羅臼岳の登山ルートとアクセスを詳しく解説 知床の大自然を歩く山旅へ

深い森を抜け、海を背にしながら空へと近づいていく。そんな特別な体験を味わえるのが、知床の最高峰にして日本百名山のひとつ「羅臼岳」です。知床の雄大な自然に抱かれながら歩を進めるごとに、目の前の景色は大きく変わり、心も体も次第に自然と一体になっていくような時間が待っています。

羅臼岳は、季節ごとに異なる表情を見せる山。残雪が残る春、緑が深まる初夏、花が咲き誇る夏、そして色づく秋と、それぞれの季節にしか見られない景観が登山者を迎えてくれます。

本記事では、実際の登山体験をもとに、羅臼岳登山の魅力や知床での登山体験の楽しみ方をわかりやすくご紹介します。

2025年6月30日 更新

羅臼岳の魅力とは?世界自然遺産・知床を代表する絶景の名峰


雄大な展望を誇る羅臼岳

知床半島の屋根を形成する知床連山。その最高峰が標高1,661mの「羅臼岳(らうすだけ)」です。オホーツク海と根室海峡を両側に従え、世界自然遺産・知床を象徴する山として知られています。山と海が切れ目なく続く原生の自然は、日本とは思えないスケールを誇り、登山者を魅了してやみません。


一面に広がる海と、知床連山を眺める羅臼岳山頂

主な登山口はウトロ側の岩尾別温泉と、羅臼側の羅臼温泉(熊の湯)。前者はアクセスしやすく、登山道が整備されているため人気のルート。後者はよりワイルドで静寂な森を味わえる、上級者向けの道です。どちらを選んでも、山と海と雲海が織りなす劇的な絶景と、知床の厳かな原生の自然に抱かれる道のりが待っています。

羅臼岳の登山口へのアクセス情報


知床横断道路から望む日本百名山のひとつ「羅臼岳」

羅臼岳登山の主な出発点は、ウトロ側の「岩尾別温泉登山口」と羅臼側の「羅臼温泉登山口」の2つ。いずれも公共交通の便が限られるため、事前のアクセス確認が重要です。

岩尾別温泉登山口(岩尾別コース)

もっとも一般的な登山口で、JR知床斜里駅から車で約50分。女満別空港や中標津空港からもアクセス可能です。夏季は路線バスも運行されますが本数が少ないため、レンタカー利用が現実的。登山口は「ホテル地の崖」や「木下小屋」が目印で、近くに駐車場もあります。前泊するならウトロ市街の宿泊施設が便利です。

羅臼温泉登山口(羅臼温泉コース)

よりワイルドな自然を楽しめる上級者向けルート。中標津空港から車で約1時間30分、羅臼市街からは約10分。近くには「羅臼温泉野営場」もあり、テント泊で早朝出発する人も。公共交通はほとんど使えないため、レンタカーでの移動が前提となります。

岩尾別コースから登る羅臼岳の歩き方と見どころ


岩尾別コースと羅臼温泉コースが合流する羅臼平

ウトロ側の岩尾別温泉から登る「岩尾別コース」は、初心者にも人気の羅臼岳登山コースであり、知床登山の王道ルート。登山口は「木下小屋」が目印で、「ホテル地の崖」を過ぎてすぐの場所にあります。登山道は全長約15km、所要時間は往復6~8時間ほど。序盤は緑の樹林帯を抜け、極楽平、大沢入口、羅臼平と進むにつれて徐々に視界が開け、山頂では360度の大パノラマが広がります。


知床の人気観光地である知床五湖を見下ろすポイントも

途中にはオホーツク海を一望できる展望所や、冷たい湧水が楽しめる「弥三吉水」など、癒しのスポットも点在。涼しく歩きやすい気候の日が多く、初心者にも登りやすい一方で、ヒグマの痕跡が残るなど知床ならではの緊張感も味わえます。

知床の森を抜ける癒しの羅臼岳登山 岩尾別コース前半(樹林帯〜極楽平)


岩尾別コースは静かで涼しい山歩きからスタート

岩尾別温泉を出発し、木下小屋で登山届を提出したら、静かな樹林帯歩きが始まります。標高は低めながら、日本の最果ての知床登山ルートらしく、空気は真夏でもひんやり。木漏れ日が美しく、時折現れる熊の爪痕にドキリとしつつも、人の往来が多い夏場は姿を見せないことがほとんどです。しばらくは展望はなく、森の緑と野鳥のさえずりに心を委ねます。


