平治岳登山ガイド ミヤマキリシマ咲く初夏の定番ルート
九州の山々へ、初夏の訪れを告げるのが「ミヤマキリシマ」です。山肌を一面に染める鮮やかなピンクと、瑞々しい新緑が織りなす風景は、この時期ならではの絶景。
なかでも「平治岳(ひいじだけ、標高1,643m)」は、九州屈指のミヤマキリシマの名所として知られ、シーズンの5月下旬〜6月中旬には全国から多くの登山愛好家が訪れます。
今回は長者原から坊ガツルを経て山頂を目指す定番ルートを中心に、あわせて歩きたい周辺の名峰や下山後の楽しみ方までご紹介します。
目次
平治岳登山の魅力 ミヤマキリシマと坊ガツルの絶景

坊ガツルから見上げる、雄大な「くじゅう連山」
大分県と熊本県の県境に広がる「くじゅう連山」は、中岳(標高1,791m)を最高峰とする九州本土最高峰の山々。火山活動によって生まれたダイナミックな地形と、ミヤマキリシマや紅葉など四季折々の景観で知られ、多くの登山愛好家を魅了しています。
平治岳登山の起点 長者原へのアクセス

やまなみハイウェイに位置する、くじゅう連山の玄関口・長者原
主要な登山口となるのが「長者原(ちょうじゃばる)」です。くじゅう連山のほぼ中央に位置し、平治岳や久住山(くじゅうさん、標高1,786m)、三俣山(みまたやま、標高1,745m)など多彩なルートの起点として親しまれています。九州横断自動車道の九重ICから車で約40分、絶景ドライブで人気のやまなみハイウェイ沿いにあり、福岡市内や熊本市内から約2時間と、九州各地からアクセスしやすいのも魅力です。

豊後中村駅や別府方面からもアクセス可能
公共交通機関を利用する場合は、JR九州の豊後中村駅から路線バスで長者原へ向かうことができます。別府方面からのアクセスもありますが、運行区間や本数は事前に確認しておくと安心です。登山口には約450台を収容できる無料駐車場のほか、長者原ビジターセンターも併設されています。設備が充実しており、初めてくじゅう連山を訪れる人でも安心して利用できる、九州を代表する登山の玄関口です。
平治岳登山コース 長者原から雨ヶ池越・坊ガツル・大戸越を経て山頂へ
平治岳登山の定番ルートは、長者原から雨ヶ池越、坊ガツル、大戸越を経て山頂を目指すコースです。湿原の木道、樹林帯、広大な草原、そしてミヤマキリシマが咲く山頂へと、風景が次々に変わっていくのが魅力。ここからは、平治岳山頂までの流れを順にたどります。
長者原→(約1時間30分)→雨ヶ池越→(約45分)→坊ガツル→(約1時間)→大戸越→(約40分)→平治岳
長者原登山口を出発 木道と樹林帯を歩いて雨ヶ池越へ

湿原から樹林帯、そして火山地形へと進んでいく
「長者原登山口」を出発すると、まずは湿原の中に延びる木道をゆったりと歩きます。視界の先には荒々しい山容の三俣山や、噴気を上げる硫黄山(いおうざん)がそびえ立ち、くじゅう連山ならではの雄大な景色が広がります。足元には植物が彩りを添え、標高を上げる前から高原歩きを満喫できます。

瑞々しい緑に包まれた、情緒あふれる前半の登山道
木道を抜けると、コースは一転して苔むした森の中へ。しっとりとした空気に包まれ、新緑の季節にはやわらかな木漏れ日が差し込みます。鳥のさえずりを聞きながら歩いていると、日常の喧騒を忘れさせてくれるような静かな時間が流れます。

雨ヶ池の周辺を鮮やかなミヤマキリシマの花が彩る
登山口から約1時間半、「雨ヶ池」へ到着すると、くじゅう連山の懐へと入り込んだことを実感させてくれるでしょう。初夏にはミヤマキリシマが咲き始め、足元や斜面を淡いピンク色に染め上げます。ここまで来ると、この先に待つミヤマキリシマの絶景への期待がいっそう高まります。
雨ヶ池越を越えて 坊ガツルの広大な湿原へ下る

まるで天空の草原。峰々に囲まれた坊ガツルへ
雨ヶ池を後にすると、登山道は再び樹林帯へと入り、緩やかなアップダウンを繰り返しながら標高を下げていきます。やがて視界が一気に開けると、目の前に広がるのは広大な湿原「坊ガツル」。周囲を三俣山、北大船山(きたたいせんざん、標高1,706m)、大船山(たいせんざん、標高1,786m)、平治岳といった名峰に囲まれたその景色は、まるで山々に抱かれた“天空の草原”のようです。

緑の草原を渡る風を受けて、開放感あふれる道を歩く
一面に緑が広がる開放的な景観へと歩みを進めれば、「山の中にこんな場所があったのか」と驚かされるはず。ラムサール条約にも登録されている貴重な湿原でもあり、くじゅう連山を代表する絶景スポットのひとつです。

