北海道の百名山9座 大自然と絶景に出会う、名峰登山ガイド

北海道には日本百名山に選ばれた山が9座あります。火山、原生林、海に浮かぶ山など、どれも個性豊かでスケール感は圧倒的。登山初心者にも、北海道の山の魅力を知る入り口としてぴったりです。
観光地としても知られる阿寒岳や旭岳、蝦夷富士と呼ばれる後方羊蹄山など、登山と旅を楽しめるのも北海道の百名山の大きな魅力。雄大な自然に包まれる時間は、日常の疲れを癒し、新たな感動をもたらしてくれます。
この記事では、そんな北海道の百名山をすべて紹介。標高や難易度、登山シーズンはもちろん、アクセスや由来など、山にまつわる魅力も交えて解説します。山選びのヒントにぜひ活用してください。
百名山とは?
「日本百名山」とは、作家・深田久弥氏が著書『日本百名山』で選定した、日本を代表する100座の山々のことです。標高の高さだけでなく、「品格・歴史・個性」という基準で選ばれており、それぞれが地理的・文化的な意味を持つ名峰として知られています。
北海道の百名山一覧

北海道からは全部で9座が選出されており、本州の山とは一線を画すスケールと個性が魅力。活火山、火口湖、原生林など、ダイナミックな自然環境の中での登山体験が待っています。
※本記事で紹介する山名と山の番号は、深田久弥著「日本百名山」で紹介されている山名および順番とは異なります。
1.利尻山(利尻富士) / りしりざん(りしりふじ)
2.羅臼岳 / らうすだけ
3.斜里岳 / しゃりだけ
4.阿寒岳 / あかんだけ
5.大雪山<旭岳> / たいせつざん<あさひだけ>
6.トムラウシ山 / とむらうしやま
7.十勝岳 / とかちだけ
8.幌尻岳 / ぽろしりだけ
9.羊蹄山(蝦夷富士) / ようていざん(えぞふじ)
1.利尻山(利尻富士)|1,721m|上級

日本最北の百名山・利尻山は、島全体がひとつの山となった特異な地形が魅力です。夏山シーズン(6〜9月)には全国から約7,000人もの登山者が訪れ、海に囲まれた山ならではの絶景が広がります。山頂付近ではフェリーの汽笛が聞こえることもあり、海の近さを実感できるのも利尻山ならではです。
また、リシリヒナゲシやボタンキンバイなどの固有種を含む高山植物が豊富で、お花畑の美しさも格別です。標高差は約1,500m、所要時間は往復10〜12時間と体力を要するコースですが、事前にしっかりと準備をすれば、達成感のある山旅が楽しめます。さらに近年では、冬のバックカントリーの人気も高まり、世界的にも珍しいロケーションを求めて訪れる外国人スキーヤーやスノーボーダーも増えています。四季折々の魅力を持つ、特別な一座です。
■ アクセス:フェリー利用は車輌の長さ3m 未満で1万2830円。登山口となる3合目の利尻北麓野営場まで車で入ることができる
■ 駐車場:利尻北麓野営場に駐車場あり(約30台)
- 北海道
- 1,721m
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2.羅臼岳|1,661m|中級 〜 上級

知床連山の最高峰・羅臼岳は、海岸から山頂まで多様な植生が見られ、知床の垂直的な自然環境の広がりを体感できる山です。登山口付近ではトドマツやミズナラの混交林が広がり、中腹の仙人坂や極楽平では、火山活動によって形成された地形や、積雪と冷泉による独特なダケカンバの姿が印象的です。
知床五湖などから見上げると丸みを帯びた山頂に見えますが、実際には約700年前の噴火によって生まれた溶岩ドームが、角ばった岩石として積み重なっています。登山中に見られる岩清水や二の肩、山頂部の様子からも、火山活動の痕跡とその年代差を実感でき、自然のダイナミズムを肌で感じられる一座です。
■名前の由来:アイヌ語でチャチャ・ヌプリ=親父・山の意。羅臼川源流にある山の意が和人式らしい
■ アクセス:網走から国道244号、344号を経て約90km
■ 駐車場:地の涯宿泊者はホテルの駐車場利用(約30台)。木下小屋宿泊者は駐車場利用(5台)
- 北海道
- 1,661m
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3.斜里岳|1,547m|上級

