登山計画書(登山届)の書き方と提出方法 記入項目・提出先を解説

登山計画書は、登山の日程やルート、登山者と緊急連絡先などをまとめた書類で、「登山届」とも呼ばれます。作っておくと、万が一の遭難時に捜索・救助の手がかりになります。また、作る過程で山の特性を調べたり、計画に無理がないかを見直したりするきっかけにもなります。

計画書には主に、登山者と緊急連絡先、日程、行動予定(ルートと通過予定時刻)、予定を変更する場合の下山ルート、装備・食料を書きます。提出先は、登山口などの登山届ポスト、警察や自治体への郵送・FAX、オンラインの申請やサービスなどです。ただし、条例で届出が義務付けられている山域では、対象区域や期間、提出方法を行き先の自治体や警察の公式情報で確認する必要があります。

この記事では、提出が必要な山域の確認方法から、計画書の書き方、提出方法、提出したあとにすることまでを順に紹介します。

2026年10月9日 更新

登山計画書を書く前に、提出が必要な山域か確認する

登山計画書を書く前に、行き先の山で届出が義務付けられているかを確認しましょう。いくつかの県では、条例によって届出の義務が定められています。届出が義務付けられている山域では、対象区域や期間、提出方法を行き先の自治体や警察の公式情報で確認する必要があります。

対象になる範囲や期間は、県によって異なります。性格の違いが分かる例として、次の3つを紹介します。

長野県

県内の指定登山道を通行する場合は、登山計画書の届出が必要です。北アルプス・中央アルプス・南アルプス・八ヶ岳など、県内の広い範囲の山域が対象です。

山梨県

富士山(山梨県側の標高3,000m以上)や、南アルプス・八ヶ岳の一部の区域では、12月1日から翌年3月31日までの期間、届出が義務付けられています。富士山・南アルプス・八ヶ岳のより広い区域では、通年で届出に努めるよう定められています。

岐阜県

北アルプス地区と、御嶽山・焼岳・白山・乗鞍岳の活火山地区で、登山届の提出が義務付けられています。届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合に、5万円以下の過料が科される区域もあります。

このように、県内の広い範囲が対象の場合もあれば、特定の区域や冬の期間だけが対象の場合もあり、罰則の有無も異なります。これらの3県以外にも、届出を義務付けている県があります。対象の区域や期間は見直されることがあるため、出発前に行き先の県や警察の最新情報で確認してください。

条例による義務がない山でも、各地の自治体や警察が登山計画書の提出を呼びかけています。日帰りや低い山でも、作成と提出を習慣にしておきましょう。

## 登山計画書の書き方 書く項目と記入のポイント

登山計画書に書く主な項目を、まず一覧で確認しましょう。そのうえで、様式や記入例の確認先と、初心者が迷いやすい「行動予定」「エスケープルート」「非常時に役立つ情報」の書き方を説明します。

項目 主な記入内容
山域・山名 登る山の名前と、その山がある山域
日程 入山日、下山予定日時
行動予定 登山口、経由地、宿泊地、下山口と、各地点の通過予定時刻
登山者・同行者 氏名、年齢、性別、住所、携帯電話番号など(同行者の情報を含む)
緊急連絡先 家族などの氏名、続柄、電話番号
登山口までの交通手段 公共交通機関か自家用車か、自家用車の場合は車両番号
非常時の対応 天候の悪化や体調不良などで予定を変更する場合の下山ルート(エスケープルート)
装備・食料 雨具、ヘッドランプ、防寒着などの装備、食料や行動食の量
その他 山岳保険の加入状況、利用している登山アプリのIDなど

実際の欄の名前や項目は、様式によって異なります。

提出先の様式と記入例を確認する

自治体や警察によっては、決まった様式を設けていない場合があります。一方で、条例による届出が必要な山域では、届出先が案内する方法で提出します。まずは提出先の案内を確認しましょう。

