阿蘇山登山ガイド 高岳・中岳・南岳をめぐる火山ルート

熊本県を代表する阿蘇山(あそさん、標高1,592m)は、日本最大級のカルデラを抱く雄大な山で、魅力的な登山ルートがいくつもあります。広大な外輪山(がいりんざん)に囲まれた草原や、いまも活動する火口を間近に眺められるのは、阿蘇ならではの特別な登山体験と言えるでしょう。

阿蘇くまもと空港からのアクセスも良く、観光スポットも豊富なので、登山とあわせて楽しむのもおすすめ。今回は、阿蘇山上ターミナルから南岳(標高1,496m)・中岳(標高1,506m)・最高峰の高岳(標高1,592m)へ向かう、代表的な登山ルートをご紹介します。

2025年9月5日 更新

阿蘇山登山の魅力 日本最大級のカルデラを歩く


山並みと田園、町が調和する阿蘇の風景

阿蘇山は熊本県の中央に位置し、直径約25kmの外輪山と、その内部に広がる大カルデラで知られる名峰です。阿蘇五岳(高岳・中岳・根子岳・烏帽子岳・杵島岳)からなり、最高峰は高岳(標高1,592m)。中でも阿蘇中岳火口は、今も活発な火山活動が続くことで有名です。


広大な草原にのびやかに放たれた馬たち

カルデラの内部には街や田畑が広がり、人々の暮らしと火山が共存する独特の景観も魅力のひとつ。四季ごとに姿を変える山容は阿蘇山登山の大きな魅力であり、特に5月〜6月に咲き誇るミヤマキリシマの大群落は圧巻です。

阿蘇山へのアクセス 登山出発点・山上ターミナルへの行き方

阿蘇山登山の出発点となるのは「阿蘇山上ターミナル(阿蘇火山噴煙駐車場)」です。


冒険心をかき立ててくれる絶景が続く阿蘇パノラマライン

車でのアクセス

阿蘇市街や南阿蘇村からは「阿蘇パノラマライン」を通って向かうのが一般的です。北側(阿蘇市方面)・南側(南阿蘇村方面)の両方から入ることができ、道中には絶景ポイントが続きます。ターミナルには駐車場があり、売店やトイレも整備されているので、登山口として安心して利用できます。


阿蘇中岳火口まで行く場合、阿蘇山上ターミナルでバスの乗り換えが必要

公共交通でのアクセス

JR阿蘇駅からは草千里・阿蘇山上ターミナル行きのバスが運行しており、所要時間はおよそ30分です。火山活動の状況によっては阿蘇中岳火口周辺が立入規制となることもあるため、利用の際は事前に最新情報を確認しておきましょう。

阿蘇山登山コース 南岳・中岳・高岳を結ぶ王道ルート


荒々しい火山地形を登っていく王道コース

今回ご紹介するのは、阿蘇山でも定番の登山ルートです。阿蘇山上ターミナルをスタートし、砂千里ヶ浜を抜けて南岳・中岳・最高峰の高岳の三座を巡ります。往復でおよそ4時間半〜5時間ほどと、初心者のハイカーでも挑戦しやすい内容です。

この王道ルートは、阿蘇山登山の魅力を一度に味わえる代表的な行程であり、阿蘇山登山ルートのなかでも人気があります。

コースタイム
阿蘇山上広場(阿蘇火山噴煙駐車場)→(約40分)→砂千里ヶ浜分岐→(約1時間5分)→南岳→(約25分)→中岳→(約30分)→高岳→(約25分)→高岳東峰

砂千里ヶ浜登山 火山砂に覆われた異世界の風景


皿山の山頂周辺を経由するか、阿蘇公園道路沿いを進むルートから選べる

阿蘇山上ターミナルを出発すると、まずは低木帯の道を進みます。やがて視界が開け、荒涼とした地形が目の前に広がります。歩みを進めるごとに風景は変化し、緑から黒い火山砂に覆われた大地へと表情を変えていきます。


ダイナミックな火山地形の中を歩く砂千里ヶ浜

そして最初に辿り着くのが「砂千里ヶ浜(すなせんりがはま)」。その名の通り、一面が火山砂に覆われた荒々しい風景が広がります。整備された遊歩道で歩きやすい一方、日差しを遮る木々はほとんどなく、真夏は帽子やこまめな水分補給が欠かせません。本格的な登りの前にひと息つけるポイントです。

南岳登山 阿蘇のスケールを実感する稜線歩き


南岳までの登りが、阿蘇ならではの山の表情を楽しむハイライト

砂千里ヶ浜を抜けると、徐々に標高を上げながら南岳へ向かいます。火山地帯ならではの岩場やガレ場が広がり、登山らしい緊張感を味わう場面もあります。登山道は比較的はっきりしていますが、急な登りもあり、足元に注意しながら進む必要があります。目の前に迫る山肌や、振り返るたびに広がるカルデラの景色が、歩みを後押ししてくれるでしょう。


360度の大パノラマが広がる、1つ目のピーク・南岳

南岳は標高1,452mと中岳や高岳に比べると控えめですが、眼下に広がる砂千里ヶ浜や、火山ガスを上げる阿蘇中岳火口の迫力を間近に楽しめる絶好の展望地です。天気が良ければ、遠く九重連山(くじゅうれんざん)まで見渡せ、阿蘇のスケールの大きさを改めて感じられます。

