【乗鞍岳】登山の楽しみは下山後まで!山頂からふもとまで、楽しみ尽くす山旅へ

北アルプスの名峰・乗鞍岳は、登山初心者からベテランまで楽しめる人気の山です。標高2,700mの乗鞍畳平から気軽に歩けるルートは、高山植物が咲き誇る夏や、ダケカンバやナナカマドが色づく秋など、季節ごとに異なる表情を見せてくれます。
下山後には奥飛騨の名湯で疲れを癒し、郷土グルメでスタミナを補給するのも楽しみのひとつ。乗鞍岳登山では、山頂から麓まで、多彩な自然と地域の魅力を存分に味わえます。
乗鞍岳について知ろう

北アルプス登山入門に最適な乗鞍岳・剣ヶ峰
北アルプスの乗鞍岳(のりくらだけ)は、長野県と岐阜県にまたがる標高3,026mの火山で、日本百名山のひとつに数えられます。剣ヶ峰を最高峰とし、主峰を含む23の峰々が連なる「乗鞍連峰」として知られ、四季折々の美しい景観が楽しめます。

乗鞍畳平から高山植物彩る、歩きやすい登山道が続く
標高約2,700mの乗鞍畳平までバスでアクセスできるため、日本百名山の中でも特に登りやすい山として人気があります。乗鞍畳平から山頂までは往復3時間ほどで、初心者でも挑戦しやすいコースが魅力です。登山道では、夏に咲く色とりどりの高山植物や、高山帯を彩るパッチワークのような鮮やかな紅葉など、季節ごとに異なる山岳風情を醸し出します。

まさに天空に浮かぶようなロケーションの権現池
さらに、火山地帯ならではの壮大な地形や、山上には美しい池などの景色が広がり、初心者からベテランまで、多くの登山愛好家を魅了し続けています。また、乗鞍岳は冬のバックカントリースキーの名所としても有名で、春から夏にかけての雪渓滑走も人気です。

バスでアクセスできる日本一標高の高い登山拠点・乗鞍畳平
また、登山拠点である乗鞍畳平には山小屋や売店、トイレが整備されており、登山の拠点としてはもちろん、高山の絶景を楽しむ観光スポットとしても人気があります。
乗鞍岳が登山初心者にも人気の理由

標高3,000m級の山々に囲まれ、隔絶したロケーションの乗鞍畳平
一般的に、標高3,000m級の山に登るには、登山口が高地にあったとしても、1,500m〜2,000mほどの標高差を登るのが普通です。しかし、乗鞍岳の最高峰・剣ヶ峰(標高3,026m)は、登山口となる乗鞍畳平(標高約2,700m)からスタートできるため、標高差は約300m。途中のアップダウンを含めても、累積標高は約400m程度です。

山頂周辺からはダイナミックな北アルプスの山並みをのぞむ
これは、東京都で人気の高尾山(標高599m)の最短ルートの累積標高(約550m)よりも少なく、標高3,000m級の山としては驚くほど登りやすい環境です。このような手軽さで登頂できる高山は、日本では乗鞍岳以外ほとんどありません。
ただし、標高が高いため夏でも冷え込み、空気も平地に比べて薄いため、防寒対策や体調管理は不可欠です。それでも、北アルプス登山の入門として挑戦するには最適な山といえるでしょう。
乗鞍岳へのアクセス
乗鞍岳の登山では、マイカー規制があるためアクセスに工夫が必要です。ここからは、登山拠点である乗鞍畳平へのアクセス方法を、長野県側・岐阜県側のバス利用ルートに分けて紹介します。
長野県側(乗鞍高原〜エコーライン)からのアクセス

登山の最盛期には、何台ものバスが連なることも
長野県松本市側からは、乗鞍高原観光センターを起点に、アルピコ交通のバスが「乗鞍エコーライン」を通って畳平まで運行しています。所要時間はおよそ50分で、こちらも夏季(例年7月〜10月)限定の運行です。
どちらのルートも、夏山シーズンや紅葉シーズンには多くの登山者や観光客で賑わい、混雑することもあるため、事前に時刻表や運行情報を確認しておくのがおすすめです。
岐阜県側(ほおのき平〜スカイライン)からのアクセス

