斜里岳登山ガイド 沢と稜線を楽しむ人気ルートを歩こう

北海道・知床半島を代表する名峰「斜里岳」は、沢沿いを進む旧道ルートと、見晴らしのよい稜線歩きを組み合わせた、変化に富む登山が楽しめる日本百名山です。
登山口の清岳荘からは、せせらぎが心を癒す沢歩き、視界が開けるダイナミックな稜線、そして山頂からの360度大パノラマと、知床の自然を存分に体感できます。
四季折々に表情を変える道のりを通して、全身で自然と向き合う贅沢な山旅を楽しんでみませんか。
北海道の誇る百名山・斜里岳の魅力

どっしりとした佇まいに見惚れる日本百名山の一つ「斜里岳」
北海道・知床半島の付け根にそびえる標高1,547mの斜里岳(しゃりだけ)は、アイヌ語で「オンネヌプリ(大きな山、年老いた山)」と呼ばれ、昔から地元の人々に親しまれてきた名峰です。斜里岳は斜里川の水源でもあり、その豊かな水がオホーツクの大地を潤し続けています。

全国屈指のワイルドな登山道が待つ「斜里岳」
日本百名山のひとつとして、登山愛好家の間でも人気が高い斜里岳登山には、主に3つのルートがあります。なかでも人気なのが、清岳荘を起点に旧道と新道をぐるりと巡る周回コースです。
林道を抜けてたどり着く清岳荘からは、沢沿いを進むスリリングな旧道ルートと、眺望に優れた稜線歩きを楽しめる新道ルートが続きます。北海道・知床の多彩な自然をダイナミックに感じられる、特別な登山体験がここにはあります。
今回はこの斜里岳登山の中でも、旧道・新道を巡る周回コースにフォーカスしてご紹介します。
斜里岳登山口・清岳荘へのアクセス

登山口から思わず声を上げる絶景パノラマが広がる
斜里岳登山の出発地点となる「清岳荘登山口」は、斜里町の中心部から車で約35分。道道857号線の終点に位置し、標高約750mの高台からはオホーツク海を望むダイナミックな眺望が楽しめます。
清岳荘は宿泊可能な山小屋でもあり、前泊して斜里岳のご来光を目指す登山スタイルも人気です。静かな山の朝を迎えられるのも、斜里岳登山の魅力のひとつと言えるでしょう。

広い駐車場に車をとめていざ入山!斜里岳の山頂も見える
広々とした駐車場に車をとめて登山口へ進むと、目の前に現れるのは、堂々とした斜里岳の山容。ここから始まる斜里岳登山の冒険に、自然と気持ちが高まります。
登山届は登山口脇に設置されたポストへ提出を。準備を整えたら、林道の奥に広がる知床の原生的な自然へと足を踏み入れましょう。
清岳荘から山頂までは往復で約9.5km、標準コースタイムは約7時間。標高差と地形の変化に富んだこのルートは、体力と経験が求められる本格的な登山道です。安全な斜里岳登山のためには、しっかりとした装備と綿密な計画が欠かせません。
斜里岳登山 変化に富んだ旧道・新道ルートを満喫

今回ご紹介するのは、清岳荘を起点に旧道から登り、新道を使って下山する、斜里岳登山の周回ルート。沢沿いのスリリングな道をたどる旧道と、稜線の爽快な景色を楽しめる新道、まったく異なる魅力を一度に味わえることから、斜里岳登山でも特に人気の高いコースです。
斜里岳は、標高1,547mの独立峰でありながら、変化に富んだルートが整備されているため、登りごたえがありながらも無理なく楽しめるのが魅力。とくにこの旧道・新道ルートは、知床の自然をダイナミックに体感できる充実の行程といえるでしょう。
水と緑の渡渉エリアで自然と遊ぶ(斜里岳登山 旧道コース前半)

前半はワイルドすぎる渡渉の連続
斜里岳登山の旧道コースは、清岳荘から始まる静かな林道歩きで幕を開けます。木漏れ日と涼やかな風に包まれながら、ゆったりとした気持ちでスタートできるのがこのルートの魅力。
やがて登山道は沢沿いに姿を変え、斜里岳登山ならではの渡渉エリアに突入します。大小の沢をいくつも越えていくため、増水時には危険も伴います。前日までの雨量や現地の最新情報を確認してからの入山が基本です。

斜里岳の姿が見えると登頂に向けて気合いが入る
下二股から上二股にかけての道のりでは、斜里川の支流を繰り返し横断しながら、知床の奥深い自然に身を委ねます。丸太橋を慎重に渡ったり、飛び石で沢を越えたりと、まるで天然のアスレチックを楽しむような冒険心をくすぐられる場面の連続。
冷たい沢の水で顔を洗えば、火山の名残を感じさせる鉄分の匂いがふと鼻をかすめます。苔むした岩と水音が織りなす空間は、斜里岳登山の中でも特に印象に残るシーンのひとつ。全身で自然と戯れながら、一歩ずつ山頂へと近づいていきます。
ワイルドな沢を直登!斜里岳の名物区間(斜里岳登山 旧道コース後半)

