八ヶ岳百名山登山ガイド 4座の名峰と魅力を徹底解説

八ヶ岳連峰は長野県と山梨県にまたがる山塊で、南北に個性的な峰々が連なります。日本百名山として選ばれているのは、主峰の赤岳、北端の蓼科山、さらに周辺の美ヶ原と霧ヶ峰の4座です。赤岳は岩稜を伴う本格的な登山が魅力で、蓼科山は端正な円錐形の山容から「諏訪富士」とも呼ばれます。一方、美ヶ原や霧ヶ峰は高原や湿原の景観を楽しめ、ハイキング感覚で歩けるのが特徴です。
この記事では、標高や登山シーズン、難易度の目安に加え、山名の由来やアクセス、駐車場情報もまとめました。登山経験に応じて選べる4つの名峰を紹介しますので、山旅の計画にぜひ役立ててください。
百名山とは?
「日本百名山」とは、作家・深田久弥氏が著書『日本百名山』で選定した、日本を代表する100座の山々のことです。標高の高さだけでなく、「品格・歴史・個性」という基準で選ばれており、それぞれが地理的・文化的な意味を持つ名峰として知られています。
八ヶ岳の百名山一覧

八ヶ岳連峰には日本百名山に選ばれた山が4座あります。主峰の赤岳は岩稜歩きが魅力の本格的な登山の舞台、蓼科山は「諏訪富士」と呼ばれる端正な円錐形の名峰です。一方、美ヶ原や霧ヶ峰は草原や湿原の広がる穏やかな地形で、ハイキング気分で楽しめるのが特徴です。赤岳から気軽な高原歩きまで、多彩な魅力が揃っているのが八ヶ岳の百名山ならではの魅力です。
※記事中の山名と番号は、深田久弥著『日本百名山』で紹介されている順番とは異なる場合があります。
83.赤岳 / あかだけ
84.蓼科山 / たてしなやま
85.美ヶ原(王ヶ頭) / うつくしがはら(おうがとう)
86.霧ヶ峰(車山) / きりがみね(くるまやま)
赤岳|2,899m|中級〜上級

八ヶ岳連峰の最高峰であり、堂々とした山容を誇る赤岳は、南北に2つのピークを持つのが特徴。南峰には三角点と赤岳神社が祀られ、北峰には赤岳頂上山荘が建ち、信仰と登山の双方の拠点として多くの登山者を迎えています。主稜線を中心に県界尾根や真教寺尾根といった大きな尾根が派生し、周囲の峰々と結ばれることで縦走の要にもなっており、八ヶ岳の中心的存在といえるでしょう。
登山ルートは多彩で、清里側からの真教寺尾根や美濃戸口からの文三郎尾根など、経験や体力に応じて選べます。岩場や急登を含むため中級以上向けですが、行程上には山小屋が豊富に整備されており、宿泊を交えて計画すれば安心感があります。山頂からは富士山や南アルプス、北アルプスまでを一望でき、荘厳な眺望に心を奪われます。信仰と自然美が融合した赤岳は、挑戦しがいのある名峰として多くの登山者を惹きつけ続けています。
■登山シーズン:7月~10月
■アクセス:中央自動車道・諏訪南ICから約10km
■駐車場:やまのこ村か赤岳山荘の有料駐車場を利用。美濃戸山荘にも宿泊者専用駐車場あり
蓼科山|2,531m|中級

八ヶ岳連峰の北端に位置し、円錐形の美しい山容から「諏訪富士」とも呼ばれる名峰です。山頂は広く平坦で一面に岩が積み重なり、濃霧に包まれると方向感覚を失うほどの独特な雰囲気があります。天気に恵まれれば360度の展望が広がり、眼下には諏訪湖や北信の山々、遠く槍・穂高や浅間山までを望むことができます。
代表的な七合目登山口からのルートはよく整備されており、標高差も比較的少ないため、計画を立てやすいのが魅力。山頂には蓼科山頂ヒュッテが建ち、休憩や宿泊も可能なため安心感があります。森林限界を越えるとゴツゴツとした岩場が続き、変化に富んだ登山を楽しめるのも特徴。古くから詩歌に詠まれてきた名山であり、信仰や文化の側面も感じられる蓼科山。穏やかな森歩きから雄大な展望まで、幅広い魅力を味わえる一座です。
■登山シーズン:7月~10月
■名前の由来:古くは立科山と書かれ、「タテシナ」の由来は不明。別称は諏訪富士、飯盛山、高井山。
■アクセス:中央自動車道・諏訪ICから国道152号、ビーナスライン経由で約25km
■駐車場:登山口近くに無料駐車場あり(約100台)
美ヶ原(王ヶ頭)|2,034m|初級