バスから楽しむ山岳道路のドライブも楽しみの一つ
乗鞍岳の登山拠点である乗鞍畳平へは、岐阜県高山市のほおの木平からバスでアクセス可能です。マイカー規制により自家用車の乗り入れはできませんが、駐車場が完備されており、そこからシャトルバスに乗り換えて標高約2,700mの畳平へ向かいます。
岐阜県側からは「乗鞍スカイライン」を経由する濃飛バスが運行しており、朴の木平バスターミナルを出発して約45分で畳平に到着します。運行は夏季限定で、例年5月〜10月頃までの利用となります。
季節で異なる乗鞍岳登山の魅力
乗鞍岳は季節によってまったく異なる表情を見せてくれます。ここでは、特に登山に人気の高い「夏」と「秋」の魅力を、それぞれの見どころとともに紹介します。
7〜8月|お花畑や高山植物が彩る夏の登山

剣ヶ峰登山の前に立ち寄りたい、畳平からすぐのお花畑
7月から8月にかけて、夏の乗鞍岳は一面が高山植物に彩られ、まるで天空の花園のような景色が広がります。心地よい涼風が吹き抜ける中、色とりどりの花を眺めながら散策する時間は格別。特に畳平にある「お花畑」は、木道が整備されているので、登山をしない方でも気軽に高山植物を楽しめるスポットです。

荒々しい火山の斜面を彩る、たくましいコマクサの群生
少し足をのばせば、可愛らしいコマクサが群生する斜面や、岩陰にひっそりと咲くイワツメクサの姿にも出会えます。厳しい環境の中で短い夏を精一杯生きる花々のたくましさには、思わず見入ってしまうほど。

雪渓が残り、風が天然クーラーのように清々しい初夏の乗鞍岳
さらに、夏の乗鞍岳は標高が高いため気温が低く、下界の猛暑を忘れさせてくれる爽やかさも魅力のひとつです。天候が変わりやすいので注意は必要ですが、晴れた日には遠く北アルプスの山々まで見渡せる絶景が待っています。美しい景色と高山植物を同時に楽しめる、ベストシーズンの登山にトライしてみてください。
9〜10月|紅葉が織りなすパッチワークの絶景

赤や黄が織りなす絶景、乗鞍岳の紅葉パッチワーク
9月下旬から10月下旬にかけて、乗鞍岳は秋の訪れと共に色づき、標高ごとに変化する紅葉の美しいグラデーションが楽しめる時期です。標高2,700mの畳平周辺では、夏の終わりとともに高山帯のダケカンバやナナカマドが鮮やかな色合いを見せ始めます。その後、紅葉は徐々に標高の低い乗鞍高原やほおの木平周辺に広がり、山麓一帯を温かな色で包み込んでいきます。

移ろう季節を感じる、バス旅で楽しむ乗鞍岳の秋
特に「乗鞍エコーライン」と「乗鞍スカイライン」沿いの紅葉は見事で、バスの車窓から移りゆく色とりどりの山肌を楽しめるのも魅力。標高が上がるにつれて景色が変化していくので、まるで秋を先取りしていくような感覚を味わえます。

北アルプスや信州の山並みを一望するパノラマが待つ
秋の乗鞍岳は、澄んだ空気のおかげで遠くの山々までくっきりと見渡せるのも特徴。晴れた日には、北アルプスの雄大な峰々と紅葉に染まる山々が織りなす絶景が広がります。夏のにぎやかなお花畑とはひと味違う、閉山前の静かで落ち着いた雰囲気の中、ゆっくりと秋の景色を満喫できるでしょう。
乗鞍岳 下山後の楽しみ方5選
乗鞍岳登山の魅力は、山頂だけにとどまりません。下山後に立ち寄りたい温泉や食事処、さらに足を延ばして楽しめる自然スポットまで、登山後の余韻を存分に楽しむための立ち寄り情報を紹介します。
① 奥飛騨温泉郷で登山の疲れを癒す

