北海道の日本百名山9座を比較 登山ルート・行程・アクセスの違い

北海道にある日本百名山は、利尻山、羅臼岳、斜里岳、阿寒岳、大雪山、トムラウシ山、十勝岳、幌尻岳、羊蹄山の9座です。

同じ北海道の百名山でも、島へ渡ってから登る山、ロープウェイで標高を上げてから歩き始める山、林道のシャトルバスと山小屋泊を組み合わせる山など、登山口までの行き方や行程の組み立て方は大きく異なります。

この記事では、9座の代表的な登山ルートと行程の目安を比較し、それぞれの山の特徴と、計画するときに知っておきたいことを紹介します。

2026年10月13日 更新

北海道の日本百名山は9座

深田久弥の『日本百名山』で取り上げられた100座のうち、北海道にあるのは次の9座です。

① 羅臼岳|らうすだけ
② 斜里岳|しゃりだけ
③ 大雪山(旭岳)|たいせつざん(あさひだけ)
④ 利尻山(利尻富士)|りしりざん(りしりふじ)
⑤ 十勝岳|とかちだけ
⑥ 阿寒岳|あかんだけ
⑦ トムラウシ山|とむらうしやま
⑧ 幌尻岳|ぽろしりだけ
⑨ 羊蹄山(蝦夷富士)|ようていざん(えぞふじ)

※本文で紹介する山の順番は、深田久弥著『日本百名山』に掲載されている順番とは異なります。


画像:Amazon

『日本百名山』では、利尻山は「利尻岳」、トムラウシ山は「トムラウシ」、羊蹄山は「後方羊蹄山(しりべしやま)」として掲載されています。深田久弥が各山をどのように描いたのか読んでみたい人は、原著も手に取ってみてください。

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海道の日本百名山9座を比較


羅臼岳山頂から広がる雲海の絶景パノラマ

9座の代表的な登り方、行程の目安、計画するときに特に確認したい条件を一覧にしました。行程の目安は、表に記したコースを前提にした値です。往復・周回・縦走などコースの前提が山ごとに異なるため、歩行時間や距離の数字だけで山どうしを比べず、候補を絞る目安として使ってください。

山名・標高 代表的な登り方/コース 行程の目安 特に確認したい条件
羅臼岳
1,660m
岩尾別温泉から往復 日帰り・8時間20分・12.6km ヒグマ情報・登山口の開閉を要確認
斜里岳
1,547m
清岳荘から旧道で登り、新道で下る周回 日帰り・7時間20分・9.3km 沢の水量と渡渉
大雪山
旭岳 2,291m
旭岳ロープウェイ姿見駅から旭岳を往復 日帰り・往復約4時間55分 ロープウェイの運行時間、天候の急変
利尻山
1,721m(最高点。登山者が目指す北峰は1,719m)
利尻北麓野営場から鴛泊コースを往復 日帰り。早朝に出発する長時間の行動 島への移動、登山口までの早朝の移動手段
十勝岳
2,077m
通常時は望岳台から 火山規制の状況を確認してから計画 火山規制の最新情報を要確認
阿寒岳
雌阿寒岳 1,499m
雌阿寒温泉などから雌阿寒岳へ 火山規制の状況を確認してから計画 火山規制の最新情報を要確認
トムラウシ山
2,141m
短縮コース登山口から往復 日帰り・11時間50分・17.2km 長時間の行動、登山口までの未舗装区間
幌尻岳
2,052m
とよぬか山荘からシャトルバスを利用し、額平川沿いに幌尻山荘へ(振内コース) 2泊3日・歩行16時間10分 シャトルバスと山荘の予約、渡渉と増水
羊蹄山
1,898m
倶知安(比羅夫)コースから真狩コースへ縦走 日帰り・8時間40分・14.4km 登山口と下山口が異なる

