大山登山ガイド 阿夫利神社表参道を歩いて神奈川の景勝を望む

神奈川県伊勢原市、丹沢大山国定公園に位置する「大山(おおやま・標高1,252m)」は、ピラミッド型の美しい山容と初心者でも登りやすい登山道が特徴。都心から約2時間でアクセスでき、首都圏を拠点とする登山客に親しまれています。

本記事では、大山登山の王道コース「阿夫利(あふり)神社表参道」を実際に歩いた体験をもとに、その魅力をご紹介。大山初挑戦の方に向けて、基本の服装や持ち物、下山後に立ち寄れる観光スポットなどを詳しくまとめました。

2025年12月18日 更新

大山の魅力と見どころ 多くの登山客が足を運ぶ理由とは

大山山頂からの眺望は「神奈川の景勝50選」のひとつ。関東平野や富士山などが一望できる美しい景観は、多くの登山客を魅了します。

登山道では樹齢5~600年の夫婦杉やモミの原生林など、めずらしい植生が見られます。紅葉の見頃・11月がもっとも人気のシーズン。真っ赤に染まった山肌と阿夫利神社の静かな佇まいは、一見の価値あり。初夏の新緑や空気の澄んだ冬も魅力的で、四季を通して楽しめる山です。

大山へのアクセス 車・公共交通機関での行き方

大山登山の起点は麓にある「こま参道」。アクセスはこま参道の入口から徒歩2分の「大山観光案内所」を目印にしてください。ここでは、観光案内所まで車またはバスでアクセスし、徒歩でこま参道まで向かう方法をご案内します。

車でのアクセス

新東名の「伊勢原大山IC」を出て県道603号線、611号線を経由し、阿夫利神社方面へ進むと、約10分で大山観光案内所に到着。駐車場は案内所付近にある阿夫利第一駐車場、伊勢原市営 大山第二駐車場、大山観光案内所 有料駐車場が利用できます。

電車・バスでのアクセス

小田急電鉄小田急線「伊勢原駅」北口のバスロータリー4番乗り場で、神奈川中央交通バス「大山ケーブル行き」に乗車。終点「大山ケーブル」で下車すると、すぐ目の前に大山観光案内所があります。バスの所要時間は約30分、運賃は370円です。

大山登山コース詳細 ケーブルカーを利用する初心者に人気の往復ルート

大山登山は、阿夫利神社の表参道を通って山頂を往復するコースが定番。まずはこま山道を抜け、ケーブルカーに乗って標高約700m地点の阿夫利神社下社まで登ります。阿夫利神社下社から本格的な登山道が始まり、2時間ほど歩いて山頂の阿夫利山本社を目指します。

道幅が広く整備された登山道で、休憩所や道標、トイレの数が多いため、初めての大山登山でも道迷いの心配はありません。山頂に近づくにつれてだんだんと傾斜が増し、階段や岩場が多くなります。ペース配分は十分に考えながら登りましょう。また、「雨降山」と呼ばれるほど雨が降りやすい環境のため、天候の変化にも注意が必要です。

タイムスケジュール

こま山道(310m)→【10分】→大山ケーブル駅(410m)→【6分 ※ケーブルカー乗車】→阿夫利神社下社(696m)→【2時間】→大山(1,252m)→【1時間10分】→阿夫利神社下社(696m)→【6分 ※ケーブルカー乗車】→大山ケーブル駅(410m)→【10分】→こま参道(310m)

コースデータ

・難易度:ふつう
・歩行距離:6.6km
・所要時間:約5時間(休憩含む)
・最大高低差:942m ※ケーブルカーでの移動を含む
・トイレ:大山観光案内所、大山ケーブル駅、阿夫利神社下社、阿夫利神社本社(山頂)
・登山客の数:多い

登山記録メモ(9月上旬)

・時期:9月上旬
・天候:晴れ
・気温:最高25℃/最低20℃
・体感メモ:地上付近は残暑が厳しいが標高差もあり、山頂は風も通るため体感は涼しい

こま参道から登山スタート ケーブルカーに乗って阿夫利神社下社へ

こま参道の入口から登山スタートです。前方に目を向けると、これから目指す大山山頂が見え、登山への意気込みが高まります。まずは麓の大山ケーブルカー駅を目指しましょう。

