幌尻岳登山:高山植物が咲き誇る日本百名山「最難関」への挑戦
幌尻岳登山では、幾度もの渡渉を伴う難しいアプローチと、カールを彩る高山植物の美しい景色を体験できます。
幌尻岳(ぽろしりだけ・標高2,052m)は、北海道の背骨とも呼ばれる日高山脈の最高峰で、日本百名山のなかでも特に難易度が高い山として知られています。山名は、アイヌ語の「ポロ・シㇼ(大きい・山)」に由来します。
山頂周辺には氷河期に形成されたカール(圏谷)が広がり、夏には雪渓とともに、北海道らしい高山植物の花々を楽しめます。一方、平取コースでは十数回の渡渉があり、周辺はヒグマの生息域でもあるため、十分な経験と装備、慎重な状況判断が必要です。
本記事では、実際の幌尻岳登山の体験をもとに、2泊3日の登山ルートとコースタイム、幌尻山荘の予約方法、渡渉・ヒグマ対策に必要な装備を紹介します。
目次
幌尻岳登山のルートと2泊3日のコースタイム
幌尻山荘を拠点に、幌尻岳と戸蔦別岳を巡る2泊3日のルートを計画しました。ここでは、「ヤマチズ」で設定したルートと各日のコースタイムを紹介します。
「ヤマチズ」で2泊3日のルートを確認

「ヤマチズ」の地図上で、スタート地点から経由地点、山頂、ゴール地点までを歩く順番に選択しました。設定したルートは緑色の線で表示され、全体の距離やコースタイムを確認できます。
幌尻岳登山の2泊3日の行程
こちらが、今回計画した2泊3日の全行程です。第2ゲートを出発し、北海道電力取水施設と幌尻山荘を経て、幌尻岳と戸蔦別岳を巡ります。
4時間40分
- 第2ゲート
- 2時間00分
- 北海道電力取水施設
- 2時間40分
- 幌尻山荘(泊)
9時間20分
- 幌尻山荘
- 1時間50分
- 命の水
- 1時間30分
- 新冠コース分岐
- 20分
- 幌尻岳
- 1時間20分
- 戸蔦別岳
- 20分
- 幌尻山荘分岐
- 2時間00分
- 幌尻山荘(泊)
4時間20分
- 幌尻山荘
- 2時間20分
- 北海道電力取水施設
- 2時間00分
- 第2ゲート
「ヤマチズ」ダウンロードはこちら
幌尻岳登山1日目:第2ゲートから幌尻山荘へ

シャトルバスで第2ゲートへ向かう
とよぬか山荘よりダートの林道をシャトルバスで約1時間走ると第2ゲート登山口駐車場に到着します。駐車場にはプレハブの待合室とトイレがあります。
駐車場の奥からいよいよ登山道が始まります。一緒にバスに乗ってきた10数名の登山者がほぼ一緒に歩いて行くので安心です。下山してきた登山者とすれ違う時にあいさつと川の水量を聞く人が多いのでみんなも渡渉を控えて水量が気になる様子です。糠平川を眼下に見ながら林道を歩き、右岸に渡り2時間歩くと北海道電力取水施設に到着します。
北海道電力取水施設まで林道を歩く

糠平川を眼下に見ながら林道を歩き、右岸に渡ります。第2ゲートから2時間ほど歩くと、北海道電力取水施設に到着します。
北海道電力取水施設から沢歩きをスタート

北電の取水施設から、糠平川右岸の沢歩きになります。
猛暑の中でも、沢の中だけは別世界です。沢の流れる音を聞きながら、沢沿いの登山道を進みます。
ヒグマの痕跡に注意して進む

立木にヒグマの爪痕があり、びっくり!改めて、クマ撃退スプレーをすぐに使える位置に移動しました。

最初の渡渉地点に到着。沢の水は川底まで見えるほど透き通っています。濡れた岩は滑りやすいため、足元をしっかり確認しながら慎重に渡りましょう。
ハシゴやロープが続く登山道を進む

河原は進むにつれて次第に狭くなり、ハシゴやロープが設置された箇所が現れます。濡れた岩は滑りやすいため、通過する際は以下の点に注意しましょう。
●ストックをしまい、両手を使える状態にする
●岩場やハシゴでは三点支持を意識する
●前の人と十分な間隔をあけて進む
周囲や足元の状況をよく確認し、焦らず一歩ずつ慎重に進むことが大切です。
15回の渡渉を越えて幌尻山荘へ
15回の渡渉を繰り返すと、幌尻山荘に到着します。
この日は豪雨から2日後だったため、沢は増水しており、水位は腿に達するほどでした。普段より水量が多く流れにも勢いがありましたが、フェルト底の沢靴に加え、ヘルメットやストックを用意していたため、足元や周囲の状況を確認しながら落ち着いて渡渉できました。
幌尻岳登山の拠点「幌尻山荘」の予約・料金・設備

