クマに出会わないための事前の防衛策【知ることは、守ることVol.1】

クマとの遭遇が決して他人事ではなくなっている今、いざ実際にクマと遭遇してしまったとき、私たちはどのように行動すればいいのでしょうか。
まずは、自分自身の身を守るためにできる具体的な防衛策を、事前にしっかりと学んでおくことがとても大切です。

2026年6月15日 更新

事前の防衛策①クマの出没情報をこまめにチェックする

現在、クマが出没する多くの自治体では、最新の出没情報を積極的に発信するようになっています。そのため、お住まいの地域や出かける先の情報をこまめにチェックしておく習慣をつけましょう。

特に郊外や自然の多い場所へ出かける際には、出発の直前に必ず最新情報を確認してください。もしクマの出没が報告されている山やエリアがあれば、そこへ行くのを控えたり、目的地を別の安全な場所へ変更したりすることも、大切な選択肢として検討しましょう。

事前の防衛策②外出する際には、音の出るものを携行する

クマ鈴など、常に音が出るものを持ち歩くのがおすすめです。
人の存在をあらかじめクマに知らせることで、至近距離でばったりと遭遇してしまう最悪の事態を防ぐことができます。また、ラジオの音量を少し大きめにして流しながら歩くのも効果的な方法です。

ただし、近年は人間に慣れてしまい、人が発する音を聞いても逃げようとしない個体も出現しています。「音を出しているから絶対に安心」とは言い切れない時代になっていますので、決して気を抜くことなく、周囲への警戒を怠らないようにしてください。

事前の防衛策③単独行動は避け、複数で行動する

クマが出没するシーズンには、単独行動を控え、できるだけ複数人で行動するように心がけましょう。

一人で行動していると、人の気配が小さいためクマに気づかれにくく、山道などで出会いがしらに突然襲われてしまうリスクが非常に高くなります。複数人で声を掛け合いながら行動することで、クマに人の存在を気づかせやすくなります。

また、万が一の事態に備えて、強力なクマ撃退スプレーも事前に準備し、すぐに使えるように携行しておくとさらに安心です。

事前の防衛策④クマ出没の標識があったら、迷わず引き返す

「少しだけなら大丈夫だろう」というほんの少しの油断が、最も重大な危険を招きます。

自治体や土地の管理者が設置した標識は、直近の目撃情報や、足跡・爪痕といったクマの痕跡(フィールドサイン)に基づいて出された、命に関わる「警告」です。その標識の先に足を踏み入れるということは、クマのテリトリー(生活圏)に自ら入り込んでしまうことを意味しています。

もし現地でこうした標識を見かけたら、自身の安全を最優先に考え、「これ以上は進まない」と勇気を持って引き返す判断をしてください。

事前の防衛策⑤クマが活発になる時間や霧の深い日は山に入らない

クマは薄暗い時間帯(特に明け方や夕暮れ時)に活発に行動する習性を持っています。

また、霧の深い日や雨の日は、雨音や視界の悪さのせいで、クマ側もこちらの気配に気づきにくくなります。その結果、お互いに突然目の前で出くわしてしまう「バッタリ遭遇」のリスクが飛躍的に高まりますので、格段の注意が必要です。

山や林に入る際には、できるだけ日中の見通しが良い時間帯を選ぶようにしましょう。そして、天候が悪いときには無理をせず、予定を中止する決断を下すことも、身を守るためには必要不可欠です。

おわりに

クマの出没が相次ぐ現代において、クマとの遭遇対策は決して他人事ではなく、誰もが当事者になり得る身近な課題となっています。

ここまでご紹介してきたように、事前の情報チェックや音の出るものの携行、複数での行動、そして警告標識を無視しないといった一つひとつの行動が、あなたや大切な人の命を守る強力な防衛策となります。
また、時間帯や天候に配慮し、時には「行かない」「引き返す」という勇気ある決断を下すことも、リスクを回避するためには極めて重要です。

「少しだけなら」「自分だけは大丈夫」というほんのわずかな油断が、取り返しのつかない事態を招きかねません。野生動物のテリトリーに私たちが足を踏み入れているという意識を常に忘れず、正しい知識と高い警戒心を持って、安全第一の行動を心がけていきましょう。

この記事で紹介した内容は、書籍『さまようクマ、変わる森 正しく怖がるための新しい教科書』に掲載している情報の一部をもとに再構成したものです。クマとの向き合い方をより深く知りたい方は、ぜひ本書もあわせてご覧ください。

クマを「正しく怖がる」ために読みたい一冊

『さまようクマ、変わる森 正しく怖がるための新しい教科書』は、感情論や俗説に流されるのではなく、事実をもとにクマを「正しく怖がる」ための知識をまとめた一冊です。

連日のように報道されるクマの出没や人身被害のニュース。
ただ「怖い」と怯えるだけでなく、今私たちに必要なのは、クマの生態や行動、人里に現れる背景を正しく知り、冷静に備えることです。

本書では、クマの第一級の専門家を監修に迎え、過疎化や環境の変化、アーバンベアの出現、生態系のなかでのクマの役割、そして万が一遭遇してしまったときの身の守り方まで、豊富なデータとともに、分かりやすく解説しています。

クマの活動が活発になるこれからの時期、自分や大切な人の身を守るための知識を深めたい方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

監修者プロフィール
小池 伸介(こいけ・しんすけ)
 1979年、名古屋市生まれ。東京農工大学大学院農学研究院教授。博士(農学)。専門は生態学。主な研究対象は、森林生態系における生物間相互作用、ツキノワグマの生物学など。東京都奥多摩、栃木県、群馬県、神奈川県などにおいてツキノワグマの生態や森林での生き物同士の関係を研究。NGO日本クマネットワーク代表。

商品概要
商品名   :『さまようクマ、変わる森 正しく怖がるための新しい教科書』
発売日   :2026年5月29日
定価    :2,200円(本体2,000円+税10%)
出版社   :株式会社 昭文社


画像:Amazon

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