春の訪れに会いに行く。丹沢・不動尻のミツマタ大群生へ

春の訪れとともに、山好きの心が騒ぎ出す季節がやってきました。

今回のお目当ては、春の丹沢を象徴する花の一つ、ミツマタ。
まるでお菓子の金平糖のような愛らしい黄色い花が、谷を埋め尽くす光景はまさに絶景。
そんなステキな風景を求めて、神奈川県厚木市は不動尻のミツマタを目指す、のんびりトレッキングに出かけてきました。

2026年4月17日 更新

不動尻、ミツマタ群落へのコース計画を立てる

週末の予定を決めかねて、何とはなしに山と高原地図を眺める、そんな金曜日の夜。
日帰りで歩けて、季節も感じられるところ…。春の花や、群生地のような場所があればなおいいなあと地図に目を滑らせていると、「ミツマタ群落」という文字が飛び込んできました。神奈川県厚木市は不動尻。確かここのミツマタは見ごたえがあると聞いたことがあるぞ…!

群落の看板

みんな大好き「群落」の文字はっけーん!

山と高原地図のアプリを立ち上げて調べてみると、広沢寺(こうたくじ)温泉から1時間ほど歩けば、お目当ての群生地に着いてしまうとのこと。けれどせっかく山へ行くのならもう少しじっくりと歩きを楽しみたいところ。そこで不動尻からルートを指でたどっていくと、大山を経て阿夫利神社へとつながる登山道を見つけました。

それならまず朝一番で阿夫利神社に参拝。そこから大山の山頂をしっかりと踏んで、最後にミツマタの群落へ。
山行の締めくくりに美しい花が待っていて、帰りに温泉でひと息ついて終了。うんうん、我ながら悪くない計画じゃないでしょうか。

登山計画もアプリでらくらく

登山計画もアプリでらくらく

早速ルートをアプリ上で打ち込んで登山計画を立てます。
お昼ごはんは大山の山頂でのんびり食べたいので、1時間の休憩を予め設定。
これで山行計画はばっちり、当日を待つのみです。

朝の静寂に包まれて、こま参道をゆく

いよいよ当日。
伊勢原駅に降り立つと、肌に触れる空気はまだ少し冷たく感じられます。それとは対照的にバス乗り場には思った以上に多くの人が並んでいました。車内もそれなりの混雑具合で、カーブにザックと揺られながら大山ケーブル駅バス停へと向かいます。

阿夫利神社へと続くこま参道

阿夫利神社へと続くこま参道には土産物店や茶屋が立ち並ぶ

登山案内図

案内図で本日の行程をしっかり確認

大山こま

ケーブル駅までは大山こまを数えながら歩こう

大山ケーブル駅バス停に到着し、こま参道へと足を踏み入れると、先ほどまでのバスの賑わいがウソのように静まり返っていきました。
石段の両側にはお土産屋さんや豆腐料理の店、そして宿坊のような建物が軒を連ねていますが、朝が早いこともあって、どのお店もまだ準備中の様子。楽しみにしていたお豆腐は、今回はお預け。また次の機会の楽しみにとっておくことにしました。

大山ケーブルカーとの分岐地点

大山ケーブルカーとの分岐地点

ケーブルカーには乗らず、そのまま男坂の入口へ向かいます。地図で見た時点でこのルートが今日一番の急登と知るものの、あえて選んでみた男坂。石段というより岩と段差が混ざったような道が続きます。ひー、短足にはしんどい!一定のリズムで登るというより、その都度足場を選び直すような歩き方になり、呼吸を整えながら進んでいきます。

階段

階段!

階段!!

階段!!

これでもかというほどの階段!!!

これでもかというほどの階段!!!

大山阿夫利神社で安全登山を祈願し、いざ出発

ようやく阿夫利神社の境内に出ると、さっきまでの男坂の緊張がふっと抜けるような感覚。荘厳さと静けさの中に立つと、自然と背筋も伸びます。

大山阿夫利神社。大山の中腹、標高約700メートル付近に鎮座する古社で、古来はまたの名を「あめふり(あふり)山」と呼ばれていました。あめふり(あふり)の名は、常に雲や霧が生じて雨をもたらすことに由来するといいます。庶民からの崇敬も厚く、江戸時代以降は年間20万人を超える人々が「大山詣り」を行ったという記録も残っているそうです。

ルーメソ

ウワサのルーメソ

大山獅子

日本三大獅子山 大山獅子。かわいい

社殿は相模湾まで見渡せる立地にあり、かつての参詣道がそのまま登山道として今も使われています。境内でお参りを済ませ、いよいよ入山。

入山修祓料とお守り

入山修祓料を納め、お守りを受け取る

入山修祓料を納め、お守りを受け取る

ひたすらに高度を上げていく

ひたすらに高度を上げていく

境内から先の道に入ると、景色は少しずつ山のものへと変わっていきます。それでも急に険しくなるわけではなく、一定のペースで淡々と標高を稼いでいくような道が続きます。さっきまでの男坂とはまた違い、これはこれで面白い‥けどやっぱりしんどい!

富士山

富士山だー!