初めて書く場合は、公的な様式や記入例を参考にすると、どの欄に何を書けばよいかが分かりやすくなります。例えば、次のようなものが公開されています。

長野県

登山計画書の様式(PDF・Excel)と作成例
HP:長野県「登山計画書を届出しましょう」

山梨県

登山計画書の様式(日本語のほか外国語版もあり)と、厳冬期用の記載例
HP:山梨県「山梨の登山・山岳情報ポータル」

日本山岳・スポーツクライミング協会

簡易版の登山届と登山計画書の様式例、それぞれの記載例
HP:日本山岳・スポーツクライミング協会「登山計画」

初めての場合は、可能であれば登山経験のある人に計画書を見てもらうと安心です。

行動予定は通過予定時刻まで具体的に書く

行動予定は、万が一のときに捜索の手がかりになる情報です。登山口・主な経由地・宿泊地・下山口を歩く順に並べ、それぞれの地点を通過する予定時刻まで書きましょう。

通過予定時刻は、登山地図に載っているコースタイムをもとに、休憩の時間や自分の歩くペースを加えて考えます。地図のコースタイムをそのまま並べるだけでなく、自分の体力や同行者のペースに合わせて、余裕を持った時刻にすることが大切です。

下山予定時刻もはっきり書いておきます。山小屋などに泊まる場合は、宿泊地と各日の行程を分けて書きます。

登山地図アプリ「ヤマチズ」では、地図上の地点をタップして行程表を作成できます。歩くペースの倍率や休憩時間を設定すると、各地点の通過予想時刻を確認できるため、計画書の行動予定を組み立てる目安にできます。作成した計画は保存して、あとから編集することもできます。

関連記事:登山アプリ「ヤマチズ」を使いこなすための詳しい活用方法

どの山・どのルートを選ぶかから考える場合は、登山計画全体の立て方を紹介した記事も参考にしてください。

関連記事:初心者でも迷わない登山計画の立て方 12ステップ

エスケープルートを決めておく

エスケープルートとは、天候の悪化や体調不良、予定より行動が遅れたときなどに、予定のルートを変更して下山するための代替ルートです。

計画を立てる段階で、地図を見ながら次のことを確認しておきましょう。

・どの地点から、どのルートで下山できるか
・どこまで進んで予定より遅れていたら引き返すか

決めたエスケープルートは、計画書の「非常時の対応」などの欄に書いておきます。

また、必要に応じて、ルート上やその周辺の山小屋・避難小屋の位置、営業期間なども事前に確認しておくと、行動を変更するときの判断材料になります。

非常時に役立つ情報を漏れなく書く

緊急連絡先には、計画の内容を知っていて、連絡がつきやすい家族などを書きましょう。あらかじめ計画書を渡し、下山予定時刻を過ぎても連絡がない場合にどうするかを話し合っておくと安心です。

複数人で登る場合は、使用する様式に従って、同行者の情報も記入します。様式によっては、登山口までの交通手段や車両番号、山岳保険の加入状況、利用している登山アプリのIDを書く欄もあります。該当する場合は、使用する様式に従って記入しましょう。

装備・食料は、使用する様式に沿って記入します。何を持っていけばよいか迷う場合は、持ち物のチェックリストも活用してください。

関連記事:登山の持ち物チェックリスト 日帰り・山小屋泊・テント泊別に解説

登山計画書の提出方法と提出先

登山計画書は、登山届ポストや郵送などで提出する方法と、電子申請や登山サービスを利用して提出する方法があります。どの方法が使えるかや、提出先として認められる方法は、地域によって異なります。条例で届出が義務付けられている山域では、所定の届出先へ提出しましょう。

登山届ポストや郵送・メールなどで提出する

紙で出す場合は、登山届ポストに投函する方法があります。ポストは登山口のほか、地域によっては交番や駅などに設置されています。登山口によっては記入用紙が置かれている場合もありますが、ポストがない登山口もあるため、事前に確認しておきましょう。

ほかに、山域を管轄する警察署や、県の担当窓口へ郵送・持参する方法もあります。FAXやメールで受け付けている県もあり、受付方法や送付先は都道府県によって異なります。

オンラインで提出する

オンラインでは、次のような方法で提出できます。

都道府県の電子申請

長野県の「ながの電子申請サービス」など、県の電子申請で登山計画書を受け付けている場合があります。

コンパス

公益社団法人日本山岳ガイド協会が運営する登山届のシステムです。登山届の作成・提出は無料で利用でき、提出すると緊急連絡先などにメールで通知されます。下山したら下山通知を出す仕組みがあり、下山予定時刻を過ぎても下山の確認ができない場合は、設定した時間の経過後に緊急連絡先へ通知が届きます。

