焼岳登山 初心者に人気の新中の湯ルート 北アルプス絶景ガイド

焼岳(やけだけ、標高2,455m)は、長野県と岐阜県の県境にそびえる活火山で、日本百名山のひとつです。焼岳登山の定番ルートは新中の湯ルートで、荒々しい火山地形が生み出す独特の景観を間近に楽しめます。
森林限界を越えると迫力ある溶岩壁や噴気孔が迫り、北峰からは上高地や穂高連峰の壮大なパノラマが広がります。北アルプス入門にも最適な、火山の息吹と雄大な景色を一緒に味わえる名山です。
目次
大正池を生んだ活火山 焼岳登山の魅力

上高地の美しくも荒々しい自然を象徴する名山
焼岳は北アルプス南端に位置する成層火山で、2025年4月に警戒レベルが2から1へと引き下げられた活火山。標高2,455mと北アルプスとしては比較的登りやすい高さですが、1915年の大噴火により山麓に上高地の大正池を形成するなど、火山としての歴史と存在感は圧倒的です。

カラマツの紅葉に彩られる秋の焼岳中腹
山は北峰と南峰の2峰構造で、北峰は登頂可能、南峰は立入禁止となっています。登山の定番は国道158号線沿いの中の湯温泉から入る新中の湯ルート。
往復4〜5時間ほどで、樹林帯、森林限界、火山帯と変化に富む景色を楽しめるため、初心者から中級者まで人気のコースです。焼岳登山の中でも特に人気が高いルートであり、四季折々の表情を手軽に味わえるのが魅力です。
秋になると、火山地形を彩る紅葉が見事で、白い岩肌と赤・黄・緑のコントラストが印象的。南峰付近の火口湖からは噴気が立ち上り、大正池や上高地を一望できる絶景が広がります。
焼岳登山のアクセス 新中の湯登山口への行き方

登山初心者でも挑戦しやすい新中の湯ルート
新中の湯ルートの登山口は長野県松本市と岐阜県高山市の県境付近にあり、首都圏・関西圏のどちらからもアクセス可能です。ここではエリアごとにアクセス方法を整理します。
首都圏からのアクセス
車
中央道から長野道に入り、松本ICまで約2時間半。そこから国道158号を経由して中の湯温泉へ向かい、登山口まではさらに車で約1時間かかります。登山口周辺には約30台分の駐車場がありますが、シーズン中は早朝に満車となることも多く、余裕を持った出発がおすすめです。
公共交通
新宿から特急あずさで松本駅へ(約2時間40分)。アルピコ交通上高地線で新島々駅まで約30分、さらにアルピコ交通バスで中の湯温泉へ向かいます。バス停から登山口までは徒歩数分とアクセスは良好です。
名古屋・関西方面からのアクセス
車
名古屋からは名神高速〜東海北陸道を経由し、高山ICまで約2時間半。関西からは大阪市内から約4時間、京都市内から約3時間半で高山ICに到着します。高山ICから国道158号を松本方面に進み、安房トンネルを抜けて中の湯温泉へ。ICから登山口までは約1時間。駐車場は混雑しやすいため、朝早い出発が安心です。
公共交通
名古屋駅からはJR高山本線の特急ひだで高山駅へ(約2時間20分)。高山濃飛バスセンターから平湯温泉経由のバスに乗り、中の湯温泉で下車します。
関西からは新大阪・京都から特急ひだで高山駅まで直通(約3時間40分〜4時間)の便もありますが、本数は限られています。多くの場合は名古屋で乗り換えとなります。同様に濃飛バスを利用すれば、公共交通のみで登山口へアクセスできます。
登山口周辺の情報

公共交通機関のみで登山を楽しむことも可能
登山口付近には温泉施設や宿泊施設も点在しており、登山前後の休憩や宿泊にも便利です。車でアクセスする場合は山道やカーブが多いため、運転には十分注意しましょう。
初心者におすすめ 焼岳登山・新中の湯ルートの定番コース