中岳登山 火山活動を間近に感じる迫力のルート


火口を見渡しながら、圧倒的スケールの火山の稜線を歩く

南岳からは稜線をたどり、中岳へと向かいます。中岳は阿蘇山の中心に位置し、今も火山活動が続くエリアです。登山道には滑りやすい箇所もあり、風の強い日には注意が必要です。道中は草木の少ない荒涼とした風景が広がり、活火山ならではの迫力を実感できます。


活火山ならではの迫力と鼓動が伝わる中岳

火山地形を歩き進めると、中岳山頂に到着します。目の前には阿蘇中岳火口の縁が広がり、遠くには外輪山の大パノラマも一望できます。ここまで登ってきた達成感と、火山のダイナミックな景観を同時に味わえる特別な瞬間です。

高岳登山 阿蘇五岳の最高峰から望む大展望


遥かに連なるくじゅう連山を見渡せる高岳の頂

中岳を越えると、阿蘇五岳の最高峰・高岳へと向かいます。稜線には岩場が続き、急な登りもありますが、その先に広がる展望はひときわ印象的です。足元にはダイナミックな地形が広がり、正面にはくじゅう連山を望めます。


ミヤマキリシマがパッチワークのように広がる高岳東峰

5月下旬から6月には、ミヤマキリシマが高岳東峰周辺を一斉に彩り、荒々しい火山の風景と鮮やかな花々のコントラストが美しく映えます。体力的にはややハードですが、この季節ならではの頂上からの眺めは、達成感に応える特別な景色です。

下山時に立ち寄りたい阿蘇観光名所 中岳火口の迫力


阿蘇ならではのスケール感あふれる地形に圧倒される

阿蘇中岳火口は、阿蘇観光を代表するスポットです。今も噴煙を上げる活火山を間近に見ることができ、その迫力には圧倒されます。火口周辺には展望台や遊歩道が整備されていますが、火山ガスの影響で入山規制がかかることもあるため、公式HPで最新情報の確認が欠かせません。


硫黄ガスが濃い場所では、体調管理を心がけて

火山活動が穏やかなときには、轟音を立てる噴煙や地底から立ち上る熱気を肌で感じることができ、活火山ならではの臨場感を味わえます。体力や時間に余裕があれば、下山の途中に立ち寄ってみるのも良いでしょう。

阿蘇観光名所 登山後に訪れたいスポット


大観峰に立てば、阿蘇の雄大さを全身で体感できる

阿蘇登山のあとに立ち寄りやすい観光スポットも豊富です。外輪山の北側に位置する「大観峰(だいかんほう)」では、阿蘇五岳を一望する雄大な景色が広がり、朝焼けや夕暮れ時には趣のある光景が見られます。

大観峰
住所:熊本県阿蘇市山田
駐車場:無料
公式HPはこちら

火山地形とミヤマキリシマの共演が素晴らしい仙酔峡

春には「仙酔峡(せんすいきょう)」が見どころです。ミヤマキリシマの大群落が谷を鮮やかに染め上げ、登山と合わせて訪れる人も多い場所です。また、車での移動なら外輪山の稜線に沿って走る「ミルクロード」もおすすめで、草原やカルデラを眺めながらのドライブを楽しめます。

仙酔峡
住所:熊本県阿蘇市一の宮町宮地仙酔峡一帯
駐車場:無料
公式HPはこちら

旨味がストレートに感じられる絶品・あか牛丼

食事では、阿蘇名物の「あか牛」を味わえます。脂身が少なく旨味が濃い赤身肉で、丼やステーキとして提供される店が多くあります。登山後の食事として利用しやすく、体を動かしたあとの栄養補給にも適しています。

阿蘇山を満喫 登山と観光で広がる楽しみ方


世界に誇る唯一無二の景観が広がる阿蘇山

阿蘇山は、火山ならではのダイナミックな景観と、四季折々の自然美を同時に楽しめる名山です。登山では、砂千里ヶ浜の荒涼とした大地や迫力ある火口、そして3つの山頂からの大展望と、変化に富んだ魅力が続きます。


登山中も下山後も、絶景が次々と現れる阿蘇

さらに、大観峰や仙酔峡など周辺の観光スポットも豊富で、登山と組み合わせれば一日を通して楽しむことができます。初夏にはミヤマキリシマ、夏は広大な草原、秋は紅葉、冬は雪景色と、季節ごとに異なる姿を見せるのも特徴です。

登山と観光をあわせて計画することで、阿蘇山の魅力をより深く体感できます。安全な登山を楽しむためには、最新の登山道情報や規制状況を確認することも大切です。

登山計画には、登山地図アプリ「山と高原地図ホーダイ」の活用もおすすめです。現地の詳細な地形やコースタイム、注意点を確認できるので、安心して阿蘇山登山を楽しめます。

【もしもの時のために・・・】紙地図も携行しよう

 

 

阿蘇・九重 由布岳 2025
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部を卒業後、商社やメーカーで営業職を経験。2019年より複業でトラベルライターとしての活動を始め、旅の魅力を伝える仕事がライフワークになる。2021年には本業も旅行業界へ本格転身し、国内OTAにて宿泊施設の集客支援に従事。現在は旅行系ベンチャー企業でメディアマネージャーを務める。これまでに執筆した記事は2,000本以上。地方の自然や暮らしをテーマにした発信を続けながら、「旅を通じて人生が豊かになるきっかけ」を届けたいと考えている。登山、自転車旅、温泉巡り、離島旅が趣味で、毎年の北海道旅行を家族の恒例行事にしている。 notehttps://note.com/yuhei_tonosho
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