北海道にある日本百名山9座を紹介 難易度・登山時期・山旅の楽しみ方

北海道には、利尻山、羅臼岳、斜里岳、阿寒岳、大雪山、トムラウシ山、十勝岳、幌尻岳、羊蹄山の9座の日本百名山があります。火山がつくる荒々しい景観、海を望む独立峰、原生的な自然が残る山域など、同じ北海道の山でも魅力はさまざまです。

この記事では、北海道にある日本百名山9座の概要と、それぞれの山旅で楽しみたい見どころ、登山後に立ち寄りたい温泉・観光情報を紹介します。

2025年5月8日 更新

北海道にある日本百名山9座

北海道にある日本百名山は、ロープウェイを利用して高山の雰囲気を楽しめる大雪山から、長い行程や十分な経験が求められるトムラウシ山、幌尻岳まで、山ごとに特徴や必要な準備が大きく異なります。

また、利尻山や羅臼岳のように海を望む山、十勝岳や阿寒岳のように火山らしい景観を楽しめる山、羊蹄山のように周辺観光と組み合わせやすい山など、登山だけでなく旅としての楽しみ方もさまざまです。

北海道の日本百名山を計画する際は、山の知名度だけで選ぶのではなく、登山口までのアクセス、行程時間、天候の変化、ヒグマ対策なども含めて確認しておきましょう。自分の経験や体力に合った山を選ぶことで、北海道らしい雄大な山旅をより安心して楽しめます。

① 羅臼岳|らうすだけ
② 斜里岳|しゃりだけ
③ 大雪山(旭岳)|たいせつざん(あさひだけ)
④ 利尻山(利尻富士)|りしりざん(りしりふじ)
⑤ 十勝岳|とかちだけ
⑥ 阿寒岳|あかんだけ
⑦ トムラウシ山|とむらうしやま
⑧ 幌尻岳|ぽろしりだけ
⑨ 羊蹄山(蝦夷富士)|ようていざん(えぞふじ)

※本文で紹介する山の順番は、深田久弥著『日本百名山』に掲載されている順番とは異なります。

北海道にある日本百名山9座の難易度・日帰り可否・登山時期

北海道には、日本百名山に選ばれている山が9座あります。いずれも雄大な自然を楽しめる名峰ですが、登山口までのアクセス、歩行時間、標高差、山域の奥深さは山によって大きく異なります。まずは、難易度の目安や日帰りのしやすさ、登山時期を比較しながら、自分の体力や経験に合った山を選びましょう。

山名 標高 エリア 難易度 日帰り目安 登山時期 特徴
利尻山 1,721m 利尻島 中級〜上級 行程が長め。前泊・後泊を含めると安心 6月下旬〜9月下旬 海に浮かぶ独立峰。山頂からの展望と島旅をあわせて楽しめる
羅臼岳 1,661m 知床半島 中級 日帰り可能。移動を考えると前泊推奨 7月上旬〜9月下旬 知床の原生自然のなかを歩き、オホーツク海の展望も楽しめる
斜里岳 1,547m 道東 中級 日帰り可能。沢沿いの足元に注意 7月上旬〜9月下旬 沢や滝をたどる変化のある登山道が魅力
阿寒岳 1,499m 道東・阿寒 初級〜中級 比較的日帰りで計画しやすい 6月下旬〜10月上旬 火山らしい景観と、阿寒湖周辺の温泉・観光をあわせて楽しめる
大雪山 2,291m 大雪山系 初級〜中級 旭岳ロープウェイ利用で計画しやすい 6月下旬〜9月下旬 北海道最高峰。高山植物や紅葉など、季節ごとの景色が美しい
トムラウシ山 2,141m 大雪山系 上級 日帰りは経験者向け。余裕ある計画が必要 7月上旬〜9月中旬 大雪山の奥深さを感じられる、本格的な山岳ルート
十勝岳 2,077m 十勝連峰 中級 日帰り可能。天候・火山情報の確認が必要 7月上旬〜9月下旬 荒々しい火山地形と、十勝連峰の雄大な展望が魅力
幌尻岳 2,052m 日高山脈 上級 宿泊前提で計画したい 7月上旬〜9月中旬 日高山脈を代表する名峰。渡渉や長い行程への備えが必要
羊蹄山 1,898m ニセコ周辺 中級〜上級 日帰り可能。標高差が大きく体力が必要 6月下旬〜10月上旬 蝦夷富士とも呼ばれる独立峰。山頂部のお鉢めぐりも魅力