斜里岳は、地元の人々にとって「自分の街から見える姿が一番美しい」と言われるほど、地域ごとに異なる表情を見せてくれる山です。真北の斜里町からは山頂がすっきりとそびえ立ち、西の濤沸湖や清里町からは南斜里岳へと続く尾根が奥行きを感じさせます。南側の標津町からは、標津山塊とパンケニワナイ川の深い谷が印象的に映ります。
古くからアイヌの人々には「オンネ・ヌプリ=大きくて年老いた山」と呼ばれ、特別な存在として崇められてきました。山頂からはオホーツク海をはじめ、斜里平野、知床連山、国後島、摩周湖、阿寒の山々まで見渡せる大パノラマが広がり、まさに北海道の広さと雄大さを実感できる一座です。
■ 名前の由来:斜里はアイヌ語でサル=葦の生えた湿原の意。斜里川の源流にあることから由来した山名であろう。アイヌ語ではオンネ・ブプリ=大きな山、年老いた山の意
■ アクセス:女満別から国道39号、334号を経由して約70km
■ 駐車場:清岳荘にあり(40 台)
- 北海道
- 1,547m
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4.阿寒岳|1,499m|初級

阿寒岳は、阿寒湖の東西に位置する雌阿寒岳と雄阿寒岳を総称した名称で、日本百名山に数えられるのは雌阿寒岳です。複数の火山が重なった構造で、山中には複数の火口があり、風向きによっては噴気の強い臭気の中を歩く場面も。まさに“活火山の山旅”を体感できる一座です。
登山道は3ルートあり、いずれも針葉樹林からスタートしますが、登るルートや季節によって植生が大きく異なるのも魅力のひとつ。林床に広がるコケや稚樹の緑、エゾイソツツジが彩るハイマツ帯、火山礫地に咲くメアカンキンバイやメアカンフスマなど、歩くごとに風景が変化し、何度訪れても楽しめる山です。
■ 名前の由来:阿寒川の上流であることからであろう。ちなみに雌阿寒はアイヌ語でマチ・ネシリ(女山)、雄阿寒はピン・ネシリ(男山)の夫婦山
■ アクセス:釧路から国道38号、240号を経由して阿寒湖畔まで約65km
■ 駐車場:雌阿寒温泉登山口近くに駐車場あり(55台)
- 北海道
- 1,499m
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5.大雪山|2,291m|中級 〜 上級

「北海道の屋根」とも称される大雪山国立公園は、総面積およそ23万ヘクタールに及ぶ、日本最大の山岳国立公園です。原始の自然が色濃く残り、北から北大雪・表大雪・東大雪・十勝連峰と、一般的には4つの山域に分けられています。実は「大雪山」という名前は特定の一座ではなく、山域全体を指す総称。そのなかで北海道最高峰の旭岳は、表大雪に含まれる山です。
広大な溶岩台地に咲き誇るお花畑や、高層湿原など、大雪山らしい風景を象徴するエリアでもあり、短い夏の間にだけ見られる高山植物の群生は特に見応えがあります。標高は2,000m前後と本州に比べて低めですが、北緯41度以北という位置にあるため気象条件が厳しく、登山の体感は本州の3,000m級にも匹敵します。初雪が9月上旬に観測される年もあり、四季の移ろいを肌で感じられる、北海道を代表する山です。
■ 名前の由来:旭岳はヌタクカムウシュペ、石狩岳、東オプタテシケなどの名で呼ばれたが、明治43年に文部省からの働きかけにより、旭川の東に位置し陽の登る方向にある山として現在の名を得た。大雪山の名は明治32年松原岩五郎の『日本名称地誌』が初出で、小泉秀雄が大雪山は中央高地の総称と発表し今日に至る
■ アクセス:旭川から道道1160号を経由して約43km
■ 駐車場:旭岳ロープウェイ前に40台(6~10月は500円)、公共駐車場61台(無料)
- 北海道
- 2,291m
- 百名山
6.トムラウシ山|2,141m|中級 〜 上級

トムラウシ山は、大雪山国立公園のほぼ中央、表大雪と十勝連峰の中間に位置し、「大雪の奥座敷」とも呼ばれる静寂に包まれた山です。遠隔地にあることや、裾合いに広がる複雑な地形、そしてそれらを彩る高山植物の美しさから、登山者の間で根強い人気を誇ります。遠望すれば王冠のような優美な山容を見せますが、山頂は火口底を挟んだ双耳峰となっており、前衛峰も連なる複雑な地形を形成しています。
山の北側には日本庭園やロックガーデン、南にはトムラウシ公園、東には広大な五色ヶ原の草原、西には銀杏ヶ原が広がり、いずれも他の山域に引けを取らない自然美を湛えています。巨岩・奇岩の間を縫うように咲く可憐な高山植物、光を受けて輝く大小の湖沼群など、見る者を飽きさせない変化に富んだ景観が続きます。「カムイミンタラ=神々の遊ぶ庭」というアイヌ語の表現が、まさにぴったりの世界がそこには広がっています。
■ 名前の由来:アイヌ語でトンラ・ウシとはミズゴケのある川、水草が生えている川など諸説ある。山名自体はトムラウシ川の上流にあるという意味
■ アクセス:新得駅から道道718号で約60km。付近7kmは未舗装なので要注意
■ 駐車場:公共駐車場あり(55台)
- 北海道
- 2,141m
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7.十勝岳|2,077m|中級 〜 上級