歩き続けているうちに、途中の富士見台で不意に視界が開けました。
木々の間が切り取られるようにぽっかりと抜け、その向こうにはるか遠く富士山が見えます。距離はあるはずなのに、その輪郭がやけにくっきりと浮かび上がっていて、思わず足を止めて見惚れてしまいました。

この場所にはかつて茶屋があり、江戸の昔から富士山を眺める場所として知られていたそう。浮世絵にも描かれていたという説明が看板にあり、そう言われて改めて眺めてみると、単なる開けた場所というよりは、もともと富士山を見るために用意されたもののように思えてきました。

山頂直前のルート確認

山頂は近い、道筋をアプリでしっかり確認

大山山頂の絶景とともに味わう、赤い山ごはん

やがて木々の高さが少しずつ低くなり、風の抜け方が変わってくると、山頂がもうすぐそこなのだと分かります。最後の最後まで、しっかりと登りが続きます。

ようやく視界が開け、そのまま大山の山頂に到着!山頂は思ったよりも広く、テーブルやベンチがいくつも並んでいました。その一つに腰を下ろし、昼食にすることにします。思ったより風が強く、ウィンドブレーカーのジッパーを上まで引き上げます。

最後のもうひと踏ん張り!

最後のもうひと踏ん張り!

山頂に到着

山頂に到着

相模平野の景色

景色は申し分なく、相模平野を見渡すことができる

「かながわの景勝50」にも選定されている山頂からの眺めはたいへん素晴らしく、雨上がりや空気が澄んでいるときには、相模平野をはじめ、江ノ島や三浦半島、さらに房総半島、そして東京都心の高層ビル群までも遠くに望むことができるそうです。

さて!本日の山ごはんのテーマはイタリアン。水で戻しておいたパスタに、あらかじめみじん切りにしてきた玉ねぎとハンバーグ、トマトペーストを合わせてボロネーゼ風に仕上げます。
もう一品は、シーフードミックスとミニトマトを使ったアヒージョ。ザックのサイドポケットに差し込んできたバゲットを添えていただくことにしました。

クリームチーズを載せた山ごはん

クリームチーズも載せちゃう!

赤い見た目の山ごはん

全体的に赤い見た目になってしまったが、まあいいでしょう

山頂に別れを告げて下山開始。不動尻のミツマタを目指して

山頂から下り始めると、あんなに強かった風もいつの間にか収まり、代わりに単調な下り坂が始まります。登山道らしい急な下りや、両サイドが切れ落ちたヤセ尾根なども現れますが、全体としては淡々と高度を落としていく行程。こういった場面こそ油断が禁物、頬を叩いて気を引き締め直します。

下山開始!

下山開始!

スリリングな下山道

意外とスリリングな道も

下りもご安全に!

下りもご安全に!

分岐に差し掛かるたびに立ち止まって、紙の地図を広げてみます。スマートフォンのアプリで現在地を追うこともできますが、このあたりではむしろ、細かい位置を確認するよりもどこへ向かって下っていくのかという全体像を頭に入れ直しておいた方が、個人的には歩きやすく感じます。

黄色の絶景!ミツマタの群落に癒やされる

標高が下がってくると、徐々に空気が変わっていくのが分かります。沢の音も次第に大きくなり、姿こそ見えないものの、谷が近いことを予感させてくれます。
しばらく進むと、道の脇にひょっこりミツマタが現れて少しうれしくなりました。
最初は点々と見える程度ですが、歩くにつれてまとまって増えていきます。黄色い花が一面に広がるというよりは、林の中に塊のように現れる感じで、思っていたほどの派手さはありませんが、確かな存在感がありました。

残念ながら時期的には最盛期を少し過ぎていたようで、全体としての華やかさはやや落ち着いています。それでも、谷の中でこうしてまとまって現れると十分に見応えがあり、改めて見に来てよかったと感じました。

不動尻のミツマタ

不動尻のミツマタ

ミツマタの花

まんまる黄色の花々。幸せってきっとこういう形だ

待ちに待った温泉…のはずが?

ミツマタの群生に後ろ髪を引かれながら、先へと進みます。花は背後へと遠ざかり、代わりに単調な林道が続くようになりました。ところどころに舗装路も混ざっていて、さっきまでの静かな谷との落差がなんだか不思議に感じられます。

舗装路を歩く

舗装路を歩く

山神隧道

山神隧道。トンネルってこわいよね

お待ちかねの温泉。地図で確認した通り、七沢温泉でひと息つくつもりでいたのですが、立ち寄ろうと思っていた施設がなんと休業日!年甲斐もなく落ち込んでしまいました。
山のルートだけでなく、こうした場所の営業状況もしっかり確認することが大切ですね。

七沢荘

七沢荘。営業状況は事前にしっかり確認を

予定がひとつ外れてしまったことで、帰りの流れは少しだけあっさりしたものになりました。広沢寺温泉からバスに乗り、伊勢原駅へ向かう車内では、窓の外の景色が日常に戻っていくのを眺めていました。ふと肩を叩かれ、自分がいつのまにか眠りに落ちていたこと、終点の伊勢原駅に到着したことに気が付きます。

伊勢原駅では、お好み焼きとビールを軽く一杯。鉄板の音と湯気の中で、山を歩いた時間に思いを馳せました。

お好み焼きcafe おたふくのお好み焼き

「お好み焼きcafe おたふく」のお好み焼き。疲れた体に染み渡る

今回歩いたコース

スタート:伊勢原駅
→大山ケーブル駅
→大山阿夫利神社(男坂経由)
→大山山頂(昼食)
→不動尻(ミツマタ群生地)
→広沢寺温泉・七沢荘(日帰り入浴‥には残念ながら入れず)
→ゴール:伊勢原駅

新卒で株式会社昭文社に入社。地図の営業職を経て、現在は『山と高原地図』の編集業務に従事している。仕事で地図に深く向き合う傍ら、プライベートでも登山、キャンプ、ツーリングとアクティブにアウトドアを満喫する日々。愛犬の柴犬を連れてキャンプへ。自然の中でのんびり過ごす時間が、何よりのリフレッシュとなっている。また、自他ともに認めるパン好きで、バイクに乗り地図にピンを立てたパン屋を巡るのがライフワーク。自宅でもベーグルを焼くほどこだわりは深い。
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