難易度や登山時期は、天候、残雪、登山道の状況、選ぶコースによって変わります。実際に計画する際は、最新の登山道情報や天気、火山情報、ヒグマの出没情報などを確認し、無理のない行程を立てましょう。

北海道の日本百名山は登りやすさで選ぶと計画しやすい

北海道の日本百名山は、同じ百名山でも難易度に大きな差があります。ロープウェイや登山口を利用しやすい山もあれば、長い行程や山深いルート、渡渉を伴う山もあります。はじめて北海道の日本百名山を計画する場合は、山の知名度だけで選ばず、歩行時間、標高差、アクセス、宿泊の必要性をあわせて確認することが大切です。

比較的計画しやすい山

阿寒岳や大雪山は、北海道の日本百名山のなかでは比較的計画を立てやすい山です。阿寒岳は火山らしい景観を楽しみながら歩ける山で、阿寒湖周辺の温泉や観光と組み合わせやすいのも魅力です。大雪山は旭岳ロープウェイを利用することで、北海道最高峰の雄大な高山帯にアクセスしやすくなります。

ただし、計画しやすい山であっても、北海道の山では天候の急変や気温差、ヒグマ対策への備えが欠かせません。登山経験が浅い場合は、歩行時間に余裕を持ち、無理なく戻れるコースを選びましょう。

体力と装備を整えて登りたい山

羅臼岳、斜里岳、十勝岳、羊蹄山、利尻山は、日帰りで登れるコースもありますが、体力や装備をしっかり整えて臨みたい山です。羅臼岳は知床の原生自然のなかを歩く山で、ヒグマ対策や天候判断が重要になります。斜里岳は沢沿いの変化に富んだルートが魅力ですが、足元が濡れやすい場所もあるため注意が必要です。

十勝岳は荒々しい火山地形を歩く山で、登山前には火山情報や登山道の状況を確認しておきたい山です。羊蹄山は美しい独立峰ですが、標高差が大きく、山頂までの登りは体力を使います。利尻山は島にそびえる特別感のある山ですが、行程が長いため、前泊・後泊を含めて余裕のある山旅として計画すると安心です。

経験者向けに検討したい山

トムラウシ山と幌尻岳は、北海道の日本百名山のなかでも特に経験者向けの山です。トムラウシ山は大雪山系の奥深さを感じられる名峰ですが、行程が長く、天候判断や体力配分が重要になります。日帰りで計画する場合も、十分な経験と余裕のある行動計画が必要です。

幌尻岳は日高山脈を代表する名峰で、山深いエリアに位置しています。ルートによっては渡渉や山小屋利用を含む計画が必要になり、天候や水量の影響も受けやすい山です。登山経験が浅い人が最初に選ぶ山というより、北海道の山に慣れ、長い行程や変化のある山岳環境に対応できるようになってから検討したい一座です。

① 羅臼岳


北の大地を見守る、羅臼岳の堂々たる姿

知床半島の屋根とも称される羅臼岳は、標高1,661mの活火山で、日本百名山にも選ばれています。世界自然遺産・知床の中に位置し、原生の森と豊かな生態系に抱かれた神秘的な山です。

登山道はウトロ側の岩尾別温泉からのルートが一般的で、登るにつれて森林限界を越え、荒々しい火山岩の稜線が広がります。一方で、羅臼側の熊の湯から登るルートはより人気(ひとけ)が少なく、冒険心をくすぐる壮大なルートです。


山頂から広がる、斜里岳とオホーツク海、雲海の絶景パノラマ

晴れた日には国後島を望む絶景が広がり、達成感もひとしお。高山植物の宝庫でもあり、7月〜8月にかけては多彩な花々が登山道を彩ります。

熊の生息地でもあるため、ヒグマ対策は必須。登山前には地元のビジターセンターなどで最新情報を確認し、安全第一で臨むことが大切です。海から山までひと続きでつながる、手つかずの自然そのものを肌で感じられる、北海道屈指の山岳体験が待っています。