十勝岳は、富良野の北東に連なる十勝連峰の主峰で、今なお火山活動が活発な現役の活火山です。十勝連峰には2000m級の山々が10数座連なり、稜線がほぼ直線的に続く雄大なスケールを持ちます。十勝岳では、噴煙を上げる火口、むき出しになった崩壊斜面、狭く荒々しい稜線など、火山地形の迫力を存分に味わうことができます。
一部では登山道が不明瞭で、崩落地や立ち入り規制区域もあるため、気象や火山活動の最新情報には十分注意が必要です。本峰周辺は火山性地質の影響で高山植物は少ないものの、その分ダイナミックな自然の力を体感できる、北海道ならではの山と言えるでしょう。
■ 名前の由来:十勝はトカプチ=女の乳房、トガプチ=沼の枯れる所など語義は諸説あるが、十勝地域の最高峰としてその名を与えられた山名であろう
■ アクセス:旭川から国道237号を南下、美瑛で道道966 号を白金温泉方面へ、白金温泉まで約52km。望岳台まではさらに3km
■ 駐車場:望岳台に駐車場あり(50 台)
- 北海道
- 2,077m
- 百名山
8.幌尻岳|2,052m|上級

北海道南部を縦断する日高山脈。その背骨ともいえる大山脈の中で、唯一2,000mを超える最高峰が幌尻岳です。山腹には3つのカールを抱え、麓からもその大きさが際立つ堂々とした山容。主稜線から西に外れて位置しているため、山頂からは日高山脈の山々が重なり合うことなく、遮るもののない雄大な眺望が広がります。
アイヌの人々からは「ポロ・シリ(大きい山)」と呼ばれ、古くから特別な存在として親しまれてきました。北部では針葉樹林が見られる一方、亜高山帯ではダケカンバが極相林を形成し、その上部にはハイマツの低木帯が広がります。お花畑はカールや沢の源頭部に点在し、岩稜帯ではこの地ならではの貴重な植物がひっそりと根を張ります。日高の深い自然と向き合う、静かで厳かな山旅が楽しめます。
■ 名前の由来:アイヌ語で「ポロ・シリ=大きい・山」の意。
■ アクセス:平取町本町から日高方面へ40分、振内市街を過ぎたころ、仁世宇の分岐に「幌尻岳登山入口」の案内看板あり。ここから約20 分で、とよぬか山荘へ
■ 駐車場:とよぬか山荘に駐車場あり(約50台)
- 北海道
- 2,052m
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9.羊蹄山(蝦夷富士)|1,898m|中級 〜 上級

羊蹄山(1,898m)は、その美しい円錐形から「蝦夷富士(えぞふじ)」と呼ばれる成層火山で、北海道を代表する独立峰です。北海道の脊梁山脈を除けば最も標高が高く、山頂からの展望は360度の大パノラマ。日本海やニセコ連峰、支笏湖、洞爺湖までも一望できる見晴らしの良さが魅力です。
登山道は倶知安・真狩・京極・喜茂別の4方向から整備されており、それぞれ異なる表情の山旅が楽しめます。9合目には避難小屋も整備され、登山者をサポートしています。また、植物の垂直分布が明瞭で、倶知安コースと山頂の高山植物は天然記念物に指定されているほど。登るほどに移り変わる植生や、稜線から眺める美しい稜線の曲線美も、この山ならではの魅力です。
■ アクセス:千歳から支笏湖畔を経て、国道276号で美笛峠を経由し、羊蹄山登山口へ約110km
■ 駐車場:登山口の半月湖野営場に駐車場あり(15台)
- 北海道
- 1,898m
- 百名山
北海道の百名山で大自然を体感しよう

北海道の百名山は、他では体験できないスケールの自然を感じられる特別なフィールドです。活火山の迫力、原生林の静寂、遠くに広がる海や空、どの山にもそれぞれの物語があります。
そして、どの山に登るにも安全対策と事前準備は欠かせません。登山地図ナビアプリ「山と高原地図ホーダイ」を使えば、GPSで現在地を確認しながら登ることができ、初心者でも安心です。
さあ、北海道の大自然と向き合う山旅へ。自分の感性に響く一座を、ぜひ見つけてみてください。

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