① 羅臼岳

 
羅臼平の先に続く知床連山。2つの海に抱かれて

羅臼岳は知床連山の最高峰で、世界自然遺産・知床を代表する山です。山頂からは知床連山の山並みと、オホーツク海、根室海峡、国後島を見渡せます。

主な登山口は、ウトロ側の岩尾別温泉と、羅臼側の羅臼温泉です。一般的な岩尾別温泉からのコースも日帰りとしては長時間の行動になり、ペース配分に注意が必要です。羅臼温泉からのコースはさらに長い行程です。岩尾別温泉からのコースでは、大沢に7月中旬まで雪渓が残り、急な雪渓を通過するための装備や技術が必要です。

なお、知床半島はヒグマが高密度に生息している地域です。知床ヒグマ対策連絡会議は、クマ撃退スプレーの携行を強く推奨し、ザックの中ではなく、すぐに取り出せる場所に身に着けるよう案内しています。

② 斜里岳


まるで絵画のような趣を放つ名峰・斜里岳

里岳は、知床半島の付け根に立つ独立峰です。山頂からはオホーツク海と斜里平野、知床連山などを一望できます。

清里町側の清岳荘登山口からは、下二股まで渡渉を繰り返し、旧道で上二股まで登って、新道で下る周回ルートがあります。清岳荘は清里町側にある登山口で、市街地からは車で林道を進んで向かいます。旧道は沢の中や滝の横を登り、岩場を登る区間もあります。事故防止のため、旧道は下りに使わず、下山には新道を使います。

沢沿いを歩く時間が長いため、沢の水量によって通過の難しさが変わります。清岳荘の掲示で沢の水量などを確認できるほか、前日までの雨量や現地の情報を確認して、入山するかどうかを判断しましょう。足元が濡れることを想定し、濡れへの備えもしておきましょう。

③ 大雪山(旭岳)


モルゲンロートに染まる初秋の旭岳

大雪山は、北海道中央部に広がる山々の総称です。なかでも旭岳(2,291m)は北海道の最高峰で、噴気を上げる火山地形と、高山植物や早い時期から色づく紅葉が見られます。

一般的な登り方は、旭岳ロープウェイで標高約1,600mの姿見駅まで上がり、姿見の池を経て山頂を往復するコースです。旭岳温泉の山麓駅へは、JR旭川駅や旭川空港から路線バスもありますが、運行本数は限られます。層雲峡から黒岳を経て旭岳へ縦走するルートもありますが、長時間の行動になり、登山口と下山口が大きく離れます。

姿見の池から先は、砂礫や浮石の多い急斜面が続く登山道で、樹林がなく風を遮るものがありません。天候が変わりやすく、濃霧で進む方向を見失うおそれもあります。下山はロープウェイの最終便に間に合わせる必要があり、運行時間は時期によって異なるため、計画の段階で確認しておきましょう。大雪山国立公園の登山道でのヒグマの出没については、環境省が注意喚起を発信しています。

④ 利尻山(利尻富士)


北のシンボルとして君臨する、美しき利尻富士

利尻山は、利尻島の中央にそびえる独立峰で、その姿から「利尻富士」とも呼ばれます。山頂からは、島の海岸線や周囲の海、礼文島を見渡せます。最高点は南峰(1,721m)ですが、立入禁止となっているため、登山者は北峰(1,719m)を山頂として目指します。

島へは、稚内からのフェリーか、新千歳空港・丘珠空港からの航空便で渡ります。多くの登山者が利用するのは、利尻北麓野営場から山頂を往復する鴛泊コースです。登山口へ直接向かう路線バスはなく、早朝の移動には宿泊施設の送迎やレンタカーを利用することになるため、登山の前日に島へ入り、鴛泊周辺に泊まる計画が現実的です。

鴛泊コースは、登山口から山頂までの標高差が約1,490mあり、往復約12km、登り約6時間・下り約4時間が目安です。9合目より上は傾斜が増し、浮石の多い道が続きます。甘露泉水より上には水場がなく、登山道に常設トイレもないため、水と携帯トイレを持って登ります。天候によって登山日を変えられるよう、島での滞在には余裕を持たせておきましょう。

