登山のレイヤリング完全ガイド 快適さと安全性を高める重ね着の基本と実践テク

登山では気温や天候が短時間で変化するため、「レイヤリング(重ね着)」による体温調整が重要です。汗冷えや寒さによる体調不良を防ぐには、ウェア選びだけでなく、重ね着の順番や脱ぎ着のタイミングも大切なポイントになります。
この記事では、登山初心者にもわかりやすく、レイヤリングの基本構造・アイテムの選び方・シーン別の実践テクニックまで、快適で安全な登山を叶えるための情報を丁寧に解説します。
目次
レイヤリングとは?登山で重ね着が必要な理由

ウェアを重ね着して体温を調整することを、登山では「レイヤリング」と呼びます。気温や天候の変化が激しい山の中では、こまめに脱ぎ着をして体温を一定に保つことが、快適さと安全の鍵になります。
特に山では、標高が100m上がるごとに気温が約0.6℃下がり、風速1m増えると体感温度が1℃下がるといわれています。たとえ夏であっても、濡れた服を着たままでは体が冷えてしまい、汗冷えや低体温症のリスクが高まります。
そこで登山では、「ベースレイヤー」「ミドルレイヤー」「アウターレイヤー」の3層構造を基本に、吸汗速乾性や保温性に優れた登山用ウェアを組み合わせることが重要です。重ね着によって気温や行動に応じた調整がしやすくなり、長時間の山歩きを快適に、そして安全に楽しむことができます。
それでは、各レイヤーの特徴と選び方のポイントを見ていきましょう。
ベースレイヤー|フィット感と素材で選びたい
肌に直接触れるベースレイヤーは、レイヤリングの要。吸水性、速乾性に優れたポリエステルなどの化繊素材や、肌をドライに保ち、保温効果もあるメリノウール素材を選ぶことで、汗による冷えやムレを防止します。
ベースレイヤーのアイテム例
・長袖Tシャツ:涼感と高い速乾性が特長のラミー素材を使い、抗菌防臭加工を施したベースレイヤー。快適な着心地が持続します。
・アンダーウェア:汗をよく吸って乾きやすい素材のものを選ぶことが大切。長袖の薄手ウェアなら日焼け対策にも役立ちます。
・撥水アンダーウェアドライレイヤー®:汗を肌に戻さない耐久撥水ニット生地が、汗冷えやべたつきを軽減。吸汗速乾ウェアを着る前に、肌に直接着るアンダーウェアです。
ベースレイヤーの選び方のポイント
・吸汗速乾素材(ポリエステルなど)
・保温・防臭性ならメリノウール
・肌当たりがやさしく、動きやすいフィット感
ミドルレイヤー|ベースとアウターの間に着る中間着
長袖シャツや薄手のフリース、インサレーションウェアと呼ばれる防寒着など、ベースレイヤーの上に重ねるミドルレイヤーは、歩いている途中の状況に応じて体温を調節するのに役立ちます。
ミドルレイヤーのアイテム例
・長袖シャツ:消臭や紫外線カット、吸湿速乾機能を備えた長袖Tシャツ。登山はもちろんタウンユースにも便利。
・フリース:保温力と通気性に優れたフリースは、汗をかいてもムレを軽減してくれます。フルジップタイプのフリースなら着脱が容易。
・インサレーションウェア:丈夫で軽量、通気性に優れたリサイクル・ポリエステル100%素材のジャケットは、寒い季節の登山に最適です。
ミドルレイヤーの選び方のポイント
・フルジップ式は調整しやすく便利
・軽量・通気性・携行性を重視
アウターレイヤー|防水性と透湿性で選ぶ
一番上に着るアウターには、防風や防水効果があるものが適しています。ベースレイヤーやミドルレイヤーと同様、汗で蒸れてしまわないように湿度を外に逃す透湿機能がある素材であることも重要。保温が目的のダウンジャケットは、ウインドシェルやレインウェアと重ねて着用します。
アウターレイヤーのアイテム例
・ダウンジャケット:非常に軽量で、強度を兼ね備えたポケッタブル仕様のジャケット。撥水加工されているため急な天候変化にも対応可能。
・ウインドシェル:耐久、防風、軽量性に優れたリサイクルナイロン100%使用の超軽量ウインドシェル。クライミング用に開発されているため、とても動きやすいです。
・レインウェア:天気予報が晴れでも、レインウェアは必ず持参しましょう。上下セパレートタイプが動きやすくておすすめです。
アウターレイヤーの選び方のポイント
・レインウェアは上下分かれたタイプが基本
・軽くて持ち運びしやすい素材がおすすめ
登山用ボトムスのレイヤリング
ケガや虫刺されなどのリスクがある登山では、ボトムスには長ズボンやタイツが適しています。登山用のボトムスは軽くて伸縮性があり、撥水性や速乾性も備えています。
またロングパンツではなく、ハーフパンツ+タイツやスカート+タイツといったレイヤリングを取り入れれば、機能性を損なわずに山ファッションも楽しめます。
ボトムスのアイテム例
・ロングパンツ:高いストレッチ性を持つボトムスで、非常に動きやすい。左右サイドのベンチレーションを開けば、ムレや暑さを逃して体温調節できます。
・ハーフ・ショートパンツ:足さばきがよく、夏の低山やハイキングに最適。リサイクル漁網を素材に使った製品もあり、環境配慮型アイテムとして注目されています。
・タイツ:腰・もも・ふくらはぎを適度にサポートして疲労を軽減。単体よりもハーフパンツや山スカートと組み合わせて使うのが一般的。
・山スカート:タイツと合わせることで防寒性・動きやすさの両立が可能。歩行の邪魔になりにくい設計がされていますが、岩場や足を大きく上げるルートでは注意が必要です。
ボトムスの選び方のポイント
・ストレッチ性と速乾性のある素材を選ぶ
・岩場や藪道では素肌が露出しないものが安全
・ファッション性を取り入れるなら、タイツとの組み合わせが便利
登山シーン別のレイヤリングの実践テクニック
登山中は、気温・風・天候の変化に対応しながら、ウェアをこまめに脱ぎ着する「レイヤリング」が快適さと安全性を大きく左右します。ここでは、登山中のさまざまなシーンごとに、どのレイヤーをどのタイミングで着るべきかを具体的に紹介します。
登山口で1枚脱ぎ、歩き始めは薄着で

