雨飾山の紅葉登山を楽しむ 日本百名山で出会う女神の横顔

紅葉が山肌を染め上げる秋、日本百名山「雨飾山(あまかざりやま)」は息をのむほどの輝きを放ちます。稜線を歩き山頂へ至ると、北アルプスや頸城山塊(くびきさんかい)の雄大な眺めが広がり、自然に包まれるひとときが待っています。

さらに笹平からは、山肌のシルエットが女性の横顔のように見えることから名付けられた「女神の横顔」を望むことができ、雨飾山ならではの景観を楽しめます。

四季の中でも特に鮮やかな彩りを見せるこの季節、コースの見どころや山頂からの景色を味わいながら歩く登山の魅力を、これからご紹介していきます。

2025年8月23日 更新

日本百名山・雨飾山の魅力 紅葉と絶景が彩る名峰


北アルプスの山並みを一望できる雨飾山の山頂

雨飾山は、妙高戸隠(みょうこうとがくし)連山国立公園にそびえる標高1,963mの名峰で、日本百名山の一つに数えられます。妙高山(みょうこうさん、標高2,454m)や火打山(ひうちやま、標高2,462m)とともに頸城山塊を形づくり、その名は山頂に祭壇を設け、雨乞いを行ったことに由来すると伝えられています。


登山口の隣にはトイレや自販機も完備

登山道は長野県側・雨飾高原キャンプ場と新潟県側・雨飾温泉からの2つのコースが代表的。いずれも笹平(ささだいら)と呼ばれる鞍部を回り込んで山頂を目指します。山頂に立てば、北アルプスをはじめとする山々が360度に広がる雄大なパノラマが迎えてくれます。


荒菅沢(あらすげさわ)から紅葉が埋め尽くす絶景を望む

特に見逃せないのが、10月中旬前後を彩る紅葉の絶景。真紅に染まるブナやカエデと、白く切り立つ岩壁が織りなす景観は息をのむ美しさで、全国屈指の紅葉名山と称えられます。

さらに笹平からは、稜線のシルエットが女性の横顔のように見える「女神の横顔」を望むことができ、自然が生み出した偶然のアートとして、この山の神秘性をいっそう際立たせています。

雨飾山登山の定番ルート 雨飾高原登山口と雨飾温泉からのアクセス


駐車場は広いが、紅葉最盛期の10月中旬は早朝に到着できると安心

雨飾山の定番の登山口は、長野県小谷村にある雨飾高原キャンプ場に隣接した「雨飾高原登山口」。無料駐車場(約60台)、トイレ、登山届ポストが整い、早朝出発にも便利です。アクセスはJR大糸線・南小谷駅からバスで約30分(※季節運行あり)、車の場合は長野自動車道・安曇野ICから約2時間半、上信越自動車道・妙高高原ICから約1時間半です。

新潟県側では「雨飾温泉(都忘れの湯)」からのルートも人気で、登山口に温泉があり下山後すぐに入浴できます。糸魚川市街から車で約50分とアクセスしやすく、日帰り登山にも適しています。

いずれも片道約4時間で登頂することができますが、紅葉シーズンは日没が早いため、遅くとも16時ごろには下山できるように、余裕ある計画を立てましょう。

雨飾山・雨飾高原コース登山ガイド 紅葉と絶景をめぐる道


紅葉と巨岩が織りなす壮大な風景が雨飾山の醍醐味

長野県側の雨飾高原登山口から歩き始めると、序盤は穏やかな樹林帯と木道が続き、心地よい導入になります。その後、荒菅沢を渡って稜線に出ると、笹平を経由して雨飾山の山頂を目指す道が待っています。途中には紅葉の名所・布団菱(ふとんびし)の絶景も楽しめ、紅葉と岩壁が織りなす景観はまさに雨飾山登山のハイライトです。初心者から中級者まで満足できる、変化に富んだコースとなっています。

コースタイム
雨飾高原登山口→(約1時間35分)→荒菅沢→(約1時間30分)→笹平→(約30分)→雨飾山山頂

雨飾高原登山口から樹林帯を抜け 布団菱と紅葉の絶景へ


日の出前、静寂に包まれた木道歩きから登山スタート

前半はひたすら樹林の中を進む道で、分岐や迷う箇所はほとんどありません。早朝に出発すれば混雑を避けながら、静寂の森を独り占めできます。


陽光に照らされてキラキラと輝くブナ林が見事

登山口から約10分で急登が始まり、はしごがかけられた岩場が道のアクセントに。アップダウンを経て荒菅沢(あらすげさわ)に到着します。筆者が訪れた10月中旬には、ブナの原生林が淡く色づき始め、標高が上がるにつれて紅葉が鮮やかに深まっていきました。紅葉シーズンは数日違うだけで景色が変わるのも魅力の一つです。


布団菱と呼ばれる大岩と紅葉が織りなす、まさに絶景

荒菅沢は山頂までの中間地点にあたり、小川を渡る清涼感のあるスポット。水量は季節によりますが、難なく渡ることができます。ここから望む布団菱は雨飾山を象徴する景観で、紅葉と巨岩が織りなす絶景は登山者を魅了してやみません。

荒菅沢を越えて森林限界へ 岩場が続く紅葉の稜線歩き


雨飾山が紅葉の名山と言われるハイライトの区間を進む

荒菅沢を越えると、本格的な登りが始まります。樹林帯の急斜面が続き、ハシゴや手を使う岩場も現れますが、適度に整備されているため安心です。標識には「7/11」など進捗が表示され、心強い目安になります。


