筑波山を日帰り登山で満喫!初心者も安心の御幸ヶ原コースで絶景を楽しむ

関東を代表する山として親しまれてきた筑波山は、「日本百名山」の中で最も標高が低い山(877m)。朝夕に山肌の色が変わることから「紫峰」とも呼ばれ、「西の富士、東の筑波」と並び称されてきました。
ケーブルカーやロープウェイで山頂付近までアクセスできる筑波山は、登山初心者にも歩きやすく、日帰りでも無理なく楽しめるのが魅力です。今回は、人気の御幸ヶ原コースと白雲橋コースを組み合わせた定番ルートをご紹介します。豊かな自然やパワースポットにふれながら、ゆったりと山歩きを楽しんでみませんか。
筑波山とは?初心者にも登りやすい日本百名山の魅力

筑波山は、男体山(標高871m)と女体山(標高877m)のふたつの峰を持つ、関東を代表する日本百名山のひとつです。両峰の間には展望台や茶屋が並ぶ御幸ヶ原があり、眺望と休憩の両方が楽しめるスポットとして親しまれています。
ケーブルカーやロープウェイを使えば、麓から山頂付近まで手軽にアクセスできるのも筑波山の魅力。登山道もよく整備されており、初心者でも無理なく日帰りで山頂を目指せる山として、幅広い層に人気を集めています。
筑波山へのアクセス

筑波山神社
筑波山登山のスタート地点となる「筑波山神社入口」へは、車でも公共交通機関でもアクセスが可能です。登山計画に合わせて、出発方法を事前に確認しておくと安心です。
車でアクセスする場合
筑波山神社の近くには複数の駐車場が整備されており、登山口までスムーズにアクセスできます。神社入口の周辺にある市営・民間の駐車場は、合計で500台以上の収容台数があり、料金は普通車で1日500〜1,000円ほど。週末や紅葉シーズンは混雑が予想されるため、早めの到着がおすすめです。
電車とバスでアクセスする場合
公共交通機関を利用する場合は、つくばエクスプレス「つくば駅(つくばセンター)」が最寄りです。駅前から出ている「筑波山シャトルバス」に乗れば、「筑波山神社入口」まで約40分。バス停から登山口までは徒歩で約10分ほどです。
なお、女体山方面の登山口である「つつじヶ丘」へ向かう場合も同じシャトルバスが利用可能で、所要時間は約50分となります。
筑波山の登山コース紹介 初心者に人気の御幸ヶ原ルート

※国土地理院「地理院地図(電子国土Web)」を元に作成
筑波山登山で定番のルートといえば、御幸ヶ原コースから登り、白雲橋コースで下る周回ルート。山頂に至る2つの峰、男体山と女体山をどちらも踏むことができる、変化に富んだ行程です。
このルートの魅力は、登りやすい整備された登山道と、山頂からの関東平野を一望できる展望。登山道は一部で急登があるものの、総距離や所要時間がコンパクトにまとまっており、登山初心者にも歩きやすい筑波山の定番コースとして親しまれています。女体山山頂から見下ろす絶景や、奇岩が点在する白雲橋コースの下り道は、登ってよかったと思わせてくれるはずです。
おすすめの時期は、新緑が美しい春(4月〜5月)や、紅葉に包まれる秋(11月頃)。特に紅葉シーズンは山全体が彩り豊かになり、多くの登山者で賑わいます。
・上り/御幸ヶ原コース、下り/白雲橋コース
・標高:877m
・比高:約600m
・総歩行時間:上り/約2時間、下り/約1時間30分
筑波山の登山コース情報
※時間はあくまで目安です
筑波山の登山は筑波山神社からスタート

御幸ヶ原コース登山口。手前にはトイレがある
筑波山の登山口は、約3000年の歴史をもつ古社・筑波山神社と、ロープウェイの発着地であるつつじヶ丘の2か所があります。主な登山ルートは、筑波山神社から歩く御幸ヶ原コースと白雲橋コース、つつじヶ丘側から登るおたつ石コースの3つです。
今回は、筑波山神社を起点に、男体山と女体山の中間にある御幸ヶ原を目指す「御幸ヶ原コース」をたどります。
この御幸ヶ原コースは、筑波山登山の中でもやや健脚向けのルートとされ、スタート直後から登りが続きます。ただし、登山道はよく整備されており、要所に休憩スポットも配置されているため、時間に余裕を持ってのんびり登るのがおすすめです。登りきったあとの達成感は格別で、登山らしい手応えを感じたい人にはぴったりの道のりです。
スタートは筑波山神社の境内を左に進んだ先。御幸ヶ原コース登山口の鳥居が登山の第一歩を迎えてくれます。安全祈願を済ませたら、御幸ヶ原までの約2.1kmの登山道へ。横にはケーブルカー宮脇駅へと続く階段がありますが、ここはあえて自分の足で一歩一歩登るのが筑波山登山の醍醐味。四季折々の森の表情や道のりそのものを、全身で味わっていきましょう。