こま参道は商店街が立ち並ぶ賑やかな雰囲気で、15分ほど歩くとケーブルカーの乗り場に着きます。ここでお土産を購入していく人の姿も見られました。

大山ケーブルカー駅に到着しました。ここからはケーブルカーに乗車し、中継地点の阿夫利神社下社へ向かいます。

ケーブルカーは窓口で乗車券を購入できます。運賃は大人片道640円、往復1,270円です。

ケーブルカーの始発は9時00分で、その後は20分毎に駅を出発します。終電は平日16時台、休日は17時台ですが、日によって異なるため、登山計画を立てるときは必ず運行情報を確認してください。

標高約700m地点の阿夫利神社下社までは約6分。ケーブルカーの中からは、先ほど歩いてきたこま山道や、相模湾の景色が楽しめます。

阿夫利神社下社に到着 本格的な登山道が始まる

ケーブルカーを降りると、阿夫利神社下社の境内に到着。今ケーブルカーで通ってきた道や山々を眺めることができます。参道を歩いて、さらに上の拝殿へ向かいましょう。

広場へ進んでいくと、大山登山名物「ルーメソ」の暖簾が目に入りました。

茶店「さくらや」にかかるこの名物暖簾。店主が「ラーメン」と書かれたのぼりを誤って裏返しに取り付けてしまったことがきっかけで、大きな話題を集めました。遊び心が詰まった暖簾を見るために、登山客や参拝客が訪れる人気スポットです。

階段を登り終えると、阿夫利神社下社の拝殿に到着です。この地点の標高はおよそ695メートル。登山道は拝殿の左側奥から始まります。

鳥居のすぐ隣にあるベンチからは、相模湾や三浦半島、江ノ島が一望できる絶景が広がります。本格的な登山道が始まる前ですが、ここからでも十分に見晴らしの良い眺望を楽しめました。

拝殿向かって左奥が登山口です。登山をする前に身を清めるための祓所があります。

入山修祓(しゅばつ)料の初穂料として100円を納めると、道中安全御守をいただくことができます。山行の安全を祈願しましょう。

登山口に入ってすぐに見えるのが、圧倒されそうな急こう配の階段。大山山頂に向かって進んでいけるよう気合を入れ直します。急角度かつ段差の幅が狭いので、足を滑らせないように気を付けましょう。

階段を登りきると、杉の木がたくさん生えた樹林帯に入ります。神を祀る大山の大自然は、どこか神聖で厳かな空気が漂います。歩き進めるたびに心が落ち着いていき、雄大な自然の力強さを感じました。

登山道は広く歩きやすいですが、大きな岩や木の根も目立つため、足元には十分注意しましょう。ここから先は歴史スポットが点在し、数々の見どころが待っています。

山頂までの道のりには「丁目石」が建てられていて、1丁目から28丁目まで細かく区切られています。所々に目印があるおかげでペース配分を考えやすく、初心者でも安心して登れます。

7丁目では左右円形の巨木「夫婦杉」が見られます。樹齢約5〜600年ほどを経た大木で、ここでは記念写真を撮ったり、手を合わせて夫婦円満を願う人が多くいます。

進んでいくと段々と傾斜が増し、岩場も多くなってきました。

道の先には「牡丹岩」の案内看板が立っており、地面を見ると球体の石がたくさん転がっています。丸い石が“ぼたんの花”にみえることから名づけられたそう。

さらに進むと「天狗の鼻突き岩」が現れます。岩に拳が入るくらいの穴が空いており、天狗が、自分の鼻で突いてあけたと言われているとのこと。

16丁目地点に着くと、蓑毛方面からの登山コースと合流します。開けたスペースにはベンチが設置。木々の間からの眺望が楽しめます。ここでいったん、水分補給を兼ねた休憩を取りました。

少し体を休めた後に登山を再開。木で作られた階段を進んでいきます。傾斜が落ち着いて緩やかな道ですが、ゴロゴロとした岩場に足を取られないよう、しっかりと足元を見ながら歩きましょう。

20丁目、「富士見台」に到着しました。富士山や愛鷹山(あしたかやま)が望める絶景スポットで、歌川広重の浮世絵にも描かれています。残念ながらこの日は雲が多く、遠くまで見通すことはできませんでした。