途中には、冒険心をかき立ててくれる岩場も登場

ここの先は岩場やはしごが連続し、道はさらに険しくなります。紅葉のピーク時には登山者が渋滞することもあり、すれ違い時は譲り合いが必要です。


振り返ると、山麓には紅葉の絨毯とも呼びたくなる絶景が展開

標高1,000m後半に差し掛かると森林限界に達し、視界が一気に開けます。布団菱の巨大な谷壁や紅葉した稜線、さらに山麓の紅葉の絨毯が広がり、スケール感のある風景に思わず足を止めてしまいます。


オレンジや黄色、紅葉がパッチワークのように織りなす

岩場はスリリングですが滑落の危険は少なく、まるで自然が生み出したアスレチックを楽しむように進めます。笹平に近づくにつれ、紅葉に包まれる谷を振り返る景色が圧巻です。

雨飾山の山頂へ 北アルプスと女神の横顔が迎える絶景


天候が安定しないこともあるので、雨の装備は必須

笹平は標高約1,900mにある稜線の鞍部で、北アルプスや頸城山塊を一望できる休憩ポイントです。平坦な笹原が広がり、季節によっては可憐な花が彩りを添えます。ここで小休止をとれば、山頂への最後の登りに備えられます。


切れ間の空に、妙高山の山頂が一瞬だけ姿を見せる

山頂を正面に見ながら緩やかに下ると、雨飾温泉からのルートと合流。ここから山頂までの稜線を歩けば、妙高山や火打山、戸隠連峰、さらには日本海まで望める雄大な景色が広がります。


ラストの急坂を越えると、いよいよ雨飾山山頂へ

笹平を過ぎると、いよいよ最後の急登が待っています。岩や笹の間を手足を使って登り切ると、山頂直下の鞍部に到着します。


紅葉の山肌から北アルプスまで大スケールのパノラマが広がる

右手の北峰には四体の石仏と石祠があり、左手の南峰には三角点と山頂標識があります。特に南峰からの眺めは素晴らしく、晴れた日には北アルプスの山並みを一望できます。


女神の横顔に出会えたら、幸運が訪れるかも

山頂から振り返れば、稜線に浮かぶ「女神の横顔」が目を引きます。女性の横顔を思わせる稜線のシルエットはどこか神秘的で、多くの登山者が足を止め、しばし見惚れてしまう光景です。

下山後に立ち寄れる秘湯 雨飾高原露天風呂でリフレッシュ


樹林帯に囲まれて、ひっそりと佇む「雨飾高原露天風呂」

小谷温泉道の登山口・雨飾高原キャンプ場から車で約7分の場所にある「雨飾高原露天風呂」は、原生林に包まれた秘湯。男女別の浴槽や脱衣所、清潔なトイレも整備されており、快適に利用できます。

自然石を配した浴槽はブナ林に囲まれ、雰囲気も抜群。清掃協力金(寸志)のみで入れるのも嬉しいポイントです。


登山の疲れを忘れさせる、格別の秘湯入浴

泉質はナトリウム炭酸水素塩泉で、肌触りは石けんのようになめらか。体を芯から温める効能があり、ブナ林の香りとともに心まで癒されます。秋は紅葉を眺めながらの外気浴が格別で、つい長湯してしまう心地よさです。

雨飾高原露天風呂
住所:長野県北安曇郡小谷村中土18926-1
営業時間:10:00~21:00
定休日:11月中旬~4月下旬まで冬季閉鎖
料金:寸志(清掃協力金)
TEL:0261-85-1607(雨飾荘)
公式サイトはこちら

雨飾山下山後に立ち寄れる紅葉の名所 鎌池でハイキング


下山後でも脚に優しい鎌池ハイキング

小谷村の観光名所「鎌池」は、雨飾山下山後のリフレッシュにぴったりな散策スポットです。池の形が鎌に似ていることから名付けられ、水面にはブナ林や山並みが美しく映り込みます。特に新緑や紅葉の季節は幻想的な光景が広がり、写真愛好家にも人気があります。


鮮やかな紅葉に包まれた秘境の池を、静かに歩いて巡る

周囲には遊歩道が整備されていて、一周はおよそ40分。手すり付きの木道やベンチも点在し、歩き疲れた足を休めながらのんびり散策できます。紅葉の見頃は例年10月中旬から下旬で、朝や夕方は人出も少なく、水面に映る紅葉を静かに楽しむことができます。

近くには鉈池(なたいけ)もあり、合わせて巡れば静かな自然に包まれた癒しの時間を過ごせます。雨飾山の登山と組み合わせれば、秋の小谷村の魅力を存分に味わえるでしょう。

紅葉と絶景に出会う 感動の雨飾山登山を楽しもう


天気が良ければ雨飾山山頂から槍ヶ岳(標高3,180m)が望めることも

雨飾山の登山は、紅葉に彩られた山肌や稜線の絶景、山頂からの雄大なパノラマなど、自然の美しさを存分に味わえる体験です。下山後は小谷温泉や鎌池で疲れを癒し、四季折々の景観を楽しみながら余韻に浸るのがおすすめ。秋の訪れとともに、一日を通じて心に残る山旅を満喫してみてください。

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妙高・戸隠・雨飾 火打山・高妻山・信越トレイル 2025
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部を卒業後、商社やメーカーで営業職を経験。2019年より複業でトラベルライターとしての活動を始め、旅の魅力を伝える仕事がライフワークになる。2021年には本業も旅行業界へ本格転身し、国内OTAにて宿泊施設の集客支援に従事。現在は旅行系ベンチャー企業でメディアマネージャーを務める。これまでに執筆した記事は2,000本以上。地方の自然や暮らしをテーマにした発信を続けながら、「旅を通じて人生が豊かになるきっかけ」を届けたいと考えている。登山、自転車旅、温泉巡り、離島旅が趣味で、毎年の北海道旅行を家族の恒例行事にしている。 notehttps://note.com/yuhei_tonosho
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