序盤は歩きにくいが周囲の木々は樹種が豊か
登山道に入って少し進むと傾斜が本格的です。御幸ヶ原コースの序盤は、斜度のある道に樹木の根が縦横無尽に張り出し、さらに足元には大小の岩も点在していて、歩きにくさを感じる箇所が続きます。湿った日には滑りやすくなるため、しっかりとした登山靴と慎重な足運びが求められます。
とはいえ、このあたりの森は木々の種類も豊かで、ふと足を止めて見上げると季節の変化を感じられる魅力も。自然と向き合いながら、自分のペースで登れるのが筑波山登山の良さです。中間点付近の休憩所は、時間帯によっては2台のケーブルカーがすれ違う瞬間を目にすることも。体をしっかり休めたら、次はいよいよ御幸ヶ原を目指す後半の道のりへ。森の表情の変化や、この先に待つ景色も楽しみにしながら、歩みを進めていきます。
中盤は杉の巨木が立ち並ぶ神秘的な登山道に

そこかしこに立つ杉の巨木
中間点を過ぎると傾斜がさらに増し、登山道の脇には「落石注意」の看板が点在し、ごつごつとした大岩が増えてくる区間です。足元や頭上には引き続き注意を払いながら進みましょう。
筑波山は樹木の種類が豊富で、標高によって植生の様子が変化していくのも特徴のひとつ。御幸ヶ原まで残り700mほどの地点では、直径1mほどもある杉の巨木が登山道の両側に立ち並び、森の雰囲気が一変します。
なかには登山者の目の前をふさぐように真っ直ぐ伸びる巨木や、2本の幹が長い年月をかけて融合したようなユニークな樹形の杉もあり、自然の力強さを感じられるエリアです。

筑波山を源流とする男女川
さらに標高610m付近、残り500mほどの場所では、右手に巨大な岩が現れます。その向こう側に、筑波山を源とする清流・男女川(みなのがわ)の源流が流れています。
男女川は男体山と女体山のあいだを南へ流れ、やがて桜川に合流する川。その澄んだ流れは古くから詩歌にも詠まれてきました。源流の水は、登山道を静かに横切るように細く流れており、この場所を過ぎれば、御幸ヶ原まであと少し。森の静けさを感じながら、ラストスパートに備えましょう。
最終盤にして最難関の激坂が待つ

最終盤の激坂。長いが階段が整備されており安心
幸ヶ原まで残りわずか。ラストスパートをかけたいところですが、ここから先の登りは、これまで以上に厳しさを増していきます。ゴール手前の急斜面には丸太で組まれた階段が連続し、まさに最後の難関といった様子。体力が削られている終盤だけに、一歩ずつ慎重に登っていきましょう。
焦らず、階段を一段ずつ踏みしめるように登ります。なかなか終わりの見えない階段を登り続けていると、やがて木立の間から差し込む光が強くなり、視界がぱっと開けてきます。到着したのは、筑波山の肩に広がる平坦地・御幸ヶ原です。

レストランや展望台、売店などが並ぶ
御幸ヶ原は茶屋や売店が立ち並ぶにぎやかなエリアで、ケーブルカーで到着した観光客の姿も見られます。眼下には関東平野ののどかな風景が広がり、吹き抜ける風も心地よく感じられるでしょう。
名物の「幸福だんご」は、香ばしいくるみ味噌だれが特徴。自分の足で登ったご褒美に、ほっと一息ついてみてはいかがでしょうか。トイレも2カ所に設置されているため、ここでしっかり休憩をとっておくのがおすすめです。
男体山と女体山の2つの山頂を歩く

御幸ヶ原から見た男体山
御幸ヶ原でひと息ついたら、まずは筑波山登山の前半の締めくくりとして、男体山の山頂を目指しましょう。頂上まではおよそ200m、15分ほどの道のりです。登山道はやや細く、岩場や木の根が張り出している箇所もあるため、すれ違う登山者とは譲り合いながら慎重に進みましょう。

男体山御本殿。伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が祀られている
男体山山頂には、関東平野を見守るように「男体山御本殿」が静かに建っています。標高871mの山頂からは、晴れていれば遠く東京スカイツリーや富士山までも見渡せることがあり、その展望は筑波山登山のハイライトのひとつ。風が通り抜ける開放感ある場所で、登頂の達成感をしっかり味わえます。
男体山から再び御幸ヶ原に戻り、今度は筑波山の最高地点・女体山山頂へ向かいます。ここからの登山道は下山ルートにもつながる道です。女体山まではおよそ500m。緩やかな起伏を進んでいくと、道の左右にカタクリの群生地が現れます。

女体山山頂に向かう途中のカタクリ群生地。群生地はケーブルカー沿線にもある
春先にはこのあたり一帯にカタクリの花が群生し、登山道の左右を紫色に彩ります。筑波山はカタクリの群生地として知られており、自然研究路や山頂付近にかけて、約3万株が群生していると言われています。花の見頃は3月下旬から4月下旬。春に筑波山登山を計画するなら、ぜひこの時期を狙ってみてください。