極楽平では迫力ある羅臼岳の姿を目に収める

登山開始から30分ほどでオホーツク海を見渡せる展望所に到着。ここからは海と山の繋がりを感じながらの山歩きがスタートします。さらに進むと「弥三吉水(やさきちみず)」と呼ばれる湧水スポットに到着。手で掬えばひんやりと冷たく、登山の疲れを癒してくれます。そこから少し登ると「極楽平」。ここから羅臼岳の山頂を遠望でき、火山らしいごつごつとした山容に胸が高鳴ります。

雪渓と高山植物を楽しむ羅臼岳登山 山岩尾別コース中盤(大沢入口〜羅臼平)


大沢入口からの登りの区間には知床らしい絶景が待つ

極楽平を越えると、再び緑のトンネルに包まれます。登山道は徐々に勾配を増し、やがて大沢入口に到達。ここからは一気に高度を稼ぐ直登が続きます。時期によっては斜面に雪渓が残り、冷たい風が吹き抜けるのもこのコースの魅力。振り返ればオホーツク海と知床五湖が眼下に広がり、山肌の緑と海の青のコントラストに思わず足を止めてしまうでしょう。


羅臼平を過ぎると、いよいよ高山の世界に来たという情緒が高まる

色とりどりの高山植物が登山道を鮮やかに彩り、歩を進めるたびに息が弾みます。最後の急登を抜ければ、8合目の「羅臼平」へ。羅臼平を越えて振り返れば、遠くには硫黄岳をはじめとする知床連山の峰々が連なり、両側には海が広がる迫力の絶景が目に飛び込んできます。いよいよ山頂への最後の登りに向けて、気合いが入ります。

岩稜を越えて絶景が待つ羅臼岳山頂へ 山岩尾別コース終盤(羅臼平〜羅臼岳山頂)


ごつごつとした岩場で構成される羅臼岳山頂

羅臼平は、羅臼岳と三ッ峰の間に位置する鞍部で、岩尾別温泉コースと羅臼温泉コースの合流点でもあります。ここから山頂まではおよそ1時間。視界をさえぎるもののない稜線を、ハイマツ帯をかき分けながら進むと、いよいよ最後の急登が待ち受けます。


北方領土も見渡す圧巻のパノラマは羅臼岳登山のハイライト

ごつごつとした火山岩のガレ場が続き、登山者同士で声を掛け合い、譲り合いながら一歩一歩慎重に高度を上げていきます。山頂が近づくにつれ、根室海峡に浮かぶ国後島の姿や、雲海が滝のように流れ込む壮大な風景が待っています。羅臼岳登山のハイライトともいえるこの展望は、登山者にとって最高のご褒美となるでしょう。


山頂周辺に群生するチングルマが風になびく

標高を上げるごとに刻々と変わる景色は、どんな疲れも吹き飛ばすご褒美です。途中、足元には可憐なチングルマやイワギキョウの群落が。大自然の逞しさを感じさせてくれます。


オホーツク海と根室海峡、道東の山並みが360度広がる絶景が広がる

山頂に立つと、360度の大パノラマが待っています。オホーツク海、根室海峡、知床連山、遠くに斜里岳…。すべてを見下ろす絶景は、まさに知床最高峰の名にふさわしい眺め。これまでの道のりを思い返し、「また必ずこの頂に帰ってきたい」と心に誓う人も多いはずです。

コースタイム:岩尾別登山口→(約70分)→オホーツク展望→(約50分)→弥三吉水→(約70分)→銀冷水→(約20分)→大沢入口→(約40分)→羅臼平→(約25分)→羅臼温泉コースとの分岐→(約35分)→羅臼岳山頂

上級者向け!手つかずの知床を感じる羅臼温泉コースで羅臼岳登山


距離も長く、野趣あふれる道のりが続く羅臼温泉コース

羅臼側からの「羅臼温泉コース」は、野趣あふれる知床登山を求める人におすすめの、羅臼岳登山の中でも特に玄人向きのルートです。登山口は羅臼温泉野営場のすぐそば。ここにテント泊をして翌朝早朝から登る登山者も多いです。


屏風岩と緑が深い山麓の先に広がるのは国後島

スタート直後から深い樹林帯を進み、ほとんど人とすれ違わない静寂の中を歩きます。渓谷沿いや屏風岩付近の急斜面、笹の覆う狭い道など、道中は変化に富み、スリリングさも魅力です。泊場を越えると一気に視界が開け、振り返れば羅臼の街とオホーツク海、進めば知床連山の連なりや屏風岩が圧巻のスケールで迎えてくれます。


ラストまで体力勝負の上級者向けルート

羅臼平で岩尾別ルートと合流し、ラストは同じ山頂を目指します。より手つかずの世界を肌で感じたいなら、羅臼温泉ルートに挑んでみましょう。ただヒグマとの遭遇率は、岩尾別コースと比べて数段上がるので、熊よけ対策が必須です。