法華院温泉山荘や坊ガツルキャンプ場を拠点に1泊2日もおすすめ
坊ガツルには、九州で最も標高の高い場所に湧く温泉を楽しめる「法華院温泉山荘」や、開放感あふれる「坊ガツルキャンプ場」があります。今回は日帰りのルートでご紹介していますが、ここを拠点に1泊2日でくじゅう連山を巡れば、ゆったりと山の時間を満喫できます。山あいで迎える夕焼けや朝焼けは、日帰りでは味わえない格別のひとときです。
大戸越へ登り返し ミヤマキリシマ咲く平治岳山頂へ

振り返れば、くじゅう連山の主峰群を一望
坊ガツルでひと休みした後は、平治岳へ向かって歩みを進めます。緑の草原を横切り、樹林帯をじわじわと登っていくと、大船山と平治岳の鞍部に位置する「大戸越(うどんこし)」に到着。ここから先はいよいよ本格的な登りが始まります。岩混じりの急登が続きますが、振り返れば坊ガツルの大パノラマが広がり、疲れを忘れさせてくれます。

平治岳の山頂から広がるミヤマキリシマの絨毯に感動
急坂を登りきった先に待っているのは、平治岳を埋め尽くすミヤマキリシマの大群落。6月上旬から中旬にかけて、山頂一帯は鮮やかなピンク色に染まり、日本屈指と称される花の絶景が広がります。

山肌一面がミヤマキリシマのピンク色に染まる平治岳
新緑の稜線と鮮やかなミヤマキリシマのコントラスト、頬をなでる爽やかな風、そして360度に広がる大展望。そのすべてが織りなす景色は、平治岳が「九州の初夏を象徴する名山」と称される理由を実感させてくれます。山頂からはくじゅう連山の主峰群を一望でき、その壮大なパノラマもまた圧巻です。
平治岳登山とあわせて歩きたい 北大船山・大船山・立中山
平治岳の絶景を満喫したあと、体力や時間に余裕があれば、坊ガツルを囲む周辺の山々にも足を延ばせます。ミヤマキリシマや火山地形、くじゅう連山の大展望など、それぞれに異なる魅力があり、平治岳登山と組み合わせることで山旅の充実感がさらに増していきます。
北大船山 知る人ぞ知るミヤマキリシマの名所

パッチワークのようにミヤマキリシマが彩る北大船山
平治岳の絶景を満喫したあと、体力に余裕があればぜひ足を延ばしたいのが「北大船山(きたたいせんざん、標高1,706m)」です。大戸越から段原(だんばる)方面へ登り返し、約1時間で到着します。やや距離は伸びますが、その先には平治岳とはまた異なる見事な景色が待ち受けます。

火山地形を彩るミヤマキリシマを愛でながら稜線を進む
この山の見どころは、山頂直下に広がるミヤマキリシマの大群落。火口跡にたたえる御池と、斜面を埋め尽くす鮮やかなピンクの花々が織りなす風景は、まるで一枚の絵画のようです。平治岳ほどの知名度はないものの、花の美しさと景観のスケールは引けを取りません。

道中から双耳峰を呈す由布岳を一望
道中からは坊ガツルや由布岳(ゆふだけ、標高1,583m)、さらに遠くには阿蘇山の山並みまで見渡せます。人も比較的少なく、静かな山旅を楽しみたい方におすすめの一座です。
大戸越→(約1時間)→北大船山
大船山 阿蘇まで見渡す大展望の名峰へ

ミヤマキリシマ越しに眺める大船山の山容
北大船山から稜線をたどると、やがて大船山に到着します。標高1,786mを誇る「大船山(たいせんざん)」は、くじゅう連山を代表する人気の高い山のひとつ。堂々とした山容と、山頂からの圧倒的な展望で多くの登山愛好家を魅了しています。

山頂からくじゅう連山の主峰群をダイナミックに一望
山頂に立てば、久住山や中岳、三俣山をはじめとするくじゅう連山の主峰群を一望。空気の澄んだ日には、阿蘇山や祖母山方面まで見渡せ、九州の山々が織りなす壮大なパノラマが広がります。

澄んだ青空と鮮やかな緑が映える、爽やかな初夏
秋の紅葉の名所として広く知られていますが、初夏には鮮やかな新緑に包まれ、清々しい山歩きを楽しめるのも魅力。くじゅう連山のスケールの大きさを存分に味わいたい方に、ぜひおすすめしたい名峰です。
北大船山→(約5分)→段原→(約25分)→大船山
- 大分県
- 1,786m
- 三百名山
立中山 ミヤマキリシマの花畑を歩ける穴場の山

坊ガツルからもアクセスしやすい、ミヤマキリシマの隠れ名山
「立中山(たっちゅうざん、標高1,465m)」は、坊ガツルから比較的短時間で登れるにもかかわらず、見事なミヤマキリシマを楽しめる穴場の山です。