⑤ 十勝岳


異世界を思わせる雰囲気が漂う、スタートの望岳台

十勝岳は、富良野の北東に連なる十勝連峰の主峰で、今も噴煙を上げる活火山です。山頂周辺は荒々しい火山地形で植物が少なく、山頂からは十勝連峰の山々を見渡せます。

通常時の一般的な登山口は、白金温泉の先にある望岳台です。望岳台から十勝岳避難小屋までは火山礫の道を登り、その先はスリバチ火口とグラウンド火口の間を進んで、最後の急登で山頂に至ります。山頂から美瑛岳へ縦走して周回するルートもあります。

登山道は噴煙を上げる火口のそばを通るため、火山活動の状況によって立ち入りが規制されることがあります。

⑥ 阿寒岳

 

日本百名山の「阿寒岳」は、現在では一般に標高1,499mの雌阿寒岳を指します。

阿寒湖周辺には雌阿寒岳と雄阿寒岳があり、深田久弥が『日本百名山』の取材で阿寒を訪れた際は、雌阿寒岳が火山活動によって登山禁止だったため、雄阿寒岳へ登っています。

雌阿寒岳は現在も活動を続ける活火山です。雌阿寒温泉、オンネトー、阿寒湖畔から登山道が延び、山頂付近では火口周辺の荒々しい火山地形が広がります。

⑦ トムラウシ山

 

トムラウシ山は、大雪山国立公園のほぼ中央にあり、「大雪の奥座敷」とも呼ばれる山です。山頂周辺には、大きな岩が積み重なる地形の間に、高山植物の群落や大小の池が点在します。

多くの登山者は、トムラウシ温泉の先にある短縮コース登山口から山頂を往復します。登山口までは林道を進み、道路には未舗装区間があります。登山道は、カムイ天上、コマドリ沢、前トム平、トムラウシ公園を経て山頂へ向かいます。コマドリ沢周辺には時期によって雪渓が残り、その先には大きな岩が積み重なる斜面の急登があります。旭岳方面から縦走して登るルートもあります。

日帰りでも長時間の行動になるため、出発時刻と、天候や体調によって引き返す判断を計画の段階で考えておきましょう。大雪山国立公園の山のため、ヒグマの出没情報は環境省の注意喚起で確認できます。

⑧ 幌尻岳

 

幌尻岳は、日高山脈で唯一2,000mを超える最高峰です。山腹に3つのカールを抱え、主稜線から西に外れているため、山頂からは日高山脈の山々を重なり合わずに見渡せます。

振内コースでは、林道への一般車両の乗り入れが規制されているため、とよぬか山荘から平取町が運行する予約制のシャトルバスで林道のゲートへ向かいます。ゲートから北海道電力の取水施設まで約7.5kmの林道を歩き、その先は額平川に沿って十数回の渡渉を繰り返して幌尻山荘へ向かいます。幌尻山荘は、夏期のみ管理人が滞在する予約制の山小屋です。新冠コースやチロロ林道コースもありますが、いずれも山中泊を含む行程です。

シャトルバスは、降雨などで林道を安全に走行できないと判断された場合は運行を取りやめることがあります。沢が増水すると渡渉が難しくなり、非常に危険です。シャトルバスと山荘の予約をそろえたうえで、天候や沢の水量によっては引き返す判断も含めて計画しましょう。また、北カール付近ではヒグマが現れることがあり、注意が必要です。

⑨ 羊蹄山(蝦夷富士)

 

羊蹄山は、富士山に似た円錐形の成層火山で、「蝦夷富士」とも呼ばれる独立峰です。山頂部には大きな火口があり、山頂からの展望が広がります。植物の垂直分布もよく見られ、倶知安コースと山頂の高山植物は天然記念物に指定されています。

登山道は、倶知安、真狩、京極、喜茂別の4方向にあります。倶知安(比羅夫)コースから登り、真狩コースへ下る縦走は、この2つのコースを結ぶルートです。倶知安駅前から路線バスで羊蹄登山口へ向かえ、バス停から登山口までは約2kmです。9合目には避難小屋があります。

