辛口ライターの山道具レビュー:こんなに薄くて涼しいなんて! 臭いも発生しにくいハイブリッドベースレイヤー フォックスファイヤー/マイクログリッドウール

2026年6月30日 更新

夏山登山でもウールが快適?化繊と天然繊維(ウール)の基礎知識

登山用ウェアを選ぶとき、みなさんは「素材」をどこまで意識していますか? 日常生活で服を買うときは、使われている素材を気にするより、シルエットやデザイン、トレンドを優先して買い物を楽しむ人が多いかなと思います。

しかし、登山用のウェア、特にベースレイヤーを選ぶときは、使われている素材がとても重要。なぜなら、素材の種類や配合の比率によって、ウェアの特性が決まると言っても過言ではないからです。

ベースレイヤーに使われる素材は、大きく「化学繊維」と「天然繊維」に分けられます。代表的なものでは、化学繊維はポリエステル、天然繊維はウールがよく知られており、両方の繊維をミックスさせた糸や生地で作られるウェアも最近は増えています。


使われる素材の違いで、さまざまな生地が開発されている

ポリエステルとウールの特徴を簡単に紹介すると、ポリエステルから作られるウェアは吸汗速乾性に、ウールから作られるウェアは吸湿性と抗菌防臭性に優れます。吸湿性というのは、湿気を繊維の内側に吸い込むウール特有の性質で、サラッとした着心地が持続するため、不快な蒸れを感じにくい効果があります。

ちなみに、コットンは吸水性が高く、一度水分を含むと乾きにくい性質があるので、汗をかくアクティビティには向きません。登山用のウェアにはコットンが含まれていないものを選びましょう。

素材 メリット デメリット
化学繊維
(ポリエステル等)
・圧倒的な吸汗速乾性
・擦れに強く頑丈
・汗の臭いが発生しやすい
・汗冷えを起こしやすい
天然繊維
(メリノウール)
・高い抗菌防臭効果
・蒸れにくく汗冷えしにくい
・大量の汗は乾きが遅い
・価格が高めで虫食いに弱い
ハイブリッド
(化繊×ウール)
・ウールの防臭性と化繊の速乾性を両立
・薄手なら夏山でも涼しく快適
・ウール100%より質感は硬め
・混紡比率で性能が変わる

と、ここまではベースレイヤー選びの基本中の基本。前置きが長くなりましたが、ここから今回の本題です。

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夏にウールは暑い?「化繊×ウール」のハイブリッドな着心地をテスト

フォックスファイヤーの「マイクログリッドウール」シリーズは、素材にポリエステルが70%、ウールが30%使われているハイブリッドウェアです。生地の構造にも特徴があり、肌面にある凹凸が汗をかいたときのベタつきを抑え、ドライな着心地が持続します。

マイクログリッドウールを試してもらいたいと言われたとき、真っ先に抱いたのは「夏には暑すぎるのでは?」という懸念でした。というのも、ホームページの写真だけは生地の厚みを想像しにくく、さらに「グリッドウール」という商品名から、秋冬用のウェアによく使われる保温性の高い「グリッドフリース」を連想してしまったからです。

そんなマイナスイメージからテストすることになった「マイクログリッドウール」。今回はフォックスファイヤーで製品開発を担当している箱守澄威さんをゲストに迎え、東京都にある御岳山の渓谷沿いを歩いて着心地を試してみました。


フォックスファイヤーの箱守澄威さん。主にメンズアイテムの開発を担当

マイクログリッドウールを渡されたとき、気になっていた生地の厚みを真っ先に確かめました。すると、意外や意外、厚みがあるどころかとても薄く、抱いていた印象とまるで違う。しかも、生地を光に透かしてみると、その薄さは裏側の景色がくっきりと確認できるほど。このギャップにはかなり驚かされました。

とはいえ、テストした当日、東京都青梅市の最高気温は、夏日に迫る24.9度。ショートスリーブでも快適に過ごせる陽気のなか、あえて「ロングスリーブを着て歩いてください」と言われたときは、「さすがに暑くて着ていられなくなる」という懐疑的な表情が、隠し切れずに顔に出ていたかもしれません。


汗ばむ陽気のなか、クルーネックのロングスリーブを着てテストを実施

ですが、これもまた意外なことに、いくら歩き続けてもほとんど暑さを感じない。さすがに袖をまくり上げたくはなりましたが、「着ていられない!」と憤慨することはなく、ほとんどストレスを感じずにハイキングを楽しむことができました。