登山道中のハイライト:羅臼平のパノラマ

 
羅臼平の先に続く知床連山。2つの海に抱かれて

羅臼平を越え、羅臼温泉コースとの分岐付近で立ち止まり、シャッターを切りました。兜のような稜線を描く知床連山が連なり、その両側にはオホーツク海と根室海峡がどこまでも広がっています。

山と海とが溶け合うような、知床ならではの風景。圧倒的なスケールに、ただ息を呑むばかりでした。

羅臼岳|らうすだけ
■ おすすめ登山時期:7月上旬~10月上旬
■ 名前の由来:アイヌ語でチャチャ・ヌプリ=親父・山の意。羅臼川源流にある山の意が和人式らしい
■ アクセス:網走から国道244号、344号を経て約90km
■ 駐車場:地の涯宿泊者はホテルの駐車場利用(約30台)。木下小屋宿泊者は駐車場利用(5台)

山麓のおすすめスポット:知床五湖

 
湖面に映る知床連山、静寂の中の絶景

知床連山のふもと、深い原生林に抱かれるように広がる「知床五湖」は、世界自然遺産・知床の魅力を凝縮したような絶景スポット。大小5つの湖が点在し、静かな水面には雄大な山並みや豊かな森の風景が鏡のように映し出されます。

全長約3kmの遊歩道が整備されており、森の香り、鳥たちのさえずり、木々の間から差し込む光など、五感を使って自然と触れ合えるハイキングコースです。標高差はわずか30mと緩やかなコースなので、前日に羅臼岳へ登っていても、無理なく歩くことができます。

知床五湖
■ 住所:北海道斜里郡斜里町知床国立公園内
■ 電話番号:0152-24-3323(知床五湖フィールドハウス)
■ 公式HP:https://www.goko.go.jp/index.html

② 斜里岳


まるで絵画のような趣を放つ名峰・斜里岳

知床連山の南端に位置する斜里岳は、標高1,547mの独立峰で、美しい三角錐のシルエットが特徴的な山です。山麓の清里町から望むその姿は、まるで絵画のように美しく「日本の山の原風景」とでも呼びたくなる存在感があります。

登山ルートは、清里町の「清岳荘」から入山する往復コースが定番。中級者向けの沢登りルートと、初心者でも安全な尾根ルートの2種類があり、体力や経験に応じて選べるのが魅力です。


山頂からは広大なオホーツク海と斜里平野を見下ろす

山頂からはオホーツク海や知床連山を見渡す360度の大パノラマが広がり、果てしなく広がる道東の大地を一望できます。初夏には雪渓と新緑のコントラスト、秋には紅葉が見事で、季節によって異なる表情を楽しめます。

特に沢登りルートは足元に細心の注意を払いながら進む必要があるため、天候や装備には万全を期して登りたい名峰です。

登山道中のハイライト:沢登りコースの後半

 
水音に包まれて、後半は沢の中を心地よく進む

沢登りルートで出会った一景。沢の先に広がるオホーツク海と田園風景が、道東らしい雄大さと穏やかさを映していました。

沢沿いを進むワイルドな道は、後半にかけて傾斜も増し、さながらプチシャワークライミングのような体験に。水しぶきで涼を感じながら、冒険心をくすぐる最高のひとときでした。

斜里岳|しゃりだけ
■ おすすめ登山時期:7月上旬~10月上旬
■ 名前の由来:斜里はアイヌ語でサル=葦の生えた湿原の意。斜里川の源流にあることから由来した山名であろう。アイヌ語ではオンネ・ブプリ=大きな山、年老いた山の意
■ アクセス:女満別から国道39号、334号を経由して約70km
■ 駐車場:清岳荘にあり(40 台)