YAMAP

長野県が届出先とみなす団体としてコンパスとあわせて案内しているほか、山梨県警察や岐阜県警察なども提出手段のひとつとして案内しています。

ただし、各サービスと自治体・警察との連携状況は、地域によって異なります。利用する前に、行き先の県や警察の案内で、利用できる提出方法を確認しましょう。

提出する時期の目安

提出する時期は、提出先の案内に従いましょう。例えば京都府警察は、府のホームページから提出する場合は登山日の約1週間前までに、新潟県警察は入山予定日の1週間程度前に余裕を持って提出するよう協力を求めています。

計画が決まったら早めに作成し、余裕を持って提出しておくと安心です。

登山計画書を提出したあとに忘れずにしたいこと

登山計画書は、提出したら終わりではありません。当日の持ち物、計画を変更したときの対応、下山したときの連絡まで確認しておきましょう。

当日は計画書を持参し、家族に内容と提出先を伝える

当日は、作成した登山計画書を携行しましょう。長野県も、登山当日に計画書を携行するよう案内しています。

家族などにも、計画の内容と提出先を共有しておきます。

計画を変更・中止するとき

計画を変更した場合の扱いは、提出先によって異なります。例えば長野県の電子申請では、内容を変更する場合は再度提出し、提出日時の新しいものが変更後の計画として扱われます。中止する場合の別途の入力は不要とされています。

アプリやオンラインのサービスで提出した場合は、それぞれの方法で計画の変更や取り下げができるかを確認しておきましょう。家族などに伝えた内容も、あわせて更新しておきます。

下山したら連絡する

下山の報告が必要かどうかも、提出先によって異なります。長野県の電子申請のように下山届が不要な場合もあれば、コンパスのように下山通知を出す仕組みがある場合もあります。スポーツ庁が示す登山届の参考様式では、計画書を提出したところには、必要に応じて下山の報告をするよう注意書きがあります。

どの方法で提出した場合も、下山したら家族など計画を伝えた人へ連絡しましょう。

登山計画書に関するよくある質問

本文で紹介した書き方・提出方法に加えて、名称の違いや複数の県にまたがる山での提出など、計画書を出すときに迷いやすい点をまとめました。

Q. 登山計画書と登山届は違うものですか?

A. 同じ意味で使われることが多い言葉です。例えば長野県は「登山計画書」、岐阜県は「登山届」という名称を使っています。日本山岳・スポーツクライミング協会のように、項目を絞った「簡易版の登山届」と、より詳しい「登山計画書」の様式例を分けて公開している団体もあります。条例で届出が必要な山域では、名称にかかわらず、届出先が案内する方法で提出してください。

Q. 日帰りや低い山でも出したほうがいいですか?

A. 出しておくことをおすすめします。条例による届出の義務がない山でも、各地の自治体や警察が提出を呼びかけています。日帰りや標高の低い山でも、道迷いや転倒などのトラブルは起こり得ます。行動予定を残しておけば、万が一のときに捜索の手がかりになります。

Q. グループで登るときは、全員分の計画書が必要ですか?

A. 同じ行程で行動するグループなら、代表者がまとめて提出できる場合があり、公的な様式にも同行者を書く欄が設けられています。その場合も、使用する様式に従って、同行者の情報を記入しましょう。

Q. 複数の県にまたがる山では、どこに出せばよいですか?

A. 歩くルートが含まれる県の案内を、それぞれ確認しましょう。県によっては、隣の県の機関に届け出た場合も届け出たものとみなす規定があります。例えば岐阜県の条例では、白山について、石川県または福井県の行政機関に届け出た場合も届け出たものとみなすとしています。扱いは山や県によって異なるため、行き先の県や警察の案内で確認してください。

Q. 計画書を出し忘れたまま登山口に着いたらどうすればよいですか?

A. 登山口に登山届ポストがあれば、その場で記入して投函できる場合があります。オンラインで提出できる方法を使える場合もあります。条例で届出が義務付けられている山域では、所定の方法で届け出てから入山してください。届出をしなかった場合に過料の規定がある区域もあります。

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登山計画書を書いて、出して、伝えるまでが登山の準備

 

登山計画書は、行き先の届出ルールを確認し、通過予定時刻やエスケープルートまで具体的に書いて、適切な方法で提出するところまでがひとつの準備です。条例で届出が義務付けられている山域では、対象区域や期間、提出方法を、出発前に行き先の自治体や警察の公式情報で確認しましょう。

提出したら、家族などに計画の内容と提出先を伝え、当日は計画書を持参します。計画を変更したときや下山したときの連絡も忘れずに行いましょう。

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