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薄手ウールが涼しさと防臭性をもたらす!快適な着心地の秘密

汗ばむ陽気のなかでも快適に行動できた着心地の背景には、おそらく3つの性能が良好に絡み合っていると考えられます。

ひとつは「通気性が高い」こと。先ほどチラッと触れたとおり、光に透かすと裏側の景色がくっきり見えるほど薄い生地は、まるでメッシュのような構造をしているので、風通しが抜群にいい。風がスースー抜けるので、ウェアの内側に熱がこもることがありません。


この薄さが優れた通気性を提供する

もうひとつは「速乾性に優れている」こと。半分以上はポリエステルから作られているので、速乾性の高さは予想どおり。そこに先ほどの通気性が加わることで、ワンランク上の乾きやすさを備えています。事実、バックパックを下ろすと背中が汗で濡れているのがわかったのですが、数分休んだあとにバックパックを背負い直すと、あの嫌なひんやり感がありませんでした。休憩のわずかな合間に、すでにウェアが乾き始めていた証拠といえるでしょう。


水滴を垂らしてみると、あっという間に生地に吸い込まれて表面で拡散された

そして最後のひとつは「汗をかいてもベタつかない」こと。商品説明にも書かれているとおり、肌面に凹凸があるので、肌に触れる面積が最小限に抑えられ、肌触りはつねにドライ。サラッとした着心地が続くので、汗をかいても生地が肌に張り付く不快感がありません。


表面に確認できる直線的な凹みで肌に触れる面積を少なくしている

強いて気になった点を挙げるなら、肌触りの好みは分かれるかもしれません。メリノウール特有のなめらかさとは異なる、少々硬さを感じる質感がありました。また、今回のテストでは、ウールの特性である調湿性や抗菌防臭性までは確かめられず、この点について箱守さんに尋ねると、とても誠実なコメントが返ってきました。

「ウールの性能を検査で確かめようとすると、ウール100%の生地を使わない限り、基本的に公表できるほどの数値を得ることはできません。ただ、発売前のテスト段階でスタッフやアンバサダーに着てもらい、返ってきた感想では『化学繊維100%のウェアよりは嫌な臭いが発生しにくかった』という声を多く頂いています」

あくまで感覚の域を出ないですが、確かに化学繊維100%のウェアと比べれば抗菌防臭性は期待でき、現場の生の声がその実力を裏付けているといえます。ちなみに、ウールは天然の撥水性をもつ繊維でもあり、汗で濡れた状態で肌に触れても冷たさを感じにくかったのは、ウールが含まれているからかもしれません。


汗で肩や背中がぐっしょり濡れても、冷たさはさほど感じなかった

登山用ウェアの初めの一着にはハイブリッドがおすすめ

夏の登山で着るベースレイヤーを選ぶとき、一般的には、発汗量の多いアクティビティや体質の人には化学繊維、何日もかけて山を縦走する人にはウールが好まれる傾向があります。ただし、これから登山を始めるビギナーにとっては、どの素材が自分に適しているか、なにもわからない状態から判断するのは難しいでしょう。


フロントファスナーで着脱しやすいフルジップタイプ

そこでおすすめの考え方が、最初の一着は化学繊維とウールのいいとこ取りをしたハイブリッドウェアを選んでおくこと。これがいちばん無難な選択肢といえます。

そしてその選択肢のひとつが、フォックスファイヤーのマイクログリッドウールです。数あるハイブリッドウェアのなかで、1万円を切る価格設定はかなり良心的(※クルータイプに限る)。これから登山を始める人にも無理なく勧められる一着といえるでしょう。


胸元でウェア内の喚起を促せるハーフジップタイプ

選べる形状は、クルーネック、ハーフジップ、フルジップの3タイプ。もちろん、女性モデルもラインナップされています。

登山のベースレイヤー選びに迷っているなら、夏でも涼しいマイクログリッドウールを選択肢に加えてみてはいかがでしょう?

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1986年生まれ、群馬県出身。学生時代に探検サークルに入り、アウトドアアクティビティに傾倒。卒業後、所属していた社会人山岳会で本格的に沢登りや雪山登山を開始。旅行代理店、登山用品輸入代理店の営業職を経て、2018年からフリーのライターとして活動中。登山専門メディアへの寄稿多数。2024年、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドステージⅡ取得。
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