火山地形の壮大な道を登っていく新中の湯ルート
新中の湯ルートは、まず森林帯を抜けて標高を上げ、森林限界を越えると火山地形の稜線歩きが楽しめます。登山口から山頂までの往復は約7km、累積標高差はおよそ900mと、初心者にも挑戦しやすいコース。北アルプスの入門コースとしても知られ、初めての焼岳登山に選ばれることが多いルートです。
特に10月の紅葉シーズンには、ナナカマドやカラマツが色鮮やかに登山道を彩り、山の景観に一層の趣を添えます。道中は木道や整備された区間が多く比較的歩きやすい一方、後半はやや急登もあるため、無理のないペース配分を心がけましょう。
新中の湯登山口→(約1時間40分)→下堀沢出合→(約1時間5分)→焼岳山頂(北峰)
新中の湯ルート前半 樹林帯歩きで始まる焼岳登山

静寂に包まれた樹林帯歩きから登山スタート
まず新中の湯ルートの前半は、針葉樹と広葉樹が混ざる静かな森を進むところから始まります。展望はまだ開けていませんが、緑に包まれた空間の中で聞こえるのは鳥のさえずりと足音だけ。まるで自然に抱かれているかのような、穏やかな時間が流れます。

道迷いの心配は少なく、すれ違う登山者も多い定番ルート
道にはところどころ木道が整備され、登山道自体も歩きやすく安全です。迷う心配も少なく、登山者の往来も多いため、初心者でも安心して歩けます。焼岳登山の前半はこうした樹林帯歩きが中心で、リラックスした気持ちで自然と向き合えるのが魅力です。

樹林帯から火山地形へと劇的に景観が変わる
平坦基調な区間へ入ると、視界に焼岳の姿が入るようになります。北峰と南峰の二つのピークを持つ活火山で、現在も活動を続けるその山容は、木々の間から覗く存在感もひときわです。
紅葉に彩られた登山道 森を抜けて火山地形の世界へ

秋の気配をまとう焼岳の山肌をたどる
登山開始からおよそ1時間40分、下堀沢出合までくると、山頂へ続く急斜面に差しかかり、紅葉に彩られたダケカンバやナナカマドが目を引きます。森林限界に近づくにつれて樹々の姿は消え、地面は火山礫に覆われた荒々しい風景へと変化していきます。

目の前に広がる壮大な地形が冒険心をかき立ててくれる
山頂から続く亀裂や荒々しい岩稜が目前に迫り、歩を進めるごとに焼岳ならではの火山地形の迫力を実感できます。

パッチワークのように紅葉に彩られる中盤の道
焼岳の紅葉は10月が最盛期。中腹の道を振り返れば、ダケカンバやナナカマドの色づきが油絵のような風景を作り出しています。中旬になると、その紅葉は上高地まで降り、夏山シーズンが終わった直後の短い期間に、山が見せる輝きを堪能できます。この時期の焼岳登山は、紅葉と火山地形が織りなす壮大な景観を一度に味わえる貴重な体験です。

振り返ると、紅葉と霞沢岳のコラボレーション
さらに振り返ると、上高地の隣にそびえる名山・霞沢岳(かすみさわだけ、標高2,646m)の姿も一望。色とりどりの景色に囲まれ、まるで絵画の世界を歩くような感覚を味わえます。
火山地形の核心部 北峰へ向かう迫力の稜線歩き

異世界のような雰囲気を放つ焼岳の山頂周辺
ゴツゴツとした北峰の溶岩ピークは圧倒的な迫力を放ち、火山ガスが噴出する様子も目に入ります。これまでの樹林帯や森林限界の穏やかな景色とは一線を画し、まるで異世界に迷い込んだかのようで、その変化に思わず息をのむでしょう。

最後のトラバース区間だけ、足を滑らさないよう注意したい
焼岳には北峰と南峰のふたつのピークがありますが、南峰は滑落の危険があるため登頂できません。一方、北峰は火山活動が続いているものの、警戒レベル1のため登頂可能です。焼岳登山では山頂付近で火山ガスの影響を受ける可能性があるため、体調が悪い場合は無理をせず引き返す判断も重要です。

