御嶽山登山 おんたけロープウェイで楽しむ剣ヶ峰ルートと初心者も安心の見どころガイド

御嶽山(おんたけさん、標高3,067m)は長野県と岐阜県にまたがる日本百名山の一座で、雄大なスケールを誇る活火山です。2014年の噴火により長らく立ち入り規制が続いていましたが、現在は期間限定で最高峰・剣ヶ峰への登頂が可能となっています。
特に人気が高いのは秋の紅葉シーズンで、10月上旬には稜線や原生林が鮮やかに色づき、雲海との組み合わせが見事です。春には三ノ池で「ドラゴンアイ」と呼ばれる神秘的な現象も見られ、四季を通じて楽しめます。
本記事では、おんたけロープウェイを利用する黒沢口ルートを中心に、剣ヶ峰への登山の魅力や季節ごとの見どころを解説します。初心者にも歩きやすいルートを紹介しているので、御嶽山登山の計画に役立ててください。
目次
御嶽山登山で出会う四季の絶景と自然の魅力

紅葉が山肌を覆う10月上旬の秋シーズンは特に人気が高い
御嶽山は独立峰ならではの存在感を放ち、木曽谷や濁河(にごりご)温泉、開田(かいだ)高原など各地からその雄大な姿を望むことができる名峰です。日本百名山の一つであり、四季折々に異なる表情を見せる名峰として、多くの登山者から親しまれています。
10月上旬には原生林や稜線が鮮やかな紅葉に包まれ、赤や黄、橙が織りなすグラデーションはまさに秋の絶景。山肌を染める錦秋の風景は、写真愛好家からも高く評価されています。

御嶽山の神秘の絶景として知られるドラゴンアイ
近年注目を集めているのが、5月下旬から6月上旬にわたって三ノ池に現れる「ドラゴンアイ」。コバルトブルーの水面に浮かぶ円形の残雪は神秘的で、八幡平(はちまんたい)と並び国内でも稀少な自然現象です。

濁河温泉は秘湯マニアの間で憧れの名湯
さらに山麓には濁河温泉や開田高原といった温泉地や高原リゾートが点在し、登山とともに癒しや観光も楽しめる点も御嶽山の大きな魅力です。
御嶽山・剣ヶ峰に登れる時期と登山規制の注意点

御嶽信仰の石碑が並ぶ八合目・女人堂
御嶽山は2014年の噴火以降、最高峰・剣ヶ峰や火口周辺は長らく立入規制が続きました。

火山らしい壮大な地形を進む黒沢口登山道の後半
近年は夏から秋にかけて限定的に規制が緩和され、例年7月から10月の期間で、以下のルートで登頂が可能です。
- ・黒沢十字路〜剣ヶ峰
- ・王滝頂上〜八丁だるみ〜剣ヶ峰、王滝頂上〜二の池トラバース〜黒沢十字路
- ・田の原遥拝所〜王滝頂上
※最新の情報は長野県公式HP山岳情報を確認してください

2014年の噴火の爪痕が残る御嶽山の山頂周辺
規制緩和期間中は登山道を24時間通行できますが、ヘルメットの着用が推奨されています。また、天候や火山活動の状況によっては登山道が予告なく規制されることもあるため注意が必要です。
御嶽山の主な4つの登山ルートの特徴
御嶽山には黒沢口・王滝口・開田口・濁河温泉の4つの主要な登山ルートがあり、それぞれに異なる魅力があります。
黒沢口登山ルート ロープウェイで登る王道コース

御嶽登山の王道といえるメジャールート
長野・木曽町側の黒沢口では「おんたけロープウェイ」を利用することで、山麓の鹿ノ瀬(かのせえき)駅から一気に七合目付近の飯森高原駅(いいもりこうげんえき)までアクセスでき、初心者でも挑戦しやすいルートです。
王滝口(田ノ原)登山ルート 剣ヶ峰への最短ルート

御嶽登山の最短ルートも近年ようやく復活
長野・王滝村側の「田ノ原(王滝口)」は、標高約2,190mから登り始められ、剣ヶ峰への最短ルートとして知られています。噴火による閉鎖期間を経て、近年は時期限定で登山が可能です。
開田口(開田高原)登山ルート 静かな自然を楽しむ玄人好みの道

開田高原から眺める圧倒的スケールの御嶽山
長野・木曽町側「開田高原(開田口)」は標高約1,500mからのスタートで体力的にはややハードですが、登山者が少なく、雄大な御嶽山麓の自然を存分に楽しめます。山荘に宿泊しての1泊2日登山もおすすめです。
濁河温泉(小坂口)登山ルート 温泉とドラゴンアイを楽しむコース

