恵那山・神坂峠ルートで楽しむ登山 南アルプスと中央アルプスを一望する絶景コース

日本百名山の一つ「恵那山(えなさん)」は、岐阜県中津川市と長野県飯田市の県境にそびえる標高2,191mの山です。山頂は樹林に囲まれ眺望は控えめですが、神坂峠(みさかとうげ)ルートを歩けば、稜線上から南アルプスと中央アルプスの大パノラマが広がります。

ゆるやかなアップダウンと展望のよさを兼ね備えたこのルートは、登山初心者にもおすすめの恵那山登山コース。今回は、そんな魅力あふれる神坂峠ルートの見どころをご紹介します。

2025年10月7日 更新

中央アルプス最南部にそびえる恵那山とは


気高くも柔らかな表情を見せる、日本百名山・恵那山

恵那山(えなさん)は、中央アルプスの最南部に位置する標高2,191mの山で、岐阜県中津川市と長野県飯田市の県境にまたがっています。古くから信仰の対象とされ、木曽谷(きそだに)や伊那谷(いなだに)の人々に親しまれてきました。

その姿はどっしりとした山容が印象的で、どの方向から見てもひと目で分かる存在感。地域のランドマークとして親しまれてきたのも納得です。

恵那山登山には、主に「広河原(ひろがわら)ルート」「黒井沢(くろいさわ)ルート」「神坂峠(みさかとうげ)ルート」の3つのルートがあり、いずれもよく整備されています。

恵那山の登山ルートは3つ 歩きやすく眺望が魅力の「神坂峠ルート」がおすすめ


山頂周辺まで深い樹林帯が続く恵那山

恵那山の登山道は主に3つ。もっとも一般的なのは「広河原(ひろがわら)ルート」で、標高差は大きいものの、山頂直下まで一気に登る健脚向けコースです。

もうひとつの「黒井沢(くろいさわ)ルート」は、沢沿いを進むクラシックルート(古くから使われてきた道)で、静かな山歩きが楽しめます。ただし、現在は立ち入り禁止となっているため利用できません。


山並みを一望する爽快な神坂峠ルート

そして3つ目が、歩きやすさと展望のよさを兼ね備えた「神坂峠(みさかとうげ)ルート」。標高差が少なく、稜線歩きが中心で、御嶽山や中央アルプスを一望できる絶景のパノラマが広がります。景色を楽しみながら登りたい人や登山初心者にもおすすめの恵那山登山コースです。

恵那山・神坂峠ルートの登山口へのアクセスガイド


稜線歩きから登山をはじめられる神坂峠

神坂峠(みさかとうげ)ルートの登山口は、岐阜県と長野県の県境に位置する標高1,569mの神坂峠にあります。かつては中山道(なかせんどう)の中でも屈指の難所として知られた峠で、現在は恵那山登山や富士見台高原(ふじみだいこうげん)登山の起点として多くの登山者に利用されています。

一般車で通行できるのは岐阜県・中津川方面から神坂峠までの区間のみで、長野県・阿智村側からは通り抜けできません。アクセスの際はルート選択に注意しましょう。

また、公共交通機関は通っていないため、車でのアクセスが基本です。峠周辺には駐車スペースが整備されており、登山の準備や休憩もしやすい環境です。

稜線歩きが気持ちいい 神坂峠ルートで登る恵那山登山コース


笹原と森が続く尾根をたどる神坂峠ルート

登山口の神坂峠は、恵那山と富士見台高原の分岐点。北へ進めば富士見台高原ですが、今回は南へ向かい恵那山を目指します。

神坂峠ルートは、稜線歩きと展望を楽しめるのが魅力。千両山から大判山、恵那山山頂まで続く行程は、変化に富んだ景観を満喫できる人気コースです。

標準コースタイム
神坂峠→(約30分)→千両山→(約20分)→鳥越峠→(約50分)→大判山→(約1時間55分)→分岐→(約20分)→恵那山山頂

千両山から始まる稜線歩き 御嶽山と中央アルプスのパノラマを望む


振り返ると、御嶽山(左)と中央アルプス(右)を一望

スタート直後に現れるのが「千両山(せんりょうやま、1,662m)」。短い登りながら、すでに御嶽山(おんたけさん、3,067m)や中央アルプスを一望できるパノラマが広がり、コースの魅力を早くも感じられる区間です。


恵那山まで続く壮大な尾根歩きが始まる

千両山を越えると稜線を少し下り、鳥越峠(とりごえとうげ)へ。峠付近からは恵那山本体やこれから歩く縦走路を見渡すことができ、登山への期待が高まります。笹原と樹林が入り混じる歩きやすい道は景観の変化も豊かで、飽きることなく前へ進めるでしょう。

ウバナギの迫力ある景観を抜け、穏やかな稜線歩きで大判山へ


崩落地「ナギ」が風景に迫力を添える

鳥越峠を過ぎると、再び緩やかな稜線歩きとなります。この区間の見どころは、赤茶けた山肌が露出する「ウバナギ」と呼ばれる崩壊地。穏やかな山容の中で突如現れる荒々しい景観は迫力があり、縦走路にアクセントを加えます。


大判山からは巨大な屏風のような恵那山がそびえる

遠くには富士見台高原が望め、視界が開けるごとに景色の表情が変わるのも魅力です。しばらく進むと「大判山(おおばんやま、1,695m)」に到着。ここまで神坂峠から約1時間40分の行程で、実際には150mほどしか標高を稼いでいません。