登山口から山頂までの標高差が大きく、8合目より上はガレ場が続きます。山頂部では大火口の縁をたどり、南東側の火口縁はやせた岩場になっているため、転倒や滑落に注意が必要です。車で訪れて縦走する場合は、登山口と下山口が異なるため、下山後に車へ戻る方法も含めて計画しましょう。

北海道の百名山を登る前に確認したい最新情報

北海道の日本百名山には、火山活動によって立ち入りが規制される山や、ヒグマの出没状況によって登山口が閉鎖されることがある山があります。また、残雪の状況や交通機関の運行は季節によって変わります。行き先を決めたら、出発前に次の情報を確認しましょう。

※2026年10月時点で確認したものです。出発前に各公式情報で最新状況を確認してください

火山活動による規制

次の2座では火山活動による規制が出ています。規制は変わることがあるため、出発前に各確認先で最新の情報を確認してください。

山名 状況 確認先
十勝岳 噴火警戒レベル3(入山規制)。2026年9月12日に引き上げられ、火口から概ね3kmの範囲では大きな噴石に警戒するよう呼びかけられています。地元自治体などの指示に従い、危険な地域には立ち入らないよう案内されています。 気象庁「火山登山者向けの情報提供ページ」、美瑛町、上富良野町
阿寒岳(雌阿寒岳) 噴火警戒レベル2(火口周辺規制)。2025年9月15日に引き上げられ、ポンマチネシリ火口から約500mの範囲では大きな噴石に警戒するよう呼びかけられています。地元自治体などの指示に従い、危険な地域には立ち入らないよう案内されています。 気象庁「火山登山者向けの情報提供ページ」、釧路市、足寄町

ほかの活火山についても、気象庁の「火山登山者向けの情報提供ページ」で最新情報を確認できます。

ヒグマの情報と登山口の開閉

 
羅臼岳への登山道中で、クマの爪痕を発見

羅臼岳では、2025年8月のヒグマによる人身事故を受けて登山道が閉鎖されました。2026年7月5日に再開した後、ヒグマとの遭遇事案により一時閉鎖され、7月16日に全面再開しています(2026年10月11日時点)。知床では、人身事故のリスクが高いと判断された場合、登山口が予告なく緊急的に閉鎖されます。知床ヒグマ対策連絡会議は、登山道が開いていることは絶対に安全という意味ではないとしたうえで、登山前に「知床のひぐま」「知床情報玉手箱」で最新の情報を確認するよう呼びかけています。

ヒグマの状況は山や地域によって異なり、利尻島にはヒグマが生息していないと案内されています。大雪山とトムラウシ山は環境省の大雪山国立公園の注意喚起、そのほかの山は地元自治体や登山口で発信される最新情報を確認しましょう。熊鈴やクマ撃退スプレーの選び方など、一般的な熊対策は「登山の熊対策の解説」記事で紹介しています。

季節・残雪と登山口までの交通

北海道の日本百名山は、山によって登山に適した時期や、残雪・積雪のある時期が異なります。行き先を決めたら、各山の山ページにある季節カレンダーや、地元自治体・管理者が発信する最新情報で、計画する時期の状況を確認しましょう。

旭岳ロープウェイ、幌尻岳のシャトルバス、利尻島へのフェリーや航空便など、登山口までの交通は、運行期間や時刻が時期によって変わったり、天候で運休したりすることがあります。計画を立てる段階と出発前に、運行状況を確認しておきましょう。

行き方と行程で候補を絞り、出発前に最新情報を確認する

北海道の日本百名山9座は、島へ渡る利尻山、ロープウェイを利用する旭岳、シャトルバスと山小屋泊を組み合わせる幌尻岳のように、登山口までの行き方と行程の組み立て方が山ごとに異なります。まずは、自分の日程と移動手段で計画できる山を絞り込みましょう。

候補が決まったら、各山の詳しい行程を確認し、出発前には火山規制やヒグマ、交通機関の最新情報を確かめましょう。

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利尻・羅臼 知床・斜里・阿寒・礼文 2026
ニセコ・羊蹄山 暑寒別岳・駒ヶ岳 2026
大雪山 旭岳・トムラウシ山・十勝岳・幌尻岳 2026
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