山麓のおすすめスポット:斜里温泉 湯元館


北の大地に湧く奇跡の湯、モール泉で極上の温浴を

斜里岳のふもと、斜里町の中心部に位置する温泉施設で、全国でもめずらしい「モール泉」に浸かることができます。モール泉とは、泥炭(ドイツ語で“Moor”)が語源の植物由来の有機物を含んだ温泉で、肌にやさしく保温効果にも優れているのが特長。

この温泉では、赤ワインのような色をしたモール泉が、円形の浴槽に源泉かけ流しで注がれています。肩まで浸かれば、ほのかに油分を感じさせる香りが鼻に広がり、まるで自然に包まれているような感覚に。日帰りのほかに宿泊も可能で、クリオネキャンプ場も併設しており、羅臼岳や斜里岳登山の拠点にもおすすめです。

斜里温泉 湯元館
■ 住所:北海道斜里郡斜里町西町13-11
■ 電話番号:0152-23-3486
■ 公式HP:http://www.yumotokan.info/onsen/yurai.html

③ 大雪山(旭岳)


モルゲンロートに染まる初秋の旭岳

北海道中央に広がる大雪山系の主峰・旭岳は標高2,291mで、北海道の最高峰として知られています。「北海道の屋根」と称される大雪山の中心に位置し、夏でも雪を抱く雄大な景観が魅力です。

標高1,600メートル付近にある姿見の池までは旭岳ロープウェイでアクセスできるため、初心者でも比較的気軽に登山に挑戦できます。


パッチワークのような紅葉に感動する旭岳山頂からの景色

登山道では色とりどりの高山植物が迎えてくれ、可愛らしいチングルマが北の涼風にやさしく揺れる姿も見どころのひとつ。道中はやがて火山地形へと表情を変え、壮大な景色変化が楽しめます。

山頂に立てば、大雪山系の山並みやトムラウシ山、十勝連峰を一望できる圧巻のパノラマが広がります。9月に入ると、日本一早い紅葉が山を彩り、錦絵のような風景が登山者を魅了します。

登山道中のハイライト:旭岳登山道の後半

 
目の前に広がる錦秋のグラデーション

9月上旬から中旬にかけて、標高を上げるごとに紅葉は一層鮮やかさを増し、まるでハイマツに織り込まれた錦模様のように山肌を彩ります。その美しさはまさに自然が描いた一幅の絵画。

目の前に広がる錦秋のグラデーションは、やがて遥か遠くの十勝岳へと続いていきます。これこそ、初秋の大雪山を訪れる醍醐味です。

大雪山(旭岳)|たいせつざん(あさひだけ)
■ おすすめ登山時期:7月上旬~10月上旬
■ 名前の由来:旭岳はヌタクカムウシュペ、石狩岳、東オプタテシケなどの名で呼ばれたが、明治43年に文部省からの働きかけにより、旭川の東に位置し陽の登る方向にある山として現在の名を得た。大雪山の名は明治32年松原岩五郎の『日本名称地誌』が初出で、小泉秀雄が大雪山は中央高地の総称と発表し今日に至る
■ アクセス:旭川から道道1160号を経由して約43km
■ 駐車場:旭岳ロープウェイ前に40台(6~10月は500円)、公共駐車場61台(無料)

山麓のおすすめスポット:美瑛の丘めぐり

 
虹色のグラデーションに包まれる、展望花畑・四季彩の丘

美瑛の丘陵地帯は、ゆるやかな起伏と広がる畑が美しく調和した、北海道らしい風景を象徴する場所です。実はこの丘の景観は、昔の火山活動によって形づくられたもので、現在では多くの農園や花畑が点在し、訪れる人々を魅了しています。

特に「四季彩の丘」では、色とりどりの花が大雪山系や十勝岳連峰を背景に咲き誇り、まるで絵画のような光景が広がります。こうした景観は観光のためだけに作られたものではなく、地域の農業と深く結びついており、人々の営みと自然が共存する美しさも大きな魅力のひとつです。

四季彩の丘
■ 住所:北海道上川郡美瑛町新星第三
■ 電話番号:0166-95-2758
■ 公式HP:https://www.shikisainooka.jp/

④ 利尻山(利尻富士)