パッチワークのように彩られる秋の恵那山

大判山の山頂は絶好の休憩ポイント。目の前にそびえる恵那山の大きな山容が迫り、後半の本格的な登りに向けて一息つくことができるでしょう。

樹林帯の静けさを抜けて、山頂直下の分岐へ向かう後半の登り


雲の先にそびえ立つ、木曽の名峰・御嶽山

大判山を越えると、稜線は一旦樹林帯に包まれます。展望は限られるものの、登山道は整備されており歩きやすい区間です。標高を徐々に上げていくにつれて、木々の間から再び視界が広がり、振り返れば御嶽山の雄大な姿が現れます。


力強い稜線美を描く中央アルプス

さらに横には富士見台高原中央アルプスの山並みも顔を出し、変化に富んだ展望が楽しめます。やがて道は傾斜が上り、根や岩が張り出す急登が続きます。


登り応えのある樹林帯を越えていく終盤戦

息が上がりやすい区間ですが、所々で立ち止まれば素晴らしいパノラマが励ましてくれるでしょう。大判山から2時間ほど歩くと、山頂直下の分岐に到着。ここから山頂まではあと一息です。

祠を越えてたどり着く絶景の展望台 恵那山の山頂へ


樹林帯に覆われた恵那山の最高点。山頂はまた別にある

分岐からは山頂へ直進。樹林に囲まれた恵那山の山頂は広いものの展望はほとんどなく、“地味な百名山”と呼ばれる所以を実感するかもしれません。

しかし、ここで登山は終わりではありません。


南アルプスや中央アルプスを見渡せる絶景パノラマ

山頂にある祠(ほこら)の裏手へ足を延ばすと、小さな展望台が設けられており、そこからは一変して大パノラマが広がります。眼下には伊那谷、正面には標高3,000m級の山々が連なり、天候がよければ遠くに富士山(3,776m)の姿も。


雲海の先に広がる中央アルプスの山並み

眼前に広がる南アルプス中央アルプスの眺めは、まさにアルプスの展望台そのもの。これまでの疲れを忘れさせる、恵那山登山のハイライトです。

神坂峠から気軽に歩けるもうひとつの絶景ルート 富士見台高原


笹原の気持ちの良い道を歩く富士見台高原

神坂峠を起点に、ハイキング感覚で訪れられるのが富士見台高原(ふじみだいこうげん、1,739m)です。笹原が一面に広がる草原地帯で、遮るもののない360度の展望が魅力。天気が良ければ御嶽山や中央アルプス、さらには恵那山の堂々たる姿も望めます。


冬季には樹氷が織りなす幻想的な世界が広がる

アクセスが比較的容易で、神坂峠からは往復2時間程度と手軽に歩けるため、家族連れや登山初心者にも人気のコースです。高原一帯は四季折々の魅力にあふれ、夏は爽やかな風に包まれ、秋は紅葉、冬はスノーシューハイクが楽しめます。

標準コースタイム
神坂峠→(約25分)→萬岳荘→(約25分)→神坂小屋→(約10分)→富士見台高原山頂

阿智セブンサミットのひとつ 霧氷が美しい冬の名山・南沢山


澄み渡る青空に映える霧氷の輝き

冬の恵那山周辺を楽しむなら、南沢山(みなみさわやま、1,567m)がおすすめです。近年は雪山登山の人気スポットとして知られ、恵那山や富士見台高原と並ぶ阿智セブンサミットの一座でもあります。

阿智セブンサミットとは、長野県阿智村にそびえる七つの代表的な山を指し、四季を通してさまざまな登山を楽しめる地域の名山群。

南沢山の登山口は、阿智村の「ふるさと村自然園」にあります。標高をゆるやかに上げながら樹林帯を進むコースで、片道約2時間の歩きやすい道のりです。


スノーモンスター越しに望む雄大な恵那山

冷え込んだ翌日には山頂一帯が霧氷で包まれ、白銀の世界が広がります。眼前には荘厳な恵那山、背後には中央アルプスの峰々。青空と霧氷のコントラストが美しく、南沢山ならではの冬の絶景登山が楽しめます。

標準コースタイム
南沢山登山口→(約1時間20分)→中間点→(約45分)→南沢山山頂

恵那山登山は縦走路と大パノラマが魅せる山旅


コンディションが整えば、遠く富士山の姿も見渡せる

一見、展望に乏しい山と思われがちな恵那山ですが、神坂峠(みさかとうげ)からの登山ルートを歩けばその印象は一変します。

稜線上では御嶽山や中央アルプス、南アルプス、そして条件がそろえば富士山の姿まで望めます。変化に富んだ縦走路と大パノラマは、登る人すべてを魅了するでしょう。

コースはやや長めですが、登山道の整備状況がよく、初心者でも挑戦しやすいコースです。
静かな山歩きと雄大な展望の両方を味わえる神坂峠ルートで、ぜひ恵那山の新たな魅力を感じてみてください。

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木曽駒・空木岳 2025
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。同志社大学文学部を卒業後、商社やメーカーで営業職を経験。2019年より複業でトラベルライターとしての活動を始め、旅の魅力を伝える仕事がライフワークになる。2021年には本業も旅行業界へ本格転身し、国内OTAにて宿泊施設の集客支援に従事。現在は旅行系ベンチャー企業でメディアマネージャーを務める。これまでに執筆した記事は2,000本以上。地方の自然や暮らしをテーマにした発信を続けながら、「旅を通じて人生が豊かになるきっかけ」を届けたいと考えている。登山、自転車旅、温泉巡り、離島旅が趣味で、毎年の北海道旅行を家族の恒例行事にしている。 notehttps://note.com/yuhei_tonosho
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