幌尻山荘
| 営業期間 | 7月上旬~9月下旬 |
| 予約 | 週末は予約開始直後に満室となる場合があります。7月中旬頃までと9月の平日は、比較的予約を取りやすいです。 |
| 食事 | 食事の提供はありません。 |
| 料金 | 素泊まり4,000円/トイレ協力金1,000円/毛布・シュラフ各500円/ビール800円(2026年7月時点) |
| 収容人数 | 約40名 |
| 補足情報 | 水場は沢水を引いているため、煮沸または浄水が必要です。 |
※営業期間や料金、予約状況などの最新情報は、事前に必ず公式サイトをご確認ください。
幌尻岳登山2日目:幌尻岳から戸蔦別岳を縦走
幌尻山荘から幌尻岳を目指す
幌尻山荘脇の登山口から、幌尻岳に登ります。命の水までは、1時間50分ほど急登が続く道です。
水場は登山口から少し下ったところにあります。煮沸も必要なので、日帰り往復登山では必要性も少ないかと思います。
北カールと高山植物を楽しむ

北カール越しに見える幌尻岳
尾根に出ると視界が開け、雄大な北カールの向こうに幌尻岳の山頂が見えてきます。

イワギキョウ
岩場には鮮やかな紫色のイワギキョウが咲き、険しい登山道に彩りを添えていました。

アオノツガザクラ
登山道沿いでは、小さな白い花を咲かせるアオノツガザクラが見られました。

チングルマ
雪渓の周辺にはチングルマの群落が広がり、日高山脈らしい夏の高山風景を楽しめます。
さらに登り、標高1,500m地点あたりで尾根に出ると、景色が開けます。カールが広がり、雪渓と高山植物の群落が広がる別世界です。幌尻岳登頂の日が好天に恵まれて、本当に感謝です。高山植物の写真を撮りながら、山頂に向けて尾根を1時間半程度登っていきます。
北カールの絶景を左に見て登るので疲労は感じませんが、地味に長い道のりです。
幌尻岳山頂から日高山脈を一望する

新冠コースとの分岐
新冠コースとの分岐を通過し、幌尻岳山頂へ向かいます。分岐では進行方向を間違えないよう、地図を確認して進みます。

幌尻岳山頂(2,052m)
急登と長い尾根歩きを越え、標高2,052mの幌尻岳山頂に到着しました。

山頂から日高の山並みを山座同定してみる
山頂から周囲を見渡し、地図と実際の景色を照らし合わせながら、日高連峰の山々を確認します。
幌尻岳山頂からは、北に七つ沼カール越しに見える戸蔦別岳、南にエサオマントッタベツ岳(1,902m)とカムイエクウチカウシ(1,978m)など、日高連峰の山並みがよく見えます。
また、遠方にはトムラウシ岳や羊蹄山も確認できます。
七つ沼カールを眺めながら戸蔦別岳へ

戸蔦別岳と七つ沼カール
幌尻岳から戸蔦別岳へ向かう尾根からは、戸蔦別岳と七つ沼カールを一望できます。

七つ沼カール
カールの底には大小の沼が点在し、周囲を険しい稜線に囲まれた雄大な景色が広がります。
幌尻岳山頂で景色をゆっくり楽しんだら、七つ沼カールを右に見ながら、高低差200mのアップダウンがある尾根道を歩きます。七つ沼カールには、地図に破線で記載されたルートだけでなく、明らかに獣道のような踏み跡がいくつか見えます(ヒグマや鹿の足跡?)。
戸蔦別岳から続く壮大な尾根を望む