北のシンボルとして君臨する、美しき利尻富士

北海道の最北部、利尻島にそびえる利尻山は、標高1,721メートルの独立峰で、その美しい円錐形の姿から「利尻富士」の愛称で親しまれています。海に浮かぶその姿は、まるで富士山のような優雅さをまとい、北海道の日本百名山の中でも特に存在感のある一座です。


海から始まる壮大な道のり、利尻の地形を感じる旅

主な登山ルートは鴛泊(おしどまり)コースで、登山口へは宿泊施設の送迎サービスなどを利用してアクセスできます。ルートは森林帯からハイマツ帯、火山由来の岩場へと移り変わり、変化に富んだ登山が楽しめます。

山頂に立てば、日本海をぐるりと望む大パノラマが広がり、天気が良ければ礼文島やサハリンまで見渡せることも。利尻島ならではの自然や温泉、地元グルメとあわせて、島ならではの特別な山旅を楽しむことができます。

登山道中のハイライト:長官山からの景色

 
山の中腹から仰ぐ、美しく雄々しい利尻山の姿

スタートから約3時間後、標高1,218mの長官山に到達。利尻富士の前衛に位置するこの山からは、凛とした姿で山裾を広げる利尻山を目の前に望むことができます。

尖った山頂と美しい緑の山肌が印象的で、季節によっては雪渓がみられることも。利尻富士の雄大さに圧倒され、まるでその中に引き込まれるようです。

利尻山(利尻富士)|りしりざん(りしりふじ)
■ おすすめ登山時期:7月上旬~10月上旬
■ アクセス:フェリー利用は車輌の長さ3m 未満で1万2830円。登山口となる3合目の利尻北麓野営場まで車で入ることができる
■ 駐車場:利尻北麓野営場に駐車場あり(約30台)

山麓のおすすめスポット:利尻島一周

 
島の風を感じながら、利尻山のふもとをぐるりと一周

時間に余裕があれば、利尻島一周に挑戦してみましょう。全長約60kmのコースは、レンタルバイクなら2〜3時間、自転車なら半日ほどで巡ることができます。ルート沿いには、利尻山を望む姫沼やオタトマリ沼といった絶景スポットが点在し、海沿いの爽快な道や、色とりどりの花々が咲く景観も魅力です。

レンタルは、雪国レンタル(旅館雪国運営)のほか、利尻ぐりーんヒルinnや利尻アクティビティ(沓形港近く)などで可能。スポーツ自転車や原付バイクも選べます。自転車なら島北部の「利尻・彩くるロード」を走るのがおすすめ。雄大な自然のなかで、利尻島の魅力をまるごと体感するアドベンチャーが待っています。

レンタルバイク
■ 雪国レンタル公式HP:http://ryokanyukiguni.com/?page_id=46
■ 利尻ぐりーんヒルinn公式HP:https://rishiri-greenhill.net/jp/rental_bike.html
■ 利尻アクティビティ公式HP:https://rishiri-activity.com/bicycle/

⑤ 十勝岳


異世界を思わせる雰囲気が漂う、スタートの望岳台

十勝連峰の主峰・十勝岳は、標高2,077mの活火山で、荒々しい火山地形と広大なスケールを誇ります。山腹からは今なお噴煙が上がる場所もあり、大地のエネルギーを感じながら登ることができる山です。

最も一般的な登山口は、白金温泉からアクセスできる望岳台。標高約900mからのスタートで、山頂までは約3時間〜3時間半ほどの行程です。


北海道中央部を一望する、360度の絶景パノラマが待つ

道中は樹林帯からガレ場へと景色がダイナミックに変化し、登り進めるごとに火山の山らしい表情が現れます。山頂に立てば、大雪山系の山並みや富良野盆地を一望する壮大な景色が広がり、思わず息をのむ迫力。

火山活動の影響もあるため、事前の最新情報や安全対策をしっかりと行ったうえで、北海道ならではのスケール感あふれる登山をぜひ楽しんでみてください。

登山道中のハイライト:登山道から振り返る富良野

 
山麓の緑から荒涼とした火山地帯へ、劇的に変わる大地の表情

十勝岳の稜線へと続く道は、火山地形を登る険しいルート。黒く険しい山肌を越えると、視界が一気に広がり、北海道の大地が果てしなく続いていきます。

その迫力とスケールは、写真では収まりきれないほど圧倒的で、まさに十勝岳ならではの魅力です。風に乗って漂う硫黄の匂いや噴煙が、大地が鼓動していることを感じさせてくれます。

