読図の基本をやさしく解説!登山初心者のための地図の読み方

登山に欠かせない基本スキルのひとつが「読図」です。地図はただルートを示すだけでなく、現在地を把握したり、これから歩く地形をイメージしたりするための、いわば“山のナビゲーター”。

地図を読めるようになると、登山中の不安がぐっと減り、安全性も高まります。

この記事では、地図にあまり触れたことがない登山初心者の方にもわかりやすく、読図の基本を丁寧に解説します。ぜひ地図の読み方を学んで、安全で楽しい登山に役立ててください。

2025年5月30日 更新

読図とは?登山に欠かせない地図の読み方の基本

地図には登山道をはじめ、車道や川、人工物、植生、地形(等高線)など、さまざまな情報が地図記号として描かれています。これらを読み取り、周囲の状況や現在地を把握する技術が読図です。

読図は安全登山につながる第一歩

読図には2つの重要な目的があります。ひとつは、事前にこれから歩くコースの特徴を把握し、安全な登山計画を立てること。もうひとつは、登山中に現在地を把握し、迷わず目的地に向かうため。

どちらも道迷いを防ぐために欠かせないステップです。

地図の読み方に慣れるには?初心者が読図に親しむコツ

読図の第一歩は、地図に触れること。地図記号の意味を調べたり、等高線の形を見比べたりしながら、そこに描かれている情報を拾い集めてみましょう。慣れてくると、斜面の勾配や植生、尾根や谷の位置など、地形の特徴が見えてきます。

登山中は、こうした情報をもとに現在地を確認しながら、ルートをたどるイメージが大切。読図は一度にすべてを理解するのが難しいため、まずはスマートフォンのGPSアプリなどと併用して、地図と現地の状況を照らし合わせるところから始めてみるのがおすすめです。

地図に少しずつ慣れてきたら、「実際にどんな地図を使えばいいの?」という疑問が出てくるかもしれません。登山で使われる地図にはいくつかの種類があり、それぞれに異なる特徴があります。

ここからは、読図の練習に適した「地形図」と、初心者にも扱いやすい『山と高原地図』の読み方について、具体的に紹介していきます。

国土地理院の地形図で学ぶ地図の読み方

地形図とは、山や川、道路、建物、地形の起伏などを正確に描いた地図のことです。国土地理院が発行する「2万5000分の1地形図」や「5万分の1地形図」が代表的で、等高線によって標高差が細かく表現されています。

登山においては、現在地の確認やルートの把握、地形の特徴を読み取るために活用されます。紙の地形図は電池切れの心配がなく、正確な情報が得られるため、安全登山には欠かせないツールのひとつです。

①地図には縮尺がある

地図は実際の距離を縮めて描いたもので、これを「縮尺」といいます。登山でよく使われるのは2万5000分の1(1km=4cm)や5万分の1の地形図です。地図の読みやすさや表示の細かさが変わるため、使う場面に応じて選びましょう。

②等高線から標高差を読む

等高線は同じ標高の地点を結んだ線で、山の高さや起伏を表します。2万5000分の1の地図では、10mごとに細い線、50mごとに太い線が引かれています。線の数を数えることで、標高差がわかります。上図の②枠内のAからBまでの標高差は50mある、ということがわかります。

③等高線から地形を読む

等高線の間隔が狭ければ急な斜面、広ければゆるやかな斜面を示しています。地図上の等高線の密度を見るだけで、登山ルートの難所や登りの傾斜が予測できます。上図③の中の等高線を見てみると、間隔がせまく、急な登りがしばらく続くことがわかります。

④等高線から尾根と谷を読む

山頂や稜線などから見たとき、等高線のカーブが凸状になっているところが尾根(上図④のCの赤線)、等高線のカーブが凹状になっているところが谷(上図④のDの赤線)。谷には、水色で線が引いてあることがあり、これは沢や渓流を表しています。

⑤線はさまざまな道を表す

地形図の中に引いてある、灰色の破線や実線などは、登山道や林道、車道など、さまざまな道を表しています。上図の登山道は破線「E」で示されていますが、破線は「幅1m未満の徒歩道」を表す記号なので、林業用の作業道や麓の住宅地の道などにも使われています。実線「F」は「幅1〜3mの軽車道」を表し、林道はこれに含まれることが多いです。