25丁目の分岐点では右へ進み、山頂を目指します。左はヤビツ峠へと続く道で、そのまま山を下りて道路へ出てしまうため注意が必要です。

分岐点を過ぎた山頂手前付近からは急登になります。ラストスパートをかけ、残り300メートルを登りましょう。

青銅の鳥居が見えてきました。山頂がもうすぐであることを感じさせ、足取りが軽くなります。

28丁目。阿夫利神社本社の鳥居を抜けると、段々と登山客の声が聞こえてきました。山頂はすぐ目の前。山頂標識がある場所まで向かいます。

大山の山頂に到着 圧巻の眺望に感動

阿夫利神社登山口からおよそ2時間、大山山頂に到着です。傾斜がきつい場面もあったので、無事に登りきった嬉しさと達成感がこみ上げてきました。

広々とした山頂スペースにはたくさんのベンチが置かれていて、記念撮影や食事を楽しむことができます。

展望スペースのひとつ下へ行くとトイレがあります。トイレへの行き方は案内板があるので参考にしてください。

トイレの横にはベンチが設置され、ここからも絶景を楽しむことができます。

頂上の周辺エリアは阿夫利神社の本社となっており、前社、奥社、売店などがありますが、営業している日は限られているようです。

来たルートを引き返して下山

山頂の風景を漫喫したら、来た道と同じルートを通り下山します。

階段が多い大山の登山道は、下山時に足や膝への負担が大きくなります。登頂後の気の緩みと体の疲れが重なると、転倒の危険性は増すことに。必ず最後まで集中力を切らさず、慎重に歩きましょう。

下山にかかる時間は約70分ほど。無事に登山口最初の階段まで下りてくることができました。

阿夫利神社の下社の階段を下って、ケーブルカーに乗り、駐車場まで辿り着いたら登山終了です。

大山登山におすすめの服装・持ち物まとめ あると便利な携帯品を紹介

天候が変わりやすい大山では、体温変化に合わせた服装の管理が大切。万が一の時に備えたグッズも欠かせません。特に登山歴の浅い方は備えを万全にしておきたいところ。ここでは、大山の標高差や天候の特徴を踏まえて、適した服装と持ち物をまとめました。

大山登山の基本的な服装イメージ

・ベースレイヤー(インナー)
・速乾性のある長袖シャツ(速乾ロンT)
・登山パンツ
薄手のフリース(山頂付近は雨風で体感温度が下がりやすいため、1枚あると快適)
・登山用ソックス
・足元はトレッキングシューズ、またはソールのしっかりした運動靴
・撥水加工のウェア・ジャケット

天気予報に限らず、雨を対策できる撥水加工のウェアを持ち歩きましょう。山頂は思いのほか冷えることがあるため、状況に応じて上着を脱ぎ着できるようなスタイルがおすすめです。

大山登山に持っていきたいアイテムリスト

以下は日帰り登山における基本装備の一例です。よく整備されていて歩きやすい大山でも、怪我や体調不良、悪天候に備えて必要なものはしっかり準備しましょう。

必携アイテム

・飲み物(500ml~1L以上、夏は多めに)
軽食・行動食(チョコやナッツなど手軽に食べられるもの。夏は塩分補給タブレットなども便利)
・タオル、手ぬぐい
・日焼け止め、帽子(つば付きが便利)
レインウェア(急な雨に備えて必ず携行)
・スマートフォン+モバイルバッテリー
・地図アプリまたは紙地図(オフラインでも確認できるもの)

あると便利な装備品

トレッキングポール
・登山用グローブ
・サングラス
・虫除けスプレー
クマ鈴、ホイッスル
・携帯トイレ、ティッシュ、ゴミ袋
・エマージェンシーシート
・救急セット(絆創膏、常備薬など)
・テーピング

雨が降りやすい大山ではレインウェアの他に折り畳み傘も携帯しておくと安心。登山道は所々で石段があり、下山時には足や膝への負担が大きくなります。痛みが出たときに備えて、テーピングやサポーターを準備しておきましょう。