十勝岳|とかちだけ
■ おすすめ登山時期:7月上旬~10月上旬
■ 名前の由来:十勝はトカプチ=女の乳房、トガプチ=沼の枯れる所など語義は諸説あるが、十勝地域の最高峰としてその名を与えられた山名であろう
■ アクセス:旭川から国道237号を南下、美瑛で道道966 号を白金温泉方面へ、白金温泉まで約52km。望岳台まではさらに3km
■ 駐車場:望岳台に駐車場あり(50 台)

山麓のおすすめスポット:十勝岳温泉 湯元凌雲閣


山々を望む絶景露天、登山者に愛される十勝岳の秘湯

十勝岳温泉は、北海道に点在する温泉地の中でも最も標高が高い場所に位置し、大自然に包まれた秘湯として知られています。中でも「十勝岳温泉 湯元凌雲閣」は、登山者や山好きに長年親しまれてきた人気の宿。名前の通り、まるで雲を見下ろすような高所にあり、喧騒から離れた別世界のようなロケーションが魅力です。

醍醐味は、十勝岳連峰を正面に望む開放感あふれる露天風呂。赤褐色のにごり湯は鉄分を多く含み、体の芯まで温めてくれます。標高1,280mという高さにありながら、冬季も営業しており、雪に覆われた雄大な山々を眺めながら湯に浸かるという非日常の体験が味わえます。自然の厳しさと美しさ、そして癒しが共存する、山旅にぴったりの温泉です。

十勝岳温泉 湯元凌雲閣
■ 住所:北海道空知郡上富良野町 十勝岳温泉
■ 電話番号:0167-39-4111
■ 公式HP:https://www.ryounkaku.jp/

北海道にある日本百名山 残り4座も紹介

ここまで紹介した5座以外にも、北海道には個性的で魅力的な百名山がそろっています。登山の達成感はもちろん、山域ごとの自然や文化、地形の多様性を味わえるのが大きな魅力です。アクセスがやや難しい山もありますが、その分だけ訪れたときの感動もひとしお。ここでは残りの4座について、特徴や登山のポイントを簡潔にご紹介します。

⑥ 阿寒岳

 

阿寒岳は、阿寒湖の東西に位置する雌阿寒岳と雄阿寒岳を総称した名称で、日本百名山に数えられるのは雌阿寒岳です。複数の火山が重なった構造で、山中には複数の火口があり、風向きによっては噴気の強い臭気の中を歩く場面も。まさに“活火山の山旅”を体感できる一座です。

登山道は3ルートあり、いずれも針葉樹林からスタートしますが、登るルートや季節によって植生が大きく異なるのも魅力のひとつ。林床に広がるコケや稚樹の緑、エゾイソツツジが彩るハイマツ帯、火山礫地に咲くメアカンキンバイやメアカンフスマなど、歩くごとに風景が変化し、何度訪れても楽しめる山です。

阿寒岳|あかんだけ
■ おすすめ登山時期:7月上旬~10月上旬
■ 名前の由来:阿寒川の上流であることからであろう。ちなみに雌阿寒はアイヌ語でマチ・ネシリ(女山)、雄阿寒はピン・ネシリ(男山)の夫婦山
■ アクセス:釧路から国道38号、240号を経由して阿寒湖畔まで約65km
■ 駐車場:雌阿寒温泉登山口近くに駐車場あり(55台)

⑦ トムラウシ山

 

トムラウシ山は、大雪山国立公園のほぼ中央、表大雪と十勝連峰の中間に位置し、「大雪の奥座敷」とも呼ばれる静寂に包まれた山です。遠隔地にあることや、裾合いに広がる複雑な地形、そしてそれらを彩る高山植物の美しさから、登山者の間で根強い人気を誇ります。遠望すれば王冠のような優美な山容を見せますが、山頂は火口底を挟んだ双耳峰となっており、前衛峰も連なる複雑な地形を形成しています。