セキレイ石
道中には、イザナギノミコトとイザナミノミコトに道を教えたセキレイという鳥が止まったというセキレイ石、筑波山名物「ガマの油」を考案した永井兵助が石の前で口上の文句を考えたというガマ石と、パワースポットが点在します。

ガマ石
筑波山はこうした奇岩・巨石の宝庫。女体山からの下山道には、さらに多くの個性的な巨石が待ち受けていますが、その前にまずは山頂へ。女体山の登山道をさらに進むと、やがて視界が開け、岩場の先に山頂が見えてきます。

女体山山頂の御本殿。筑波山は天地開闢の地とされている
女体山山頂には、女体山御本殿がたたずみ、ここが筑波山の最高点・標高877mです。

女体山山頂のビュースポット。岩の先端なので足元注意
岩場の先端に立つと、足元から一気に視界が開け、遠く霞ヶ浦まで見渡せる大パノラマが広がります。

女体山から男体山を望む
女体山の山頂からは、向かいにそびえる男体山を間近に望むことができ、筑波山登山のなかでも特に人気の高いフォトスポットとされています。眼下には、つつじヶ丘から山頂付近へと伸びるロープウェイのゴンドラがゆっくりと行き交い、その眺めが登頂の達成感をより一層引き立ててくれます。
景色を満喫したあとは、女体山からの下山ルートへと進みます。
白雲橋ルートで下山 自然がつくり出した岩の名所をめぐる道

鎖場を含め登山道は細い。足元の悪い箇所もあるので慎重に
女体山の山頂からは、御幸ヶ原を経て「白雲橋ルート」で筑波山神社へと下山します。距離は約2.8km、標準所要時間は95〜100分ですが、序盤には鎖場や切り立った岩場もあり、慎重に進む必要があります。
このルートの魅力は、個性豊かな巨岩や石の名所が点在していること。登りとはまた違う風景が広がり、静かな森のなかで自然の造形美を楽しめます。

奇岩怪石の1つ「出船入船」。航路の安全を守る神を祀っている
空にそびえ立つような大岩で岩の間に入れてしまう「北斗岩」や、入ってくる舟と出て行く船が並んだように見える「出船入船」など、見応えのある大岩が次々と登場し、各所には説明板も設置されているので、落とす心配はほとんどありません。

「弁慶の七戻り」。特徴的な岩の形状は風雨の浸食によるもの
途中には、日本神話に登場する「高天原」や「弁慶の七戻り」など歴史や物語に彩られたスポットもあり、筑波山の信仰の歴史を感じられるのも特徴です。下山路としてだけでなく、見どころ豊富な回遊ルートとして歩く価値のある道です。
終盤は歩きやすい道 白蛇弁天を経て筑波山神社へ

弁慶茶屋跡
「弁慶の七戻り」をくぐり抜けると、すぐに弁慶茶屋跡があり、休憩所になっています。麓から登ってきたおたつ石コースと白雲橋コースの合流点で、下山の場合は筑波山神社へ行くならこのまま白雲橋コース、ロープウェイつつじヶ丘駅へ向かうならおたつ石コースです。
ちなみに、おたつ石コースを下ったあとでも、迎場コースを経由すれば筑波山神社まで戻ることは可能ですが、かなり遠回りになります。
弁慶茶屋跡を過ぎてからの白雲橋コースは、ところどころで急傾斜はあるものの、序盤とは異なり比較的落ち着いて歩ける道が続きます。ただし、登りと下りを通してすでに長時間歩いてきているため、疲れが出やすいタイミング。残り1.7kmほどですが、気を抜かずに歩みを進めましょう。

酒迎場分岐
残り1kmを切ったあたりで、酒迎場分岐に差しかかります。ここは、つつじヶ丘とを結ぶ迎場コースとの分岐点。筑波山登山の終盤にあたるこのあたりは、筑波山神社へと下る道の一部が舗装されており、足元も安定していて歩きやすくなっています。

白雲橋コースの登山口。筑波山神社までは100mほどの位置にある
最後は、こまで歩いてきた道のりに思いを馳せながら、ゴールを目指しましょう。白雲橋登山口の鳥居をくぐれば、筑波山の山旅も無事に終了です。
体力や経験に合わせて楽しめる筑波山の日帰り登山

筑波山神社。境内は山頂を含む約370ヘクタールと広大
筑波山は標高こそ低めながら、山頂からの眺望や神話ゆかりのスポット、変化に富んだ自然景観など、多彩な魅力が詰まった山です。登山ルートも複数あり、行きか帰りのどちらかをケーブルカーやロープウェイにすることで、体力に自信がない方でも無理なく山頂を目指せます。
御幸ヶ原や麓の筑波山神社周辺には飲食店や土産物店も充実しており、登山だけでなく一日を通してゆっくり楽しめるのも、筑波山ならではの魅力です。
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