秘湯・濁河温泉とセットで楽しめる玄人向きのコース
岐阜県側の「濁河温泉(小坂口、おさかぐち)」は原生林に囲まれた静かなルートで、春の「ドラゴンアイ」を目当てに訪れる登山者にも人気があります。下山後に温泉で疲れを癒せる点も大きな魅力です。
今回はこの中から、おんたけロープウェイを利用する黒沢口登山道のルートを詳しく紹介します。あわせて、健脚者向きですがドラゴンアイが見どころとなる濁河温泉(小坂口)登山ルートについても取り上げます。
御嶽山登山 初心者におすすめの黒沢口ルートとおんたけロープウェイ

紅葉最盛期の10月上旬には行列ができることも
御嶽山には4つの主要な登山口がありますが、もっとも一般的で初心者におすすめなのが黒沢口です。長野・木曽町側に位置し、おんたけロープウェイを利用すれば七合目付近まで一気に登ることができ、標高3,000m級の景色を手軽に体験できます。
アクセスは、JR木曽福島駅からバスで約1時間。車の場合は中央道・中津川ICから約90分で、おんたけロープウェイ山麓駅に到着します。駅周辺には大型の無料駐車場も整備されており、マイカー利用でも安心です。
飯森高原駅→(約10分)→七合目→(約1時間10分)→八合目女人堂→(約1時間25分)→九合目石室山荘→(約10分)→黒沢十字路→(約25分)→剣ヶ峰山頂
ロープウェイで七合目へ 御嶽山登山のスタート

ロープウェイから振り返れば、日本屈指の山並みを一望
おんたけロープウェイは標高1,570mの鹿ノ瀬駅と七合目・飯森高原駅(2,125m)を結び、片道約15分で到達します。例年4月〜11月の期間で運行され、夏から秋には剣ヶ峰方面への登頂も可能です。
※最新の情報はおんたけロープウェイ公式HPにてご確認ください
ロープウェイは常に循環運行しており、数十秒間隔で発着するため時刻表は不要で、運行時間内であれば待たずに乗車できます。標高2,150mの飯森高原駅からは、中央アルプス・北アルプス・乗鞍岳など、360度に広がる大パノラマを楽しむことができます。
樹林帯を抜け女人堂へ 信仰を感じる静かな道

霧に包まれ、静かな樹林帯歩きから始まる登山
飯森高原駅(標高約2,125m)から八合目・女人堂(にょにんどう、標高約2,470m)までは、標高差約350mの緩やかな登りが続く区間です。

原生林を彩る鮮やかな紅葉のアクセント
出発後すぐに広がるのは森林限界下の樹林帯と高山植物帯で、木漏れ日が差し込む美しい森の中を、よく整備された登山道が淡々と続きます。景色の変化は穏やかですが、四季折々の自然を楽しめるのも魅力です。

八合目、雲を見下ろす高みに佇む女人堂
約1時間20分ほどで到着する女人堂は、日帰り登山者の休憩スポットであり、宿泊者には山荘としても利用されています。

ナナカマドの鮮やかな紅葉が山肌を彩る
ここから稜線が近づき、秋には紅葉が山肌を彩る絶景が広がります。登山初心者でも無理なく歩ける一方で、景観や山の迫力を十分に感じられる、御嶽山登山のハイライト区間です。
女人堂から石室山荘へ 高山帯の景色と歴史に触れる

紅葉に包まれる道を抜けて、いよいよ火山地形の世界へ
八合目・女人堂(標高約2,470m)から石室山荘(いりむろさんそう、標高約2,620m)までは、御嶽山登山における稜線歩きの魅力を存分に味わえる区間です。女人堂を出発すると、まず背の低い樹林帯を抜け、次第に開けた高山帯の登山道に入ります。

振り返ると、完全に雲の上を歩いていると実感
途中、岩が混じった道や小さな雪渓が現れる箇所もあり足元には注意が必要ですが、道自体は整備されており歩きやすくなっています。

傾斜が増し、山頂への正念場となる区間
登山道はやや傾斜がありますが、ゆっくり歩けば初心者でも無理なく進むことが可能です。道中には小さな祠や標識が点在し、山の歴史や信仰に触れながら登れるのも特徴です。

石室山荘に到着したら、山頂まではあと約35分
石室山荘は標高約2,620mにあり、休憩や軽食、宿泊も可能。御嶽登頂を目指す登山者の重要な拠点になっています。ここから先の稜線や剣ヶ峰へ進む前に、装備を確認し、休憩をとっておくと安心です。
山の天気は変わりやすいため、防寒具や雨具は必ず用意しましょう。八合目から石室山荘までの道は、迫力ある山の景色と開放感を味わえる見どころの多い区間と言えます。
九合目から剣ヶ峰へ 火山地形を歩く迫力の稜線

ダイナミックな火山地形を歩く稜線の道
石室山荘から剣ヶ峰山頂までは、標高差約450m、距離1km弱の道のり。規制が解除される黒沢十字路を通過すると、いよいよ御嶽登山のクライマックス、剣ヶ峰(標高3,067m)へ向かう稜線歩きが始まります。

標高3,000m超の隔絶とした場所まで来たことを実感
まだまだ標高差があり、岩場や火山特有の溶岩帯が続くため、足元には十分注意しながら進む必要があります。道自体は明確で標識も整っているので、焦らず一歩ずつ登ることが大切です。