松本市の東に広がる美ヶ原は、標高2,000mを超える広大な高原台地で、北アルプスや浅間山、八ヶ岳までを一望する大展望が魅力。最高点の王ヶ頭には電波塔が建ち、広々とした草原を歩けば視界いっぱいに山並みが広がります。高原一帯は牧場としても利用され、牛の放牧風景と草原の景観が調和したのどかな雰囲気に包まれています。
観光施設も整備されており、美ヶ原高原美術館では屋外展示を楽しめ、山歩きと文化体験を合わせられるのも特色。ハイキングコースは起伏が少なく、家族連れや登山初心者でも安心して歩けます。特に夏は高山植物が咲き、秋には草原が黄金色に染まり、四季折々に表情を変える景観が広がります。アクセスも比較的容易で、山本小屋や王ヶ頭ホテルを拠点にすれば、星空観賞や朝焼けの絶景も楽しめます。観光と登山の両面で魅力を味わえる、気軽で開放的な高原です。
■登山シーズン:5月~11月
■名前の由来:もとは「美ヶ原」という地名はなく、観光開発に伴い名付けられたとされる。開拓の中心人物は山本小屋の創設者・山本俊一。
■アクセス:中央自動車道・岡谷ICから国道142号、ビーナスライン経由で約1時間(12~4月は冬季閉鎖)
■駐車場:山本小屋ふる里館に無料駐車場あり(約100台)
霧ヶ峰(車山)|1,925m|中級

車山を最高峰とし、大笹峰や男女倉山、鷲ヶ峰などに囲まれた霧ヶ峰は、広大な草原地帯と八島ヶ原湿原をはじめとする高層湿原群が特徴の高原台地。緩やかな地形が多く歩きやすいため、初心者から家族連れまで気軽に楽しめる人気のエリアとなっています。車山山頂には気象レーダー観測所があり、そこからは八ヶ岳や北アルプス、遠く富士山までを一望できる大展望が広がります。
夏にはニッコウキスゲをはじめとする高原植物が一斉に咲き誇り、草原が黄色に染まる光景は圧巻。秋には一面のススキが風になびき、季節ごとに異なる表情を見せます。ビーナスラインが高原を横断しているためアクセスが容易で、山歩きとドライブを組み合わせた観光も可能。湿原散策路や展望地を巡れば、手軽ながらも高原の自然を満喫できるでしょう。四季折々の草花と大展望を楽しめる、親しみやすい高原の名峰です。
■登山シーズン:5月~11月
■名前の由来:名前通り、霧が多いことに由来する。
■アクセス:中央自動車道・諏訪ICからビーナスライン経由で約28km
■駐車場:車山肩に無料駐車場あり(約160台)
八ヶ岳の百名山で四季の自然と出会おう

八ヶ岳の百名山は、四季ごとに多彩な景観を楽しめるのが魅力です。初夏にはツクモグサやコマクサといった高山植物が咲き誇り、稜線は華やかな雰囲気に包まれます。盛夏には緑の森と澄んだ空が広がり、秋には赤岳や蓼科山の稜線が鮮やかな紅葉に彩られます。冬から春にかけては雪形や霧氷が美しく、厳しくも幻想的な姿を見せます。
登山ルートも多彩で、日帰りで手軽に楽しめる蓼科山や天狗岳、雄大な縦走を味わえる赤岳や硫黄岳など、目的や体力に応じて選べます。豊かな自然と変化に富んだルートが揃っているため、経験を積んだ登山者から初心者まで幅広く楽しめるのも八ヶ岳の魅力です。
ただし、気象の急変や林道規制が登山計画を左右するため、事前の情報収集は欠かせません。紙の登山地図とGPSアプリを併用し、安全で楽しい登山を心がけましょう。登山地図ナビアプリ「山と高原地図ホーダイ」を使えば、コースタイムや危険箇所をオフラインで確認でき、計画から現地での判断まで頼りになります。

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