山の北側には日本庭園やロックガーデン、南にはトムラウシ公園、東には広大な五色ヶ原の草原、西には銀杏ヶ原が広がり、いずれも他の山域に引けを取らない自然美を湛えています。巨岩・奇岩の間を縫うように咲く可憐な高山植物、光を受けて輝く大小の湖沼群など、見る者を飽きさせない変化に富んだ景観が続きます。「カムイミンタラ=神々の遊ぶ庭」というアイヌ語の表現が、まさにぴったりの世界がそこには広がっています。

トムラウシ山|とむらうしやま
■ おすすめ登山時期:7月上旬~10月上旬
■ 名前の由来:アイヌ語でトンラ・ウシとはミズゴケのある川、水草が生えている川など諸説ある。山名自体はトムラウシ川の上流にあるという意味
■ アクセス:新得駅から道道718号で約60km。付近7kmは未舗装なので要注意
■ 駐車場:公共駐車場あり(55台)

⑧ 幌尻岳

 

北海道南部を縦断する日高山脈。その背骨ともいえる大山脈の中で、唯一2,000mを超える最高峰が幌尻岳です。山腹には3つのカールを抱え、麓からもその大きさが際立つ堂々とした山容。主稜線から西に外れて位置しているため、山頂からは日高山脈の山々が重なり合うことなく、遮るもののない雄大な眺望が広がります。

アイヌの人々からは「ポロ・シリ(大きい山)」と呼ばれ、古くから特別な存在として親しまれてきました。北部では針葉樹林が見られる一方、亜高山帯ではダケカンバが極相林を形成し、その上部にはハイマツの低木帯が広がります。お花畑はカールや沢の源頭部に点在し、岩稜帯ではこの地ならではの貴重な植物がひっそりと根を張ります。日高の深い自然と向き合う、静かで厳かな山旅が楽しめます。

幌尻岳|ぽろしりだけ
■ おすすめ登山時期:7月上旬~9月下旬
■ 名前の由来:アイヌ語で「ポロ・シリ=大きい・山」の意。
■ アクセス:平取町本町から日高方面へ40分、振内市街を過ぎたころ、仁世宇の分岐に「幌尻岳登山入口」の案内看板あり。ここから約20 分で、とよぬか山荘へ
■ 駐車場:とよぬか山荘に駐車場あり(約50台)

⑨ 羊蹄山(蝦夷富士)

 

美しい円錐形から「蝦夷富士(えぞふじ)」と呼ばれる成層火山で、北海道を代表する独立峰です。北海道の脊梁山脈を除けば最も標高が高く、山頂からの展望は360度の大パノラマ。日本海やニセコ連峰、支笏湖、洞爺湖までも一望できる見晴らしの良さが魅力です。

登山道は倶知安・真狩・京極・喜茂別の4方向から整備されており、それぞれ異なる表情の山旅が楽しめます。9合目には避難小屋も整備され、登山者をサポートしています。また、植物の垂直分布が明瞭で、倶知安コースと山頂の高山植物は天然記念物に指定されているほど。登るほどに移り変わる植生や、稜線から眺める美しい稜線の曲線美も、この山ならではの魅力です。

羊蹄山(蝦夷富士)|ようていざん(えぞふじ)
■ おすすめ登山時期:7月上旬~10月上旬
■ アクセス:千歳から支笏湖畔を経て、国道276号で美笛峠を経由し、羊蹄山登山口へ約110km
■ 駐車場:登山口の半月湖野営場に駐車場あり(15台)

北海道の日本百名山を楽しむためのアクセス・宿泊・安全対策

北海道での登山をより充実した体験にするために欠かせないのが、移動手段・宿泊施設、そして安全対策です。ここでは北海道ならではの山旅の工夫を紹介します。

登山口までの移動時間を考えて計画する

 