斜里岳登山の醍醐味と言えるのが、この沢登り区間
渡渉エリアを抜けると、斜里岳登山の旧道コースのハイライトともいえる沢登り区間に突入します。標高を上げるにつれて沢は階段状に姿を変え、小滝が現れはじめるころには、いよいよ後半戦。
登山道というより、沢そのものをなぞるように進む場面も多く、水流の中を直接歩くシーンも珍しくありません。足首程度の水深ながら、飛び散るしぶきが清涼感をもたらし、まるでシャワークライミングのような感覚が楽しめるのが、斜里岳登山ならではの魅力です。

眼下には圧倒的スケールの道東のパノラマが垣間見える
ふと後ろを振り返れば、流れ落ちる沢の先にオホーツク海と広がる斜里の田園風景が目に飛び込み、ダイナミックな地形と牧歌的な風景が同居する絶景が広がります。道東らしい自然のスケールを全身で感じられる瞬間です。水音と緑に包まれた野趣あふれる空間の中、ひと登りすれば、上二股に到着。ここまで来れば、斜里岳山頂まではあと一息です。
山頂直前、絶景の稜線トレイルへ(斜里岳登山 終盤)

道中には雌阿寒岳・雄阿寒岳など、道東の名峰を望む
上二股を過ぎると、斜里岳登山はいよいよクライマックスへ。これまでの沢歩きや樹林帯の景色から一転、開けた稜線に飛び出す瞬間は、まさに気分が高まる転換点です。
空の広さを感じる解放感とともに、遠くには知床連山の稜線が伸び、振り返れば雌阿寒岳や根室の山々が雲の上に浮かぶように姿を現します。道東ならではの大パノラマが目の前に広がり、絵画のような絶景に思わず立ち止まってしまうほど。

稜線と山頂の先に広がるオホーツク海の大展望
稜線には、チングルマやイワギキョウなどの高山植物が季節の彩りを添え、風にそよぐ姿が登山者をやさしく迎えてくれます。ハイマツ帯を縫うように続く細い尾根道では、吹き抜ける風が肌に心地よく、斜里岳登山ならではのダイナミックな景観が全身を包みます。
険しい沢登りを乗り越えてたどり着くこの稜線は、まさにご褒美のようなひととき。山頂まであとわずか、足取りにも自然と力が入ります。
海も山も一望!斜里岳登山のハイライト、山頂へ(斜里岳山頂)

オホーツク海から知床連山まで一望の大パノラマ
そしてついに、標高1,547mの斜里岳山頂に到達!ここまで歩んできた変化に富んだ登山ルートを振り返ると、胸にこみ上げる達成感もひとしおです。山頂から目を向ければ、北側には知床連山の大パノラマが広がり、最高峰・羅臼岳が雄々しくそびえ立ちます。
尾根づたいに連なる山々が、半島の先端へと滑らかに続くその風景は、斜里岳登山の締めくくりにふさわしい壮大さ。

パッチワークのように広がる道東の平野
南側には網走の田園地帯が広がり、その先には弧を描くように青く光るオホーツク海。雲の影が空からゆっくりと流れ、海と山がひと続きになったような光景に、知床のスケール感をあらためて実感します。視線を東へ移せば、国後島の稜線がうっすらと姿を現すこともあり、まさに360度の大展望です。

北海道のスケールを物語る風景を前に思わず立ち尽くす
標高だけを見れば1,500m台とそれほど高くないものの、高緯度ゆえに山頂はしっかりとした高山帯を形成。何より、これほど海に迫る場所に立つ山頂は極めて貴重で、斜里岳登山が多くの人を惹きつける理由のひとつでもあります。
澄み切った空気の中でおにぎりを頬ばりながら、登ってきた道のりを振り返れば、自然と笑みがこぼれます。名残惜しさを胸に、そろそろ下山の準備を始めましょう。
旧道とは違う!新道で味わう稜線美(斜里岳下山 新道コース)

先ほどまでいた斜里岳を横目に森林限界の尾根を歩く
下山には、安全で歩きやすい新道コースを選びます。上二股から分岐して新道方面へと進むと、しばらくは稜線上を歩くことになり、登りとはまた違ったパノラマが楽しめるのが斜里岳登山の魅力。
振り返れば、堂々とした斜里岳の山容や、旧道の沢筋が一望でき、自然のスケール感をあらためて体感できます。小ピークを越えるたびに風景が変わり、そのたびに思わず足を止めたくなるような眺めが広がります。