乗鞍岳の余韻に浸る、ひらゆの森で贅沢なひと休み
乗鞍岳の楽しみは、登山だけにとどまりません。下山後のご褒美として、奥飛騨温泉郷の湯めぐりを楽しんでみませんか?乗鞍岳山麓には平湯温泉をはじめ、新穂高温泉、福地温泉、栃尾温泉といった個性豊かな湯処が点在し、それぞれ異なる泉質や風情が魅力です。
たとえば、平湯温泉では登山の疲れを癒す硫黄の香り漂う湯を堪能でき、新穂高温泉では北アルプスを望む露天風呂で贅沢な時間を過ごせます。秘湯感漂う福地温泉や、静かな佇まいの栃尾温泉も心を落ち着けるのにぴったりです。

大自然に包まれる極上の湯、荒神の湯
ひらゆの森をはじめとする日帰り温泉施設に加え、地域内の多くの旅館やホテルでも日帰り入浴を楽しむことができます。中には、平湯の湯や荒神の湯など、入浴料寸志で利用できる共同浴場のような施設もあり、気軽に立ち寄れるのも魅力です。
② スタミナ補給にぴったり!国八食堂の鶏ちゃん&鉄板焼き豆腐

濃い味わいが、一日体力を使った身体に染み渡る
登山後に欠かせないのが、美味しい食事ではないでしょうか?特に岐阜県側には、疲れを癒すスタミナ満点のグルメがたくさんあります。中でも、特におすすめしたいのが、ほおのき平から車で約30分の場所にある「国八食堂」です。
地元でも愛される名物食堂では、南飛騨地方の郷土料理である鶏ちゃんを楽しめます。鉄板でジュージューと炒められた濃い味噌味の鶏肉は、ご飯と抜群の相性で、下山後のエネルギー補給にはぴったりの一品です。

ジュワッと広がる旨み!鉄板焼き豆腐の香ばしさがやみつきに
さらに、この店で外せないのが「鉄板焼き豆腐」。特製の油で炒められ、ジュージューと音を立てながら提供されるその豆腐は、濃い味付けがしっかりと染み込み、麻婆豆腐を超えるといっても過言ではないほどのご飯との相性の良さ。香ばしい焦げ目も食欲をそそります。
リーズナブルな価格が魅力的で、思わず追加注文したくなる一品。鶏ちゃんと鉄板焼き豆腐をダブルで味わうのが定番で、ビールやコーラなど、どんなドリンクとも相性抜群。お腹いっぱいに地元の味覚を堪能し、最高の登山旅行を振り返ってみてください。
住所:岐阜県高山市下切町1441-3
電話番号:0577-33-5171
営業時間:11:00~14:40、17:00~20:30(L.O. 19:50)、売り切れ次第終了
定休日:水曜日
③ 信州乗鞍高原温泉 緑山荘で過ごす癒しのひととき

山の幸たっぷり!乗鞍高原温泉 緑山荘の心温まる夕食
乗鞍岳での登山を満喫し、自然に囲まれた静かなひとときを過ごしたい方には、長野県側の乗鞍高原での宿泊がおすすめです。広々とした高原には温泉も湧き、各宿が一軒家のように並び、静かな癒しの時間を過ごせます。
中でも特におすすめなのが「信州乗鞍高原温泉 緑山荘」。こちらでは、異なる魅力を持つ2つの源泉掛け流し露天風呂を貸切で楽しめ、プライベートな温泉体験が堪能できます。料理には、地元の新鮮な食材をふんだんに使用した郷土料理が並び、春は山菜、夏は高原野菜、秋はキノコと、旬の味わいが楽しめます。