コースタイム:羅臼温泉野営場→(約45分)→一息峠→(約80分)→第一の壁→(約70分)→泊場→(約70分)→屏風岩→(約70分)→岩尾別コースとの分岐→(約35分)→羅臼岳山頂

羅臼岳下山後の楽しみ方と知床の立ち寄りスポット


知床でしか味わえない絶品のじゃがいもカレーも

達成感いっぱいの下山後は、羅臼岳登山で心地よい疲労を感じた体に、知床の大自然と海の幸をたっぷり味わいたいところ。さらに知床五湖のハイキングやオシンコシンの滝など、手軽に大自然を堪能できるスポットも盛りだくさん。下山後の余韻を、知床の大自然で締めくくりましょう。

羅臼岳を登ったあとは、知床グルメを味わおう


知床にきたらウニやイクラが詰まった海鮮丼は外せない

羅臼岳の登山を終えた後は、まず美味しい食事でお腹を満たしましょう。おすすめは、道の駅ウトロ・シリエトクのすぐ近くにある「旅の駅」。地元で獲れた新鮮な魚介をたっぷり使った海鮮丼や刺身定食は、知床の海の恵みを存分に味わえる一品です。一口ごとに広がる海鮮の旨味が、登山の疲れを吹き飛ばしてくれるはず。

旅の駅
住所:北海道斜里郡斜里町ウトロ東151
TEL:0152-24-2910
営業時間:11:00〜14:0/17:00〜19:00(食材切れの場合は早仕舞いの場合あり)
定休日:不定休
アクセス:道の駅うとろ・シリエトクから徒歩5分

ゼラチンのように滑らかで、甘みの強いじゃがいもは絶品

また、知床でしか味わえない「ボンズホーム」のホクホクのジャガイモ料理もぜひ試してみてください。グルメも観光も楽しみたいなら、ウトロに宿泊して、1日は登山、もう1日は観光にあてるプランがおすすめ。天候が不安定な時期でも、予備日を作っておけば安心です。

ボンズホーム
住所:北海道斜里郡斜里町ウトロ東217
TEL:0152-24-2271
営業時間:11:30~16:00
定休日:不定休
アクセス:道の駅うとろ・シリエトクから徒歩6分

羅臼岳登山の余韻を楽しむなら知床五湖のハイキングへ


観光とハイキングを一緒に楽しめる知床五湖

下山後にもう少し自然を楽しみたいなら、知床五湖のハイキングがおすすめです。手軽な高架木道コースから、本格派向けの地上遊歩道まで、レベルに合わせて選べるのが魅力。湖面に映る知床連山と森のコントラストは息をのむ美しさです。

静かな湖畔を歩けば、登山とはまた違った知床の表情に出会えます。季節ごとの草花や動物の気配を感じながら、ゆったりとした時間を過ごしましょう。

知床五湖
住所:北海道斜里郡斜里町知床国立公園内
TEL:0152-24-3323(知床五湖フィールドハウス)
アクセス:知床情報センターの駐車場からバス約15分
公式HPはこちら

羅臼岳登山の帰り道に立ち寄りたい!オシンコシンの滝でリフレッシュ


知床ならではの生命力を感じるオシンコシンの滝

知床半島を代表する名瀑「オシンコシンの滝」は、ウトロから斜里町へ向かう国道沿いにあり、車でも気軽に立ち寄れる絶景スポットです。滝は途中で二股に分かれて流れ落ちる姿が美しく、双美の滝とも呼ばれています。

間近で見ると、豪快な水しぶきと清涼感あふれる空気に包まれ、登山後の疲れを癒してくれること間違いなし。ウトロ観光の締めくくりとして、ぜひ立ち寄ってみてください。

オシンコシンの滝
住所:北海道斜里郡斜里町ウトロ西
アクセス:ウトロ市街から車で約15分、網走市街から車で約1時間15分

羅臼岳に登ってみよう 知床の自然と絶景を体験する登山へ


羅臼岳の山頂から雲海を望む

知床連山の最高峰「羅臼岳」。夏の登山は、原始の自然と雄大な海景を同時に味わえる唯一無二の体験です。ウトロ側の岩尾別ルートは、登りやすく整備された道と展望の良さが魅力。羅臼温泉ルートはより野生に近い大自然を感じたい上級者におすすめです。

どちらを選んでも、山頂からの絶景はきっと一生の思い出に。下山後の温泉やグルメ、五湖ハイキングで心と体を癒せば、知床の大自然を五感で満喫できます。季節を問わず魅力あふれる羅臼岳登山、ぜひ万全の準備で挑戦してみてください。

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