焼岳の山頂に佇む、エメラルドグリーンの火山湖
火山ガスには十分注意し、直接近づかないようにしましょう。その先では、南峰の横に広がる火口湖を見下ろしながらトラバースし、北峰を目指します。
北峰山頂に到達 上高地と穂高連峰を一望する絶景

山頂からは穂高連峰から上高地まで一望できる
後半の急登を登り切ると、登山開始から約2時間半〜3時間で北峰山頂に到着。標高2,455mの火山岩の山頂には狭いながら三角点と標識があり、360度の大展望を楽しめます。穂高連峰、槍ヶ岳(やりがたけ、標高3,180m)、乗鞍岳(のりくらだけ、標高3,026m)、そして眼下に広がる上高地の景色は圧巻。焼岳登山のハイライトともいえる瞬間であり、北アルプスの雄大さを一望できるのが最大の魅力です。

霞が漂うと、どこか仙人が住む世界を思わせる風景
晴れではなく曇りの日でも、焼岳ならではの絶景を楽しめます。モノクロームに近い色合いが火山地形の迫力を一層際立たせ、霞の中に広がる上高地はまるで仙人が住む神秘の世界のよう。山頂から定番の景勝地を見下ろす特別感も格別です。
上高地から挑む焼岳登山 人気の一日ルート

上高地から焼岳までアプローチするルートも玄人に人気
焼岳は新中の湯ルートだけでなく、上高地ルートからの登山も可能です。上高地バスターミナル近くの河童橋を出発点に、梓川沿いの道を進み、焼岳小屋や火山帯を経て山頂へ至ります。往復で約7時間30分と長丁場ですが、上高地とセットで歩けるルートとして人気があります。上高地からの焼岳登山は、風景の変化が豊かで、定番の新中の湯ルートとはまた違った魅力を味わえるコースです。

梓川越しに望む、圧倒的な存在感を放つ焼岳
このルートの魅力は、梓川(あずさがわ)沿いの絶景、焼岳小屋前から望むダイナミックな山容、そして山頂での360°パノラマ展望。焼岳を異なる角度から楽しめるのが魅力です。バスやタクシーなど公共交通を活用できるため、装備を軽くして柔軟にプランを組むことも可能です。
焼岳登山後に立ち寄りたい 温泉と飛騨高山グルメ

平湯温泉といえばここ!人気の立ち寄り湯「ひらゆの森」
下山後はぜひ平湯温泉へ。特に「ひらゆの森」は露天風呂が充実しており、広大な敷地内に16の湯船が並びます。鉄分を含む赤湯や緑色のにごり湯など、異なる泉質を楽しみながら、火山の硫黄成分を感じつつゆったりと体を休められます。

筆者のイチオシは、秘湯感のたまらない「平湯の湯」
また、平湯の共同浴場「平湯の湯」もおすすめです。鉄分の香り漂う濁り湯は、緑色や赤褐色など訪れるたびに色合いが少しずつ変化します。夏の森林浴、秋の紅葉、冬の雪見露天風呂など、季節ごとに異なる趣を楽しめるのも魅力です。
住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯29
営業時間:6:00 – 21:00 (冬期:8:00 – 21:00)
料金:寸志(300円程度)
TEL: 0578-89-3339
公式サイトはこちら

高山ラーメンは夜まで営業しているお店が少ないので注意
帰路の道中、飛騨高山エリアには郷土料理「鶏ちゃん」や「高山ラーメン」も提供するお店も多数点在。焼岳登山後に温泉とグルメを組み合わせることで、山旅の満足度は一層高まります。
焼岳登山で北アルプスの魅力を体感

焼岳は、北アルプスの入門として自然の雄大さと火山の迫力を一度に味わえる山です。新中の湯ルートは往復4〜5時間と歩きやすく、森林帯から紅葉、火山地形、そして山頂からの大展望まで、多彩な景色を楽しめます。体力度は中程度ですが道は整備されており、登山初心者でも挑戦しやすいのが魅力です。
また、上高地からのロングルートや、下山後の平湯温泉・飛騨高山グルメを組み合わせることで、山旅の楽しみはさらに広がります。安全面では、火山ガスや天候の変化に注意し、無理のない計画を立てることが大切です。
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