九州の百名山6座 名峰に登る、火山と森と神話の登山ガイド

九州には、日本百名山に選ばれた山が10座あります。活火山、美しい独立峰、神話や信仰にゆかりのある霊峰など、個性豊かな山々がそろい、登山者を魅了しています。

阿蘇山や霧島山、開聞岳など火山の名峰に加え、屋久島の宮之浦岳や祖母山・傾山など、深い自然に抱かれた山々も特徴的。海に近く温暖な気候のもと、花や高原風景など四季折々の自然が楽しめるのも九州ならではの魅力です。

この記事では、九州の百名山6座をすべて紹介。標高や登山シーズン、難易度、アクセス、山名の由来など、登山前に知っておきたい情報をわかりやすく解説します。登山計画の参考に、ぜひ活用してください。

2025年4月12日 更新

百名山とは?

「日本百名山」とは、作家・深田久弥氏が著書『日本百名山』で選定した、日本を代表する100座の山々のことです。標高の高さだけでなく、「品格・歴史・個性」という基準で選ばれており、それぞれが地理的・文化的な意味を持つ名峰として知られています。

九州の百名山一覧

九州からは全部で6座が選出されており、火山地帯ならではのダイナミックな地形や、神話や信仰に彩られた霊峰など、多様な自然と文化が楽しめるのが魅力です。火口や火口湖、広大な高原、独立峰からの大展望など、九州ならではの個性豊かな山旅が楽しめるのが特徴です。

※本記事で紹介する山名と山の番号は、深田久弥著「日本百名山」で紹介されている山名および順番とは異なります

  

95.くじゅう連山 / くじゅうれんざん
96.祖母山 / そぼさん
97.阿蘇山 / あそさん
98.霧島山 / きりしまやま
99.開聞岳 / かいもんだけ
100.宮之浦岳 / みやのうらだけ

95.くじゅう連山|1,791m|中級

九州の屋根を歩き法華院温泉でリフレッシュ

くじゅう連山は、九州本土の最高峰・中岳(1,791m)を含む火山群で、「九州の屋根」とも呼ばれる一大山岳エリアです。1,700mを超える山が10座、1,000m以上の山も40座を数え、そのスケールは圧巻。一般的には山群全体を「九重」、主峰のひとつである標高1,787mの山頂を「久住山」と呼び分けるのが定着しています。

山々はトロイデ型の休火山が多く、草原に覆われたなだらかな斜面が広がります。森林が少なく開放的な景観が続くため、遠くの山々まで見渡せる眺望の良さも魅力のひとつ。春から初夏にかけては、いたるところにミヤマキリシマの花が咲き誇り、山肌を鮮やかに彩ります。コケモモの群落も多く、いずれも国の天然記念物に指定されています。北には飯田高原、南には久住高原が広がり、火山地形の美しさと広大な自然を五感で楽しめる山域です。

■都道府県:大分県
■登山シーズン:4月~10月
■名前の由来:『古事記』に「筑紫の日向の高千穂の久士布流多気(クジフルタケ)・・・・・・」とあり、『日本書紀』にも「くし触(クシフル)」「くし日(クシヒ)」とある。この「クシフル」から「くじゅう」という名がついたのではないかと推察されている。そして『豊後国風土記』や『万葉集』にも九重山群が登場している。
■アクセス:湯布院ICから長者原まで、県道11号(やまなみハイウェイ)で28km。
■駐車場:長者原に無料駐車場2箇所あり(450台)。牧ノ戸に無料駐車場あり(100台)。

96.祖母山|1,756m|中級~上級

緑深い神秘的な山、広がる展望に驚く

祖母山は、大分県と宮崎県の県境に連なる祖母・傾山山群の一座で、標高1,756m。九州山地の中でもひときわ目を引く、整った三角形の山容が特徴です。かつては「九州で最も高い山」と信じられていた歴史もあり、その存在感は今なお健在です。

山体は、大分県側が急峻で、宮崎県側が比較的なだらかという非対称な地形をしており、登るルートによって異なる表情を見せてくれます。周囲には1,600m級の山々が連なる中で、祖母山はひときわ高く、また神話や伝説とも結びついた信仰の山としても知られています。九州の深い自然と静けさを味わえる、穏やかで凛とした魅力を持つ一座です。

■都道府県:大分県、宮崎県
■登山シーズン:5月~10月
■名前の由来:伝説によると健男霜凝日子(タケオシモコリヒコ)とともに神武天皇の祖母にあたる豊玉姫が祀られたことからこの名が付いたという。
■アクセス:高千穂市街地より国道325号、宮崎県道8号、林道を経由して北谷登山口まで約50分。
■駐車場:北谷登山口に無料駐車場あり。

97.阿蘇山|1,592m|中級

荒涼とした火山の稜線で非日常を体感する山歩き

阿蘇山は、世界最大級のカルデラ地形と、その中央にそびえる火山群によって構成される雄大な火山地帯です。カルデラの周囲はおよそ128km、内径は東西18km、南北24kmにも及び、まさに桁違いのスケール。登山の対象となるのは、このカルデラを囲む外輪山と、中央部に位置する複数の火山群です。

北側を「北外輪山」、南側を「南外輪山」と呼び、中央部には根子岳・高岳・中岳・烏帽子岳・杵島岳の5座が東西に並んでおり、これらを総称して「阿蘇五岳」といいます。特に北外輪山から五岳を眺めると、まるで仏さまが横たわっているような山なみが広がり、「阿蘇の涅槃像」とも称される景観が印象的です。地形、地質、信仰、景観すべてが調和した、日本を代表する活火山の一つです。”