戸蔦別岳、バックは幌尻岳
戸蔦別岳の山頂に到着。振り返ると、歩いてきた稜線の向こうに幌尻岳の雄大な姿を望めます。戸蔦別岳山頂からは、1,967m峰、ピパイロ岳へ続く尾根が見えます。次回はピパイロ岳から幌尻岳へ来てみようと思わせる、壮大な尾根でした。
戸蔦別岳から幌尻山荘へ下山する
山頂から北戸蔦別岳方面へ20分ほど下り、幌尻山荘分岐から幌尻山荘へ下山します。
分岐からは、2時間ほど尾根をひたすら下ります。沢に出て、2回ほど渡渉しながら下ると幌尻山荘に到着します。今晩も幌尻山荘に泊まります。
幌尻岳登山3日目:糠平川を下って第2ゲートへ
水量の下がった沢を歩く
翌朝は午前9時30分発のシャトルバスを予約していたため、午前5時30分に山荘を出発しました。
来る時は緊張していた沢歩きも、晴天が2日続いたことで水量が下がり、帰りは楽しみながら歩くことができました。
シャトルバスに合わせて第2ゲートへ戻る
糠平川を下り、北海道電力取水施設から林道を歩いて第2ゲートへ戻ります。予約したシャトルバスに乗り、とよぬか山荘へ向かいます。
「ヤマチズ」アプリを実際に使って便利だったこと
1.ルート上の注意点を事前に確認できる
今回プランニングしたルートでは、地図上に表示される「渡渉15回」「ヒグマ出没要注意」など、幌尻岳ならではの注意情報も事前に確認できました。注意が必要な場所を出発前に把握できるため、装備の準備や安全な行動計画を立てる際に役立ちました。
2.圏外でも現在地を確認できる
幌尻山荘周辺をはじめ、携帯電話の電波が届きにくいエリアでも、出発前に地図をダウンロードしておけばオフラインで確認できます。スマートフォンのGPS機能によって、地図上に現在地が表示されるため、今どこを歩いているのかをすぐに確認できました。
現在地と目的地までの距離を照らし合わせることで、道迷いの不安を減らせるだけでなく、休憩のタイミングやその後のペース配分も考えやすくなります。
「ヤマチズ」ダウンロードはこちら
下山後:温泉と地元グルメを楽しむ
「びらとり温泉ゆから」で疲れを癒やす
幌尻岳から下山した後は、ふもとの町を地図で探して見つけた「びらとり温泉」で日帰り入浴をしました。高濃度の炭酸泉のお湯が、疲れた身体をじんわりと温めてくれました。
「びらとり温泉美味い宿ゆから」は、登山口のとよぬか山荘から車で約30分。掘削された源泉は大浴場と露天風呂に引湯され、高濃度の炭酸泉の浴槽も設置されています。
併設のレストランでは、名産の「びらとり和牛」を使ったステーキやハンバーグを食べられます。

出典:びらとり温泉ゆから 公式HP
| 所在地 | 北海道沙流郡平取町二風谷92-6 |
| 営業時間 | チェックイン15:00~18:00/チェックアウト~10:00 |
| 電話番号 | 01457-2-3280 |
| 温泉 | 大浴場、露天風呂、サウナ、家族風呂など |
| 料金 | 宿泊料金はプランにより異なる |
※施設の最新の営業状況や宿泊料金、予約の詳細については、事前に必ず公式サイトをご確認ください。
「じゃんけんぽん」で平取和牛を味わう

じゃんけんぽんのカットステーキ&ハンバーグ
温泉でリフレッシュしたあとは、お待ちかねの地元グルメです。
平取町は「平取和牛(びらとり和牛)」とトマトが名産とのこと。今回は、見事に幌尻岳へ登頂できた自分へのご褒美として、振内にあるレストラン「じゃんけんぽん」でカットステーキ&ハンバーグをいただきました。
幌尻岳登山の渡渉・ヒグマ対策に必要な装備
日高山脈の最高峰・幌尻岳へ挑むにあたり、安全に行動するため、特に用意しておきたい装備が次の2点です。
渓流靴:caravan(キャラバン)
幌尻山荘までのルートでは、沢の中を歩く「渡渉」を繰り返すため、フェルト底など、濡れた岩で滑りにくい渓流靴を用意しましょう。濡れた岩場でも滑りにくく、水はけのよいものを選びましょう。靴の中に砂や小石が入るのを防ぐため、沢用のゲイターと併用するとより安心です。
クマ撃退スプレー:カウンターアソールト(Counter Assault)CA290
幌尻岳周辺はヒグマの生息域です。クマ撃退スプレーなどのヒグマ対策用品は、緊急時にすぐ使用できるよう、ザックの中ではなく腰や胸元など手の届く位置に携帯しましょう。出発前に使用方法や噴射方向、有効期限を確認しておくことも大切です。携行する際は、誤噴射を防ぐ専用ホルダーがあると安心です。
幌尻岳登山は渡渉・ヒグマ対策と余裕のある計画を

幌尻岳は、幾度もの渡渉と長時間の行動を伴う、難易度の高い日本百名山です。一方、山頂から望む日高山脈の大パノラマや、カールを彩る高山植物など、この山ならではの雄大な景色を楽しめます。
幌尻山荘とシャトルバスを早めに予約し、渡渉・ヒグマ対策に必要な装備を整えたうえで、天候や沢の水量を直前まで確認しましょう。装備を整えていても、増水時には渡渉できない場合があります。危険を感じたときは無理に進まず、引き返す判断も含めて余裕のある登山計画を立ててください。
「山と高原地図」がアプリでも!
登山地図ナビアプリ
ヤマチズで
登山をもっと快適に。
-

専門家の現地調査による情報をわかりやすく表示
しっかりと色分けされた登山道、コースタイム・見どころ・危険箇所など、毎年改訂の情報を厳選して、必要な場所に掲載。安全に楽しみながら目的の場所に辿り着けます。
-

行程表と地図が連動!
計画が立てやすい計画したルートと現在地を見て登山ができるので今どこにいるのかが一目でわかります。計画の編集もできるようになりました。
-

山と高原地図Webの記事が
アプリで読める日本の魅力的な山々の見どころを紹介。厳選された記事で登りたい山を見つけられます。