ミヤマキリシマの花畑の中を進む美しい登山道
山頂付近では、登山道の両側を埋め尽くすようにミヤマキリシマが咲き誇り、花のトンネルを歩いているような感覚になります。正面には平治岳や大船山が迫り、くじゅう連山の山並みを間近に眺められるのも魅力です。

山並みをバックに、色鮮やかなミヤマキリシマを愛でる
知名度はそれほど高くありませんが、花の密度と展望の素晴らしさは圧巻。平治岳とあわせて訪れれば、くじゅう連山のミヤマキリシマを満喫できる山行になるでしょう。
坊ガツル→(約45分)→鉾立峠→(約20分)→立中山
下山後に立ち寄りたい 筋湯温泉とやまなみハイウェイ
平治岳登山のあとは、温泉で汗を流したり、高原の景色を眺めながら帰路についたりする時間まで含めて楽しみたいところです。長者原周辺には、登山後に立ち寄りやすい温泉地やドライブルートがそろっており、くじゅうの自然の余韻をそのまま味わえます。
筋湯温泉で疲れた体を癒やす

筋湯温泉で一度は立ち寄りたい「うたせ大浴場」
登山後に立ち寄りたいのが、長者原から車で約10分の場所にある筋湯温泉です。標高1,000mの高原に広がる静かな温泉地で、古くから湯治場として親しまれてきました。
名物は、幾つもの打たせ湯が並ぶ「うたせ大浴場」。肩や背中に落ちるお湯の刺激が心地よく、長時間歩いた体をじんわりとほぐしてくれます。

宿のクオリティの高さも、このエリアの楽しみの一つ
温泉街には趣ある旅館が点在し、豊後牛や地元の山の幸を活かした料理を楽しめる宿も充実しています。登山の疲れを癒やしながら、くじゅうの自然の恵みを味わえる、山旅の締めくくりにふさわしい温泉地です。
やまなみハイウェイで絶景ドライブを楽しむ

阿蘇へとつながっていく絶景ドライブルートもぜひ走ろう
時間に余裕があれば、九州を代表するドライブロード「やまなみハイウェイ」を走ってみましょう。由布岳、くじゅう連山、阿蘇の外輪山など、雄大な景色が次々に現れます。

やまなみハイウェイのハイライトの一つ「長者原」
なかでも長者原周辺は、広々とした草原と山並みが織りなす開放感あふれるエリア。車窓に広がる高原風景は、登山の余韻をより一層深めてくれます。
途中には牧ノ戸峠や瀬の本高原などの展望スポットも点在。山を歩いたあとも、九州ならではのスケールの大きな自然を存分に満喫できます。
九州の山旅を広げる 阿蘇山・祖母山
せっかく九州まで足を運んだなら、平治岳登山とあわせて、ほかの日本百名山にも目を向けたくなります。くじゅう連山の周辺には、火山地形の迫力を味わえる山や、深い森に包まれた山など、個性の異なる名峰が点在しています。
阿蘇山 世界有数のカルデラを歩く火山の名峰

荒々しい火山地形を進んでいく日本百名山の一つ「阿蘇岳」
せっかく九州まで足を運んだなら、くじゅう連山とあわせて他の日本百名山にも登ってみるのがおすすめです。車でアクセスしやすい場所に、個性豊かな名峰が控えています。
まず訪れたいのが「阿蘇山(あそざん、標高1,592m)」です。世界有数の巨大カルデラを有し、草原の中を歩きながらダイナミックな火山景観を楽しめます。中岳や高岳からは、荒々しい噴火口や広大な阿蘇の景色を一望でき、くじゅう連山とはひと味違うスケールの大きな登山を味わえます。
祖母山 深い森に包まれた日本百名山へ

九州の山の奥深さを教えてくれる日本百名山の一つ「祖母山」
さらに、本格的な登山を楽しみたい方には「祖母山(そぼさん、標高1,756m)」もおすすめです。深い森に包まれた静かな山で、山頂からはくじゅう連山や阿蘇の山並みを見渡せます。九州の奥深い自然を感じられる、日本百名山らしい風格を備えた一座です。
平治岳登山まとめ 初夏のくじゅうで花と展望を味わう山旅

一度は登りたいミヤマキリシマに彩られる初夏の平治岳
「平治岳」は、山頂一帯を埋め尽くすミヤマキリシマの大群落と、くじゅう連山の雄大なパノラマを同時に楽しめる、九州屈指の花の名山です。道中では坊ガツルの広大な湿原や、山々に囲まれた静かな山歩きを味わえ、くじゅう連山ならではの見どころ豊富な自然を存分に満喫できます。

山麓まで含めて、九州の山を満喫する旅へ
下山後は筋湯温泉で汗を流し、やまなみハイウェイの絶景ドライブを楽しむのもおすすめ。時間に余裕があれば阿蘇山や祖母山へ足を延ばし、九州の多彩な山の魅力に触れるのも良いでしょう。6月初旬〜中旬、ピンクと新緑が織りなす感動の風景に出会いに出かけてみませんか。

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