨岩が織りなす景観が見事で、写真撮影にも絶好のスポットです。また、キャンプ場が併設されているため、1泊2日で自然の中にのんびりと滞在するのにも適しています。


国内有数のラジウム泉が楽しめる増富温泉

さらに、公園から車で約15分の場所には増富(ますとみ)温泉があり、登山でかいた汗をじっくり癒すことができます。ここは全国屈指のラジウム泉として名高く、瑞牆山登山の締めくくりにぴったりです。

温泉街にはいくつかの宿泊施設があり、日帰り入浴を受け付けている施設もあります。ただし、営業状況は変更になる場合があるため、訪れる前に最新情報を確認するようにしましょう。

奇岩と絶景に出会う瑞牆山登山


錦秋に染まる瑞牆山、絵画のように鮮やかな紅葉に包まれて

瑞牆山の登山は、奇岩と四季折々の景観が織りなす奥秩父ならではの大自然を堪能できる体験です。山頂からの壮大なパノラマや、岩場を越える緊張感も魅力のひとつ。下山後はみずがき山自然公園や増富温泉でゆったりと余韻に浸れば、心身ともに満たされる一日となるでしょう。瑞牆山荘からのルートで、奥秩父の魅力を味わってみてはいかがでしょうか。

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奥多摩・奥秩父総図 2025
金峰山・甲武信 2025
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部を卒業後、商社やメーカーで営業職を経験。2019年より複業でトラベルライターとしての活動を始め、旅の魅力を伝える仕事がライフワークになる。2021年には本業も旅行業界へ本格転身し、国内OTAにて宿泊施設の集客支援に従事。現在は旅行系ベンチャー企業でメディアマネージャーを務める。これまでに執筆した記事は2,000本以上。地方の自然や暮らしをテーマにした発信を続けながら、「旅を通じて人生が豊かになるきっかけ」を届けたいと考えている。登山、自転車旅、温泉巡り、離島旅が趣味で、毎年の北海道旅行を家族の恒例行事にしている。 notehttps://note.com/yuhei_tonosho
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