朝の登山口は肌寒く感じることも多いですが、登山道を歩き始めるとすぐに体が温まり、汗をかきやすくなります。この汗をそのまま放置すると汗冷えによる体温低下のリスクがあるため、出発前にミドルレイヤーやアウターを1枚脱いで、薄手の状態で歩き始めるのがポイントです。
小休憩をとる時はミドルかアウターを着る

立ち止まって体を休めている間は、運動で生まれた熱が一気に逃げていきます。特に風があるとすぐに体が冷え、疲労回復どころか体力を奪われる要因に。そのため、ウインドシェルや薄手のフリースをすぐ羽織れるように携行しておき、休憩時に素早く着用しましょう。
稜線ではアウターを羽織る

森林限界を超える稜線エリアでは、木々の風よけがなくなり、強風や直射日光、突然の雨にさらされやすくなります。気温が高くても、風速が上がることで体感温度は大きく低下。レインウェアやウインドシェルなどのアウターを早めに羽織って、体温をキープしましょう。
悪天候時はレインウェアなどのハードシェルがマスト

登山中に雨や雪に濡れると、体温低下と体力消耗が一気に進行します。天気予報が外れることも珍しくないため、雨が降る前・風が強まる前のタイミングでレインウェアを着用するのが理想です。特に風雨に強い「ハードシェル」タイプのアウターは、防風・防水・透湿性に優れ、悪天候時の必携装備です。
山小屋やテント場ではリラックスできる服装で

行動を終えたら、濡れた服は早めに脱いで、体を冷やさないミドルレイヤーや防寒着に着替えることが大切です。山小屋では薄手の長袖シャツやフリースでリラックス。テント場では、標高や天気によって冷え込みが激しくなるため、厚手のフリースやダウンを着込んで防寒対策を。登山靴を脱いでサンダルに履き替えると、足も楽になります。
山小屋で寝る時の服装は?
就寝時の服装に特別な決まりはありませんが、行動中に着た汗を含んだウェアは避け、ドライな肌着やTシャツに着替えるのが基本です。パジャマ代わりに、翌日着用予定のベースレイヤーに着替えておけば荷物も減り、朝の支度もスムーズになります。
レイヤリングの基本がわかる|登山ビギナーに頼れる一冊
「山の天気ってどう対応すればいいの?」「暑くなったり寒くなったり、服装の調整が難しい…」そんな登山初心者の不安に応えてくれるのが、『山と高原地図ではじめる 山登り入門ガイド』です。
この一冊では、登山中のアクシデントへの対処法や、天気の急変に備えるポイント、ウェアや持ち物の選び方、安全に歩くためのコツまで、山に入る前に知っておきたい基礎知識を網羅しています。
今回ご紹介したレイヤリングの考え方や服装選びの基本も、このガイドでしっかり理解を深めることができます。登山の基礎をきちんと学んでおきたい方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
登山のレイヤリングをマスターして、安全で快適な山歩きを

「登山 レイヤリング」の基本を押さえることで、天候や気温の変化にも柔軟に対応でき、体調不良のリスクを減らせます。まずはベース・ミドル・アウターの3層構成を理解し、自分の登山スタイルに合ったウェア選びを心がけてみてください。
適切な重ね着は、山での時間をもっと自由に、もっと快適にしてくれますよ。
記事中イラスト:ホシノアンリ
【WEBサイト】https://starlit-design.com/
【Instagram】@anri_hoshino
【X】@starlit_design
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