景色の移ろいとともに温泉を楽しめる屋根つき露天風呂
何度でも利用できる源泉掛け流しの露天風呂は広々とした浴槽で、移りゆく季節の美しさや、清々しい山の空気を感じることができます。宿の入り口からは雄大な乗鞍岳を望むことができ、夕日が沈む時間帯には、茜色の空と山々が織りなすドラマチックな風景を眺められるかもしれません。
登山前の前泊や下山後のゆったりとした宿泊だけでなく、近くの人気観光地・上高地を訪れるのもおすすめです。また、翌日には日本百名山の一つ「焼岳(標高2,455m)」への登山拠点としても便利です。
④ 名瀑をめぐる「三本滝・善五郎の滝・番所大滝」の魅力

乗鞍岳が作り上げた芸術作品のごとき三本滝
登山後の静かな時間に、乗鞍高原の自然美をさらに満喫したいなら「名瀑めぐり」もおすすめです。乗鞍岳のふもとには、個性豊かな3つの滝が点在しており、それぞれ異なる表情で訪れる人を迎えてくれます。
三本滝は、その名の通り3本の滝が1つの滝壺に流れ落ちる珍しい構造。水の流れ方もそれぞれで、豪快に落ちる滝、繊細に糸のように流れる滝など、見比べる楽しさがあります。滝壺のまわりには木道も整備されており、写真撮影にも人気です。

朝の光に包まれ、幻想的に輝く善五郎の滝
善五郎の滝では、滝の上方に雄大な乗鞍岳の姿が重なり、まるで絵画のような風景が広がります。特に朝の時間帯は、滝が朝日に照らされて幻想的な雰囲気に。駐車場から徒歩15分ほどの気軽な散策コースで、観光や登山の前後に立ち寄るのにもぴったりです。

まるで水のベール、岩を伝う壮麗な番所大滝
番所大滝は落差約30メートルの大滝で、力強く流れ落ちる水の勢いに圧倒されます。滝の手前では水が岩を分けて流れ、奥では真っ直ぐに落ちるなど、変化に富んだ景観も魅力のひとつ。展望台からの眺めは迫力満点です。
いずれもアクセスしやすく、自然の造形美を感じながら心を落ち着ける時間を過ごせるスポットです。
⑤ 上高地の絶景を歩く!もうひと足のばして訪れたい名所

澄んだ空気と雄大な風景が迎える上高地
乗鞍岳を訪れたら、ぜひ足を延ばして立ち寄りたいのが日本を代表する山岳リゾート「上高地」です。清らかな梓川と北アルプスの峰々に囲まれた風景は、まさに“自然の芸術”。四季を問わず、多くの登山者や観光客を魅了しています。
上高地は環境保全のため、マイカーでの乗り入れが規制されており、長野県側の沢渡温泉や岐阜県側の平湯温泉からバスやタクシーを利用してアクセスします。自然と共存したこのアクセス方式も、上高地の魅力のひとつです。

自然が映し出す一枚の絵、北アルプスの水鏡
代表的なスポット「河童橋」は、梓川の清流と穂高連峰を背景にした絶景ポイント。作家・芥川龍之介が小説『河童』で登場させたことでも知られ、多くの人が記念撮影に訪れます。
さらに奥に進むと、「東電取水口」からは大正池と穂高連峰が一直線に重なって見える壮大なパノラマが広がります。山の静けさ、水面に映る空や山々の美しさは、心に残る特別な体験となるでしょう。
登山で心地よく疲れた身体を、風景と静寂が癒してくれる——そんな時間を求めて、上高地まで足を運んでみてはいかがでしょうか。
乗鞍岳登山で、忘れられない山旅を

雲の上の特別な時間、乗鞍岳で最高の思い出を
北アルプス・乗鞍岳は、雄大な景色や豊かな自然はもちろん、登山後の楽しみも満載の山旅を叶えてくれます。絶景を満喫した後は、奥飛騨温泉郷で心身を癒し、地元の名物グルメを味わうことで、旅の余韻を存分に楽しめるでしょう。
登山初心者も気軽に挑戦できる環境が整っているため、高山登山の第一歩にも最適。乗鞍岳を訪れれば、山の魅力にどっぷりと浸かる特別な時間が待っています。
取材・撮影・文章:アウトドアライター土庄雄平

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