⑥地図記号は環境や構造物を表す

上図⑥で示している「G」は広葉樹林を表す地図記号。このような植生を表す記号は、周辺の状況を把握するのに活用しましょう。「H」は温泉を表す地図記号。神社や寺院、三角点や電波塔など、ランドマークになる建物や構造物もチェックポイントとして確認しておきましょう。

「山と高原地図」の使い方と地図の読み方

『山と高原地図』は、1965年から続く登山専用の地図シリーズ。日本全国の主要な山岳エリアを網羅し、毎年プロの調査員によって更新されている信頼のブランドです。登山道の状況、コースタイム、危険箇所、水場や山小屋の情報まで、登山に役立つ情報が詰まっています。

山と高原地図での地図要素

 

『山と高原地図』では、登山者が直感的にルートを把握しやすいように、独自の地図記号が用いられています。上図内にある記号について、下記の説明とともに確認しましょう。
①登山届ポスト
②日帰り入浴施設
③三角点
④山小屋
⑤避難小屋
⑥通過に注意を要する所
⑦キャンプ場
⑧お花畑
⑨水場
⑩トイレ

地図の縮尺を確認する

『山と高原地図』の縮尺は、一般的に5万分の1または2万5000分の1の縮尺で表記されていて、エリアによって異なります。場所によっては2万5000分の1以上の縮尺表記がなされている場所もあり、登る前に確認しておきましょう。

等高線と背景色から標高差を読む

地形図と同じく、『山と高原地図』にも等高線が引かれています。また上図のように、標高別の色分けの凡例が各図に置かれていて、背景が標高別に色分けされているので、視覚的に標高の高低差が分かります。

尾根と谷を確認する

基本的に等高線のカーブが山頂や稜線から見た際に、どのような形状かに応じて尾根と谷を読むことは地形図と同じです。山と高原地図の場合、上図のように、尾根の名称や、谷に流れる沢の名称などが併記されていることが多く、分かりやすいです。

登山道の種類とコースタイムを確認する

『山と高原地図』では、登山道は基本的に赤いラインで示されています。一方で、赤い破線は難易度の高い登山道(滑落のリスクや、ヤブ漕ぎがある道など)です。初心者はまず赤いラインのみでのコース取りをおすすめします。また、ルートに並ぶように記載されているのがコースタイム。コースタイムは概ね次の基準を元に設定されています。
①40~60歳の登山経験者
②2~5名のパーティー
③山小屋利用を前提とした装備
④夏山の晴天時
設定についてはアルプスと低山帯など山域により基準は異なるので、自身の体力と合わせて確認しておきましょう。

付属のコースガイド冊子で広がる登山計画の楽しみ

登山を計画するとき、ルートの選び方ひとつで山行の楽しさや安全性が大きく変わります。そんな時に頼りになるのが『山と高原地図』のコースガイド冊子。

冊子には掲載エリア内より選出したコースガイドを中心に、地図には載せきれなかったさらに細かい情報や、山域を理解するのに役立つ知識などを掲載しています。例えば、同じ山でも健脚向きのルートと初心者向きのルートがあり、冊子を見ればそれぞれの魅力や難所がひと目で分かるようになっています。

地図と冊子、両方を最大限活用して安全な登山を楽しみましょう。

地図の読み方に不安がある方へ、登山の基本がわかる一冊

「地図を見ながら歩けるか不安…」「読図の基本をもっとわかりやすく知りたい」。そんな方におすすめなのが、昭文社の登山入門書『山と高原地図ではじめる 山登り入門ガイド』です。

本書では、登山で知っておきたい地図の読み方を写真や図解で丁寧に解説。等高線の見方や現在地の把握、ルートの読み取り方まで、読図の基本が自然と身につく構成になっています。そのほかにも、装備の選び方や天候の備え、山小屋での過ごし方など、登山を安全に楽しむための基礎知識が満載。『山と高原地図』をもっと使いこなしたい人にもぴったりの一冊です。

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初心者に最適な地図の読み方とおすすめ登山地図

読図スキルは、安全で快適な登山のために欠かせない知識です。国土地理院の地形図は情報量が多く、読図の基本を学ぶには最適ですが、初心者には難しく感じることもあるでしょう。

その点、『山と高原地図』は視覚的にわかりやすく、実用的な情報が網羅されているため、初めて地図を読む人にも扱いやすい内容です。まずは『山と高原地図』から、読図の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。

記事中イラスト:ホシノアンリ
【WEBサイト】https://starlit-design.com/
【Instagram】@anri_hoshino
【X】@starlit_design

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