清々しい稜線歩きは、下山時の最高のご褒美
やがて道は樹林帯へと入り、緑に包まれた静かな山道を心地よく下っていきます。新道は急斜面や滑りやすい場所が少なく、疲れた足にもやさしい設計。安心して歩を進めることができ、斜里岳登山の締めくくりにふさわしい落ち着いた時間が流れます。
登山口の清岳荘に戻ったとき、全身で知床の自然を歩き切った満足感がじんわりと湧いてくるはずです。
斜里岳登山の下山後の楽しみ方
変化に富んだルートを歩き、ダイナミックな稜線や沢を越えてたどり着いた斜里岳の山頂。そんな充実の斜里岳登山のあとは、心と体をゆるめる“ご褒美時間”も大切にしたいところです。
ここでは、斜里町周辺で立ち寄れるグルメや温泉など、下山後に味わいたいおすすめスポットをご紹介します。
斜里岳登山後に立ち寄りたい地元の絶品グルメスポット

豚丼&味噌ラーメンでがっつりパワーチャージ
斜里岳登山の帰り道、旅の締めくくりにぴったりなのがご当地グルメ。中でもおすすめは、「知床くまうし」と「しれとこ里味」の2軒です。
「知床くまうし」では、ジューシーな豚丼と濃厚な味噌ラーメンが人気メニュー。甘辛ダレがしっかり絡んだ豚肉は噛むほどに旨みが広がり、濃厚スープとともに空腹のお腹を満たしてくれます。登山後のエネルギー補給にぴったりなパワーフードです。
住所:北海道斜里郡斜里町港町1
営業時間:11:00~15:00(LO.14:45)、17:00~20:00(LO.19:30)
休業日:木曜日(祝日の場合は翌日)
アクセス:清岳荘から車で35分

食べてクールダウン!知床ならではのご当地丼に舌鼓
新鮮な魚介を楽しみたい方には、「しれとこ里味」がおすすめ。知床近海で水揚げされた海の幸を使った料理が揃い、名物の「知床産さくらますルイベ漬丼」はとくに人気です。半解凍で提供されるルイベは口の中でとろけるような食感で、漬けダレの旨みと相まって絶妙な一杯に。
山と海、どちらの恵みも一度に味わえるのが、斜里岳登山の魅力のひとつでもあります。たっぷり歩いたごほうびに、美味しい地元グルメで心も満たされるはずです。
住所:北海道斜里郡斜里町新光町64
営業時間:10:30〜14:00、16:00〜19:30
休業日:不定休
アクセス:清岳荘から車で30分
斜里岳登山の疲れを斜里温泉でリセット

温泉マニア憧れのお湯として知られる斜里温泉
登山の汗と疲れを癒すなら、斜里町にある「斜里温泉 湯元館」へ。全国的にも珍しい「モール泉」として知られ、植物由来の有機成分を豊富に含む赤褐色の湯が特徴です。かすかに薬草を思わせる香りが漂い、湯上がり後は肌がすべすべに。登山後の体にしみわたる、やさしい泉質が魅力です。

綺麗な赤茶色のお湯に浸かって、登山の疲れを流す
斜里岳登山の余韻にひたりながら、モール泉にゆっくりと浸かる時間は格別。心も体もすっきりとリセットでき、旅の締めくくりとしても満足度の高いひとときになります。斜里岳を歩いた思い出を胸に、静かな温泉時間を楽しんでみてください。
住所:北海道斜里郡斜里町西町13-11
TEL:0152-23-3486
営業時間:日帰り入浴7:00~20:00(最終受付19:30)、大人1名400円(中学生以下は半額・幼児無料)
休業日:無休
アクセス:清岳荘から車で35分
大自然と温泉で締めくくる、斜里岳登山

豊かな自然に包まれて、パノラマに癒される名山・斜里岳
知床の雄大な自然を体いっぱいに感じたいなら、斜里岳登山は外せない選択肢です。清岳荘を起点に旧道から登り、新道で下る周回ルートでは、スリリングな沢歩きと爽快な稜線歩きの両方を一度に楽しめるのが魅力。
コース全体を通して、地形や風景が次々と表情を変え、歩くたびに新たな発見があります。春の芽吹きから秋の紅葉まで、季節ごとの彩りも豊かで、何度訪れても飽きることのない山です。
山頂に立って感じる達成感のあとは、地元ならではの温泉やグルメで心と体をしっかり癒すのも、斜里岳登山の楽しみのひとつです。斜里岳登山は、山を登るだけでなく、その後に続く癒しのひとときも含めて、かけがえのない自然体験となるでしょう。
知床の風土に触れながら、自分らしいペースで自然を味わう、そんな一日を斜里岳で過ごしてみませんか。

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