■都道府県:熊本県
■登山シーズン:4月~5月、7月~10月
■名前の由来:阿蘇山は火の山であり「火を噴く山」というアイヌ語のアソオマイが語源と考えられている。また『日本書紀』には、「アソツヒコ」「アソツヒメ」の二神が現われたので「アソ」という地名がおこったとされている。
■アクセス:九州自動車道・熊本ICから国道57号、県道325号、299号、298 号、111号を経由し、阿蘇山上ターミナルまで40km。
■駐車場:阿蘇山上ターミナル近くに有料と無料の合わせて約180台分の駐車場がある。有料駐車場は1日500円。

98.霧島山|1,700m|中級

韓の国(朝鮮半島)まで見渡せることから、その名が付いたといわれる韓国岳

霧島山は、韓国岳をはじめ、神話「天孫降臨」で知られる高千穂峰や新燃岳など、20あまりの火山からなる複合火山群の総称です。火山群は、長径約20km・短径約10kmの楕円形の範囲に広がっており、火山地形の多様性と、数多くの噴火の痕跡が残る貴重な地域でもあります。

明確な火口が15、火口湖が10残されており、それぞれに異なる表情を見せてくれるのも霧島山の魅力。韓国岳からは、晴れた日には桜島や開聞岳、さらには太平洋までを一望する大パノラマが広がり、登山者にとっても人気の高いエリアです。火山活動と自然、そして神話が交錯する霧島山は、九州らしい山旅の魅力を存分に味わえる場所といえるでしょう。

■都道府県:宮崎県、鹿児島県
■登山シーズン:5月~11月
■名前の由来:霧島の名は霧や霧氷の多いことに由来する。韓国岳は山頂からの展望があまりにもよく、韓の国(朝鮮半島)まで見渡せることからこの名が付いたといわれる。「えびの」はこの地域に多いススキが噴気ガスによってエビ色に見えることから「海老野」と呼ばれるようになり、現在では平仮名で表記されるようになった。
■アクセス:九州自動車道・えびのICから霧島バードラインで18km。
■駐車場:えびの高原にあり(有料)。

99.開聞岳|924m|中級

どこから眺めても美しい姿でそびえる 別名「薩摩富士」

薩摩半島の南端にそびえる開聞岳は、標高924mの独立峰で、なだらかに広がる裾野と整った円錐形の山容から「薩摩富士」の愛称で親しまれています。その優美な姿は、海辺に立つ孤高の山として見る者を惹きつけ、九州を代表する秀峰のひとつに数えられています。

かつての噴火活動によって、上部がトロイデ型、基部がコニーデ型という二重式火山の構造を持ち、火山地形としての特徴も豊かです。登山道は一つのみで、山頂に向かうにつれて樹林帯から岩場へと風景が変化していきます。山頂からは東シナ海や指宿の街並み、天気がよければ屋久島まで見渡せる絶景が広がり、海と山が織りなす九州らしい自然美を味わうことができます。

■都道府県:鹿児島県
■登山シーズン:3月~11月
■名前の由来:定かでは無い。錦江湾の入口にあたり、「海の門」であるため「海門岳」と呼ばれていた。
■アクセス:指宿スカイライン・頴娃ICから県道経由で45km。
■駐車場:二合目登山口にあり。

100.宮之浦岳|1,936m|上級

ダイナミックな山岳風景から瑞々しい屋久杉の森へ

宮之浦岳は標高1,936m、九州最高峰にして屋久島の主峰。なだらかで柔らかな山容を持ち、山頂は西峰と東峰の双耳峰を成しています。周囲はヤクシマダケの群落に覆われ、初夏にはシャクナゲやアセビが咲き、山をやさしく彩ります。

山頂からの展望は360度の大パノラマ。天気が良ければ、九州本土の山々はもちろん、屋久島を代表するモッチョム岳や永田岳、黒味岳といった名峰が連なる姿を一望できます。山頂西側には巨岩があり、その奥の岩の隙間には「一品法壽寿大権現」が静かに祀られています。自然と信仰が交錯する静謐な空気に満ちた山で、屋久島の大自然と向き合う荘厳な時間が流れます。

■都道府県:鹿児島県
■登山シーズン:4月~5月、7月~8月、10月~11月
■名前の由来:昔から信仰登山や岳参りの対象となり、山中に木の神・山の神(一品法寿大権現)など小社(石の祠)が多く祀られている。深田久弥の『日本百名山』によると、『延喜式』に出ている益救神社が宮之浦集落にあり、そのお宮から宮之浦の村名が生まれ、その名が山に冠せられたという。

九州の百名山で、火山と森と神話の山旅を楽しもう

九州には、火山の迫力、森の静けさ、神話や信仰の舞台といった、多彩な魅力を持つ山々がそろっています。全国的に知られる阿蘇山や霧島山はもちろん、宮之浦岳や祖母山のような奥深い山々も含め、ひとつひとつの山に個性と物語があります。

百名山という視点から登山を楽しむことで、ただ登るだけではない山旅の楽しさが広がります。火山地形や植物、文化的背景に触れながら歩く時間は、きっと忘れられない体験になるはずです。

四季折々に表情を変える九州の百名山。次の山旅の目的地として、ぜひお気に入りの一座を見つけてみてください。

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