大山下山後に立ち寄りたい温泉・グルメ・観光情報まとめ

大山の麓には、注目の温泉・グルメスポットが点在しています。名物の「大山豆腐」や「鶴巻温泉」など、下山後に立ち寄りたいスポットを3つご紹介します。

小出とうふ店

「小出とうふ店」は明治15年創業の老舗店。注文を受けてからその場で豆腐をカットし、袋詰めしてくれます。大山の良質な湧き水で作る豆腐は口当たりが滑らかで、豆腐本来の味をじっくりと楽しめます。大山のお土産にもぴったり。

住所:神奈川県伊勢原市大山427
アクセス:小田急電鉄小田急線 伊勢原駅から神奈川中央交通バス大山ケーブル行で20分、あたご滝下車後徒歩すぐ 
営業時間:8:00~17:00 
休業日:水・木曜
公式HPはこちら

夢心亭

「夢心亭」は、メディアでも多数紹介されている人気店です。ランチメニューの麺や丼のセットは、たっぷりの湯葉を使ったボリューム満点の一皿。料亭ならではの味で、下山の疲れも癒されます。ケーブル駅から徒歩15分ほどでアクセスできるのも高ポイント。

住所:神奈川県伊勢原市大山441
アクセス:小田急電鉄小田急線 伊勢原駅から神奈川中央交通バス大山ケーブル行で20分、あたご滝下車後徒歩5分 
営業時間:11:30~21:00(L.O.19:00、ドリンクは~20:00)
休業日:月曜※祝日の場合は翌日休
公式HPはこちら

弘法の里湯

大山のふもと、鶴巻温泉駅からほど近い「弘法の里湯」は、「秦野第一号泉」と「つるまき千の湯」の2つの源泉が楽しめる日帰り温泉施設。カルシウム豊富な泉質は、筋肉痛や関節痛、冷え性などを改善する効果が期待され、登山後のこわばった体を優しくほぐしてくれます。

住所:神奈川県秦野市鶴巻北3-1-2
アクセス:小田急電鉄小田急線 鶴巻温泉駅から徒歩2分
営業時間:10:00~21:00(最終受付は~20:00)
休業日:月曜※祝日の場合は翌日休
公式HPはこちら

大山登山のよくある質問

Q. 大山は初心者でも登れますか?

A. こま参道から山頂まで登山道は整備され、トイレや休憩所も多いため初心者でも登れます。ただし、標高差があり山頂付近は急登が続くので、こまめに休憩を取り無理せず登りましょう。

Q. 大山の展望スポットはどこにありますか?

A.一番の展望スポットは山頂、阿夫利神社本社で、東に関東平野、西に富士山が見られます。ケーブルカー、阿夫利神社下社や登山道の途中でも見晴らしの良い景色が楽しめます。

Q. 大山はどの季節に登るのがおすすめですか?

A. 紅葉が美しい秋は特に人気のシーズンで、多くの登山客で混雑します。混雑を避けるなら、新緑が美しい春から初夏がおすすめです。

Q.ケーブルカーの営業時間は何時ですか?

A.始発は9時で、終発は平日16時30分、休日は17時です。正月・ゴールデンウィーク・紅葉シーズンなどの混雑期には増発され、営業時間が延長される場合があります。登山計画を立てるときは、必ず最新の運行情報を確認してください。
大山ケーブルカーの公式HPはこちら

絶景とパワースポットに癒される充実の大山登山

数々の絶景とパワースポットがあり、見どころが尽きないのが大山の魅力。登山道はよく整備され歩きやすい反面、所々に急こう配の階段や岩場があり、しっかりと手応えを感じられます。神聖な山の中を歩きながら美しい富士山を望めば、心身ともに癒されるでしょう。

大山は天候が変わりやすいのも特徴。山頂や展望スポットから富士山を望めるかはタイミング次第です。しかし、気候が移り変わりやすいからこそ、訪れるたびに新たな景色が見られる面白さがあります。何度も楽しめる大山で、自分だけの登山を満喫してください。

【もしもの時のために・・・】紙地図も携行しよう

 

 

登山歴1年の編集者。週末は山に出かけて、スマホで風景を撮るのが楽しみです。自然の中で出会う光や空の色に夢中になり、気づけばカメラロールは山と愛猫の写真でいっぱいに。最初は不安もありましたが、今では自分のペースで歩けるようになってきたのが嬉しいです。これから登る方が安心して楽しめるように、わかりやすく丁寧な登山記事をお届けします。
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