北海道の日本百名山は、登山口までのアクセスに時間がかかる山も少なくありません。空港や主要駅から登山口まで距離がある場合は、公共交通機関だけでなく、レンタカーやタクシー、宿泊施設の送迎なども含めて移動手段を確認しておきましょう。特に、早朝から歩き始める必要がある山では、当日の移動と登山を無理に組み合わせると行程に余裕がなくなります。登山口までの所要時間、駐車場の有無、道路状況などを事前に調べ、出発時間に無理がないか確認しておくことが大切です。

前泊・後泊を含めて無理のない行程を組む

 
大雪山への拠点におすすめな層雲峡オートキャンプ場

北海道の山旅では、登山前後の宿泊計画も重要です。登山口の近くに前泊できれば、早朝出発がしやすくなり、行動時間にも余裕を持たせられます。下山後に温泉地や周辺の宿に泊まれば、疲れを癒やしながら北海道らしい旅の時間も楽しめます。

トムラウシ山や幌尻岳のように行程が長い山はもちろん、利尻山や羅臼岳のように移動そのものに時間がかかる山でも、前泊・後泊を含めた計画が安心です。日帰りにこだわりすぎず、自分の体力や登山経験に合わせて余裕あるスケジュールを組みましょう。

ヒグマ対策は事前確認と装備の準備が基本

 
羅臼岳への登山道中で、クマの爪痕を発見

北海道の山を歩くうえで、ヒグマ対策は欠かせません。登山前には、自治体やビジターセンターなどが発信しているヒグマの出没情報を確認し、熊鈴や熊スプレーなど必要な装備も検討しておきましょう。

登山中は、見通しの悪い場所や沢沿い、早朝・夕方の行動に特に注意が必要です。食べ物のにおいを外に出さない、単独行を避ける、周囲に自分の存在を知らせながら歩くなど、基本的な対策を意識することでリスクを下げられます。

活火山では登山前に火山情報を確認する

十勝岳や阿寒岳、大雪山など、北海道の日本百名山には火山としての一面を持つ山もあります。登山前には、噴火警戒レベルや登山道の規制情報、現地ビジターセンターなどの最新情報を確認しておきましょう。

火山ガスや噴気、天候急変の影響を受けることもあるため、現地の状況によっては無理に山頂を目指さない判断も必要です。登山計画を立てる際は、歩くコースだけでなく、避難場所や引き返す判断の目安もあわせて確認しておくと安心です。

地図や登山アプリでルートを事前に確認する

北海道の日本百名山は、山域が広く、登山道の分岐や長い行程を含む山もあります。登山前には、紙地図や登山地図アプリでルートを確認し、標高差、歩行時間、水場、避難小屋、エスケープルートなどを把握しておきましょう。

スマートフォンの電波が入りにくい場所もあるため、地図データを事前にダウンロードしておくことも大切です。山と高原地図ホーダイなどの登山地図アプリを活用すれば、現在地やコースの確認がしやすくなり、初めて訪れる北海道の山でも計画を立てやすくなります。

北海道の日本百名山は、登山前後の旅もあわせて楽しみたい


一歩足を踏み入れれば別世界、北海道の高山が見せる絶景と冒険

北海道の百名山をめぐる旅は、ただ登るだけでなく、山麓の温泉や道中に広がる雄大な風景など、五感すべてで自然を感じる非日常の体験です。長距離移動さえも旅の一部として楽しめるのが、北海道ならではの魅力と言えるでしょう。

さらにバンガローやコテージといった選択肢を活用すれば、コストも抑えつつ快適に滞在できます。しっかりとしたヒグマ対策を講じながら、安全に、そして心ゆくまで北海道の山旅を堪能してみてください。

『山と高原地図』シリーズは、1965年より毎年発行、登山を楽しむ方に長く親しまれ続けているロングセラー登山地図。 深田久弥による「日本百名山」をすべて収録し、主要な山岳エリアを網羅しています。 山と高原地図Webでは、登山、トレッキング、ハイキングに関する情報や、おすすめの登山ギアについて紹介していきます!
利尻・羅臼 知床・斜里・阿寒・礼文 2026
ニセコ・羊蹄山 暑寒別岳・駒ヶ岳 2026
大雪山 旭岳・トムラウシ山・十勝岳・幌尻岳 2026

日本百名山について詳しく知りたい人は

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