流れる雲に包まれる、二ノ池と二ノ池山荘
天気に恵まれれば、遠くに日本アルプスの峰々を望むことができ、その壮大な景色は登頂の達成感をさらに引き立ててくれます。稜線は風が強く吹き抜けることも多いため、防寒具や雨具の携行は欠かせません。

圧倒的なスケールの火口跡が、火山の威容を示す
剣ヶ峰山頂付近には火口跡が広がり、周囲の景観は標高が低い山では味わえない迫力があります。山頂に立つと、山の力強さと自然の雄大さを肌で感じられ、登頂の喜びがひとしおです。
下山で立ち寄る賽の河原 荒々しい絶景のガレ場

ミステリアスな雰囲気を放つ賽の河原
時間と体力に余裕があれば、下山は賽の河原(さいのかわら)に立ち寄るのもおすすめです。九合目石室山荘付近から分岐があり、往復40分程度。
賽の河原は、荒々しいガレ場と小さな石塔が並ぶ独特の景観で、修行の場を思わせる神秘的な雰囲気が漂います。冷涼な空気に包まれ、霧や雲が立ち込めることもあり、自然の迫力を肌で感じられることもあります。
宿泊して楽しむ摩利支天への縦走 もう一つの頂を目指す

山上とは思えない快適さの二ノ池山荘
二ノ池山荘や二の池ヒュッテは、二ノ池のすぐ脇に建つ山小屋で、快適に宿泊ができることでも人気です。日帰りではなく宿泊して楽しむなら、摩利支天山へ足を運ぶのもおすすめです。

険しい岩尾根の先に待つ摩利支天の山頂
剣ヶ峰から分岐する稜線をたどれば、摩利支天山(標高2,959m)や王滝頂上(標高2,930m)など、ほかの山頂へも縦走できます。火山地形の絶景を眺めながらの稜線歩きは、体力や時間に余裕のある登山者にこそ楽しめる魅力です。

朝日が山肌を照らし始める、早朝の御嶽山
おんたけロープウェイを利用して黒沢口登山道から入山すれば、日帰りでの往復登山から、山上での一泊までさまざまな楽しみ方が可能です。山小屋泊や撮影を目的とする場合は、余裕をもった日程で訪れることで、御嶽山の魅力を存分に味わえます。
健脚者におすすめの御嶽山登山 濁河温泉(小坂口)ルート

大樹と苔に包まれる趣ある登山道を進む
濁河温泉から入る小坂口ルートは、春先の「ドラゴンアイ」を目当てに訪れる登山者に特に人気です。標高約1,800mの濁河温泉の奥にある登山口(六合目)からスタートし、原生林の中を緩やかに登っていきます。
このルートへのアクセスは、JR高山駅から濁河温泉行きの濃飛バスで約90分。車なら中央道・中津川ICから約2時間半、または東海北陸道・高山ICから約90分です。登山口近くには市営の無料駐車場が整備されており、温泉と登山を組み合わせて楽しめます。

木道の上から楽しむ、苔のふかふか絨毯
六合目〜七合目にかけては、苔むした森や巨木、沢の流れに囲まれた自然豊かな道が続きます。木の階段や岩の根が点在し、山の歴史や大自然の息吹を感じながら進むことができます。

展望スポットから御嶽の山並みを一望
八合目手前の「のぞき岩避難小屋」(標高約2,274m)付近から、森林限界が近づき視界が開けます。岩場からは御嶽山の全容が望め、休憩に最適なスポットです。ここからさらに標高を上げ、御嶽 五の池小屋や飛騨頂上(ひだちょうじょう、標高2,780m)に辿り着きます。

宝石のような色合いを見せる御嶽山のドラゴンアイ
御嶽 五の池小屋から眺められる三ノ池では、一周できる遊歩道が整備されており、5月下旬から6月上旬には中央に残る雪が目のように浮かぶ神秘的な光景、通称「ドラゴンアイ」が現れます。池に近づくときには、アイゼンなど滑り止めの装備があると安心です。

下山後に待つ、至福の秘湯露天風呂
下山後は、濁河温泉の市営露天風呂で登山の疲れをしっかり癒せます。自然石をあしらった開放的な浴場で、炭酸水素塩泉のやわらかな湯を心ゆくまで楽しめます。
初心者から健脚者まで楽しめる御嶽山登山の魅力

初めての御嶽山登山は、黒沢口登山道がおすすめ
御嶽山は登山初心者から健脚者まで楽しめる多彩なルートが魅力の名峰です。黒沢口や濁河温泉などから入山でき、剣ヶ峰や二ノ池、賽の河原など見どころも点在。
春のドラゴンアイや秋の紅葉など、季節ごとの絶景も魅力で、山小屋泊を含む余裕ある日程で訪れることで、御嶽山の自然美と火山の迫力を存分に味わえます。
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